著者
泰地 美沙子 山崎 俊正 河原 一樹 元岡 大祐 中村 昇太 豊島 正 大久保 忠恭 小林 祐次 西内 祐二
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.53, pp.199-204, 2011

Marinostatin (MST) isolated from a marine organism is a serine protease inhibitor consisting of 12 amino acids with two internal ester linkages formed between the β-hydroxyl and (β-carboxyl groups, Thr^3-Asp^9 and Ser^8-Asp^<11>. MST was synthesized by regioselective intramolecular esterification employing two sets of orthogonally removable side chain protecting groups for Ser/Thr and Asp. SAR study revealed that the ester linkage with Thr^3-Asp^9, the cis-conformation at Pro^7 and the N-terminal Phe^1-Ala^2 are the structural requirements for expression of the inhibitory activity. These findings were also supported by analyzing the solution and enzyme-bound structures of MST. Of particular note is that cis-Pro^7 may promote the internal hydrogen bond between the NH proton of Are and the carbonyl oxygen atom of the ester linkage with Thr^3-Asp^9 to protect its scissile bond of Met^4-Arg^5. This could be responsible for enhancing the potency. To elucidate the importance of backbone conformation at position 7, 16 and cis/trans-olefin analogs 17/18, in which cis/trans-olefins are substituted for the amide bond of Tyr^6-Ala^7, were synthesized. Although Ala^7 in 16 takes a trans-conformation in the solution structure, it takes a cis-conformation in the enzyme-bound structure. This implies that Ala^7 would isomerize from a trans to cis conformation when it binds to an enzyme, resulting in a certain inhibitory potency. However, the trans-olefin analog 18 lost the potency while the cis-olefin analog 17 displayed almost the same potency as that of MST. These results clearly indicated that the cis-conformation at position 7 is indispensable for binding to an enzyme in a canonical manner. By applying the structural motif of MST, we were able to rationally design protease inhibitory specificities that differed from those of the natural product.
著者
大坪 慶輔 金兼 弘和 小林 一郎 宮脇 利男
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.196-206, 2010 (Released:2010-08-31)
参考文献数
66
被引用文献数
5 4

免疫系には免疫抑制機能に特化した制御性T細胞(Treg)とよばれる少数のCD4+CD25+ T細胞サブセットが存在する.この細胞は,自己免疫やアレルギー,炎症といった過剰な免疫反応を抑制して免疫恒常性の維持において非常に重要な役割を果たしている.Tregのマスター遺伝子としてFOXP3遺伝子が機能するという発見により,Tregの生理的意義が明確に証明され,その発生・分化と抑制機能の分子メカニズムを解明するうえで重要な進歩がもたらされた.   このTregの欠損や機能低下によって生じる疾患がIPEX (immune dysregulation, polyendocrinopathy, enteropathy, and X-linked)症候群である.この疾患は,I 型糖尿病や甲状腺機能低下症などの多発性内分泌異常,難治性下痢などを主症状とし,さらには自己免疫性と考えられる貧血,血小板減少,腎炎など多彩な症状を呈する.   現在まで報告されているIPEX症候群の臨床像,分子学的異常とヒトTreg細胞の機能に関して概説する.
著者
武森 真由美 坂牧 成恵 貞升 友紀 植松 洋子 門間 公夫 新藤 哲也 小林 千種
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.99-105, 2018-06-25 (Released:2018-07-21)
参考文献数
7
被引用文献数
1

HPLCおよびLC-MS/MSを用いた食品中のエリスリトール,マルチトール,ラクチトールおよびトレハロースの分析法を開発した.HPLC分析では,アミノ基結合型ポリマーカラムを用い,カラム温度を室温とすることで定量することが可能になった.LC-MS/MSでは,SRMモードにより定量・確認を行うことができた.また,試験溶液を1,000倍以上に希釈することで,試料由来のマトリックスによる影響を抑えられた.紅茶飲料,ゼリー,ラムネ菓子およびチョコレートを用いた添加回収試験の結果,回収率はいずれもHPLCで90%以上(CV≦6.1%),LC-MS/MSで94%以上(CV≦4.8%)であった.クッキーについては,まず水で抽出してからエタノールを加えることで,HPLCで回収率83%以上(CV≦4.1%),LC-MS/MSで回収率90%以上(CV≦3.0%)と良好な結果が得られた.
著者
小林 哲夫
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会誌
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.280-284, 1996

自然状態下の土壌中では,液体水と水蒸気が局所熱力学的平衡状態にあると見なせることは既に確認されている(Milly, 1982).本報では,蒸発時には,土壌表面およびその近傍においても局所平衡が成り立つと見なせることが明らかにされる.この結果は,数値気象・気候モデルにおいて土壌表面の含水率から"表面湿度"を推定するために提案された多くの実験公式が,熱力学的平衡公式(本文式(7))に代わるもの(Lee and Pielke, 1992)ではなく,水蒸気の移動に対する抵抗の影響を強く受けた物理的意味の乏しい経験公式であることを示唆する.
著者
平嶋 昇 田中 靖人 小林 慶子 島田 昌明 岩瀬 弘明 後藤 秀実
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.644-649, 2009-11-25
被引用文献数
1 1

症例は26才女性.2007年11月21日,AST235 U/L,ALT636 U/L,T-Bil.3.5 mg/d<i>l</i>で紹介を受けた.HBs抗原・IgM-HA抗体・HCV抗体陰性であったがHCV RNA定性(アンプリコア法)は陽性であった.ALTは正常化せず,08年2月8日HCVグループ2,RNA定量3.0 Log IU/m<i>l</i>(リアルタイム法),3月21日肝生検F1A1であったため,3月25日からペグインターフェロンα2aを12週投与してHCV RNAは陰性化した.尚,07年8月頃から付き合い始めたフィアンセは刺青を有し07年11月C型急性肝炎を発生,11月28日HCVグループ2,RNA定量430 KIU/m<i>l</i>(ハイレンジ法)であった.保存血清を用いて分子系統樹解析を名古屋市立大学臨床分子情報医学教室において行ったところ患者とフィアンセはおなじ感染ルートであることが推測された.日本のC型慢性肝炎は高齢化し治療に難渋しているが,若い世代を中心に麻薬や刺青によるC型肝炎感染が散見され性交渉によってさらに拡大しているとも言われている.C型肝炎は感染早期にインターフェロンを投与した方が治療効果は高く早期治療が望ましい.若い世代に対する積極的HCV対策も今後は必要である.<br>
著者
堀 龍一 小林 隆史 高原 勇 大澤 義明
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.1335-1340, 2017-10-25 (Released:2017-10-25)
参考文献数
8

本研究の第一の目的はクロフトンの微分方程式を適用して,扇形領域内に一様かつ独立して分布する二点間の直線距離の平均と分散を導出することにある.既存研究では円盤内や円周間でランダムに分布する二点間の平均距離の解析表示が求められているが,これを拡張した.加えて,二つの扇形間直線距離の平均値と標準偏差も解析的に導出した.第二の目的は,災害への備えが必要な我が国において,平時では循環バス,被災時では電源支援の役割を果たす燃料電池バスの移動施設としての効率性について論じることにある.理論的に導いた扇形平均距離の結果を用いて,固定場所からの派遣距離との比較などを通して,被災時における移動施設による電源供給の効率性を求めた.
著者
松原 智樹 大川 裕司 宮川 和典 鈴木 四郎 高畠 保 江上 典史 谷岡 健吉 小楠 功一 小林 昭 平井 忠明 河合 敏昭 本坊 正典 吉田 哲男 内田 徹也 盛 英三
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.35-38, 2002
参考文献数
7
被引用文献数
2

超高感度・高画質と高信頼性とを両立させたハイビジョンカメラを実現するため、厚さ15μmの新Super-HARP膜でのハイライトきず(強いスポット光が入射したときに生じる白きず)の発生防止に取り組んだ。膜の動作温度ときず発生との関係を調べた実験から、膜の動作温度を従来(約25℃)よりも高温側にシフトさせることでハイライトきずの発生が抑制できることを見い出した。この動作モードでの実用化を目指して耐熱性向上の研究に取り組み、不純物添加濃度の最適化で、きず発生を抑制できる温度での安定動作を可能とした。本膜を適用した超高感度ハイビジョンハンディカメラは信頼性や機動性にも優れ、夜間緊急報道等の放送用途のほか医学研究や科学分野等で活用されている。
著者
小林 彰夫 天谷 正行 久保田 紀久枝 森澤 千尋
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.71, no.12, pp.1273-1277, 1997-12-01 (Released:2009-02-18)
参考文献数
12
被引用文献数
1

(1)ニラとネギの種間雑種である「なかみどり」の香気特性を,成分組成から解明するため,親植物と合わせ三種の香気成分分析を行った. (2)ニラより香気濃縮物の調製方法を検討しチルド試料から減圧水蒸気蒸留による方法を最適と判断した. (3)香気濃縮物をGC, GC-MSデータより比較検討した結果,「なかみどり」の香気組成は,親ニラのそれと類似し,香気前駆物質としてニンニクと同様アリシンの存在が示唆された.「なかみどり」は親ニラに比して精油量も多く,アリル基を有する化合物は親植物の2倍以上となり,これがニンニク臭の強いニラ新種の原因と考えられる.一方ネギには催涙性の原因物質であるthiopropanal S-oxideが検出されたが「なかみどり」にこの形質は受け継がれていない.
著者
小林 暉子 河合 貞吉
出版者
日本地学研究会
雑誌
地学研究 (ISSN:03665933)
巻号頁・発行日
vol.27, no.7, pp.p229-231, 1976-10
著者
小林 茂雄 海野 宏樹 中村 芳樹
出版者
人間・環境学会
雑誌
MERA Journal=人間・環境学会誌 (ISSN:1341500X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.1-8, 2000-05-01

夜間商店街の視環境は、街路灯や看板灯、ウィンドゥディスプレイの光など多様な照明要素で構成されているが、これらの光環境は一般的に20時前後を境にして急激に変容する。これは店舗が閉店すると同時に付随する看板灯や内部照明を全て消灯してしまうからである。看板灯や店舗からの漏れ光は、屋内の人間活動と結びついていることから、こうした光は外部に対して単に視覚的な明るさを与えるだけでなく、人の気配を感じさせる働きがあるのではないかと考えられる。本研究は、店舗に付随する照明要素の心理的な働きを理解することによって、閉店後における街路の環境を改善する手がかりを得ようとしている。はじめに、開店時から閉店時にかけて商店街光環境の移り変わりを体験させ、その印象を把握する実験を行った。その結果、閉店後の光環境は全般的に不安で監視性が低く、監視性の低さは店舗から漏れ出す光が強く関与していることがわかった。そこで次に、店舗から漏れ出す光量やファサードの透視性を変数とした評価実験を行ったところ、路上で感じられる人の気配や安心感は、漏れ光の強さだけでなく、店舗ファサードの形態と関わりがあることがわかった。
著者
佐藤 祐造 曽根 博仁 小林 正 河盛 隆造 渥美 義仁 押田 芳治 田中 史朗 鈴木 進 牧田 茂 大澤 功 田村 好史 渡邉 智之 糖尿病運動療法・運動処方確立のための学術調査研究委員会
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.11, pp.850-859, 2015-11-30 (Released:2015-11-30)
参考文献数
21

わが国における糖尿病運動療法の現状を把握することを目的に,糖尿病運動療法の実施状況に関して,患者側に質問紙調査を行った.全国各地の専門医に通院中の糖尿病外来患者5,100名に質問紙調査を行い,同意が得られた4,176名(81.9 %)を解析対象とした.診察時に運動指導を受けている患者は食事療法とほぼ同率であったが,運動指導を「受けたことがない」が30 %存在し,食事療法の10 %より高率であった.医師から運動指導を受けている患者が52 %と,コメディカル(理学療法士,健康運動指導士等)による指導は少なかった.一方,食事療法では,64 %の患者が管理栄養士に指導を受けていた.運動療法を実施している患者は約半数であった.医師側(第1報),患者側いずれの調査でも,糖尿病運動療法の指導体制は不十分であり,食事療法と比較して,「較差」が認められた.日本糖尿病学会編集による「糖尿病運動療法ガイドライン」作成を要望する.
著者
高橋 立夫 服部 和良 小林 由充子 井上 繁雄 今川 健司 浅井 昭 桑山 明夫
出版者
一般社団法人 日本脳卒中の外科学会
雑誌
脳卒中の外科 (ISSN:09145508)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.153-160, 1993-03-25 (Released:2012-10-29)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

Six adults with spontaneous dissection of the vertebrobasilar system are reported. Clinically, 2 patients presented with subarachnoid hemorrhage and 4 with brain-stem ischemia. In all patients, angiography demonstrated fusiform dilatation and constrictions of the involved vessel, which were called “pearl and string”sign. Among these, 2 patients of subarachnoid hemorrhage and one patient with definite dissecting aneurysm that did not improve in spite of angiographic monitoring were surgically treated. Three other patients were treated conservatively with rather good clinical results. Ischemic type of vertebrobasilar dissection must be angiographically monitored, because of spontaneous healing of dissection. In dealing with dissection of vertebrobasilar arteries, because only severe headache develops before ischemic symptoms appear, great care must be taken for these patients. MRI is one of the most reliable neuroimaging methods for detecting dissection.
著者
小林 芳正
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
地すべり (ISSN:02852926)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.30-38, 1980-06-30 (Released:2011-02-25)
参考文献数
23

The causes of the casualties in the off-Izu-Peninsula earthquake 1974, the near-Izu-Oshima earthquake 1978 and the off-Miyagi-Prefecture earthquake 1978 are investigated and it revealed that the importance of slope hazards has increased remarkably in recent times. Slope hazards classified into those in cuts and fills for hig hways, those in newly developed residential lands and those in almost natural slopes are discussed. It is poin ted out that a more careful planning and designing is desirable not to increase hazard potential unreasonably, and also that an administrative control is necessary in locating various projects or in other respects where technical improvement at present is difficult. Further progress in recognizing slopes with high hazard potential is desirable for minimizing hazards in natural-slopes.
著者
小林 照夫
出版者
関東学院大学[文学部]人文学会
雑誌
関東学院大学文学部紀要 (ISSN:02861216)
巻号頁・発行日
no.113, pp.147-168, 2008

「神戸淡路大震災」、「中越地震」と言った大地震をはじめ、日本の各所では大小の地震が発生している。一部の地震学者が言うように、日本は「地殻大変動の時代に入った」のではないかと、危機感を抱いている人も多い。そうした状況を反映して、昨今の町内会の課題は、「自主防災」にあると言っても過言ではない。勿論、それは、地震の脅威に対する地域社会の取り組みであるが、その背景では、NPO「帰宅難民の会」の誕生をみると、戦後の郊外住宅団地の造成に伴う日本的職と住の遠隔地化による震災時の危機感が、強く作用しているように思える。そこで、本稿では、同一コミュニティ内での職住一体化乃至は近接のタウンづくりが現在でも都市構造の本質をなしている英国の都市の歴史を検証しながら、日英地域社会比較文化論と題して、コミュニティの在り方について言及を試みることにした。
著者
宗廣 孝継 小林 潤一 吉田 満 松岡 順一 上田 芳信 開沼 聡
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.257, pp.53-57, 2013-10-22

通信やレーダ用途において,フェーズドアレー方式のシステムが検討されている.この方式では,指向性の高い電磁波ビームを形成するため,アレー素子の小型化と高出力化,高効率化の要求がある.そこで,これらの要求を同時に満たす増幅器として,フェーズドアレーレーダシステムへの応用を念頭に置いたMPM(マイクロ波増幅モジュール)に適する9〜10GHzの周波数範囲で高周波出力800W以上,総合効率41%,寸法20mm(W)×20mm(H)×213mm(L),質量0.4kgのミニTWT(小型進行波管)を開発したので報告する.