著者
入江 和美 飯野 ゆき子 水谷 俊美 宮澤 哲夫 寺島 邦男
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.89, no.10, pp.1201-1206, 1996-10-01 (Released:2011-11-04)
参考文献数
16

It is known that ear piercing can cause various complications such as infection, allergic contact dermatitis, granulation, dermoid cyst formation buried earring and so on. We describe a case of earlobe keloid caused by ear piercing. The patient, an 18-year-old female, visited our hospital complaining of a large tumor hanging from the left earlobe. The tumor was excised and a histological examination revealed keloid tissue with subcutaneous clusters of lymphocytes.An immunohistochemical study of the keloid tissue was performed using a polyclonal antibody against human IgG and IgE. Numerous IgE positive cells, presumably mast cells, were found below the epidermis, suggesting that the keloid was still active and still sensitized by some stimulation. The inflammatory response seemed to have contributed to formation of the large keloid.
著者
宮澤 菜那
出版者
富山大学比較文学会
雑誌
富大比較文学
巻号頁・発行日
vol.9, pp.172-199, 2017-03-10

森見登美彦の『夜は短し歩けよ乙女』は、『小説 野生時代』(角川書店)に、「夜は短し歩けよ乙女」(二〇〇五年九月)、「深海魚たち」(二〇〇六年三月)、「御都合主義者かく語りき」(二〇〇六年十月)、「魔風邪恋風邪」(二〇〇六年十一月)の全四回の連載を経て、二〇〇六年十一月に刊行された長編小説である。この作品は、二〇〇七年四月に本屋大賞第二位に選ばれ、同年五月に第二十回山本周五郎賞を受賞、そして七月に第一三七回直木賞候補作に選ばれるなど、世間から注目を集めた、森見登美彦の出世作と言っていい作品でもある。『夜は短し歩けよ乙女』は現代風の大学生の恋愛模様を軸に展開され、破天荒な人物たちが数多く登場し、奇怪な出来事が次々と起こる、一見すると荒唐無稽な物語である。しかしながら、森見登美彦独特の文体によって綴られる物語は破綻することなく、一定の調和を保ちながら成立している。読み手をその世界に引きずり込んでいくような不思議な力があり、そこが魅力の作品である。この作品には、第二章「深海魚たち」において重要なアイテムとして登場する『ラ・タ・タ・タム――ちいさな機関車のふしぎな物語』をはじめとして、合わせて三十以上もの文学作品が固有名詞として用いられている。また、固有名詞として登場しているだけでなく、他作品の台詞の引用なども多く見られる。本稿では、こうしたプレテクストに着目し、森見登美彦の『夜は短し歩けよ乙女』について考察していく。
著者
宮澤 健一
出版者
日本学士院
雑誌
日本學士院紀要 (ISSN:03880036)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.13-37, 2001 (Released:2007-06-22)

Will it be possible to achieve a convergence of agreement on social order? How can“efficiency”and“fairness”in the paradigm for evaluating system operation be harmonized and coordinated? These questions are explored on both the logical level of principle and the actual level of reality. By juxtaposing the two, the distance between principle and reality is sought and the meaning of that distance considered.
著者
宮澤 仁
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.69-85, 2010 (Released:2010-04-06)
参考文献数
26
被引用文献数
4 3

本研究では,介護保険の開始以降,民間事業者により急増をみてきた有料老人ホームの立地特性を全国と都市圏の二つのスケールで分析し,供給の拡大要因について地理学的観点から考察した.その結果,近年,有料老人ホームは大都市を中心に供給され,特に東京大都市圏には全国定員の約4割が集中していることが明らかになった.そこで,東京大都市圏を事例地域に分析したところ,有料老人ホームは既成市街地に立地する傾向とともに,供給量と入居費用には大きな地域差が確認された.また,供給量とニーズの関係は弱く,むしろニーズの大きな地域で入居費用が高いことや,企業のリストラにより閉鎖された社員寮等を転用した施設が多数みられ,その多寡が地域的な供給量を左右したことが明らかになった.以上の結果から,(1)有料老人ホームの供給は,不動産流動の活性化といった経済動向の影響を受けやすいこと,(2)有料老人ホームは,近年の急増によりはからずも行き場のない高齢者の受け皿となっているが,入居費用には大きな地域差がある,といった問題点が指摘される.特に後者の問題に関しては,生活困窮高齢者の周縁化を社会的-地理的に強化しかねないことが危惧される.
著者
反町 百花 小川 孔幸 松本 彬 惣宇利 正善 小板橋 るみ子 梶田 樹矢 明石 直樹 内藤 千晶 石川 哲也 小林 宣彦 宮澤 悠里 一瀬 白帝 半田 寛
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.60-65, 2023 (Released:2023-02-11)
参考文献数
15

症例は86歳男性。COVID-19に対するBNT162b2 mRNA COVID-19ワクチン2回目接種の35日後に左下肢,左上肢の腫脹と疼痛が出現し,近医を受診した。APTT延長を認め,当科に紹介緊急入院となり,FVIII: C 1.7%,FVIII inhibitor 152.3 BU/ml,ELISA法でFVIII結合抗体を検出し,後天性血友病A(AHA)と診断した。高齢でADLも低下していたため感染リスクの懸念から,PSL 0.5 mg/kg/日で治療を開始した。入院期間中に筋肉内出血,膝関節出血などの出血事象を認めたが,都度バイパス止血製剤(rFVIIa,FVIIa/FX)による止血治療を実施し,良好な止血効果を得た。PSL治療で第69病日に凝固能的完全寛解(cCR)を達成したが,PSL漸減とともにFVIII活性が低下し,3回目のワクチン接種後に腹直筋血腫を伴うAHAの再燃を認めた。本症例は,日本人初のCOVID-19ワクチン接種後のAHA報告例で,かつ抗FVIII結合抗体の存在が証明された世界初の症例である。
著者
宮澤 栄司
出版者
The Society for Near Eastern Studies in Japan
雑誌
オリエント (ISSN:00305219)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.128-155, 2007

Circassian place-names in the district of Uzunyayla (Kayseri, Turkey) are to be analysed in terms of an anthropological approach to landscape. Circassians were forced to migrate to Anatolia by Russia's military conquest of the North Caucasus in the mid-19<sup>th</sup> century. Uzunyayla, with 73 Circassian villages, is one of the principal locations where these refugees' eventually settled down and strove to reconstruct their homeland.<br>A landscape emerges at points where geography and human intentions meet. Place-names are the medium by which people inscribe history on natural environments and read history from them. S. Küchler (1993)'s "landscape <i>of</i> memory" is a landscape composed of a number of landmarks that record human actions. At the same time, she proposes to work on "landscape <i>as</i> memory", i. e. a process by which history is re-negotiated on each occasion that events associated with these landmarks are recalled.<br>In Uzunyayla, a "landscape <i>of</i> memory" can be observed in the use of Circassian place-names that make a connection between the Circassians' homeland and their new "home". Most Circassian villages are named after families known as "lords". This practice tells a story that Circassians followed powerful leaders who struggled against each other. Such a landscape is part of Circassians' efforts to maintain an ethnic identity and territory in the face of the state's nationalist policy.<br>The fact that the great majority of these village names are contested means that the process of making a "home" is yet to be completed. Villages are given different names in a competition for prestige, and different village names are often supported by different types of resources. The history of the Circassians' settling in Uzunyayla is constantly re-shaped as different village names accompanying different foundation stories are set off one against another. In this "landscape <i>as</i> memory", the production of history is open to dialogue.
著者
石岡 恒憲 峯 恒憲 宮澤 芳光 須鎗 弘樹
出版者
独立行政法人大学入試センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

センター試験など大学入試試験レベルの短答式記述試験の自動採点および人間による採点を支援する実用可能なシステムを試作・実装する。採点は設問ごとに作題者が用意した「模範解答」と「採点基準」に従いシステムがある程度の精度をもった採点計算(自動採点)を行うことを基本とし、その結果を人間が確認・修正できるものとする。このシステムの最大の特徴は「(予め用意された)模範解答」と「(被験者の実際の)記述解答」との意味的同一性や含意性の判定に採点済みの教師データを使わないことにある。予め別に用意された新聞や教科書、Wikipediaなど別のコーパスなどから自動構築した言語モデルによって判定を行う。
著者
中村 緑佐 本田 亘 宮澤 里紗 中村 文香 深沢 陽平 原田 夏樹 中村 高秋
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.285-289, 2009-04-30 (Released:2010-03-01)
参考文献数
14
被引用文献数
1

症例は53歳,女性.高校生時に多毛,低身長および生理不順にて先天性副腎過形成(CYP21A2異常症)と診断され以後,ステロイドの内服治療が,また42歳時より2型糖尿病の診断のもとにメトホルミン1,000 mg(朝,夕)の内服治療が開始された.2008年4月下旬より骨粗鬆症による腰痛のためNSAIDs (loxoprofen sodium) 180 mg/日を数週間にわたり内服し,その後より悪心および頻回の嘔吐の症状が出現し,2日後に痙攣発作にて救急搬送となった.入院時JCS; III-200で血糖値23 mg/dl, pH; 6.955, Lac; 106 mg/dl, Cr; 6.97 mg/dl, BUN; 103.7 mg/dl, ACTH; 16.7 pg/ml, コルチゾール24.9 μg/dlで,重症低血糖,乳酸アシドーシスおよび急性腎不全を認めたが副腎不全は認めなかった.入院前より肝機能および腎機能は正常であり,入院時にもalanine aminotransferase (ALT)およびaspartate aminotransferase (AST)値はそれぞれ20, 12 IU/mlと正常で,飲酒の既往歴はなかった.血中乳酸値は輸液管理のみにて改善し第5病日にて正常に回復した.入院時より自然排尿を2,000 ml以上認め,第4病日より血中Cr, BUNは改善傾向を示し,輸液管理のみにて第7病日にCr; 0.64 mg/dl, BUN; 18.2 mg/dlと正常に回復した.本患者は,メトホルミンとloxoprofenの併用により腎機能が悪化し,メトホルミンを排泄できず体内に蓄積した結果,重症低血糖および乳酸アシドーシスを発症したものと考えられた.ステロイド剤を長期にわたり内服している2型糖尿病患者では,ビグアナイド剤使用時の併用薬剤にも注意を喚起する必要があると考えられた.
著者
畠山 輝雄 中村 努 宮澤 仁
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.486-510, 2018 (Released:2018-11-28)
参考文献数
19
被引用文献数
5 9

本稿は,ローカル・ガバナンスの視点から,地域包括ケアシステムに空間的・地域的なバリエーションをもたらす要因を考察するとともに,バリエーションごとの特徴と課題を抽出した.地域包括ケアシステムにバリエーションが生じる要因の一つには,自治体の人口規模の差異があり,それは地域包括支援センターの設置ならびに日常生活圏域の画定に関する基準人口によるものであるとわかった.小規模自治体では,単一の日常生活圏域における地域ケア会議を中心に集権型のローカル・ガバナンスとなる一方で,人口規模が大きくなるほど自治体全域と日常生活圏域の重層的なローカル・ガバナンスによる地域包括ケアシステムが構築される傾向にある.後者は,地域包括支援センターが日常生活圏域単位に複数配置される自治体において,各地域の特性を考慮した分権型のローカル・ガバナンスを統括するための自治体全域でのガバナンスが重視された結果である.
著者
宮澤 楓 島田 将喜
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.153-162, 2017 (Released:2017-11-16)
参考文献数
33
被引用文献数
1

ヤンバルクイナによる台石を使用したカタツムリの殻の割り方と殻の割れ方の対応関係を,行動の直接観察と殻の割れ方の分類によって明らかにした.沖縄県国頭村にて,センサーカメラをもちいた行動観察と,カタツムリの殻の採取を行った.動画内で識別された4個体すべてから地上に露出した石に,カタツムリの殻口を嘴で咥え保定し繰り返し叩きつけて殻の反対側を破壊し中身を食べるというパタンが観察された.台石使用行動はヤンバルクイナにとって一般的で定型化した採餌行動と考えられる.採取されたカタツムリの殻の割れ方は4つのタイプに分類されたが,うち大多数を占めるType 1と,Type 2はヤンバルクイナによる食痕の可能性が高いことが示唆された.クイナ科の系統でこの台石使用行動が直接的証拠により確認されたのは,ヤンバルクイナが最初である.台石使用行動は,丸飲みは不可能だが常時利用可能性の高い大型のカタツムリを採食可能にするという機能をもつ.
著者
井上 達志 宮澤 智恵
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.13, no.Suppl, pp.Suppl_35-Suppl_36, 2010-07-10 (Released:2011-04-21)
参考文献数
1

国内で流通している穀類を主な原料としたドッグフード32銘柄を対象にHPLC-タンデム質量計 (LC/MS/MS) を用いてアフラトキシン類 (AFL) について分析を行った。その結果14銘柄にAFLが少量検出された。同じくHPLCによる分析では 5 銘柄に検出され、最も多く含まれていた銘柄では、LC/MS/MS 法と比べ最大 2 倍程度の分析値の差がみられた。市販のAFL分析簡易キットでは全ての銘柄が陽性となり、LC/MS/MS 法と比べ30~400倍の高濃度で検出された。
著者
星野 悦子 宮澤 史穂
出版者
日本音楽知覚認知学会
雑誌
音楽知覚認知研究 (ISSN:1342856X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.11-31, 2016 (Released:2022-01-11)
参考文献数
98

音楽と言語は人間のもつユニークな特性であり,多くの哲学者,思想家,生物学者,心理学者や他の科学者たちが,両者の比較および関係について考察してきた。興味深いことに,さまざまな研究技法の発達に伴い,ここ 20 年ほどの間に音楽と言語の比較研究への関心が復活した。本稿では,まず音楽と言語に焦点を当てた最近の心理学的および進化や発達の研究知見について述べ,次に音楽と言語に関する認知処理モデルとその着想源となった神経科学的知見にも触れる。おわりに今後の展望について考察する。
著者
宮澤 武
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
巻号頁・発行日
pp.26-02, (Released:2018-01-30)
参考文献数
38

競争を基本原理とするスポーツにおいて、勝利することに多様な価値が付随し、「負け」はマイナスの側面しか持ち合わせないようにみえる。しかしながら、新聞等のメディアによって「負け」はプラスの価値を付与され取り上げられる。こうした矛盾ともいえる事態を解明するため、新聞記事が「負け」をどのように取り上げているかを分析し、なぜ「負け」にプラスの価値が付与されるのかを明らかにすることが本稿の目的である。 本稿において分析対象とした記事は、戦後から現在(1946~2016年)までの読売新聞東京朝刊から、スポーツにおける「負け」を取り上げたものとした。国立国会図書館の新聞記事索引データベース「ヨミダス歴史館」と「日経テレコン21」を利用し、「負け」を見出し語に検索し、4,407件の記事を得た。スポーツにおける「負け」は批判すべきものか、もしくは称賛すべきものか、そして新聞記事において「負け」が批判および称賛される際、どのような側面に価値が見出され、語られているかに注目し、ドキュメント分析を用いて分析を進めた。 分析の結果、闘志や根性などの“精神論”を「負け」と結びつける状況が読み取れた。こうした状況は、「負け」を捉える記事と「負け」を称賛する記事の両方にみられた。また、努力や鍛錬などの用語に象徴される「厳しい練習」を称えることで、「負け」をポジティブに語る状況が浮き彫りになった。こうした価値観の背景には何があるのかを、日本人のスポーツ観の特徴と関連づけて考察した。新聞記事においてそうした価値観を継続的に語ることには(a)日本人の伝統的アイデンティティを再生産する機能と、(b)競争社会において生産された敗者を救済する機能の2つがあるのではないかと考えられる。
著者
宮澤 僚 礒 良崇 田代 尚範 鈴木 洋 林 宗貴 宮川 哲夫
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.93-98, 2021-03-01 (Released:2021-03-01)
参考文献数
19

【目的】生存退院した48時間以上の人工呼吸器装着患者における退院時自立歩行獲得の関連因子を明らかにする。【方法】2016年6月から2017年10月までの期間に,当院に入院し,生存退院した48時間以上の人工呼吸器装着患者81名を対象とした。退院時自立歩行獲得に関連する因子をICU退室時に診療録から得られた情報で後方視的に検討した。【結果】自立群と非自立群では,年齢,functional comorbidity index(FCI),ICU退室時のせん妄とfunctional status score for the ICU(FSS-ICU)に有意差を認めた(P<0.05)。多重ロジスティック回帰分析の結果,ICU退室時FSS-ICU(OR:1.21,95%CI:1.09〜1.34,P<0.01)とFCI(OR:0.62,95%CI:0.40〜0.95,P=0.02)が自立歩行獲得の独立した関連因子であった。【結論】生存退院した長期人工呼吸器装着患者の自立歩行獲得には,ICU入室時の疾病の重症度よりも,ICU退室時の基本動作能力と機能的併存症が関連していた。