著者
山田 浩子 原田 利宣 吉本 富士市
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.1-8, 2003-09-30 (Released:2017-07-19)
参考文献数
3

今日,ゲームやアニメ作品等に登場する2次元(2D)キャラクターが3次元(3D)CG化や立体造形(以下、フィギア)される傾向にある。また,アニメ等の作品自体の人気をも左右するキャラクターデザインは,今後益々重要になると考えた。そこで,本研究ではフィギア,日本人形,およびリカちゃん人形の顔の造形にはどのような相違があり,また人の顔と比較することによりどのように人の顔を抽象化しているかを明らかにすることを目的とした。まず、人や人形の顔の形状を3次元計測し,顔の曲面を構成するキーラインとして顔の特徴点における断面線7箇所を抽出した。次に,それらにおける曲率半径とその変化の仕方の分析結果と,高速フーリエ変換による曲率半径の周波数分析からそれぞれの顔の特徴分析を行った。また,その解析結果を人形の顔作りに応用し,評価を行った。その結果,それぞれの人形の特徴を作り分けることができ,その指針の有用性を確認した。
著者
原田 歩
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2023年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.244, 2023 (Released:2023-04-06)

1.はじめに 日本の都市はその成立と発展の基礎を都や港町,門前町や宿場町におくなど、その起源は様々である。なかでも近世城下町は、県庁所在地をはじめとする多くの主要な都市の起源となっているため、その空間構造や都市計画の変化などに着目して研究されてきた。近世城下町は、侍町・町人町・寺院地を主要な構成要素とし、各要素の相互関係や配置の変化から支配者層の意図に迫ってきた。 本研究は、城下町を形成する3つの要素の中でも寺院地に着目し、近世城下町の成立から藩政の終焉にかけて,寺院配置の変遷を分析することによって,藩主の都市設計の意図の変化を明らかにすることを目的とする。藩主の治世ごとに寺院の分布図を作成し、藩政や周囲の大名との関係、江戸幕府の支配と関連付け、藩主の意図やその変化の特徴を考察する。 2.近世城下町研究における寺社地の位置づけ 既往の城下町研究では、都市の消費地である「侍町」と生産地である「町屋」を研究対象としたものが多くみられる。その一方で寺社地は、寺院集積地である「寺町」が防御機能を担っていることが指摘されていた(矢守1974;久保2013)。 大阪城下町を事例に寺院と「寺町」型・「町寺」型・「境内」型に類型化し、その役割を考察した研究(伊藤1997)や江戸城下町において寺院が呪術的役割から余暇空間機能に変化したことを示した研究(松井2014)、江戸の明暦の大火後の寺社地と都市構造の変化を考察したもの(黒木1977;岩本2021)など防御的機能に留まらない寺院の役割が明らかになっている。しかし、こうした研究は一事例にとどまっており、今後さらなる事例の蓄積が求められている。 これらの研究は城下町整備が整った後の時代に描かれた絵図を用いて分析されることが多く、城下町形成期の変化を分析することはできていない。 城下町形成期に焦点を当てて分析することは、城下町を整備した藩主の都市計画に迫るうえで有効であり、戦乱の世から泰平の世に移り変わるなかで、軍事的役割が重視された時代から経済活動の場としての役割が重視 されるようになるまでの変化に迫ることが可能となる。 3.名古屋城下町における「寺社地」 名古屋城下町は,1609(慶長14)年,家康の九男義直の居城として,天下普請によって築城された。清須城の軍事的脆弱性や中世以降の無計画な発展に伴う城下町拡大の限界を補う目的で,清洲城に代わる新たな近世城下町として整備された。 他の城下町が中世山城に代わる新たな城として整備されたのに対し,名古屋城下町は近世城下町の代替として整備されたため,あらかじめ家臣団や町人の規模を把握することが可能であり,綿密な計画に基づいて建設されている。 その構造は次のようになっている。町人町が碁盤割で城下の中心に配置され,侍町は町人町を覆うように位置している。寺社地は外延部の特定の場所への集積地および碁盤割の町人町の中心(会所地)に置かれた。 名古屋城下町にみられる寺社地の特徴として,宗派ごとに形成された寺院集積地(寺町)が形成されたこと, 町人町の会所地に寺院が置かれたことが指摘できる。これらの特徴は他の城下町にもみられる特徴(宗派ごとの寺町は広島城下町,会所地の寺院は熊本城下町にみられる。)であり,名古屋城下町における配置意図を明らかにすることは,他の城下町の分析にも示唆を与える。特に、名古屋城下町は複数の寺院集積地を持ち、他の城下町で指摘される防御的機能だけでは説明できない寺院配置がみられる。 そこで前述のとおり,名古屋城下町は清須城からの移転が多く,初代義直と2代光友の治世に多くの寺院が建立されているため、本研究では,この時代に注目し,清洲からの移転寺院,他からの移転寺院,創建寺院と分類し,宗派の特徴や熱田神宮との関係とともに考察する。 参考文献 伊藤 毅1997.近世都市と寺院.吉田伸之編.『日本の近世 第9巻都市の時代』81-128中央公論社. 岩本 馨2021.『明暦の大火「都市改造」という神話』,吉川弘文館. 久保由美子2013.城下町・熊本の街区要素の一考察. 熊本都市政策2:63-68. 矢守一彦1974.『都市図の歴史 日本編』, 講談社.
著者
秀熊 佑哉 宮下 剛 髙森 敦也 奥山 雄介 大垣 賀津雄 長谷 俊彦 原田 拓也
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.22-00136, 2023 (Released:2023-05-20)
参考文献数
20

本研究では,鋼トラス橋の斜材や弦材に適用されている溶接箱形断面に着目し,溶接近傍の腐食が圧縮耐荷力低下に及ぼす影響の検討と,炭素繊維シート接着による圧縮耐荷力回復を目的とし,局部座屈先行の短柱と全体座屈先行の長柱を用いて圧縮試験を行った.その結果,溶接近傍の腐食であっても溶接ビードが残っていれば耐荷力は大きく低下しないものの,溶接切れを起こした場合は著しく耐荷力低下を起こすことが明らかとなった.しかし,溶接近傍の腐食および溶接切れを起こした場合であっても,軸方向に炭素繊維シート,周方向にアラミド繊維シートを貼り付けることにより,健全時に近い耐荷力まで回復することができた.また,溶接近傍の減厚や溶接切れ,補修後の耐荷力の評価方法について検討を行った.
著者
宇津木 玲奈 宇都宮 英綱 藤永 貴大 有田 英之 前野 和重 原田 敦子
出版者
一般社団法人 日本小児神経外科学会
雑誌
小児の脳神経 (ISSN:03878023)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.1-7, 2021 (Released:2021-03-31)
参考文献数
11

表在脳実質性軟髄膜出血(以下SPLH)は,脳溝に沿って進展する軟髄膜出血と同領域に併発する皮質下出血を特徴とする正期産児の分娩時発症頭蓋内出血と報告されている.新生児のまれな外傷性変化であり実地臨床ではよく知られていない.今回我々は,SPLHと画像診断した自験例5例の画像所見と臨床像を解析し,SPLHの発生機序を分娩時の過度な頭蓋変形による軟髄膜出血とこれに起因する髄質静脈の灌流障害で静脈性皮質下出血を併発したものと推察した.正期産児の脳実質内出血の診断時には本病態を念頭におく必要がある.
著者
高原 智洋 榎本 寛 原田 真一 岡野 邦彦 伊藤 茂 土井口 祐一 進藤 裕幸
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.101-106, 2004 (Released:2005-04-12)
参考文献数
5
被引用文献数
1 1

Primary total hip arthroplasties were performed on 74 hips between 1998 and2001 at our hospital. We used the Hardinge approach on 36 hips of patients whose age ranged from 46 to 80 years (mean : 63.2 years) and Dall approach on 38 hips of patients whose age ranged from 43 to 76 years (mean : 60.2 years). Postoperative followup was carried out for over one year (mean : Hardinge 24.0 months,Dall 39.4 months).The results revealed trochanteric tenderness in 9 Hardinge hips and 4 Dall hips more than 12 months from operation. Radiological tests indicated abnormal assification in 13 Hardinge hips and seven Dall hips, and abnormal assification with trochanteric tenderness in seven Hardinge hips and one Dall hip during the same period.
著者
原田 孝司 大園 恵幸
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.82, no.11, pp.1817-1821, 1993-11-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
5
被引用文献数
1

肝腎症候群は,非代償性肝硬変や劇症肝炎に伴う進行性の機能性急性腎不全である.その病態の本質は,腎血管収縮による腎皮質部虚血である.成因としては,有効循環血漿量の減少にもとづく交換神経機能亢進や種々の血管作動性物質により,糸球体濾過率の低下を来たす. 1978年Sassariで病態生理にもとづき,診断基準が提唱され概念が整理された.本症は致死的で,治療法もいまだ確立されていない.
著者
原田 和宏 齋藤 圭介 津田 陽一郎 井上 優 佐藤 ゆかり 香川 幸次郎
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.B0742, 2007 (Released:2007-05-09)

【目的】中枢神経疾患に伴う易疲労(rapid fatigability)は臨床的に重要な症候であり、客観的評価と併せて主観的疲労の程度と質についても検討がなされている。脳血管障害(以下、脳卒中)既往者も疲労に悩まされることは理解されており、国外のレビューでは疲労の有訴率が発症1年前後から3~4割になり、機能的な予後に悪影響を及ぼすと指摘されている。有訴率の算出はうつ気分の者を除外した対象を用いて行われ、脳卒中既往者は対照群の2倍以上の有訴率となることが報告されている。脳卒中後の中枢性疲労や末梢性疲労に関する研究の中で、本邦では主観的疲労の実態資料が依然少ない。本研究は、脳卒中既往者における主観的疲労の実態を把握するために、地域高齢者の調査結果を基に疲労の有訴率について検討することを目的とした。【方法】調査対象は中国地方にある1町の住民で入院・入所中を除く65歳以上の在宅高齢者全員2,212名であった。調査は心身機能や活動状況を内容とし、2005年12月に留置方式で行った。当該調査は岡山県立大学倫理委員会にて了承され、対象には同意を得た。回収された1,864票から基本属性、ADL状況、関連質問の有効回答が確認できた者のうち、いつもうつ気分であるとした者を除外した1,229名を集計対象とした。主観的疲労はスエーデン脳卒中登録Risk-Strokeに従い、「日頃、しんどいと感じますか(4件法)」等で評価した。脳卒中既往者は「脳卒中既往の有無」と「加療中の病気」の質問から選定した。有訴率はクロス集計一元表にて求め、統計処理は多項確率の同時信頼区間に従い95%信頼区間(以下、95%CI)を推定後、脳卒中既往者以外の者と比較した。また脳卒中既往者において主観的疲労との関連変数を検討した。【結果】脳卒中既往者として選定できた者は51名(男性78.4%)で平均76.5歳、対照群と仮定したそれ以外の者は1,178名(同40.6%)で平均74.9歳であった。ADL状況では要介助者は脳卒中既往者の35.2%、対照群の11.8%であった。疲労の有訴率は脳卒中既往者が37.3%(95%CI: 22.0-53.4)で、対照群の16.0%(同: 13.6-18.5)と比し2.3倍高く、統計的に割合の差が認められた。脳卒中後にそれまでよりも早く疲れを感じるようになったとする回答者は67.4%(同: 48.4-81.9)であった。脳卒中既往者の主観的疲労と属性・ADLとの関連は認めなかった。【考察】今回は高齢者に限定された資料であったが、脳卒中既往者の疲労の特徴は有訴率において北欧での地域ベースの調査結果と類似し、対照群の2倍以上で、その程度は属性等との関連が少ないという知見に整合した。この結果から脳卒中後の易疲労は看過できないことが再認識され、障害の評価として重要でないかと考えられた。
著者
原田 耀 三村 耕一
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2019年度日本地球化学会第66回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.143, 2019 (Released:2019-11-20)

リン脂質は、現在地球上に存在しているほとんどの生命体において、細胞膜の主成分となっており、生命の起源を議論する上で欠かせない生体分子である。隕石の中には、リン脂質の材料物質を全て含むものが発見されており、そのような隕石や彗星は約40億年前には多量に地球に衝突していたと考えられている。本研究では、彗星が初期地球に衝突する際に被る高温高圧環境において、彗星に含まれるリン脂質の材料物質が化学反応し、リン脂質として初期地球に供給された可能性を検討した。彗星含有物を模擬した出発物質を反応容器に封入し、火薬銃で加速した弾丸を当てることで高温高圧を作り出す衝撃実験を行い、リン脂質前駆体であるモノグリセリドとグリセロリン酸の生成を確認した。
著者
新井 俊文 高崎 健 大原 敏哉 金井 信雄 吾妻 司 原田 徹
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.415-421, 2011-04-01 (Released:2011-04-23)
参考文献数
19

現在,腹腔鏡下胆嚢摘出術(Laparoscopic Cholecystectomy;以下,LCと略記)は胆石症の標準術式となっているが,症例の集積に伴い胆石腹腔内落下による膿瘍形成の報告も散見される.今回,腹腔内落下胆石が原因で胃壁内に炎症性肉芽腫を形成し手術的に除去した非常にまれな1例を経験したので報告する.症例は53歳の男性で,前医にて胆石胆嚢炎に対しLCが施行されたが,術中膿性胆汁と結石が腹腔内に流出し可及的に結石の除去がなされた.6か月後のCTにて腹腔内と胃壁内に腫瘤を指摘され当院へ紹介された.開腹所見は肝S6に接する肝外膿瘍と内部に結石を認め,胃前庭部の小腫瘤を部分切除にて摘出した.結石分析はビリルビンカルシウム結石であった.高度炎症胆嚢では壁損傷もまれではなく,それに伴う腹腔内落下胆石の回収は困難な場合も少なくない.胆石腹腔内落下が必ず膿瘍に結びつくわけではないが散石時には厳重な経過観察が必要と考えられた.
著者
原田 純治
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.275-278, 1981-01-20 (Released:2010-07-16)
参考文献数
15

The present study was designed to investigate the effect of diffusion of responsibility on helping behavior in a non-emergency situation, and to investigate this effect in the bystanders' face-to-face (FF) and non-face-to-face (NFF) conditions. The proportion and the latency of helping were employed as the measures of helping behavior. The results showed that the proportion of helping did not decrease with the increase of the bystander group size. Especially, in the two-bystander-FF condition, facilitation of helping was observed on the contrary to the hypothesis about diffusion of responsibility. From these findings, it was suggested that diffusion of responsibility would be inhibited by the joint effect of the relative intensity of the psychological costs of helping and the difference in the bystanders' face-to-face rleations.
著者
柳沢 志津子 杉澤 秀博 原田 謙 杉原 陽子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.22-100, (Released:2023-04-10)
参考文献数
54

目的 本研究は,都市部に居住する高齢者において,社会経済的地位と口腔健康との関連のメカニズムについて,心理および社会的要因の媒介効果に着目して検証し,口腔健康の階層間格差への対応に資する知見を得ることを目的とした。方法 東京都に位置する自治体で住民の社会経済階層が高い区と低い区を選択し,それぞれの自治体に居住する65歳以上の住民1,000人ずつの計2,000人を住民基本台帳から二段無作為抽出し,訪問面接調査を実施した。分析対象は,回答が得られた739人とした。分析項目は,口腔健康に主観的口腔健康感,残存歯数,咀嚼能力の3項目の合計点数を用いた。社会経済的地位は,教育年数と年収とした。媒介要因の候補は,社会生態学モデルを用いて,自尊感情,うつ症状,社会的支援とした。分析は多重媒介分析を行った。結果 心理社会的要因のうち,個別の要因については有意な媒介効果を確認できなかったものの,心理社会的要因全体では年収と口腔健康の媒介要因として有意な効果がみられた。心理社会的要因全体の媒介効果は,教育年数と口腔健康との間では有意ではなかった。結論 低所得者の口腔健康が悪い理由の一部に心理社会的要因が関与しており,ライフステージごとに実施される予防活動と心理社会的リスク要因全体を軽減する取り組みを組み合わせることで,社会経済的地位による口腔健康の格差を解消できる可能性が示唆された。
著者
畠山 典子 原田 静香 中山 久子 櫻井 しのぶ
出版者
一般社団法人 日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.13-25, 2019 (Released:2020-04-20)
参考文献数
17
被引用文献数
1

目的:自治体における産後ケア事業を利用する母親はどのような気持ちにおかれているのか,産後ケア利用後にどのような気持ちの変化をもたらしたのかを明らかにすることで効果的な産後ケア事業の展開方法への示唆を得ることを目的とした.方法:産後ケア事業を利用した母親については利用前・利用後の気持ちの変化について,直接的ケアを提供する助産師については,ケアのなかでとらえた母親の気持ちについてインタビューを行い,グラウンデッド・セオリー・アプローチに準じて質的帰納的に分析した.結果:産後ケア事業を利用した母親の利用前の気持ちについて,【漠然とした不安感を軽減したい】【自分自身を振り返るための気持ちのゆとりと空間がほしい】【初めてのことに直面する機会が多く,否定的な感情をもちやすい】【どんな自分でもまずは受け止めてほしい】【他の母親や理想の母親像と現実を比較してしまう】【早いうちから信頼して相談できる人やサービスについて知っておきたい】の6つのカテゴリーを抽出した.利用後は,【母親自身が大切にされた経験となる】【気持ちにゆとりが生まれ思考が前向きに転換する】【交流のきっかけとなる】【漠然としていた不安の内容が見えてくる】の4つのカテゴリーが抽出され,母親の気持ちのポジティブな変化がみられた.結論:産後,母親としての新しい役割を担う時期には自信の低下や葛藤が起きやすい.その時期に,自分を受け止めてくれるという安心感や,専門職からのサポート,安全な環境のなかで自らを振り返り,大切にされた経験は,自分自身や児,家族,社会に対して前向きな気持ちの変化をもたらした.よって産後ケア事業のなかにおける個別性あるエモーショナルサポートを基盤としたケアの重要性が示唆された.