著者
貝原 俊樹 北村 健 北條 林太郎 青山 祐也 小宮山 浩大 手島 保 西﨑 光弘 櫻田 春水 平岡 昌和 深水 誠二 吉田 精孝 河村 岩成 中田 晃裕 荒井 研 森山 優一 宮澤 聡 麻喜 幹博
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.S1_50-S1_54, 2015

<p> 高血圧症, 骨粗鬆症の既往がある83歳女性. 入院10日程前から食思不振があった. 入院4日前から食思不振が増悪し, ふらつきや1分程続く胸部圧迫感が出現した. 入院当日から動悸が出現したため, 当院を受診した. 心電図は洞調律で多形性心室性期外収縮が頻発し, 580msと著明なQT延長を認めた. 胸部レントゲンでは軽度心拡大を認めた. 採血では低カリウム血症 (2.3mEq/L), 低マグネシウム血症 (1.6mg/dL) を認めた. 検査終了後に突然強直性痙攣が出現し, 心肺停止となった. 無脈性多形性心室頻拍が確認され, 除細動150J 1回で洞調律に復帰した. 入院後は電解質を補正し, QT延長はやや遷延したものの, 心室性不整脈は著減した. また, 経過中たこつぼ様の壁運動を伴ったが, 第4病日で意識はほぼ清明にまで改善した. しかし第13病日に頭蓋内出血を発症し, 急変, 死亡退院となった. QT延長, 多形性心室頻拍に低カリウム血症, 低マグネシウム血症を伴った症例の報告は少ない. 本症例に関して, 低マグネシウム血症と心室性不整脈の観点から文献的考察を混じえ, 考察する.</p>
著者
宮澤 節生
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.7-35, 2013-10-15 (Released:2017-03-31)
被引用文献数
1

本稿の課題は,2003年以後のデータによって,(1)いくつかの外国について犯罪発生率と厳罰化の動向を検討し,(2)外国の研究者が2003年以後の日本の状況をどのように理解しているかを検討し,さらに(3)日本の刑事政策の近年の状況を私なりに検討することにある.(1)については,(1)主要犯罪全体についても,殺人事犯についても,フランス,ドイツ,イギリス,アメリカという主要先進国において発生率が共通に低下していること,(2)犯罪発生率低下の要因はアメリカについて最もよく検討されており,「警察力の増強」と「厳罰化による刑務所人口の増加」が主要原因として指摘されているが,カナダなど犯罪発生率が安定的に低い国々にはそのような要因が存在しないので,明確な結論は得られていないこと,(3)厳罰化政策がとられた国々では政策転換をめざす運動が展開されているが,その影響はまだ見られないことなどを明らかにした.(2)については,2000年以前の日本は犯罪発生率が例外的に低い先進国として関心を集めていたが,その後の発生率の増減に対しては研究関心が見られず,存在するのは,近年の厳罰化をポピュリズム刑事政策として理解する立場に対する批判であることを示し,それに対して反批判を行った.(3)については,新聞論調,犯罪被害者団体の活動,立法・法改正,死刑判決・死刑執行などの状況を検討して,いまなおポピュリズム刑事政策と性格付けうることを主張し,ありうる批判に対して反批判を試みた.
著者
宮澤 紀子 栗原 昭一 浜屋 忠生 瀬山 智子 吉本 博明 江口 文陽
出版者
日本きのこ学会
雑誌
日本きのこ学会誌 (ISSN:13487388)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.30-35, 2013-04-30 (Released:2018-03-15)
参考文献数
22
被引用文献数
1

キトサンは,きのこの細胞壁や甲殻類の外殻成分に含まれるキチンを脱アセチル化して得られる多糖類である.本研究では,エノキタケ由来のキトサン(キノコキトサン)の脂質異常症の改善効果および肥満抑制効果について肥満モデル動物であるZucker-fatty Ratを用いて検討した.キノコキトサンを与えた群では,体重の顕著な減少,肝臓への脂肪沈着の減少,糞便中の脂質含有率の増加を確認した.さらに血液生化学検査では,中性脂肪,総コレステロール,LDL-コレステロールの明らかな低下が認められた.キノコキトサンは,腸管からの脂肪吸収の抑制,脂肪細胞での脂肪分解を介した血中脂質の改善および肝臓組織への脂肪蓄積を顕著に抑制する作用を示し,肥満ならびにメタボリックシンドロームの改善に寄与することが示唆された.
著者
宮澤 楓 島田 将喜
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.153-162, 2017
被引用文献数
1

ヤンバルクイナによる台石を使用したカタツムリの殻の割り方と殻の割れ方の対応関係を,行動の直接観察と殻の割れ方の分類によって明らかにした.沖縄県国頭村にて,センサーカメラをもちいた行動観察と,カタツムリの殻の採取を行った.動画内で識別された4個体すべてから地上に露出した石に,カタツムリの殻口を嘴で咥え保定し繰り返し叩きつけて殻の反対側を破壊し中身を食べるというパタンが観察された.台石使用行動はヤンバルクイナにとって一般的で定型化した採餌行動と考えられる.採取されたカタツムリの殻の割れ方は4つのタイプに分類されたが,うち大多数を占めるType 1と,Type 2はヤンバルクイナによる食痕の可能性が高いことが示唆された.クイナ科の系統でこの台石使用行動が直接的証拠により確認されたのは,ヤンバルクイナが最初である.台石使用行動は,丸飲みは不可能だが常時利用可能性の高い大型のカタツムリを採食可能にするという機能をもつ.
著者
宮澤 啓輔 浅川 学
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

紅藻オゴノリ(Gracilaria verrucosa)をはじめとする海藻を原因食とする食中毒が日本でこれまでに数件発生しており、原因究明がなされた結果、中毒発生の直接的要因はオゴノリに含まれる酵素の作用によりアラキドン酸から生成したプロスタグランジンE2(PGE2)であることが明らかにされている。そこで本研究ではこの種の食中毒防止の観点から、瀬戸内海産のオゴノリ、シラモ(G.bursa-pastoris)、ツルシラモ(Gracilariopsis chorda)、カバノリ(G.textorii)及びオゴノリ未同定亜種Gracilaria sp.におけるPGE2の生成量を調査した。その結果、オゴノリのPGE2生成量は、成長段階の初期に高く、その後減少する傾向が見られること及び嚢果の有無による差はないことなどが明らかとなった。オゴノリではアラキドン酸(ナトリウム塩)を添加することにより、PGE2の生成量が増加することが認められ、PGE2生成量の最高値は、90μg/g生鮮藻体に達したが、推定中毒量には及ばなかった。また、藻体の液体窒素処理により、PGE2の生成量は数倍に上昇すること、酸性側では著しく減少することを認めた。他方、他の海藻ではPGE2は検出されなかったが、アラキドン酸添加により著しく増加する関連物質の存在が新たに確認されたため、アラキドン酸代謝産物と考えられる未同定成分について部分精製を行い、紫外部吸収スペクトル測定を行った。その結果、この成分の吸収極大はPGE2の192nmとは異なり、240nmであった。次いで、カバノリのアラキドン酸添加区抽出試料に含まれる未同定成分について、質量分析をLC-MSを用いて行い、その化学構造に検討を加えた。質量分析ではm/z=372、355、337、319、301にピークが検出され、それぞれm/z=M+H、M+H-H_2O、M+H-2H_2O、M+H-3H_2O、M+H-4H_2Oと帰属された。本成分は、PGE2と比較してヒドロキシル基の数が1つ多く、また構造が部分的に異なる物質であることが推定された。
著者
田中 皓介 池端 菜摘 宮澤 拓也 宮川 愛由 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.I_33-I_42, 2016 (Released:2017-01-31)
参考文献数
21
被引用文献数
1

わが国の経済は,1998年から長いデフレ不況の状態にある.デフレ脱却のために,財政政策による需要創出の有効性が示唆されているにも関わらず,1998年以降の公共事業費は削減され続けてきた.その背景として,経済政策の決定に多大な影響を及ぼすと考えられる内閣府の経済財政モデルが算出する乗数効果の小ささが挙げられる.そこで本稿では,内閣府モデルの妥当性の検証を行った.その結果,内閣府モデルには輸出入均衡値という概念が導入されており,輸出入を通じて均衡への調整が行なわれる構造が存在することを指摘した.その上で、マクロモデルに均衡値概念を導入することによって算出される乗数効果が大きく低下することを実証的に示すとともに,均衡値を導入することの不当性を明らかにした.
著者
市川 尚 宮澤 芳光 川村 和也 佐々木 研弥 福岡 寛之 大信田 康統 阿部 昭博
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告情報システムと社会環境(IS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.3, pp.1-6, 2009-09-07
参考文献数
7
被引用文献数
2

本稿では,筆者らが 2007 年度までに平泉町毛越寺をフィールドとして開発してきた Bluetooth 携帯電話による UD (ユニバーサルデザイン) 観光情報システムを,異なる観光地である歴史公園えさし藤原の郷に適用した結果について報告する.なお,UD 観光情報システムとは,UD に配慮し,ユーザ特性に応じて観光情報を提供するシステムである.適用に際し,システムに行った拡張は,ゾーンやエリアという概念の導入,ルート案内機能の追加,コンテンツ管理部の試作であった.社会実験の結果は概ね好評であったが,操作性を中心に課題も残った.This paper reported the result of applying the UD (Universal Design) tourist information system using a bluetooth mobile phone which we developed it at Hiraizumi Motsuji temple by 2007 to other different tourist site, Fujiwara Heritage Park. This system presents a tourist information corresponding to user's characteristic in the consideration of UD. The expansions of this system were the addition to the concept of zone and area, the route guidance function, the contents management part. Satisfactory results in the social experiment were obtained, but there still remains some problems about an operability.
著者
田中 福代 岡崎 圭毅 樫村 友子 大脇 良成 立木 美保 澤田 歩 伊藤 伝 宮澤 利男
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.101-116, 2016
被引用文献数
12

リンゴみつ入り果と非みつ果の香味特性および香味成分のプロファイリングを実施し,嗜好性と香味成分との関連を検討した.みつ入り果の揮発性成分はメチルエステル類,エチルエステル類が特徴的に増加した一方,酢酸エステル類や炭素数3以上のアルコール由来のエステル類は減少した.可溶性成分ではソルビトール,スクロース,L-アラニン,ピログルタミン酸,デヒドロアスコルビン酸が増加し,グルコースが低下した.試算した甘味度積算値はみつ入り果がわずかに大きかった.官能評価の結果,'ふじ' のみつ入り果は全体的な香り,フルーティ,フローラル,スィートが顕著に強く,嗜好性も高かった.みつ入り果で特徴的に検出されたエチルエステル類等(特に2-メチル酪酸エチル,ヘキサン酸エチル,チグリン酸エチル,2-メチル酪酸メチル)は嗅覚による閾値が小さく,スィート·フローラルな,リンゴ·パイナップル様の香調を呈する.以上から,みつ入り果の嗜好性の高さは糖類よりもメチル·エチルエステル類を中心とした香気成分が強く寄与したものと示唆された.また,これらの成分はみつ部分における低酸素·高炭酸条件下の代謝により集積したものと推定した.
著者
宮澤 利男
出版者
日本味と匂学会
雑誌
日本味と匂学会誌 = The Japanese journal of taste and smell research (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.5-10, 2015-04

食塩は私たちにとって必要不可欠な素材である一方、その過剰摂取は様々な疾病の要因になるとされており、消費者の減塩に対する意識は近年著しく高まっている。そこで我々は、塩味の増強効果を有する天然物を探索したところ、キク科植物オランダセンニチの辛味の主要成分であるスピラントールに塩味の増強効果があることを見出した。本稿では、この塩味の増強作用を、1)官能評価試験、2)行動学的試験、3)神経生理学的試験により測定することで、塩味受容および塩味増強のメカニズム解明に試みることとした。
著者
大坪 紘子 堀 繁 竹形 顕 宮澤 泰子
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.655-658, 2003 (Released:2003-09-24)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

This study manifested the characteristics of mountain trails and effect to the natural experience, taking Mt. Inari in Kyoto, in which Japanese traditional belief to the nature still exists, as a case study. Analysis was practiced in terms of locations of trails and of objects for interest on trails. As a result, the former was exemplified to bring realization of rich topography with introduction of diverse terrains, or to emphasize the action of “climbing”, applying particularity of mountain peak. On the other hand, the latter was exemplified to enrich natural experience with adopted nature as interest, or to enrich trailing experience with successive appearance of interest. Those findings were summarized as hints for design of mountain trails.
著者
宮澤 淳一
出版者
日本ロシア文学会
雑誌
ロシア語ロシア文学研究 (ISSN:03873277)
巻号頁・発行日
no.24, pp.25-41, 1992-10-01

The Master and Margarita(1928?-40)is a "double novel"which consists of two sections: the Moscow in 1920/30's infested by the devils, and the ancient Jerusalem describing the agony of Pontius Pilate. Inspite of its grand conception shouwing the reader a spectacular world, The Master and Margarita is nothing but a five- day short episode of Moscow in the twentieth century starting on a hot evening of Wednesday in May to end on the next Sunday morning. The secret of the dynamic development of the novel lies in the structural device to integrate the two worlds into a single noe. The structural analysis of The Master and Margarita should be focused on time rather than space. The comparative study of the two narratives (the Moscow section and the Jeusalem section) with the gospel narratives (John's Gospel and the Synoptics) concludes that the direct pretext for the Jerusalem section is John's Gospel, but that the Last Supper (Thursday evening) and the Ressurrection (sunday morning) have no correspondances in the Jerusalem section but do in the Moscow section : the black magic performance and the saving of the master and Pilate respectively. Both the Moscow section and the Jerusalem section, therefoe, depend on the gospel world for their pretext and they complement each other to reconstruct the story of Holy Week. The moment when the temporal dynamism of the Moscow and Jerusalem narratives appears is in the first three chapters, where the static parallelism of various settings and characters is obvious. As Andrew Barratt has argued, the chapters consist of the opposition of the"outsider"(Woland, Yeshua) versus the "representative of the status quo"(Berlioz, Pilate). In conversation the former challenges the conventional value and knowledge of the latter. At the point when the latter's mental condition reaches the limit of its endurance, the motif of flash (the detonation of the sun in Jerusalem, inducing the glimpse of the moon in Moscow) triggers the destruction of the spacial, static parallelism to change itself into the temporal, dynamic parallelism between the two sections. After that, the Moscow narrative leaves the Wednesday evening and progresses through Thursday towards Friday, where the Jerusalem time is stopped. Until the end of Book One (Chapter 18), the narrative goes its way on the several plots switching the scenes ingeniously. The reader, however, does not follow the narrative to the Friday unconsciously: he can recognize the temporal parallelism on the way. The first sentence of Chapter 17, which describes the day following the black magic evening, informs the reader that it is Friday. Considering that the previous chapter was the execution of Yeshua of"Good Friday "of the Jerusalem section, he predicts something important will happen on the Friday of Moscow, too. The information at the beginning of Chapter 18 that the funeral of Berlioz strts at 3.00 p.m. (the time of the Expiration) would support the reader's prediction. The reader, therefore, notices that both the Moscow time and the Jerusalem time extend afterward and beforeward corresponding each other with a fulcrum of the contacting Friday. He looks back the narratives before Friday and reads ahead through the Satan's ball to go beyond Friday expecting the organic development of the two sections. From the first chapter of Book Two, Chapter 19, the Moscow narrative progresses on a single plot featuring Margarita. In the same Chapter the Moscow time overtakes the Jerusalem time at the moment when Berlioz's funeral starts at 3.00p.m. After that, the Moscow time surpasses the Jerusalem time to reach Satan's Ball (Chapter 23) between Friday and Monday, which is the parody on the Passion. After the"evocation of the Master"(Chapter 24), the Jerusalem narrative revives as Margarita's reading process of the Master's novel, and concludes itself at the same time when she finishes reading through the novel at the dawn of Saturday in the both sections. The parallelism of th
著者
水谷 昌平 山﨑 楠人 林 隆三 宮澤 邦幸 三浦 義章
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.83, no.853, pp.17-00026-17-00026, 2017 (Released:2017-09-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1

Elderly caregivers are increasing by aging of society in Japan. One of the hardest action for them is to make a wheelchair with a person on climb a step. In order to reduce burdens of the caregivers, assistive products to ease burdens of step-climbing action are desired. The purpose of this study is to devise a mechanism to reduce caregivers’ burdens when they make wheelchairs climb steps and to develop casters with the devised mechanism. Prior to the development of the step climbing mechanism, measuring experiments of forces a caregiver apply to a wheelchair in a step-climbing action is conducted using normal casters. In reference to the result of the experiment using the normal casters, the authors devise step-climbing casters with a burden reduction mechanism. It utilizes the reaction force from the step induced by an unnecessary force applied by caregivers in a step-climbing action. Mechanical analysis of a wheelchair with the burden reduction mechanism is carried out numerically to show the effectiveness of the mechanism. Measuring experiments of forces a caregiver apply to a wheelchair in a step-climbing action is conducted using the developed step-climbing casters. The result of the analysis and the experiment indicate that the burden reduction mechanism reduces the total maximum force necessary to make a wheelchair climb a step, leading to the conclusion that the devised burden reduction mechanism is effective.
著者
横本 拓也 前田 洋輔 宮澤 匠 山上 朋彦 阿部 克也
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CPM, 電子部品・材料 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.264, pp.1-4, 2011-10-19

複合ターゲットを用いた反応性スパッタリング法を用いてCuAlO_2薄膜の作製と構造評価を行った。本研究での複合ターゲットはAl円板上に三角形のCu板を載せただけという簡易な構造をしている。Alのターゲット面積比率(Al/(Al+Cu))を大きくしていくと膜中のAlとCuの比を制御できることがわかり、また酸素流量を増加させることでCuターゲットのスパッタレートが減少し、相対的にAl元素の組成比が増加することがわかった。Alの面積比率95%、酸素流量3sccmの時、ストイキオメトリーに近い膜を得ることができた。また、この膜のXRD測定を行ったところアモルファスライクな膜であることがわかった。
著者
阿部 克也 横本 拓也 前田 洋輔 宮澤 匠
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CPM, 電子部品・材料 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.176, pp.51-54, 2011-08-03

Cuターゲット上にAl板を配置した複合ターゲットを用いたRFマグネトロンスパッタ法によって、p型透明酸化物半導体として期待されるCuAlO_2薄膜の作製を試みた。Alターゲット面積比Al/(Cu+Al)を変化させ成膜を行った結果、面積比を70%とAlリッチにすることでストイキオメトリに近い膜組成が得られることが分かった。しかしながらXRD測定の結果から、as-depositionではアモルファスライクな薄膜であることが明らかとなった。作製した膜に800℃以上のアニールを施した結果、配向性のあるCuAlO_2膜を形成することに成功した。また、Taucプロットにより見積もった光学的バンドギャップは、CuAlO_2の報告値である3.5eVに近い3.6eVであり、アニール後の膜構造がデラフォサイト構造のCuAlO_2であることを確認した。
著者
佐々木 結花 山岸 文雄 鈴木 公典 宮澤 裕 杉戸 一寿 河端 美則
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.33, no.7, pp.1065-1069, 1993-12-20
被引用文献数
3

肺転移にて発見された後腹膜原発絨毛癌の一例を経験したので報告する.症例は24歳男性.主訴は血痰で, 精査目的にて当院に入院した.胸部エックス線所見上, 両側肺野に多発した結節影および両側胸水を認めた.外性器に異常所見は認められなかった.腹部CT写真にて後腹膜に腫瘤を認め, 泌尿器科にて腎腫瘍が疑われたが, 検査拒否にて組織型を決定できず, 呼吸状態が急激に増悪し, 呼吸不全にて死亡した.剖検にて, 両側肺を多発した腫瘤がしめ, また, 後腹膜に腫瘤が存在し, その一部は下大静脈壁内腔に浸潤していた.同腫瘤, 肺転移巣の両者の病理組織より, 絨毛癌の診断が得られ, 免疫組織学的検索で胞体がhCG陽性であることが確認された.生殖器には原発巣は認めず, 後腹膜原発絨毛癌と考えられ, きわめて稀な症例と考えられ報告した.