著者
小田 匡保
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2011年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.107, 2011 (Released:2011-05-24)

1.はじめに 2004年に刊行された村上春樹『アフターダーク』は、女子大学生の浅井マリが夜の街でいろいろな人に出会う、深夜の数時間の物語である。『アフターダーク』は深夜の都会を舞台にした小説で、都市の具体的描写もあり、地理的な分析が可能である。本発表においては、『アフターダーク』の舞台となる街を主に空間的観点から読み解き、深夜の街における「闇」との出会いについて考察したい。 『アフターダーク』に関しては、これまでにも多くの論考・論評がある。東京文学散歩のサイト「東京紅團」は作品中の施設の現地比定を試みているが、納得のいくものではない。神山(2008)は村上作品の空間的特徴を検討し示唆に富むが、『アフターダーク』については、テレビ画面内の部屋(異界)に関心があり、本稿の分析とは重ならない。 2.登場人物と「色」 「景観」を広く解釈して、「色」についても考察する。登場人物の服装や持ち物の色は、マリ、高橋、エリ、カオル、白川、中国人娼婦、中国人組織の男ら、人物の性格に応じてかなり使い分けがされている。一見対照的に見える白川と主人公マリの共通性はこれまでも別の面で指摘されているが、服装やカバンの色にもうかがえる。 3.場所の設定 作品全体の舞台は渋谷と思われるが、村上(2005)は「架空の街」と述べている。発表者は、渋谷を念頭に置いた架空の場所が設定されていると考える(以下〈渋谷〉と表記)。登場人物の自宅の位置などを地図化すると、人物の性格により、〈渋谷〉と自宅との距離や、〈渋谷〉からの方向性などに違いがあることが明らかになる。街内部の施設の位置についても検討し、ラブホテルやファミレス、公園、コンビニなどの配置について地図化を試みる。 4.「闇」との出会い 他の村上作品と同様、『アフターダーク』も異界との接触がテーマの1つである。中国人組織との6回の接触を分析すると、特定の場所だけでなく、どこでも「闇」の世界と出会う可能性があることが示されている。また、深夜の街全体が異界としても描かれている。 本発表の詳細は、小田(2011)で発表予定である。 文献 小田匡保 2011. 村上春樹『アフターダーク』の空間的読解―「闇」と出会う場所としての深夜の街─. 駒澤大学文学部研究紀要 69(予定). 神山眞理 2008. 物語に表現される空間の図学的考察─村上春樹の小説を示例として─. (日本大学)国際関係学部研究年報 29: 65-82. 東京紅團. 《村上春樹の世界》afterdarkを歩く.(http://www.tokyo-kurenaidan.com/haruki-afterdark.htm) 村上春樹 2005. ロング・インタビュー:「アフターダーク」をめぐって. 文學界 59(4):172-193.
著者
小田 桂吾 鈴木 恒 平野 篤
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C0926, 2007 (Released:2007-05-09)

【目的】今回、腰椎椎間板ヘルニアを患ったプロ総合格闘技選手の競技復帰に向けたリハビリテーション(以下リハ)を経験したのでここに報告する。【症例紹介】29歳、男性。診断名:腰椎椎間板ヘルニア(L5/S1)。身長163cm、体重58kg。【現病歴】2004年より腰痛、左下肢のしびれが出現。以降、試合出場困難となる。2006年、2年振りに復帰し2試合2勝の成績を収めるが腰痛が改善されず、更なる競技能力向上を目的として2週間、リハ目的の入院となった。【初期評価】主訴:常に腰が重い感じ。練習後、腰が張る。(ともに特に左側)アライメント:立位前額面で左肩甲帯下制、脊柱やや右側弯で体幹軽度左側屈あり。矢状面で腰椎前弯、骨盤前傾あり。タイトネステスト:SLR;右60度、左50度。HBD;右0cm、左5cm。FFD;-10cm、MMT:左中殿筋4【経過】1週目の主なリハプログラムは腰部の筋緊張改善を目的とした物理療法、ストレッチ。腹部の深層筋を意識しながらフォームローラーやバランスボールを使用したコアトレーニング。股関節周囲筋力強化を目的としたアウフバウトレーニング等を中心に行った。2週目はトレーニング強度を高めつつ、立位でアライメントが崩れない身体の軸作りを目的としたバランストレーニング、スタビライゼーショントレーニング等を導入していった。退院時、タイトネステストでSLRは左右共70度、HBD左右共0cm、FFD0cmに改善、疼痛は練習後少し張りが残る程度の訴えに軽減。退院後は外来及びジムでフォローしながら退院2週後より実戦練習再開。8週後、初の打撃のみの試合に出場し判定勝ちを収めた。【考察】実戦動作の問題点のひとつとして、左ストレートを打つ際に骨盤の右回旋が不十分で体幹の左側屈が出現しており左腰部に過度なストレスが考えられた。原因としては軸足となる右股関節周囲の筋力低下や左腹斜筋、腸腰筋の柔軟性低下が考えられ、これを改善するために軸足を不安定板に乗せた状態で打撃練習を行い、骨盤を回旋させ体幹と左腕の連携を意識させながらパンチを出す練習を行った。近年、腰痛の治療は体幹の前後、左右、ひねり、上、下肢との連動性を十分考慮したコアトレーニングの概念が必要であると報告されている。また力が発揮する姿勢であるパワーポジションを獲得するためには骨盤の安定性が必要であるとも言われており、激しい動きを伴う総合格闘技選手は様々な技術と体力が要求されるためリハは単に症状の改善を目的とするだけでなく、そのファイトスタイルを考慮する必要があり今後さらなるレベルアップを選手とともに目指していきたいと考える。
著者
鈴木 悟史 中村 俊之 吉井 正広 中島 正勝 中西 洋喜 本田 瑛彦 小田 光茂
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集C編 (ISSN:18848354)
巻号頁・発行日
vol.79, no.807, pp.4233-4248, 2013 (Released:2013-11-25)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

Generally, many space satellites have large solar array panels for power generation and large antennas for observation and communication. The panels and antennas must be lightweight because of the payload weight limit of the launch vehicle. So, they are very flexible, with little damping ability. This results in vibrations cause serious problems. When the thermal environment around a flexible structure on orbit such as a solar array panel changes to cold or hot, the flexible structure produces its own deformation or vibration. These occur most often during rapid temperature changes called thermal snap or thermally-induced vibration, which has been known to cause attitude disturbance in Low Earth Orbit (LEO) satellites. Thermal snap vibration occurring on a flexible solar array panel is very slow. It is very difficult to measure thermal snap motion by sensors such as accelerometer. The behavior of a space structure affected by thermal snap has never been observed directly in space so far. This report presents the measurement results of “IBUKI” solar array panel's behavior using monitor camera.
著者
加茂 泰広 田島 和昌 小田 英俊 木下 昇 富永 雅也 山本 美保子 米満 伸久 竹島 史直 中尾 一彦
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.1219-1224, 2018 (Released:2018-06-20)
参考文献数
17

症例は79歳女性.食欲不振から全身状態悪化し当院救急搬送.精査の結果糖尿病性ケトアシドーシスの診断となり当院入院となった.治療経過中に腹部膨満感出現,腹部CTにて結腸の拡張を認め下部消化管内視鏡検査にて結腸全体の多彩な潰瘍性病変を認め,腸管サイトメガロウイルス(CMV)感染症の診断となり,ガンシクロビルによる加療を開始した.その後症状は速やかに改善,治癒となったがその後便秘症状が出現し,下部消化管内視鏡検査にてS状結腸にスコープ通過不能な狭窄を認めた.腸管CMV感染症治癒後瘢痕による消化管狭窄と診断,狭窄解除目的に内視鏡的バルーン拡張術(EBD)を施行,術後経過良好で現在再発なく経過している.
著者
村上 英樹 小林 祐記 大島 洋紀 小田野 直光 澤田 健一 大西 世紀 近内 亜紀子 奥田 博昭 村木 克行
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会 年会・大会予稿集 2006年春の年会
巻号頁・発行日
pp.56, 2006 (Released:2006-04-06)

珪藻土は、多孔体であると同時にSiO2を主成分とするため、耐熱性を持つ。また、溶液化したジルコニウムやハフニウムと親和性があり、フッ化水素酸を除く酸性溶液にも耐性があるため、これら元素及びホウ素など、放射線遮蔽効果を持つ元素の添加が容易である。本研究では、珪藻土の放射線遮蔽素材としての適性を評価した。
著者
土井 幸輝 小田原 利江 林 美恵子 藤本 浩志
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
福祉工学シンポ
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.201-204, 2003
被引用文献数
2

点字は, 視覚障害者にとって自らが読み書き出来る唯一の文字として一般に知られているが, 近年, スクリーン印刷による紫外線硬化樹脂インク点字(以下UV点字と記す)サインが, 共用品として急激に普及している。しかし, 製作者ごとにUV点字パターン(点間隔・高さなど)が大きく異なるため, 触読しにくいことが指摘されている。そのため, 現在, UV点字に関する日本工業規格化が検討されている。そこで, 本研究では, 触読しやすいUV点字パターンを明らかにすることを目的とし, ヒトの指先の皮膚感覚レベルで, 点字の点間隔・高さの違いがどの程度識別容易性に影響を与えるのかを調べた。実験には, 点字触読における経験要素を排除するため, 晴眼者に参加してもらい, さまざまな点間隔・高さの6文字(1点欠け)について, 同定課題を行った。これより, 識別しやすいUV点字パターンの有用な基礎データが得られた。
著者
椿 俊和 岩崎 郁美 小田島 優子 飯倉 洋治
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.331-334, 1993

麦飯石は無水珪酸を主成分とする火成岩類中の石英斑岩に属する岩石であるが, 古くから腫れ物・皮膚病に効果のある漢方薬として普及してきた. そこで我々は, 麦飯石の接触性皮膚炎に対する効果をみる目的で,モルモットに用いて検討を行った.<br>方法は, 生後6週のハートレイ系モルモットの雌8匹の背中の毛を刈り, そこに0.1%漆溶液0.5mlを毎日10回同じ力で塗布し接触性皮膚炎を作製し, その後背中の左半分は治療せず, 右半分に麦飯石水溶液またはワセリンを塗布した.<br>肉眼的には両群とも3日目に発赤・浮腫・糜爛が認められたが, 麦飯石水溶液塗布群の程度が一番弱かった. 組織学的には表皮の肥厚と過角化, 血管周囲性の炎症性小円形細胞の浸潤が共通した所見であったが, 麦飯石群の表皮肥厚が最も軽度で, また炎症性小円形細胞の浸潤もわずかであった.<br>以上より, 麦飯石は接触性皮膚炎に対して抗炎症効果を持ち, 皮膚炎の改善に有効であると考えられた.
著者
小田原 幸 坪井 康次
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.243-247, 2018 (Released:2018-04-01)
参考文献数
7

行動医学は, 健康と疾病に関する心理・社会学的, 行動科学的および医学生物学的研究を進め, これらの知見を統合のうえ, 疾病の予防, 病因の解明, 診断, 治療およびリハビリテーションに適用することを目的とする学際的医学といわれている. その代表的な介入方法である行動変容技法は, 複雑ないくつもの要素から構成され, 同一の行動変容テクニックが異なるラベルで報告されている. そのため, 行動医学的介入の再現性や臨床現場での適用性, システマティックレビューを通じた知見の統合が困難になっている. 本稿では, 行動変容技法をはじめ, 行動医学が社会の健康増進にどう活かせるか考えることを目的とした.
著者
吉田 安規良 小田切 忠人 Yoshida Akira Kotagiri Tadato
出版者
琉球大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
琉球大学教育学部教育実践総合センター紀要 (ISSN:13466038)
巻号頁・発行日
no.20, pp.133-158, 2013

2013年から4年制大学で本格実施される「教職実践演習」に先立ち、沖縄こどもの国と連携しながら「ドリームフェスティパル2012」という行事の企画・運営を主とする、特別活動の運営をモチーフとした試行実践を行った。受講した学生は「対人関係能力」や「協働体制の構築」の重要性を理解し、これらに代表されるこれからの教員として必要な資質能力を修得していたと判断できる。学生にとってこの取り組みそのものは達成感や充実感を味わえるものであり、今回の試行実銭は「教職実践演習」 の一形態として有効であると判断できる。しかし、とりわけ卒業研究との両立に際して負担感があることもわかった。
著者
江草 智弘 佐藤 貴紀 小田 智基 鈴木 雅一 内山 佳美
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第127回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.133, 2016-07-08 (Released:2016-07-19)

森林小流域においては、地下水が流域界を越えて移動し、流量・水質形成に大きな影響を及ぼす。既存の地下水移動量を求める研究の多くは年水・物質収支を用いており、年より短い期間の移動量を求めた研究は少ない。短期水収支法は、「流量が同程度の2時点では、流域内の水貯留量の差は無視できる」と仮定する。その結果、2時点間の損失量(蒸発散量と地下水移動量の和)は期間降水量-期間流量によって算出される。本研究の目的は、短期水収支法を用い、年より短い期間の地下水移動量を明らかにすることである。我々は神奈川県丹沢山地に位置する大洞沢流域(NO1; 48ha, NO3; 7ha, NO4; 5ha)を対象とした。2010-14の5年間、降水量・流量の観測を行い、短期水収支法を適用した。今までの研究により、NO1では年間の地下水移動量が小さいことがわかっている。従って、我々はNO1の損失量は蒸発散量を表すと仮定し、NO3, 4の損失量からその値を減じ、地下水移動量を算出した。夏季を中心に、NO3では地下水が流域外に流出しており、NO4では逆に流入していた。いずれの流域でも期間降水量と地下水移動量に相関があり、降雨に伴う地下水位の上昇による地下水流入量の決定が示唆された。