著者
佐藤 宏之 鈴木 保宏 奥野 員敏 平野 博之 井辺 時雄
出版者
日本育種学会
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.13-19, 2001 (Released:2011-03-05)

イネ(Oryza sativa L.)品種コシヒカリの受精卵に,メチルニトロソウレア(MNU)突然変異原処理を行って育成された品種ミルキークイーンの低アミロース性の遺伝子分析を行った.ミルキークイーンとその野生型であるコシヒカリを正逆交雑したF1種子のアミロース含量は両親の中間値を示したが,ミルキークイーン/コシヒカリ由来のF1種子よりも,コシヒカリ/ミルキークイーン由来F1種子の方が高いアミロース含量を示した.従って,ミルキークイーンの低アミロース性を支配する遺伝子には量的効果があることが分かった.また,ミルキークイーン/コシヒカリ由来のF2集団のアミロース含量は,コシヒカリ型とミルキークイーン型が3:1に分離し,さらにミルキークイーン/コシヒカリ//ミルキークイーン由来の戻し交雑集団のアミロース含量が,野生型と低アミロース型が1:1に分離したことから,ミルキークイーンの低アミロース性を支配する遺伝子は単因子劣性であると考えられた.次に,イネのアミロース合成に関与する既知の遺伝子,wx並びにdu1,2,3,4及び5との対立性を検定した結果,ミルキークイーンにおいて突然変異を生じた遺伝子は,wxの対立遺伝子であることが示唆された.
著者
奥野 健太郎 野原 幹司 尾花 綾 佐々生 康宏 加藤 紀子 阪井 丘芳
出版者
特定非営利活動法人 日本睡眠歯科学会
雑誌
睡眠口腔医学 (ISSN:21886695)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.115-120, 2016

Objectives: We present a case of severe obstructive sleep apnea(OSA) in which oral appliance(OA) therapy had no significant efficacy and there was poor compliance of continuous positive airway pressure (CPAP) therapy related to pressure intolerance, but in which combination therapy of OA and CPAP reduced optimal pressure and improved compliance.<br>Methods: The patient was a 69-year-old man with no significant past medical history who was diagnosed as having severe obstructive sleep apnea (AHI: 92.5/h, lowest SpO2: 82%) by polysomnography (PSG). We recommended CPAP therapy due to the severe OSA, but the patient refused this therapy and desired OA therapy. First, OA therapy was applied to this patient. After OA insertion for 2 months, the patient reported reduction of snoring and wore the OA comfortably; the efficacy of OA therapy in OSA was evaluated by PSG.<br>Results: PSG under OA showed an improvement of OSA in AI from 81.3/h to 33.1/h, but residual findings in AHI: 73.2/h. Secondly, we adopted CPAP therapy because of inadequacy of the efficacy of OA therapy. In PSG with CPAP titration, optimal pressure is 17cmH2O. After wearing CPAP for 3 months, the patient reported insomnolence because of discomfort of airflow from CPAP. The data of compliance of CPAP therapy were actual days utilized: 54.8%, compliance per day: 3 h 45 min, and % of days utilized ≥ 4 h/d (%): 23.8%. We considered that a cause of the poor compliance of CPAP therapy was that the optimal pressure was too high. Thirdly, we adopted combination therapy of OA and CPAP for the purpose of reducing the optimal pressure of CPAP. The optimal pressure with CPAP titration PSG wearing OA decreased from 17cmH2O to 11cmH2O. The combination therapy showed improvement of compliance in terms of actual days utilized from 54.8% to 96.8%, in terms of compliance per day from 3 h 45 min to 4 h 8 min, and in terms of % of days utilized ≥ 4 h/d from 23.8% to 54.8%.<br>Conclusions: This report suggests that wearing an OA decreased the optimal pressure of CPAP and improved the compliance of CPAP therapy for severe OSA. It is important that, in the selection of treatment for patients with OSA, we adopt not only OA therapy or CPAP therapy, but also combination therapy of OA and CPAP.
著者
巣山 隆之 奥野 敏 狩谷 幹夫 市川 英一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.1, pp.51-55, 1987-01-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
17
被引用文献数
2

N-シリルアミンが穏和な条件下でN-セアノアミノ化合物に特異的に付加して,対応するグアニジン誘導体を生成することを見いだした。N-(トリメチルシリル)ジエチルアミン[3b]は(エトキシカルボニル)シアナミド(ECC)やN-シアノ尿素[8],シアナミド[10a]と発熱してすみやかに反応した。[3b]はまた,N-フェニル-N'シアノ-S-メチルイソチオ尿素[4a],およびN-ブチル-N'シアノ-S-メチルイソチオ尿素[4b],,N-シアノグアニジン[6a]とも室温で反応した。N-(トリメチルシリル)イソプロピルアミン[3a]は[4a]と60℃ で定量的に反応したが,[4b]との反応では同じ条件下で,グアニジン体の収率はわずかに9%であった。N-(トリメチルシリル)アニリン[3c]は反応性が悪く,[4a]とは反応しなかった。また,[(メチルチオ)カルボニル]シアナミド(MCC)あるいはECCとの反応では対応するグアニジン体のMCCあるいはECCの塩が単離された。以上の結果,N-シアノアミノ化合物としては酸性の強いものほど,またN-シリルアミンとしては塩'基性の強いものほど反応しやすいことがわかった。なお,Nに水素原子をもたないN-シアノアミノ化合物はN-シリルアミンとまったく反応しなかった。
著者
藤井 昌和 喜岡 新 山崎 俊嗣 沖野 郷子 田村 千織 関 宰 野木 義史 奥野 淳一 石輪 健樹 大藪 幾美
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

中央海嶺における火成活動は、固体地球から海洋へ熱・物質を供給する重要なプロセスであり、潜在的に全球の気候変動にも影響を与えている。海底拡大に伴う定常的なCO2放出量は2×1012 mol/yr(~0.041 ppmv)程度と考えられてきた(Resing et al., 2004)が、近年指摘され始めた海水準変動(海底での荷重変動)に伴う間欠的な海底マグマ噴出現象(Tolstoy, 2015, Crowley et al., 2015)が正しければ、中央海嶺からの一時的なCO2放出量はアイスコアや海底堆積物から復元される数百ppmの大気中CO2濃度と比較しても無視できないほど大きくなる可能性がある。これまでの古気候復元や将来予測では考慮されてこなかった中央海嶺火成活動の寄与を検証するため、中央海嶺からのCO2放出量を定量的に評価できる観測証拠の取得が望まれる。 そこで我々の研究グループは、全球気候変動における中央海嶺マグマ活動の役割を明らかにするため、学術研究船「白鳳丸」の次期3カ年航海へ新たな研究計画を提案した。本研究では、世界初の試みとなる長大測線の深海磁気異常と海底地形データの解析、および新たに開発する海底拡大–火成活動モデルに基づき、過去430万年間の中央海嶺のマグマ噴出量とそれに伴うCO2排出量の定量的推定を目指す。中央海嶺の拡大軸近傍において船上マルチビーム音響測深機によって海底地形を観測して海底地形の短波長変動を捉え、海底近傍での高分解能磁場変動を観測してグローバルな古地磁気強度変動と比較することで海底に詳細な年代軸を挿入する。研究対象は、南極大陸を囲むように分布する中央海嶺のなかでも、高いメルト生産量を持つ南太平洋の高速拡大海嶺およびインド洋–南大洋の低速–中速拡大海嶺とした。海水準変動に対するマグマレスポンスを海底地形記録から検出することに加えて、海水準変動の振幅が小さいと考えられている340万年以前の変動を捉えることを通して、”本当に海水準変動が中央海嶺メルトの噴出に直接的に作用し栓抜きのような役割を担っているのか?”を検証する。 本講演では、我々の観測計画の概要とこれまでに得られている知見を紹介するとともに、全球気候変動の理解における中央海嶺研究の意義を述べる。
著者
奥野 志偉
出版者
一般社団法人 人文地理学会
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.615-632, 2004
被引用文献数
2

香港の映画産業は, 世界の映画産業の中でも大規模で, 最もダイナミックな側面をもっている。マイケル・ディアは, 映画の生産場所, 場所の生産, フィルム・テキスト, 場所にもとづくパフォーマンスの消費といった4つの側面に基づいて, フィルム・スペース (映画空間) の理論を創出した。本論文は, ディアの理論にしたがって, 第1に20世紀末まで香港で生産された映画の歴史を回顧する。第2に1970, 80年代香港映画のブームを解釈するため, 当時香港映画界で活躍していた主要な俳優や監督, 武術指導 (監督), スタントマンの背景や経歴, そして香港映画の発展における貢献について導出する。第3に, 映画のジェンルをカンフー映画, ホラー・幽霊映画, ガンスター映画, 都市暮らし映画との4種類として, それぞれの類型作りや発展について賞味する。第4に, 香港映画の成功に導いた要因として, 人的資源, 資金, 映画文化の交流などを討論する。最後に, 本論文では香港映画をめぐるローカル及びグローバルな作用が, 香港映画産業や, 映画文化への影響を検出するとともに, 中国, アジア, そして世界における香港の政治的・文化的な役割という場所性について考える。
著者
奥野 正隆 森脇 久隆
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.95, no.7, pp.743-749, 1998 (Released:2008-02-26)
参考文献数
60

肝線維化は, 肝硬変を特徴づける病像の一つであり, 過剰な細胞外マトリックスの沈着による. マトリックス産生の中心的役割を担うのは星細胞であり, 線維肝においては星細胞は種々のサイトカインにより活性化され, レチノイドを失い, マトリックス産生能・増殖能を獲得する. これらサイトカイン刺激のなかでは, 特にTGF-βとPDGFが重要であり, ともにautocrine, paracrineloopにより, 前者は星細胞のマトリックス産生を, 後者は増殖を刺激する. その他, TNF-α, IGF, IFN, ET-1などのサイトカインが, 各々特徴的な作用を星細胞に及ぼし, 肝線維化に関与する.
著者
奥野 久輝
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學會誌 (ISSN:03694208)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.23-26, 1942 (Released:2009-12-22)
参考文献数
6
被引用文献数
2

明礬溶液250cc(アルミニウム0.1~1.5mg)に炭酸アムモニウム飽和溶液5ccとヘマトキシリン0.1%溶液2~10ccを加へて15分間放置し,後醋酸(1:2) 5ccを加へて酸性にするときは美しい赤紫色を呈する.この溶液を試藥として弗素を含む溶液に加へるときは,弗素の含量に應じて赤紫色が褪色して赤褐,褐,黄等の色を示す.この弗素の作用を利用して甚だ鋭敏な檢出及比色定量法を考案した.アルミニウムとヘマトキシリンの量を適當に撰ぶことにより數種の試藥が得られ更に供試液に對して加へる試藥の量を加減することにより, 0.001mg/50cc以上の弗素の種々な濃度に亘つて比色を行ひ得る.弗素はF′としても,またSiF″としても同様である.普通の陸水中に含有せらるゝ程度の他成分は本比色法の妨害とならない.
著者
藤井 効 石井 裕正 日比 紀文 奥野 府夫 水野 嘉夫 土屋 雅春
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.901-911, 1981-06-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
105

今回,著者らは低血糖発作を反復して死亡した原発性肝癌2症例を経験した.症例1は62歳の男性で,就寝後の発汗と体重減少を呈し,肝腫大と空腹時低血糖を認め,精査の結果,両葉にわたる原発性肝癌と診断され,数ヵ月の経過にて死亡した.症例2は57歳の女性で,肝腫大を主訴に入院精査し,原発性肝癌と診断され,肝腫大の増強と共に低血糖昏睡を反復しつつ比較的早期に死亡した.両症例とも癌組織中のIRI, ILA活性は陰性であった.原発性肝癌に伴う低血糖の本邦報告例は,1979年までに著者らの調べた範囲では112例あったが,成因に関してはまだ定説は認められていない.著者らの経験した2症例は,それぞれMacFadzeanの提唱するtype A, Bの低血糖症に相当すると考えられ,低血糖発生機序について一元的には説明し得ないと考えられた.
著者
奥野 修司 工藤 枝里子 杉岡 辰哉 額賀 翔太 森 拓也 川原 勲
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.F-57, 2019 (Released:2019-08-20)

【目的】 近年,筋の柔軟性向上に対しスタティックストレッチ(SS)に振動刺激(VS)を加えることが効果的であると報告されているが,それらが筋硬度に与える影響については明らかにされていない。本研究の目的は超音波エラストグラフィー(UE)を用いてSSとVSの併用が筋硬度に与える影響を明らかにすることとした。【方法】 対象は,健常成人24名(27.8±5.8歳)とし,対照群(Cont群),SS群,VS群の3群に無作為に振り分けた。標的筋をハムストリングス(Hamst)とし,課題はSS群長座位姿勢にて体幹を前傾するSS,VS群はSSに携帯型振動刺激装置(タカトリ社製)にて40Hzの振動刺激を加えた。介入時間は2分間とした。柔軟性の指標としてFinger Floor Distance(FFD),Aplio300(Canon社製)にてHamst近位,1/2,遠位のUEで筋硬度を介入前後で測定した。各3回測定し,統計解析処理した。【倫理的配慮】 本研究はヘルシンキ宣言に則り,対象者に十分な説明と同意を得て実施した。【結果】 FFDの変化量は,VS群,SS群で有意に増加した(P<0.01)。UEの結果はHamst近位のみSS群,VS群で低値を示し(P<0.01),SS,VS間でVSで低値を示した(P<0.05)。【考察】 ShinoharaらによるとVSはIb求心性線維の活動による脊髄前角細胞の興奮性抑制にてストレッチ効果があると報告している。本研究ではSSに対し,VSを加えることで,それらの効果が加味され,よりストレッチ効果が得られる可能性が示唆された。
著者
三木 祥男 新川 拓也 野原 幹司 奥野 健太郎
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.155-165, 2006-04-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
15

日本語の母音を音響的に検討し, 3つの音響的キューを見出した.第1の音響的キューは, 第2フォルマント周波数と第1フォルマント周波数の比であった.第2の音響的キューは, 第3フォルマント周波数と第2フォルマント周波数の比であった.これらは単一音響管モデルの摂動理論によって理論的に説明される.第3の音響的キューは, 第2フォルマント周波数と第3フォルマント周波数の中間領域での相対的強さと閾値から求められる.このキューは, マスキング現象に関係づけられる.84名の音声から3つの音響的キューの規準を定めた.これらの規準により「母音の話者正規化問題」を解決できた.この方法を障害音の音声分析に適用し, 異常構音を判定するのに有効であることを確認できた.
著者
奥野 達矢 岩田 哲 早川 浩史 宮尾 康太郎 梶口 智弘
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.184-190, 2019 (Released:2019-05-08)
参考文献数
13

血管内大細胞型B細胞リンパ腫(IVLBCL)は稀な節外性B細胞リンパ腫であり,特異的な所見に乏しいため診断に苦慮することが多いが,急速な経過を辿るため診断の遅れは致命的となる。IVLBCLの診断に有用な所見を検索することを目的に,当院で診断されたIVLBCL患者10例について臨床像を検討した。最多の症状は発熱で8例にみられ,次いで呼吸器症状(咳嗽,喀痰,呼吸困難感)が7例にみられた。血液検査所見では血球減少を10/10例,高LDH血症を9/10例に認め,動脈血液ガス分析ではPaO2低下を6/7例に認めた。画像検査所見上は7例に肝脾腫がみられ,9例に胸部異常陰影がみられた。これらの所見は治療により改善した。IVLBCLにおける肺病変の合併頻度はこれまでに報告されている以上に高い可能性が示唆される結果であり,原因不明の呼吸器症状,低酸素血症でもIVLBCLを鑑別に挙げる必要があると考えられる。
著者
江藤 剛治 竹原 幸生 高野 保英 奥野 訓史 藤田 一郎 酒井 信行
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 = Proceedings of JSCE (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
no.796, pp.39-52, 2005-08-15
参考文献数
21
被引用文献数
1 4

本研究はローカル・リモートセンシングによる河川・湖沼・沿岸等の流れ場の精密な画像計測技術の開発を目的としている. 淀川三川合流部の宇治川で試験計測を行った. 国土交通省のヘリコプター「きんき号」を用いて上空300mからビデオカメラで水面を撮影した. トレーサーとして直径15cmの多数の煎餅を撒いた. それにより表面流速分布を求め, ボートに積んだ超音波流速計による計測結果と比較することにより, 実用上の多くの問題点が明らかになった. 例えば, コンピューターによる自動解析では, さざ波に対する光の反射とトレーサー粒子を分別することができなかった. これらの課題に対する解決法を検討した.
著者
奥野 ひろみ 小山 修 安部 一紀 深井 穫博 大野 秀夫 中村 修一
出版者
日本国際保健医療学会
雑誌
国際保健医療 (ISSN:09176543)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.247-256, 2008 (Released:2009-01-28)
参考文献数
24

目的 カトマンズ近郊 A村をフィールドとして、人口、経済力、情報量などの増加が母親の妊娠、出産、育児という保健行動にどのような影響を及ぼしているのか、 2001年と 2006年の実態の比較から考察を行い、都市部近郊地域の母子保健の課題を明らかにする。方法 ネパール国ラリトプール郡 A村で、0~12か月児を持つ母親へ聞き取り調査を実施した。就学歴のある母親とその児群と就学歴のない母親とその児群および全体について、 2001年と 2006年のデータを比較した。結果 2006年に少数民族の母親の増加がみられた。妊婦検診、分娩、児の罹患時に利用した施設は病院が多く、この 5年間でいずれも増加傾向がみられた。また、妊婦検診費用が約 7倍、分娩費用が約 2倍となっていた。児の発育状況では、カウプ指数が 1ポイント上昇した。児の一般的な感染症への疾患の罹患は減少した。考察 海外への出稼ぎなどにより収入の増加した中間層と、地方からの移入者で経済的な課題を持つ層の 2極化がみられた。妊婦や児が病院での健康管理を積極的に受けている理由は、病院に対する安全や安心の意識に加え、中間層の増加による消費文化の意識が考えられた。経済的な課題を持つ層は、ハイリスクグループと捉えることができ、安価で身近な場所でのサポートの必要性が示唆された。育児の課題は、「栄養改善」や「感染症対策」から「栄養のバランス」などに移行していることが示唆された。
著者
天野 正 小柳 俊一 奥野 義隆 金川 千尋
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.94-104, 2010-03-20
参考文献数
9

塩ビ樹脂(poly(vinyl chloride), PVC)製造における最重要の環境対策である,塩ビ樹脂スラリー中の未反応残留モノマーを除去・回収する脱モノマー塔について検討した.環境影響の更なる低減と生産性および塩ビ樹脂の品質(焼け異物の発生防止と樹脂着色性の抑制)の両立を目指して,シーブトレイを用いたカウンターフロー方式の脱モノマー塔を選択し,塔の安定動作条件,脱モノマー性能を評価した.この結果を基に実機のスケールアップを行い,塩ビ樹脂処理量で35 t/hという高効率の脱モノマー塔を設計,稼動させることができた.
著者
浅利 美鈴 西本 早希 安藤 悠太 奥野 真木保 矢野 順也 酒井 伸一
出版者
大学等環境安全協議会
雑誌
環境と安全 (ISSN:18844375)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.1-10, 2021 (Released:2021-06-13)
参考文献数
28

プラスチック製品や廃棄物、マイクロプラスチックが世界的に大きな課題となり、様々な対策が検討されている。日本においても、2019年5月に「プラスチック資源循環戦略」が策定され、3R+Renewableを基本原則とし、意欲的な数値目標を含むマイルストーンを設定した上で、重点戦略に基づく様々な取組が始まっている。しかし、様々な製品への使用に対する消費者の認識は十分とは言えず、意識・行動の把握も緒に就いたところである。 そこで、幅広く、かつ具体的なプラスチック製品を対象に、消費者や企業、行政等が情報共有を進め、今後の対話や議論につなげることのできる消費者意識・行動の可視化・コミュニケーションツールとして「プラ・イド チャート」を考案した。そのチャートの活用可能性を考察することを目的に、必要なデータをアンケート調査等から得て、プロットした。 「いる/いらない」「避けられる/避けられない」という2軸からなるチャートについて消費者アンケート調査結果を元に階層的クラスター分析を行ったところ、6群に分類され、チャートにおいて、それぞれ現在の消費者意識・傾向が分かり、特に短期的な対策に向けた検討に資する知見が得られた。