著者
古牧 徳生
出版者
神戸市看護大学短期大学部
雑誌
紀要 (ISSN:13428209)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.131-150, 2003-02-28

サルからヒトヘの進化が事実であるなら,個体間の協力行動も,サルに見られる協力関係から人間独自の道徳へと進化したと考えるのが自然であろう。内容は次の通りである。(1)オスとメスの繁殖戦略から家族が成立し黄金律が意識されるようになったこと。(2)単なる二重基準の禁止でしかない黄金律が,直接の見返りの有無を超えて集団内の個体に等しく妥当するためには,死の発見が必要であったこと。(3)死の意識から,宗教感情が芽生え,それが世代間に見かけ上は一方的に見える変則的な相互協力関係を成立せしめたこと。(4)そうした関係の深化によって無条件の道徳的行動へとつなかっかこと,などである。結論として,人間だけが持つとされる道徳や宗教などは,動物にも見られる「相互協力」から決して断絶しているわけではないことが述べられる
著者
黄 京性 川田 智恵子 山崎 喜比古
出版者
日本保健福祉学会
雑誌
日本保健福祉学会誌
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.49-60, 1998

保健福祉教育の一形態として今後の展開が期待される「統合教育」につき、高校時の「統合教育」経験者(以下「統合校」)と非経験者(以下「非統合校」)の比較から、当時の印象、その後の障害者問題に対する意識変容、今後の保健福祉教育の望ましいあり方の検討を目的とした。対象は統合教育実施校の卒業生徒54名、非実施校の卒業生徒142名であり、質問紙法を採用した。統合校では、「統合教育」への違和感はほとんどみられなかったものの、障害児の学校選択については、特殊学校を勧める者が多くなっていた。その主たる理由は、障害児への差別や偏見ではなく、障害児の将来の生活独立を重視した考えであり、また現段階では普通学校が「統合教育」を実施するに環境が不十分であるという評価からであった。また、「統合教育」は障害者問題に関心を持つ契機と捉えながらも、障害者の受容態度や障害者問題に積極的に取り組む行動変容には至っていなかった。一方、障害者を取り巻く環境については、対象者の殆どが不充分であると捉え、特に障害者の就職先や障害者のための情報提供が不充分であると指摘していた。本研究より、普通学校での「統合教育」の有効性が確認され、その拡大実施に向けより一層の関心が求められた。また、障害児のみならず、一般生徒のノーマライゼーションに対する実践につながる環境づくり及び工夫の必要性が示唆された。
著者
佐野 佑子 神鳥 明彦 島 圭介 田村 康裕 高木 寛 辻 敏夫 野田 正文 東川 史子 横江 勝 佐古田 三郎
出版者
The Society of Instrument and Control Engineers
雑誌
計測自動制御学会論文集 (ISSN:04534654)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.272-281, 2011 (Released:2011-12-19)
参考文献数
13
被引用文献数
1 2

We tested the repeatability of a finger tapping device with magnetic sensors to determine its reliability. This device, which was developed to assist in the diagnosis of movement disorders such as Parkinson's disease (PD) and strokes, measures the distance between the first and index fingers during finger tapping movements (opening and closing the fingers repeatedly). We evaluated three types of repeatability based on ICC (interclass correlation coefficient) and Welch's test (test for equal means in a oneway layout): repeatability when measured at different times, when using different devices, and when using different measurers. We calculated these three types for three finger tapping tasks on both hands for 21 characteristics calculated from finger tapping waveforms. Results demonstrated that the repeatability when using different devices is high regardless of the task or hand. The repeatability when measuring at different times and when using different measurers is high at some tasks, but not all. One of the finger tapping tasks (finger tapping movement with the largest amplitude and highest velocity), which is used in a conventional PD diagnosis method (UPDRS), does not have enough repeatability, while other tasks show high repeatability. Results also showed that five characteristics have the highest repeatability (ICC ≥ 0.5 or significance probability of Welch's test ≥ 5% in all tasks): “total moving distance,” “average of local minimum acceleration in opening motion,” “average of local minimum acceleration in closing motion,” “average of local maximum distance” and “average of local minimum velocity”. These results clearly demonstrate the strong repeatability of this device and lead to more precise diagnosis of movement disorders.
著者
古賀 裕 村上 光彦 高松 祐治 柏木 孝仁
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.10, pp.2941-2944, 2009 (Released:2010-03-05)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

破傷風は,適切な治療を迅速に開始しないと死にいたる感染症である.症例1は82歳,男性で開口障害のため前医を受診し,けいれん発作を発症し当院に紹介受診となった.右下腿に汚染創を認め,破傷風として治療を開始した.人工呼吸管理を2週間行い,入院35日目に軽快退院となった.症例2は78歳,男性で咽頭痛,嚥下困難のため当院受診となった.外傷はなかったが,呼吸困難とけいれん発作を認めたため破傷風として治療を開始した.人工呼吸管理を5週間行い,入院60日目に軽快退院となった.嚥下困難や項部硬直のある患者は破傷風も鑑別診断として考慮すべきである.DPTワクチン接種による基礎免疫獲得は破傷風予防に有効であるが,追加接種をしないと20年で効果は減弱する.基礎免疫のない症例の急性期の予防には,トキソイドとともに免疫グロブリン投与が勧められ,さらに2回のトキソイド追加投与で基礎免疫を獲得することが重要である.
著者
信太 奈美 古川 順光 池田 由美 来間 弘展
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.E2Se2089, 2010

【目的】障害者スポーツには障害の程度を平等化するため競技別に運動能力を評価・分類するクラス分けが適応される.車椅子バスケットボールにおいては機能的クラス分けを採用し,プレー中のパフォーマンスによって選手の持ち点が決定される.持ち点は1.0~4.5まで0.5刻みに8段階に別れており,試合に出場する5人の持ち点が14.0を越えてはならないというルールがある.持ち点1.0・1.5は上位胸椎損傷者,持ち点4.0・4.5は下肢機能が使用できる脊髄損傷者や切断者で構成され,持ち点が高い方が障害は軽い.今回車椅子バスケットボール選手を対象にスキルを数値化し,効果的なトレーニングを行うための基礎的な資料を作成することを目的に,瞬発力,持久力,パスシュート,車椅子コントロール能力を評価するためのスキルテストを行い持ち点とスキルの関係を検討した.<BR>【方法】男性車椅子バスケットボール選手46名(年齢23.9±6.2)を対象に,パスの飛距離,20m走,3分間走,1分間シュート率,反復横移動の測定を行った.すべての測定は本人所有の車椅子バスケット専用車椅子で実施した.方法は(1)パスの飛距離:遠投は助走可能とし,投げ方は指定しない.チェストパスは静止した状態で行った.(2)20mダッシュ:静止した状態から20m区間での疾走タイムをストップウオッチで計測した.(3)シュート成功率:1分間シュート(1分間でできるだけ多くのシュートを放ち,成功したシュートの数を計測),ミドルシュート(指定した5カ所),フリースローの各シュート率を測定した.(4)3分間走:20m間隔に設置されたカラーコーンを往復し,3分間で走りきった距離を測定した.(5)反復横移動:1.2m間隔で3本の線を引き,対象者は車椅子にて中央の線をまたいで位置し,スタートの合図とともにどちらかのサイドの線に対し両キャスターが越すまで移動させ,次にバックターンにより中央線へ戻り反対サイドの線を両キャスターが越すまで移動し,再び中央線へ戻る.この運動を30秒間繰り返し行うことでサイドの線を通過した数を測定した.<BR>【説明と同意】対象者には測定方法といつで測定を中止できることを説明した.また,得られたデータを使用することに同意を得た。<BR>【結果】3分間走とパス項目に関しては持ち点が高くなる程好成績を示す傾向があった.20mダッシュでは持ち点2.0群・2.5群・4.5群が5.5secと最も速く、反復横移動では持ち点3.0群が15.6±0.7回と最も好成績を示したが,持ち点と20mダッシュ,持ち点と反復横移動の間に一定の関係はみられなかった.20mダッシュは持ち点1.0群と1.5群が5.9sec,持ち点2.0群と2.5群が5.5secとそれぞれ同じタイムを示した.また,シュート成功率は持ち点ではなく年齢との間に一定の関係がみられた.持ち点とパス項目について強い相関が見られ(遠投r=0.649,チェストパスr=0.505)、遠投とチェストパスにも強い相関が見られた(r=0.657).持ち点はパス項目の他に3分間走や全シュート率に相関が見られたが,20mダッシュや反復横移動には見られなかった.反復横移動は他の測定項目間との相関が低かった.20mダッシュと3分間走(r=-0.516),20mダッシュと遠投(r=-0.606)に負の相関があった.<BR>【考察】各スキルテスト項目と持ち点との関係においては,3分間走とパス項目に関しては持ち点に応じて運動機能が反映する結果であったが,一方で持ち点と20mダッシュ,持ち点と反復横移動の間に一定の関係はみられなかった.この結果は車椅子バスケットボール経験・練習頻度よる差が現れたこと,また同じ持ち点の選手であってもポジションや使用する車いすの違い(座面の高さや車輪の大きさ)により移動能力に影響を及ぼしていると推測される.20mダッシュは持ち点1.0群・1.5群,持ち点2.0群・2.5群とそれぞれ同じ値を示したことは、持ち点1.0の選手と1.5の選手の能力が近似していることを示しており,持ち点による能力評価の妥当性を示していると思われる.また、全般的なシュート成功率が持ち点ではなく年齢との間に一定の関係がみられたことは、年齢は経験年数を反映していることが予想され,車椅子バスケットボールの経験が長いほどシュート率が向上する傾向にあり,これはバスケットボールの競技特性でもある繰り返しによるスキルの獲得と考えられる.<BR>【理学療法学研究としての意義】スポーツは体力の維持や二次的障害の予防、自己実現など行う意義は大きい.本研究を行うことで障害を持つ人の運動能力を測定し,指導法やトレーニングに活かすことができ,また障害を持つ人のスポーツの普及にも貢献するものである。<BR>
著者
古積 博・岩田 雄策 山﨑 ゆきみ 寺園 淳
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.113-120, 2013-04-15 (Released:2016-07-30)
参考文献数
7

ここ数年,金属スクラップの火災が輸送中(船舶,陸上),港湾施設で頻発している.そこで,最近の火災事例を現地調査し,また,問題点,火災原因を明らかにするため,各種危険性評価実験を行った.金属スクラップ自体は容易に火災になることはないが,火災となった場合,高温となり,消防隊が接近しにくいこと,消火までに長時間を要することも多く,海上交通の安全や環境への影響等が懸念されている.ここでは,著者らが現地調査を行ったいくつかの事例を紹介するとともに,金属スクラップ火災の現状と消火活動上の問題点について実験的に検討した.その結果,電池類の短絡,トナー粉の摩擦等による発火の可能性があることがわかった.
著者
加藤 直樹 箱崎 浩平 田靡 雅基 古山 純子 里 雄二 青木 義満
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会誌 (ISSN:09120289)
巻号頁・発行日
vol.83, no.12, pp.1117-1124, 2017-12-05 (Released:2017-12-05)
参考文献数
25

This paper proposes a novel approach for video-based person re-identification that exploits deep convolutional neural networks to learn the similarity of persons observed from video camera. By Convolutional Neural Networks (CNN), each video sequence of a person is mapped to a Euclidean space where distances between feature embeddings directly correspond to measures of person similarity. By improved parameter learning method called Entire Triplet Loss, all possible triplets in the mini-batch are taken into account to update network parameters at once. This simple change of parameter updating method significantly improves network training, enabling the embeddings to be further discriminative. Experimental results show that proposed model achieves new state of the art identification rate on iLIDS-VID dataset and PRID-2011 dataset with 78.3%, 83.9% at rank 1, respectively.
著者
伊藤 真人 長山 郁生 岡部 陽喜 古川 仭
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.527-531, 1991-10-15 (Released:2011-08-10)
参考文献数
17

近年Bell麻痺に対してはStennert法が普及し, Hunt症候群には抗ウイルス剤 (アシクロビル) とStennert法の併用療法が試みられ, 良好な治療成績が得られている。我々は臨床的にBel1麻痺と診断される症例 (Huntの一部を含む) に対してもHunt症候群と同様にアシクロビルとStennert法とを併用しているので報告した。本治療の目的は臨床的Bell麻痺の中に含まれるHunt不全型の治療と, 病初期に帯状疱疹を認めないHunt典型例の重症化の予防, VZV以外のウイルスが関与するBell麻痺症例の治療が目的である。結果は25例中治療開始が遅れた1例を除き他は全例完治した。
著者
古川 誠
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.245-246, 2016-10-01 (Released:2016-11-07)
参考文献数
6
被引用文献数
1
著者
古川 雅史 梶川 泰 松代 直樹 北村 貴裕 大畠 和也 北原 糺 鎌倉 武史
出版者
The Society of Practical Otolaryngology
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.105, no.10, pp.913-918, 2012 (Released:2012-10-01)
参考文献数
12
被引用文献数
2

We studied 804 patients with idiopathic sudden sensorineural hearing loss (ISSNHL) regarding the correlation between the duration from the onset to the start of treatment and hearing outcome. An analysis of the 804 yielded the following results: 1) The overall cure rate was 30.0%. 2) The cure rate was better in patients with a shorter duration (within about 10 days) between the onset and the start of treatment. 3) In patients with mild hearing loss (Grade 1, 2), the cure rate was better in patients with a shorter duration. 4) In patients with severe hearing loss (Grade 3, 4), the cure rate of over 8-10 days was clearly worse, and it is very important to start treatment within 8-10 days.
著者
大山 勝 山際 幹和 荘司 邦夫 橋本 真実 古田 茂 小幡 悦朗 三吉 康郎
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.75, no.8, pp.1681-1689, 1982-08-01 (Released:2011-11-04)
参考文献数
18
被引用文献数
1

By means of laryngofiberscopy, pneumatography and photoelectric glottography, the closure reflex activity of the larynx which was evoked by trasnasal stimulation with various concentrations of isovaleric acid and ammonia during inspiration was determined in 24 normal subjects and 53 patients with chronic sinusitis, anosmia, nasal allergy and chronic obstructive pulmonary diseases (COPD).The reflex activity was characterized by a remarkable tendency to decrease in the majority of normal older subjects and most of the patients with conditions other than nasal allergy.It was assumed that this reflex might be of great importance in preventing hazardous materials from going into the lung and that depression or absence of the reflex sensitivity in the upper respiratory tract might lead to a higher incidence of pulmonary diseases.The results which were obtained here will help clarify the laryngeal clossure reflex. This methodology may be employed practically to serve as objective olfactometry.
著者
古賀 徹 松宮 正人 宮保 徹 水谷 和宏 鵜澤 裕一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会ソサイエティ大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1995, no.2, 1995-09-05

パッケージや配線材質等から入射したα粒子がセルデータを破壊するソフトエラーは、その入射条件に大きく依存することが指摘されている。一般に入射エネルギーが低く、入射角が浅い場合がワーストケースとされ、より多くの発生電荷がノード部分拡散層へ収集される。このことは加速線源を用いたソフトエラー試験において、セルと加速線源の位置にり不均一なFail bit分布を表わす事を示している。われわれは相似型セルと同一周辺回路で構成するSRAMを試作、評価を行ってきた。そして、今回デバイス内の各セルブロック別のFail bitの比較を行い、入射条件の違いによる影響について調査を行った。
著者
中村 航 古谷 誠章
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集
巻号頁・発行日
vol.76, no.662, pp.755-762, 2011

The Coffee Shop called Kopi Tiam in Malaysia is an interesting system of eating house as assembly of hawkers. The independent hawkers with each special meal are assembled by the shop's owner, and the owner provides drink stall and tables for eat. It is similar to Hawker Centre in Singapore or modern food court, but It seems to became a spontaneous system to sustain the quality of foods. The Coffee Shop in Malaysia is analyzed by compared with Hawker Centre in Singapore to clarify the system and know a type of the plan.
著者
内田 脩斗 吉川 大弘 ジメネス フェリックス 古橋 武
出版者
人工知能学会
雑誌
2018年度人工知能学会全国大会(第32回)
巻号頁・発行日
2018-04-12

文書分類は,現代の情報化社会において重要な技術である. また,Word2vecを用いて単語の意味関係をベクトルへ埋め込む分散表現が近年注目を集めており,文書分類へ適用する手法も報告されている. 分散表現は一般的にWord2Vecと呼ばれるツールを用いて生成される.そして,Word2Vecはニューラルネットワークを用いた学習構造をしており,ネットワーク内の入力側の重みを分散表現として利用している.しかし,Word2Vecでは,分散表現とは別にネットワーク上で学習される出力側の重みが存在し,異なる性質を持っていると考えられるが一般的に利用されていない. そこで本稿では,分散表現と出力側の重みを利用したアンサンブル学習による文書分類手法を提案し,提案手法の有用性を示す.
著者
名古屋市 編
出版者
彰国社
巻号頁・発行日
vol.下, 1942