著者
平島 円 奥野 美咲 高橋 亮 磯部 由香 西成 勝好
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成28年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.50, 2016 (Released:2016-08-28)

【目的】澱粉のpHを13よりも高くすると,加熱せずに糊化(アルカリ糊化)が起こることはよく知られている。しかし,こんにゃくや中華麺などの食品に含まれるアルカリ性物質の濃度はアルカリ糊化を起こすほど高くない。そこで本研究では,食品中でみられる高pHの範囲内で澱粉の糊化および澱粉糊液の粘度に及ぼすpHの影響について検討した。【方法】澱粉にはタピオカ澱粉(松谷ゆり8,松谷化学工業(株))およびコーンスターチ(コーンスターチY,三和澱粉工業(株))を用い,その濃度は3.0,4.0および20wt%とした。また,澱粉の糊化はNa塩の影響を受けることから,アルカリの影響についてのみ検討できるよう,Sørensen緩衝液を用いてNa濃度を一定とし,pHを8.8–13.0に調整した。アルカリ無添加の澱粉をコントロール(pH 6.5付近)とした。20wt%の澱粉を用いてDSC測定を,また,3.0wt%および4.0wt%の澱粉を用いて粘度測定,顕微鏡観察,透過度測定を行い,澱粉の糊化および澱粉糊液の特性について検討した。【結果】pHを8.8–12程度まで高くすると,タピオカ澱粉およびコーンスターチの糊化温度およびエンタルピーは,コントロールよりもわずかに高かった。すなわち,食品で扱われる高pHの範囲内では,いずれの澱粉も糊化は起こりにくくなるとわかった。その影響を受けて,pHを11程度まで高くしたタピオカ澱粉およびコーンスターチ糊液の粘度はコントロールよりも低かった。しかし,pHを12よりも高くすると,糊化温度とエンタルピーはコントロールよりも低く,常温で澱粉粒子内の結晶構造が壊れるとわかった。したがって,pHを12よりも高くすると,澱粉の糊化は起こりやすくなり,澱粉粒子からのアミロースやアミロペクチンの溶出量が多く,糊液の粘度と透過度は高くなるとわかった。  以上の結果より,食品にみられるアルカリ性の程度(pH12以下)では澱粉の糊化が起こりにくくなるとわかった。
著者
大矢 恭久 増崎 貴 時谷 政行 渡辺 英雄 吉田 直亮 波多野 雄治 宮本 光貴 山内 有二 日野 友明 奥野 健二
出版者
プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.90, no.6, pp.319-324, 2014-06

本レビューではプラズマ対向材料として注目されているタングステンの試料を,大型ヘリカル装置(LHD)の15サイクル実験(2011年)および16サイクル実験(2012年)期間中にLHD真空容器内に設置してプラズマ環境に曝露した際の水素同位体滞留能変化を調べた.これにより磁場閉じ込め装置の実機環境下での水素同位体滞留の基礎過程を理解するとともに水素同位体滞留能の変化がLHDにおける水素同位体挙動にどの程度影響を与えるのかを評価した.タングステン試料を約5000~6000ショット程度の水素プラズマ,300~800ショット程度のヘリウムプラズマおよび壁調整のためのグロー放電洗浄に曝した後に真空容器から取り出して観察したところ,表面には炭素堆積層が形成されており,その厚さは,堆積が多い場所の試料(DP試料)で4μm程度,熱負荷の高い場所の試料(HL試料)では100nm程度であった.これらの試料に重水素イオンを照射した後,昇温脱離ガス分析を行ったところ,重水素放出特性は純タングステンとは異なり,主要な放出ピークは800K-900Kに見られた.特にDP試料では900Kに大きな脱離ピークが見られた.純タングステンでは400K-600Kに脱離ピークが存在することから,LHDでプラズマに曝されたタングステン試料の重水素捕捉は純タングステンでの重水素捕捉とは状態が異なることが示唆された.LHDプラズマに134ショットだけ曝した試料の表面を観察すると,堆積層と表面近傍に転位ループが高密度に集積していることから,曝露初期には照射損傷導入と堆積層形成がダイナミックに進行し,これらに重水素を捕捉する能力が高いことが示唆された.
著者
辻本 太郎 奥野 英夫 川本 正純 錦織 綾彦 安雲 和四郎 布谷 晴男 大西 俊造 山口 雄三
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
日本鍼灸治療学会誌 (ISSN:05461367)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.118-128, 1981

Acupuncture needles were inserted and artificially broken in subcutaneous and muscle tissues in rats. Movement of the needles in the body and histo-pathological changes thus induced were studied in this experiment.<br>The needles moved in the body most often within 2 weeks of the beginning of experiments. The movement was observed more frequently in the needles buried in the foreleg than in other parts of the body. It was supposed that the movement was related to the motility of this part. The thin or short gold needles moved least of all. In contrast, stainless steel needles moved more actively, sometimes being found in the internal organs, such as the liver, testicles, heart and spermatic duct. Most of the needles remaining in the body were encapsulated in connective tissues after several weeks.<br>General implications of the buried needles for a organism were discussed from the histopathological point of view.
著者
奥野 哲也 久嶋 菜摘 坂根 裕 竹林 洋一
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.3I1OS14a6, 2010

<p>テニスと格闘技のドメインから,物理世界(ゲーム世界)と思考世界をシミュレータで表現することで,新たなコモンセンス知抽出手法について提案する. </p>
著者
成瀬 光栄 黒田 昌志 伊藤 剛 奥野 博 島津 章 田辺 晶代 難波 多挙 立木 美香 中尾 佳奈子 玉那覇 民子 革嶋 幸子 臼井 健 田上 哲也 広川 侑奨
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.94-100, 2012

原発性アルドステロン症(PA)は治療抵抗性高血圧や標的臓器障害の合併頻度が高い一方,適切な治療により治癒可能であることから,高血圧の日常診療で常に考慮すべき内分泌疾患である。2009年の米国内分泌学会に続き,わが国でも日本高血圧学会,日本内分泌学会から診療ガイドラインが発表された。スクリーニング(case detection),機能確認検査(confirmatory testing),病型・局在診断(subtype testing),治療選択が診療の基本ステップで,PA診断の啓発と医療の標準化の点で大きく貢献したといえる。しかしながら,同時に,診断に用いる指標,検査方法,判定基準などの詳細は十分には標準化されておらず,専門医,施設,国ごとで異なっているのが実情で,治療法選択の観点から,PAの診断,特に非典型例での診断の精度は今後,十分に検証される必要がある。また,実施が必要な機能確認検査の数や局在に必須とされる副腎静脈サンプリングは,common diseaseの診療水準向上における障壁となっており,今後,簡素化と非侵襲化が必須である。PA診療においては,ガイドラインの特色と課題を十分に認識し,個々の患者で適切な診断,治療を選択する必要がある。
著者
原田 勇彦 加我 君孝 水野 正浩 奥野 妙子 飯沼 寿孝 堀口 利之 船井 洋光 井上 憲文 安倍 治彦 大西 信治郎 牛嶋 達次郎 宮川 晃一 伊藤 修 佐久間 信行 北原 伸郎 土田 みね子 飯塚 啓介 小林 武夫 杉本 正弘 佐藤 恒正 岩村 忍 矢野 純 山岨 達也 広田 佳治 仙波 哲雄 横小路 雅文 鈴木 光也
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.380-387, 1994-06-15 (Released:2011-08-10)
参考文献数
15

鼓膜炎, 慢性化膿性中耳炎, 真珠腫性中耳炎の感染時, 中耳術後の再感染症例を対象として, オフロキサシン (OFLX) 耳用液の有用性と耳浴時間に関する臨床的研究を行った。研究参加施設を無作為に2群に分け, 1群では1回6-10滴, 1日2回, 7日間以上の点耳を行い, 毎回点耳後約10分間の耳浴を行うよう, II群では同様の点耳後に2-3分間の耳浴を行うよう患者に指示した。総投与症例は258例で, 全体では83.3%の改善率, 86.7%の菌消失率 (143例中) が得られた。副作用は1例もなく, 全体としては82.9%の有用率であった。統計学的検定により1群とII群の比較を行ったところ, すべての項目で両群間に有意の差はみられなかった。以上の結果から, OFLX耳用液は鼓膜, 中耳の炎症性疾患に対して極めて有用かつ安全なものであり, その点耳後の耳浴時間は2-3分でも十分な効果が得られるものと考えられる。
著者
向井 千夏 奥野 誠
出版者
日本哺乳動物卵子学会
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.176-182, 2010 (Released:2011-07-26)

体内受精を行う哺乳類では、精子鞭毛は射精にともない運動を活性化し、雌生殖器官内での受精能獲得時には超活性化と呼ばれる運動を示す。精子は卵に出会うまで、鞭毛運動を維持するためにATPが必須であるとともに、活性化や超活性化の運動変化を引き起こす細胞内シグナル伝達においても、cAMPの生成やタンパク質リン酸化にATPが必要となる。ATPの供給経路としては解糖系と呼吸系の2つがあげられるが、従来、精子の形態やその生産効率からミトコンドリアによる呼吸系が主であると考えられてきた。しかし、近年の研究成果により、鞭毛主部における解糖系によるATP供給が主要な働きをしていることが明らかとなってきた。本稿では、マウスでの知見を中心に、精子の鞭毛運動とシグナル伝達に関わるATP供給について解説する。
著者
谷合 大 奥野 祥二 内田 智史
出版者
一般社団法人 情報システム学会
雑誌
情報システム学会 全国大会論文集 第13回全国大会・研究発表大会論文集 (ISSN:24339318)
巻号頁・発行日
pp.a12, 2017 (Released:2019-07-17)

一人の読者の理解力には波があり、一冊の書籍の内容に対しても、その読者が理解し易い部分や理解し難い部分がある事が考えられる。そこで、読者が必要性に合わせ文章の難易度を各節毎に選択し変更できる、新たな形態の電子書籍を我々は提案している。これは、書籍を小分けにし、難易度分けする事で、少しでも書籍の難易度の波を、読者の理解度の波に対して近付けようという試みである。 しかし、この書籍の執筆には、難易度選択のユーザインタフェース設計や小分けした文章の管理等、通常の書籍の執筆よりも大きな負担が、執筆者に生じると予想される。そこで、我々はこの難易度が変化する電子書籍の執筆補助の為の専用エディタの開発を行っており、そのエディタに必要な機能について検証している。
著者
佐藤 宏之 鈴木 保宏 奥野 員敏 平野 博之 井辺 時雄
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.13-19, 2001-03-01 (Released:2012-01-20)
参考文献数
21
被引用文献数
9 11

イネ (Oryza sativa L..) 品種コシヒカリの受精卵に, メチルニトロソウレア (MNU) 突然変異原処理を行って育成された品種ミルキークイーンの低アミロース性の遺伝子分析を行った. ミルキークイーンとその野生型であるコシヒカリを正逆交雑したF1種子のアミロース含量は両親の中間値を示したが, ミルキークイーン/コシヒカリ由来のF1種子よりも, コシヒカリ/ミルキークイーン由来F1種子の方が高いアミロース含量を示した. 従って, ミルキークイーンの低アミロース性を支配する遺伝子には量的効果があることが分かった. また, ミルキークイーン/コシヒカリ由来のF2集団のアミロース含量は, コシヒカリ型とミルキークイーン型が3: 1に分離し, さらにミルキークイーン/コシヒカリ//ミルキークイーン由来の戻し交雑集団のアミロース含量が, 野生型と低アミロース型が1: 1に分離したことから, ミルキークイーンの低アミロース性を支配する遺伝子は単因子劣性であると考えられた. 次に, イネのアミロース合成に関与する既知の遺伝子, wx並びにdu 1, 2, 3, 4及び5との対立性を検定した結果, ミルキークイーンにおいて突然変異を生じた遺伝子は, wxの対立遺伝子であることが示唆された.
著者
安藤 匠吾 奥野 正幸 奥寺 浩樹 水上 知行 荒砂 茜 阿藤 敏行
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

Shock recovery experiments were carried out on two plagioclases (labradorites) that include exsolution lamellae (An<sub>55</sub>Ab<sub>42</sub>Or<sub>3</sub>) and that include no exsolution lamellae (An<sub>64</sub>Ab<sub>34</sub>Or<sub>2</sub>) up to 36.8 GPa. Recovered samples were analyzed by powder-X-ray diffraction measurements (p-XRD), infrared (IR) and Raman spectroscopy. Obtained results may indicate that exsolution lamellae does not affect on vitrification by shock compression.
著者
山本 幸代 須貝 哲郎 奥野 富起子
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会
雑誌
皮膚 (ISSN:00181390)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.305-308, 1979

リール黒皮症40例, うち原因不明5例と肝斑およびその他の顔面色素沈着症34例の計74例を対象としてY-Gテストを施行した。原因の判明したリール黒皮症群は安定積極型が多く, また比較的心配症でも神経質でもないためかえって, 顔面が黒くなるまで放置した無神経さがあるといえる。対照群はむしろ性格的に問題が多かったが, これはわれわれの外来での印象とよく一致していた。例数は少ないが原因不明の黒皮症患者の性格がやや特異的であった。
著者
奥野 佐矢子
出版者
教育哲学会
雑誌
教育哲学研究 (ISSN:03873153)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.93, pp.85-101, 2006-05-10 (Released:2010-05-07)
参考文献数
38

It is a specific conceptualization of the twentieth century, the century of the linguistic turn, that language is in general 'performative'. Building from Austinian notion of performativity and Althusseruan notion of interpellation, this essay explores the production/construction of the subjects based upon the main work of Judith Butler.Butler begins with her contention that as linguistic beings, our existence is unavoidably dependent on language. For her, the subject is constructed through the process of subjection; it can be explained as the simultaneous process of becoming the subject and being compelled to participate in reproducing dominant discourse. Butler's understanding that the status of the subject is thus constituted and her insistence that the compelled reiteration of conventions is the essence of performativity help us clarify how the subject is unwittingly complicit in sustaining hegemonic social structures.To deconstruct this discursive and social formation involving the subject, it is necessary to focus on the very process of the construction of the subject. As Butler explains the subject is subjected to a norm while being the agent of its use. Accordingly if the formation of the subject is the repeated inculcation of the norm, it will be possible to repeat that norm in unexpected ways. The norms of performative identity resemble the sign, and they are vulnerable to the recitation of the same and semantic excesses. The subject performatively and linguistically constituted is not ultimately defined by the interpellative call; neither is the subject fully determined or radically free from the deployed discourse. Steering a careful middle course between voluntarism and determinism, Butler distances herself from the strategic deployment of the category of the “essential” identity in political practices. What she offers instead is rejection and resignification in her alternative political mode.Crucially, the deconstruction of the subject is by no means equivalent to its destruction as Butler argues. In seeking out the instabilities of language and of the constitutive terms of identity we are guided to a new sense of ethics, with the limit and inevitable opacity of the subject that always fails to define itself.
著者
白銀 夏樹 村田 美穂 久保田 健一郎 奥野 佐矢子 小野 文生
出版者
教育哲学会
雑誌
教育哲学研究 (ISSN:03873153)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.93, pp.145-150, 2006-05-10 (Released:2010-01-22)
参考文献数
9

現代の人間形成論においては、「美」「倫理」という言葉によって、人間形成をめぐる現代的状況を解明しようとする議論や人間形成論の可能性を提起しようとする議論が少なからず見受けられる。だが「美」と「倫理」の概念の接点をさぐりながら人間形成論の現代的射程を探る共同研究の試みは、いまだ豊かに展開されているとはいいがたい。教育哲学会第四八回大会 (香川大学) において「美」と「倫理」の概念に関心を寄せる若手研究者が集まり、「美的・倫理的人間形成論の現在性をめぐって」と題したラウンドテーブルを開催した。ドイツ語圏の美的人間形成論 (白銀・久保田) 、英語圏の道徳や倫理を扱う人間形成論 (奥野・村田) 、ドイツ教育思想史における「美」「倫理」概念 (小野) といった各々の関心から、現代の「美」「倫理」概念の人間形成論的射程を議論した。以下はラウンドテーブル当日の提案者四名 (村田、久保田、奥野、白銀) と指定討論者 (小野) による報告である。本論の最終的な文責は企画者 (白銀) が負うが、それぞれの項目は担当者が執筆したものである。
著者
清水 哲哉 中津 亨 宮入 一夫 奥野 智旦 加藤 博章
出版者
日本応用糖質科学会
雑誌
Journal of Applied Glycoscience (ISSN:13447882)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.161-167, 2004 (Released:2008-03-24)
参考文献数
28
被引用文献数
1 2

エンドポリガラクツロナーゼ(EndoPG)は,inverting型の加水分解酵素であり,その触媒機構の詳細は不明であった。本研究では,リンゴ銀葉病菌(Stereum purpureum)の病徴発現蛋白として単離されたEndoPG Iを用いて触媒機構の解明を目的としてX線結晶構造解析を行った。イオンスプレー型質量分析装置を用いたEndoPG Iの糖鎖修飾の分析結果からEndoPG Iの結晶化には,3種のアイソフォーム,EndoPG Ia,Ib,Icのうち糖鎖の最も少ないEndoPG IaをEndoHで糖鎖切断した脱糖鎖型EndoPG Iaを用いた。この脱糖鎖型EndoPG IaをPEG 4000を沈殿剤に用いたハンギングドロップ蒸気拡散法により結晶化した。得られた結晶は,空間群P1に属し,格子定数はa=37.26 Å,b=46.34 Å,c=52.05 Å,α=67.17°,β=72.44°,γ=68.90°であった。この結晶を用いて大型放射光施設SPring-8によりX線回折実験を行った。結晶構造の決定は,多波長異常分散法で行った。SPring-8で収集したデータを用いて初期位相を決定し,最終的に0.96 Å分解能でR値11.4%,Rfree値14.0%という超高分解能のEndoPG Iの構造モデルを得た。得られたEndoPG Iの構造は,10回の完全ターンの平行β-へリックス構造であった。さらに反応生成物であるガラクツロン酸(GalA)を1分子を含むbinary複合体と2分子含むternary複合体の結晶構造を1.00 Åおよび1.15 Å分解能で決定した。binary複合体において1分子のピラノース型(GalpA)の結合がみられた。GalpAの結合位置は,活性残基と推定されているAsp153,Asp173,Asp174の還元末端側にあたることから,GalpAは+1サブサイトに結合していると考えられた。一方,ternary複合体においては,GalpAの他に,フラノース型のGalfAの結合がみられた。GalfAの結合位置は,活性残基の非還元末端側にあたる-1サブサイトと決定された。+1サブサイトでは,三つの塩基性残基,His195,Arg226,Lys228がGalpAのカルボン酸の結合に関与していた。一方,-1サブサイトでは,特異なcis型のペプチド結合がGalfAのカルボン酸の認識に関わっていた。そこで,二つのガラクツロン酸の結合状態を基に,基質の-1,+1結合した2量体部分のモデルを構築し,EndoPG Iの反応機構を検討した。まず,Asp173は切断される基質モデルのグリコシド結合と直接水素結合しうる位置にあった。したがって,Asp173はグリコシド結合にプロトンを供給する一般酸触媒残基と確認された。一方,Asp153とAsp174は,基質のアノマー炭素を求核攻撃すると考えられる水分子と水素結合していた。このことから,Asp153あるいはAsp174が水からプロトンを引き抜き活性化する一般塩基触媒残基と予想された。
著者
奥野 信一 畑田 耕佑 石川 和彦
出版者
福井大学教育地域科学部附属教育実践総合センター
雑誌
福井大学教育実践研究 (ISSN:13427261)
巻号頁・発行日
no.39, pp.21-30, 2014

教師が児童/生徒に,電動糸鋸盤による鋸断作業を指導する際の基礎資料を得るため,材料送り速度 を変化させそれに伴う鋸断面の粗さを光学計測器を用いて計測した。また,材料の鋸断面粗さを各番数 の紙やすりと比較する官能検査を実施した。その結果,板材を繊維方向に直角/平行に切断する場合, 送り速度を遅くすることによって,鋸断面粗さが少なくなることが明らかになった。官能検査の結果も, 計測結果と同期することがわかった。
著者
足立 吉隆 新川田 圭介 奥野 晃弘 弘川 奨悟 田口 茂樹 定松 直
出版者
一般社団法人 日本鉄鋼協会
雑誌
鉄と鋼 (ISSN:00211575)
巻号頁・発行日
vol.102, no.1, pp.47-55, 2016 (Released:2015-12-31)
参考文献数
19
被引用文献数
6 6

Prediction of a stress-strain curve of ferrite-martensite DP steels was studied by a combined technique of Bayesian inference and artificial neural network. To screen a descriptor to be used for neural network analysis, material genomes such as volume fraction, micro-hardness, handle, and void of martensite phase, and micro-hardness of ferrite phase were examined by Bayesian inference. In a case of small data set, a machine learning method to predict mechanical properties reliably was proposed.