著者
吉田 映子
出版者
東京理科大学
雑誌
理学専攻科雑誌 (ISSN:02864487)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.85-90, 2002-10-01
著者
沼田 淳紀 吉田 雅穂 濱田 政則
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.305-315, 2009-09-25 (Released:2009-09-28)
参考文献数
74
被引用文献数
2 3

温室効果ガス削減の一方策として,木材利用を拡大するとともに木材を長期利用することが考えられる。このために建築の分野では,耐久性の長い住宅建設の取り組みなどが既に行われている。一方,土木の分野では,本体工事に木材を使うことはほぼ皆無となってしまった。著者らは,地盤の液状化対策として木材を地中に打設することを考えている。本論文では,この内,木材を利用する上で大きな誤解が持たれている木材の耐久性について検討を行った。まず,代表的な設計書に示される木杭基礎の変遷を示し,現在ではこれらの設計書から木杭の記載が姿を消したことを示す。次に,木材の腐朽に関する文献調査結果から,地中における木材の耐久性について示す。さらに,1964年新潟地震の事例より,木杭が液状化対策として用いられた事例を示し,最後にそれによる炭素貯蔵効果を示す。
著者
西條 泰明 中木 良彦 川西 康之 吉岡 英冶 伊藤 俊弘 吉田 貴彦
出版者
厚生労働統計協会
雑誌
厚生の指標 (ISSN:04526104)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.1-6, 2015-05

雑誌掲載版目的 北海道内の居住地域から,脳梗塞アルテプラーゼ静注療法の実施できる脳卒中急性期医療拠点病院への自動車アクセス時間について地理情報システム(GIS)ソフトウエアを用いて推定し,またアクセス時間を短縮することで改善するための拠点病院配置案を示すことを目的とした。方法 北海道医療計画に掲載されている61医療機関を脳卒中急性期医療拠点病院とし,平成22年国勢調査における町丁字別人口に1人以上の居住者が存在する地区ごとに,直近の拠点病院への自動車アクセス時間を推定した。二次医療圏・市町村ごとのアクセス時間は町丁字別人口居住者数の重み付けをした平均値として算出した。またアクセス時間を改善するための拠点病院配置案については,二次医療圏ごとにアクセス時間上位の二次医療圏へ,7医療機関を新たに割り当てたアクセス時間改善案の検討も行った。結果 61拠点病院へのアクセス時間について,平均60分以上となる二次医療圏が6医療圏存在し,うち90分以上は5医療圏であった。アクセス時間を改善するための拠点病院追加案については,(1)二次医療圏でアクセス時間が平均60分以上であり,医療圏内に拠点病院が設定されていない6医療圏,(2)アクセス時間60分以上に該当する人数が,約7万4千人と医療圏では2番目に多い1医療圏に1拠点病院を追加したと仮定した。以上,計68拠点病院とした場合の二次医療圏ごとのアクセス時間を計算すると,平均60分以上は1医療圏のみとなった。結論 本研究では,GISソフトウエアを用いて,特に二次医療圏ごとの拠点病院への平均アクセス時間を示した上で,北海道の現状を考えた脳卒中急性期医療拠点病院の例を示した。脳梗塞急性期治療については,二次医療圏や自治体ごとのアクセス状況を検討し,地域の現状を考えて改善案を考えていく必要があると考える。
著者
吉田 徹 藤谷 茂樹 平 泰彦 堤 健 栗栖 美由希 岩井 俊介 三上 翔平 吉田 稔 若竹 春明 北野 夕佳 桝井 良裕
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.221-225, 2019

<p>向精神薬によるARDS (acute respiratory distress syndrome) の報告は限られており, また, ARDSや薬物中毒に対してECMO (extracorporeal membrane oxygenation) の有用性が指摘されている。【症例】20歳代女性。うつ病等で精神科通院中。フェノチアジン系抗精神病薬, ベンゾジアゼピン系催眠鎮静薬, オレキシン受容体拮抗薬, ノルアドレナリン再取り込み阻害薬の過量服薬を行い, 服用後約5時間で救急搬送された。来院時意識レベルE3V5M6, その他バイタルサインに大きな所見はなかった。入院後に低酸素血症出現, 胸部単純X線で肺水腫の所見を認めた。人工呼吸管理を施行するも心停止し, VA-ECMOを導入した。頭部・上肢の酸素化不良に対しVVA-ECMOとした。第6病日にVVA-ECMOを離脱, 第32病日に転院した。【考察・結語】本症例は, ARDSから心停止, VVA-ECMOを必要とした。過量服薬した原因薬剤のうち, フェノチアジン系抗精神病薬以外は今までARDSの報告はなく, 注意が必要と考えられた。</p>

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著者
吉田文治 著
出版者
更生閣
巻号頁・発行日
1931
著者
吉田 文和
出版者
北海道大学經濟學部
雑誌
経済学研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.p683-729, 1979-08
著者
山口 開 奥瀬 千晃 鈴木 啓弘 小林 裕太郎 長田 達郎 巴 雅威 遠山 裕樹 林 毅 吉田 秀樹 高橋 泰人 前山 史朗 打越 敏之 飯野 四郎
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.18-22, 1998-01-25 (Released:2009-11-17)
参考文献数
19

症例は23歳, 女性. 飲酒歴, 輸血歴および鍼灸治療歴はない. 常用薬剤なし. 感冒様症状に伴う食欲不振, 腹部不快感および2週間で約4kgの体重減少を主訴に近医を受診した. 生化学検査でtransaminaseの上昇を認め急性肝炎が疑われ当科紹介, 入院となった. 入院時現症では標準体重の-32%のるいそうを認め, 入院時検査所見では総蛋白, コリンエステラーゼの低下及びtransaminaseの上昇が認められた. しかし肝炎ウイルスマーカーはすべて陰性で, 抗核抗体および抗ミトコンドリア抗体も検出されず免疫グロブリンはいずれも正常ないし軽度低下を呈した. 腹部超音波およびCTでは著明な脂肪肝を認めた. 肝生検像では肝実質にacuteyellow collapsed cellを含む巣状壊死を散見し, 大脂肪滴沈着をzone 2~3に小葉の1/2以上に認め飲酒歴がないことからnon-alcoholic steatohepatitisと診断した. 本例は肥満, 耐糖能異常を伴わず, 薬剤服用歴もなく経過より急激な栄養障害による飢餓状態が原因と考えられた
著者
吉田 昌弘 笠原 敏史 田辺 実
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.129, 2003

【はじめに】スポーツ・リハビリテーションの中で受傷部位の回復を評価するにあたって,機能レベルのテスト項目のほかに,10M走や垂直跳び,反復横跳びなどの能力レベル(いわゆるパフォーマンス)のテスト項目も行われる.中でも,垂直跳びの能力はジャンプ競技(バレーボールやバスケットボールなど)の重要な要素である.これまでのジャンプ研究の報告から,垂直跳び動作は下肢および上肢や体幹の運動を使った全身運動であると言われている.下肢傷害の機能回復を垂直跳びの結果より判断する場合,上肢や体幹運動を考慮して実施する必要がある.しかし,上肢の運動が垂直跳びに影響を及ぼすことは知られているが,どのような上肢運動が垂直跳びの成績や力学的な要素に関与しているのか十分に明らかにされていない.本研究はこの点を解明するために調査を行い,若干の知見を得たので報告する.【対象と方法】対象は健常男子名(平均年齢21±1[SD]歳,身長173±5cm,体重58±5kg,BMI19±1).「垂直跳び」は助走なくその場で出来るだけ高く飛び,壁面に設置した垂直跳び計測用ボードにあらかじめチョークの粉をつけた指先をつけるよう指示し測定した.対象は,肩関節屈曲0度(T1),肩関節屈曲90°(T2),肩関節屈曲180度から伸展運動させ(T3),続いて屈曲運動を行わせた.肩関節屈曲30度(T4),肩関節120度(T5)から屈曲運動のみ行わせた.これらと,肩関節180度で固定(T6)して行ったときとを比較した.各課題5回ずつ行わせ,うち最高と最低値を除く3回のデータを用いた.なお,各運動課題はランダムに行った.さらに,同時に,床反力計を使って垂直方向の力も計測した.【結果】垂直跳びの成績はT1=58±6cm, T2=56±7cm,T3=55±8cm,T4=55±7cm,T5=51±7cm,T6=49±7cmであった.フォースプレートからZ方向の大きさは,各被検者ごとの差を取り除くため,ノーマライズを行い,各被検者の体重を引き,体重で除したものを用いた.その結果,T1=14.4±0.3,T2=13.9±0.4,T3=14.3±0.3,T4=13.4±1.2,T5=12.9±0.3,T6=13.1±0.5であった.【考察】本研究では,垂直跳びにおける上肢の振りの関与について,上肢運動に条件を設定して行った.T1からT3は上肢を振り下ろす運動範囲に条件をつけて行い,上肢を固定した場合に比べ,垂直とびの高さは大きく,z方向の力成分も大きかった.このことから,上肢を振り下ろす運動により,床からの反力を得ている可能性がある.T4とT5は上肢を振り上げる運動範囲に条件をつけ,運動範囲が小さい場合,垂直跳びの高さが減少し,z方向の力成分も減少していた.同様に,上肢を振りあげるも高く飛ぶために必要な床からの反力を得ているものと考える.
著者
井上 博紀 谷 万喜子 西村 栄津子 高田 あや 鈴木 俊明 吉田 宗平
出版者
関西理学療法学会
雑誌
関西理学療法 (ISSN:13469606)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.97-104, 2007 (Released:2008-01-18)
参考文献数
8

We report the effect of acupuncture based on the meridian concept by the writing evaluation test and writing pressure in a patient with writer's cramp. The case was a 32-year-old male, who was right-handed. The patient reported feeling a sense of incongruity while playing slot machine, and also in handwriting in X+6 years. When the department of nerve internal medicine at a local hospital was consulted, the problem was diagnosed as dystonic writer's cramp. We started acupuncture treatment in our clinic from X year. Acupuncture was performed once a week. Multiple epidermis penetrating needles were used to treat skin and muscle shortening on the palm and forearm. Retaining needles were used for scalp acupuncture in the upper limb zone, LI4 and ST11. Consequently, although some involuntary movement persisted 10 weeks after the start of treatment, control of handwriting became possible. Moreover, agitation during the application of writing pressure before acupuncture therapy was improved after acupuncture therapy. The results suggest that acupuncture therapy with the retaining needles and multiple epidermis penetrating needles is beneficial for dystonic writer's cramp.
著者
吉田 順五 黒岩 大助
出版者
公益社団法人 日本雪氷学会
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.1-5, 1949

eを氷の電媒常數, em, を積雪の電媒常數とすると, <BR>em-1/em+u=d/0.92*e-1/e+u<BR>を滿足するuは, 積雪の粒の形によつてきまるということがO.Wienerの理論からみちびかれる。dは積雪の密度, 0.92は氷の比重である。いろいろな積雪について電媒常數をはかり, uをもとめたところ, uによつて積雪の粒の形, 粒と粒との連結のぐあいがあらわせそうな見こみがついた。なお, uが粒の形だけできまるというのは近似的なことで, 實はdやeによつてもuはかわる。このことについてもしらべたがuとd, eとの關係は, いろいろの場合でちがい簡單ではない。<BR>この仕事は文部省科學研究費で行つた。
著者
甘崎 佳子 平野 しのぶ 中田 章史 高畠 貴志 山内 一己 西村 まゆみ 吉田 光明 島田 義也 柿沼 志津子
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.274, 2010

【目的】CTやPETなど放射線技術の進歩は子どもの医療に大きく貢献してきた。その一方で、子どもは放射線の感受性が高く被ばく後の人生も長いなど、将来の発がんリスクが心配されている。しかし、胎児・子ども期における放射線被ばくと発がんリスクに関する詳細な情報は少ない。本研究では、子ども期被ばくによる発がんメカニズムの特徴を明らかにするため、異なる年齢でX線照射して誘発したマウス胸腺リンパ腫において、がん抑制遺伝子<i>Ikaros</i>の変異解析を中心に発がんメカニズムの相違を解析した。<br>【材料と方法】1週齢、4週齢、8週齢のB6C3F1雌マウス(各群50匹)に、X線(0.4, 0.8, 1.0, 1.2Gy)を1週間間隔で4回照射して胸腺リンパ腫を誘発した。さらに、得られた胸腺リンパ腫について染色体異常解析、がん関連遺伝子の変異解析を行った。<br>【結果】(1) 胸腺リンパ腫の発生率は1週齢照射群で高頻度に増加すると予想したが、1.2Gy4回照射で 1週齢は28%、4週齢は36%、8週齢は24%で有意差は認められなかった。(2)染色体異常は、1週齢照射群では12番染色体の介在欠失と不均衡型転座による欠失型異常(<i>Bcl11b</i>領域を含む)が、一方4週齢照射群では11番染色体の介在欠失と12番染色体の不均衡型による欠失型異常がそれぞれ認められた。また、15番染色体のトリソミーは両群に観察された。 (3) 1週齢照射群における11番染色体のLOH頻度(25%)は、4週齢(43%)・8週齢(36%)と比べて低く、逆に19番染色体では高かった(1週齢52%、4週齢17%、8週齢11%)。また、11番染色体にマップされている<i>Ikaros</i>の変異頻度は、1週齢照射群(25%)では4週齢(33%)・8週齢照射群(57%)と比較して低かった。<br>【考察】1週齢照射群では11番染色体の染色体異常やLOH、<i>Ikaros</i>変異は少なく、逆に19番染色体のLOHは高頻度に観察され、4週齢・8週齢照射群とは異なる特徴を示した。すなわち、被ばく時年齢によって胸腺リンパ腫の発がんメカニズムが異なる可能性が示唆された。
著者
藤井 正人 神崎 仁 大築 淳一 小川 浩司 磯貝 豊 大塚 護 猪狩 武詔 鈴木 理文 吉田 昭男 坂本 裕 川浦 光弘 加納 滋 井上 貴博 行木 英生
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.225-231, 1994-03-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
8

セフポドキシムプロキセチル (CPDX-PRバナン錠®) は三共株式会社が開発した経口用セフェム系抗生物質で広範囲な抗菌スペクトルムを有するのが特色である. 今回, われわれは耳鼻咽喉科領域の感染症に対する有効性と安全性を検討した. 166症例に対して CPDX-PRを症状に応じて一日200mgないし400mg分2投与を4日以上最大14日間投与した。著効が51例, 30.7%にみられ, 有効例は68例, 41.0%にみられた. 疾患別では急性扁桃炎と急性副鼻腔炎が高い著効率を示した. 慢性中耳炎の急性増悪, 急性咽頭炎では高投与量で良好な効果を示した. 自覚的症状の改善度では, 咽頭痛の改善が良好な結果であつた. 投与前後の細菌検査を行つた20例30株では菌消失率では77%と良好な結果であつた. 副作用は1例に発疹が見られたのみであつた. 以上よりCPDX-PR は耳鼻咽喉科感染症に対して高い有効率と安全性を示すと考えられた.
著者
吉田 国光
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.34, 2008

<BR>1.研究課題<BR> 現在,日本の農業は国際競争の波にさらされている.その対抗手段として,政策的に農業経営の大規模化が推進されている.この大規模化という現象は,農地の売買,貸借,作業受委託などによって達成される.しかしながら,大規模化に成功する農家は一部に限られる.農地拡大のために,労働力と経済力に余裕があって,地縁・血縁をもとに,集落内外の農地を取得することができる経営者が,大規模化に成功すると考えられる.日本の農村において,ほとんどの世帯は,顔見知りであり地縁関係にあり,またいくつかの血縁に基づいた同族集団に所属する.<BR> 農地移動については,従来から指摘されるものの,農地移動に至るプロセスについては,「地縁・血縁によるもの」と指摘されるにとどまり,その具体的なプロセスについては不明瞭な点が多い.農地移動が円滑に進められる要因や障壁となるものを明示し,これらが機能する仕組みの解明が必要である.<BR> そこで本研究では,大規模化の基盤である,農地移動に至るプロセスを明らかにする.集落を基点に,農地移動がいかなる社会関係によって行われ,その社会関係が,どのように空間的に広がってきたのかを明らかにすることを目的とする.<BR><BR>2.研究対象地域と研究方法<BR> 研究対象地域である北海道音更町大牧・光和集落は,1950年に入植が始まった開拓地で,大規模畑作農業が卓越し,酪農家,野菜作農家が混在している.開拓時には,141戸が入植したが,2007年には,31戸にまで減少した.<BR> 研究方法としては,現地調査にて,大牧・光和集落の全農家の農業経営の現状を把握し,これまでの農業経営の変遷について,農地移動の実施状況を中心にして情報を得た.この情報をデータ化し,ネットワーク分析における多重送信性の概念(ボワセベン 1986)を援用し,農業者のもつ複数の社会関係を,その組み合わせから分析した.そして,その社会関係が,時代とともに,いかに多様化し,空間的に拡大してきたのかを明らかにした.<BR><BR>3.社会関係からみた農地移動プロセス<BR> 大牧・光和集落における,農地移動に関係する社会関係は,集落と中音更地区内での地縁や,本家分家,姻戚などの血縁に加えて,小学校での同級生,同窓生,PTA役員同士との関係,農業開発公社などの公的機関を介したより広範囲にわたるものまである.近隣世帯や集落などの地縁よりも,血縁の方が例え空間的に離れていても重視された.すなわち血縁が,他の社会関係よりも強く,決定要因となりうるものであった.血縁をもたない場合については,同一集落における近隣世帯で,の場合が最も多く,より近接性の高い農家との農地移動が行われることが多かった.農地移動が隣接集落におよぶ場合は,小学校の校友関係や,開拓以前からの付き合い,開拓世帯などの結社縁を含む場合が多かった.これらに加えて,地縁や血縁,結社縁が希薄である場合については,公的機関などを介したものが関係していた.<BR> このような,農地移動に関係する社会関係は,各農家によって差異がみられ,全体として5つに類型化できた.それらは,近隣・集落完結型,中音更地区拡大型,選択縁活用型,二次入植型,入作型である.それぞれの類型に該当する農家の事例分析から,農地移動に関係する社会関係が,いかなる経緯をもって成立したのかを提示した.さらにその社会関係が,いかにして農地移動に結び付けられてきたのかを明らかにした.このことから,農地移動に関係する社会関係は,時間の経緯とともに,近隣世帯や集落内で完結していたものから,中音更地区,他地区,音更町外に空間的に拡大するようになった.また,農地移動に関係することがなかったような社会関係が,従来からの地縁や血縁,結社縁に加えて,農地移動に結びつくようになり,社会関係の多様化をもたらした.その結果,農地移動は,地縁,血縁以外の社会関係によって行われ,集落や地区の範囲を超えて展開するようになったといえる.<BR><BR>【参考文献】ボワセベン, J.著,岩上真珠・池岡義孝訳 1986.『友達の友達-ネットワー ク,操作者,コアリッション-』未来社.Boissevain, J. 1974.<I>Friends of Friends :Networks, Manipulators and Coalitions.</I> Basil Blackwell.