著者
久米井 伸介 柴田 道彦 本間 雄一 松橋 亨 日浦 政明 大西 裕 阿部 慎太郎 田原 章成 原田 大
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.814-820, 2012 (Released:2012-12-26)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

症例は42歳男性.20歳頃より記銘力障害や軽度の人格障害が出現し,30歳頃より暴言,被害妄想を認め,統合失調症と診断され内服加療をされていた.2010年12月に原因不明の肝硬変及び肝機能障害を指摘され,非アルコール性脂肪性肝炎及び薬物性肝障害と診断された.治療を受けていたが2011年1月より歩行障害,転倒,動作緩慢を認め薬剤性パーキンソニズムが疑われ,肝硬変の精査とともに当院を受診した.Kayser-Fleischer角膜輪の存在,血清セルロプラスミン低値,尿中銅排泄量の増加,肝生検での肝硬変の所見と肝組織中銅含量増加ならびに頭部MRIにて大脳基底核の信号異常を認め,一連の精神,神経症状と合わせて肝神経型のウイルソン病と診断した.Trientine hydrochlorideと酢酸亜鉛の内服及びリハビリテーションの開始により,肝機能ならびにパーキンソニズムや精神症状は徐々に改善を認めている.
著者
羽生 春夫 嶺崎 隆幸 大山 満 桝井 武 原田 雅義
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.312-317, 1998-06-25 (Released:2009-06-05)
参考文献数
20

一側脳幹に限局した脳梗塞17例を対象に,SPECTによる脳血流量の左右差を指標として大脳,小脳半球に及ぼす影響を検討した.大脳半球の血流低下がみられたのは7例で,中脳から橋上部までの病巣では同側に,橋中部から延髄における病巣では対側に認められ,これらの病巣はすべて脳幹被蓋を含む病巣であった.小脳半球の血流低下は6例にみられ,橋中部から下部を境に上方(吻側)の病巣では対側に,下方(尾側)の病巣では同側にみられ,脳幹腹側の病巣で認めやすい傾向にあった.大脳半球の血流低下は発症後1~2カ月以内に認められたが,小脳半球の血流低下は数カ月以降の慢性期にまで認められることも少なくなかった.臨床症状との関連は不明であるが,脳幹に限局した小病変でも遠隔領域に血流低下が出現する場合があり,この機序として脳幹を上行,下行する投射線維を介した抑制機序,すなわちdias-chisisとの関連が推測された.
著者
樋爪 彩子 八木 徹哉 青柳 守紘 原田 歩実 伏木 亨
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.215-223, 2021-10-05 (Released:2021-10-11)
参考文献数
27

未熟・完熟山椒エキスが,塩分を控えた食品の風味に対してどのような影響を及ぼすかをVAS法及びTI法による官能評価により検証した。未熟・完熟山椒エキスはともに,塩分が低いかつお出汁の味を強める効果があることがわかり,減塩に役立つ可能性が示唆された。特に,完熟山椒エキスは,水っぽさのなさ,満足度やおいしさの向上にも効果的であった。未熟・完熟山椒エキスでは,味の増強効果が異なり,先味を強める未熟山椒エキスに対し,完熟山椒エキスは,味の持続性を高めることがわかった。両エキスの有効成分を同定するために,山椒エキス分画物の味の増強効果をTI法により評価した。その結果,完熟山椒の有効成分は,サンショール類とは異なる,フラクション2に含まれる成分であると考えられた。その成分は,サンショール類の味の増強効果の持続性を高める効果がある可能性が示唆された。
著者
梛野 健司 高 忠石 原田 寧
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.137, no.6, pp.245-254, 2011 (Released:2011-06-10)
参考文献数
10
被引用文献数
2 4

パリペリドンは,日本国内および海外で非定型抗精神病薬として広く使用されているリスペリドンの主活性代謝物(9-ヒドロキシ-リスペリドン)であり,リスペリドンと同様にドパミンD2およびセロトニン5-HT2A受容体に対する阻害作用を有し,セロトニン・ドパミンアンタゴニスト(SDA)に分類される.さらに,パリペリドンの製剤は,放出制御型徐放錠であり,放出制御システム(osmotic controlled release oral delivery system: OROS®)を用いることによって,24時間持続的にパリペリドンを放出し,安定した血漿中薬物濃度が維持できる.これによって,1日1回投与による統合失調症治療が可能になり,有効性および忍容性の向上が期待できる.パリペリドンは,D2受容体および5-HT2A受容体に対してリスペリドンと同程度の親和性を示し,D2受容体と比較して5-HT2A受容体に対して高い親和性を示した.これらのことから,パリペリドンは,統合失調症においてドパミン神経系が関連する陽性症状の改善だけでなく,陰性症状の改善および従来の定型抗精神病薬で問題となる運動障害(錐体外路系副作用)の軽減が期待できる.国内の臨床試験は,成人の統合失調症患者を対象とした探索的試験を第II相試験として実施し,positron emission tomography(PET)検査により,投与量および血漿中濃度とD2受容体占有率との関係を検討した.第III相試験では,統合失調症では国内で初めてのプラセボ対照二重盲検比較試験を実施し,パリペリドンER 6 mg,1日1回朝投与のプラセボに対する優越性を検証するとともに,初回投与時に低用量からの漸増が不要で維持用量の6 mg/日から投与を開始しても安全であることを確認した.また,48週間の長期投与試験において,長期間の曝露に伴う安全性リスクの増加はなく,有効性の維持についても確認した.特に,日本人統合失調症患者に対するエビデンスが明確に示されたことの意義は大きく,パリペリドンERは,現在の本邦における統合失調症の治療において第一選択薬となりうる薬剤として期待される.
著者
松尾 葦江 石川 透 小林 健二 伊海 孝充 小助川 元太 岩城 賢太郎 坂井 孝一 高橋 典幸 吉田 永弘 原田 敦史 辻本 恭子 平藤 幸 伊藤 慎吾 山本 岳史 秋田 陽哉 SELINGER Vyjayanthi
出版者
國學院大學
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

非公開のものも含め軍記物語関連の史料・伝本・絵画資料などの調査を、4年間に36回行った。これまで個別に調査されていた資料相互の比較対照によって判明したことも多い。それらの成果は公開研究会・シンポジウム・講演会での議論を加えて、HPや冊子体の報告書などで発信してきた。また情報量の多いテキストである源平盛衰記の内容を、把握しやすい年表の形式に再編成し、平成26年度中に公刊する予定で作業を進めている。
著者
原田 淑人
出版者
東洋文庫
雑誌
東洋学報 = The Toyo Gakuho
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.413-422, 1914-10
著者
石井 昌彦 原田 雅史 月ヶ瀬 あずさ 中村 浩
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.29-34, 2007 (Released:2007-09-27)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

単分散微粒子が三次元的に規則配列したオパール型コロイド結晶を作製するための単分散微粒子として,シリカ微粒子と並んでポリスチレン微粒子がよく用いられる.しかし,ポリスチレン微粒子を用いた場合にはクラックの発生が多いとの指摘もある.本報では,数 cm2 オーダーの面積にわたって面内での結晶方位が揃ったオパール型コロイド結晶の作製が可能な流体セルを用いて,ポリスチレン微粒子を用いた場合のコロイド結晶形成過程と作製されたコロイド結晶の構造を,シリカ微粒子の場合との比較において調べた.角度分解反射スペクトル測定などの分光的手法により,異なる光学特性を示す三段階の乾燥過程を経てコロイド結晶が形成されること,シリカ微粒子の場合と異なりポリスチレン微粒子の場合には,最後の乾燥段階において約 3%の粒子径収縮が生じることが明らかになった.この粒子径収縮のため,ポリスチレン微粒子からなるコロイド結晶では,シリカ微粒子からなるものに比べて,クラックの発生が多くなるものと考察した.
著者
平木 潔 太田 善介 入野 昭三 三好 勇夫 瀬崎 達雄 原田 英雄 鈴木 信也 大里 尚司 永森 俤一郎 守屋 純一郎 六車 昌士 高杉 潔 駄場崎 浩 池田 一彦
出版者
Okayama Medical Association
雑誌
岡山医学会雑誌 (ISSN:00301558)
巻号頁・発行日
vol.77, no.5-6, pp.795-835, 1965-06-30 (Released:2009-03-30)
参考文献数
229

Morphologic characteristics of most of known oncogenic viruses, some of which were investigated by us, were described in relation to their oncogenicity and their localizations in tumor tissues.Oncogenic viruses were classified into six groups: type A, B, C, D, E and F. Viruses pertaining to type A were presumably not mature virus particles. Some of them could, however, be immature form or incomplete form of oncogenic virus particles. Viruses belonging to type B, C, D, E, and F were represented by mammary tumor virus of mice, leukemia viruses of mice and chickens, polyoma virus, Shope fibroma virus and Lucké renal adenocarcinoma virus, respectively. They were different in size and shape, and in the mode of development.It was presumed that type B and C viruses were members of the Myxovisus group and type D viruses belonged to Adenovirus and the Papova virus group. It was also believed that type E and F viruses had in general the feature of the Pox virus group and Herpes virus group, respectively.
著者
緒方 美和子 原田 直子 山口 佐緒理 中島 正俊 田上 順次
出版者
一般社団法人 日本接着歯学会
雑誌
接着歯学 (ISSN:09131655)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.212-219, 1999-12-15 (Released:2011-06-07)
参考文献数
11
被引用文献数
1

#600研磨紙 (AP#600), ダイヤモンドポイント (DP), 目の粗さの異なる2種類のスチールバー (SB600, SB703) 仕上げの象牙質面に対するレジンの接着性を評価するため, ClearfilLiner Bond II, Clearfil Liner Bond IIΣ, Clearfil MEGABONDを用いて試料を作製しMicrotensile bond testを行った.その結果, いずれの接着システムにおいても, 接着強さはAP#600群において最大値を示し, SB600群, SB703群, DP群の順に低下した.特にLBIIΣ においては各群の接着強さの間に有意差を認めた (p<0.05).接着強さの低下の原因として, バーにより切削された群では基質象牙質面上のスメアー層の厚さや性質がAP#600群と異なるため, セルフエッチングプライマーによって脱灰, 除去しきれずに象牙質上に残存するスメアーが増加し, スメアー層下の象牙質の脱灰, 象牙質内へのボンディング材の浸透が不十分となったことが考えられた.
著者
原田 亜紀子
出版者
北ヨーロッパ学会
雑誌
北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.13-26, 2020 (Released:2021-07-01)

本稿は、デンマークのユースカウンシルでの民主主義の実践による市民形成を検討する。ユースカウンシルは地方自治体が設置した若者政策提言組織であり、若者アソシエーションの一つでもある。 事例の分析枠組として、デンマークの政治学者、バングとソーレンセン、そして英国の政治学者マーシュと社会学者リーによる「新しい政治的アイデンティティ」の理論と、北欧閣僚理事会が提示した「‘参加’の過程」を援用し、エリートに限定されない多様な若者の政治参加を考察する。 3つの事例においては、インフォーマルな対話の機会により幅広い若者を包摂していること、職員が若者と地方自治体の橋渡しをし、「秘書」として「教育者」としての役割を果たしていること、ユースカウンシルが非制度的政治参加と制度的政治参加を接続する機能があること、そして若者を権利主体としてみなし政治的に包摂すると同時に教育的に支援する体制があることが明らかになった。
著者
吉澤 寛之 吉田 俊和 中島 誠 吉田 琢哉 原田 知佳
出版者
日本応用心理学会
雑誌
応用心理学研究 (ISSN:03874605)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.35-46, 2019-07-31 (Released:2019-10-31)
参考文献数
33
被引用文献数
1

The authors examined the effects of neighborhood commitment and atmosphere on antisociality as mediated by collective efficacy (CE) using a multilevel analysis. Stratified sampling was used to collect data from 3,451 students and 545 teachers from 26 junior high schools in 4 qualitatively different communities. CE was indicated by students based on their perceptions of neighborhood "informal social control" (ISC) and "social cohesion and trust" (SCT) in their communities and their social information processing denoted antisociality. Teachers assessed the antecedent indices regarding the community environments within their school districts. Multilevel structural equation modeling was used to analyze the neighborhood-level effects of the antecedents on antisociality via CE. The results revealed that antecedents indirectly inhibited antisociality via ISC at the neighborhood-level. SCT directly inhibited antisociality at the individual-level. Implications for community interventions were discussed.
著者
坂本 信臣 近藤 淳一 原田 信弘
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.17-24, 2007 (Released:2007-06-19)
参考文献数
10
被引用文献数
1

電磁流体力学(MHD)推進技術は次世代の推進システムとして期待されており,NASAマーシャルスペースフライトセンターではMAPXと呼ばれるMHD加速実験が計画されている.この計画ではダイアゴナル型のMHD加速機の使用が予定されている.チャネル上下に配置された電極を適切に接続することによって,流れの非対称性やジュール加熱を緩和することができ,これはホール電流中和状態と呼ばれる.本論文では,このホール電流中和状態を理論的に評価し,さらに理想的な電極接続状態と実機との違いの影響を見積もった.結果として,両者に多少の違いは生じるが加速機出口における流速に大きな違いはないことを示し,実機においても理想的に評価されたホール電流中和状態をほぼ達成できることを示した.
著者
原田 雅樹 木本 伊彦 藤井 俊彰 谷本 正幸
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.64-73, 2002 (Released:2008-07-30)
参考文献数
20

フラクタル画像符号化の高速化を実現するために,以下の二つの手法を提案する.第一の手法では,スケーリングパラメータの計算回数を削減させるために,一つのレンジブロック内の最大振幅と一つのドメインブロック内の最大振幅との比(以下ここではこれを最大振幅比と呼ぶ)を用いる.符号として選択されるドメインブロックにおける最大振幅比はスケーリングパラメータ付近の値をとるため,ある閾値を超える大きな最大振幅比を持つ場合にはスケーリングパラメータの計算を行わない.第二の手法では,スケーリングパラメータそのものの計算量を削減させるために,一つのレンジブロック内の輝度偏差と一つのドメインブロック内の輝度偏差との比(以下ここではこれを偏差比と呼ぶ)を用いる.偏差とスケーリングパラメータとの間には相関があるため,計算量の少ない偏差比に定数をかけてスケーリングパラメータを近似的に求める.
著者
長 篤志 原田 哲也 木下 武志
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.85-88, 2002 (Released:2008-07-30)
参考文献数
4

物体毎に異なる視点や投影法で描画された3 次元コンピュータ•グラフィックス(以下,多視点画像)を,効率的に生成するためのコンセプトと画像描画処理の手順を提案する.従来の3次元コンピュータ・グラフィックス制作用ソフトウェア(以下,ソフトウェア)へ,容易に多視点画像生成機能が追加できるようコンセプトを定めた.各物体には従来のソフトウェアには無かった「多視点パラメータ」群が設定される.提案された画像描画処理の手順を使用すれば,多視点パラメータ群を操作することにより,通常の透視投影の画像に近い画像から連続性を保ちつつ多様な多視点画像を生成できることがわかった.提案手法は多視点画像を生成するための便利で効果的な方法であるといえる.