著者
渡部 真志 二宮 怜子 近藤 総一 鴨川 賢二 冨田 仁美 藤原 聡 奥田 文悟 岡本 憲省
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
2020

<p><b> 要旨:</b>症例は41 歳男性.習慣的に行っていた頸部回旋直後に後頸部痛を自覚した後,ふらつき,呂律困難,右半身の脱力が順に出現した.意識はJCS 1 で,右同名半盲,構音障害,右片麻痺,左上下肢の運動失調がみられた.頭部MRI,DWI で左小脳と左視床内側に急性期脳梗塞を認めた.頭頸部MRA ならびに造影CT にて右椎骨動脈解離による動脈原性塞栓症と診断した.脳血管撮影では左回旋位で右椎骨動脈の血流の途絶がみられた.撮影中,右頸部回旋時に後頸部痛を生じた.左椎骨動脈に狭窄性変化と右回旋位で血流の途絶を認めた.検査後から一過性の浮動感が出現した.翌日の頭部MRA にて新たに左椎骨動脈解離を認めたため,両側椎骨動脈解離によるbow hunter 症候群(BHS)と診断した.抗血小板剤内服と頸部硬性カラー装着にてBHS に関連する症状は速やかに改善した.頭蓋頸椎移行部における椎骨動脈解離を疑って脳血管撮影を行う際には,頸部回旋により新たな動脈解離を来す恐れがあることに最大限の注意を払うべきと考える.</p>
著者
保科 克行 重松 邦広 岡本 宏之 宮田 哲郎 大島 まり 山本 創太 山本 晃太
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

われわれは大動脈瘤の破裂しやすさをモデルを用いて検討してきた。嚢状瘤は破裂リスクが高いとされるがその定義はされていない。瘤を仮想楕円にあてはめて、「横長」のもの、またフィレット半径(大動脈と瘤のつなぎ目に当てる円)の小さい縦長のものは、頂点において応力が高く破裂しやすく、嚢状瘤の定義の一部としてよいのではないかという結論になった。これは胸部大動脈瘤において拡張速度の検討が行われたがはっきりとした臨床上の裏づけができなかった。今回、腹部大動脈瘤の破裂症例を集積し、コントロール群とマッチングを行って検討した。破裂群は、瘤が横長であること、またフィレット半径が小さいことにおいて、有意に差があった。
著者
岡本 泰彦 川畑 雅樹 正代 知幸 辻本 康平
出版者
一般社団法人 資源・素材学会
雑誌
Journal of MMIJ (ISSN:18816118)
巻号頁・発行日
vol.136, no.6, pp.52-63, 2020-06-30 (Released:2020-06-30)
参考文献数
7

Ube Industries' Isa Cement Factory introduced a rock cutting machine“2500SM”capable of continuous excavation by rotating a drum equipped with a cemented carbide bit from the viewpoint of effective recovery limestoneresources. Because it can excavate with low vibration and low noise, it can reduce the distance from the surrounding private houses that have been secured in consideration of the effect of blasting, and in order not to loosen the excavated surface, the bench angle of the excavated surface is steeply inclined and berm is minimized. It was because it was judged that the minable amount could be expanded by minimizing the berm. In the early stages of the introduction, cutting bits were broken unexpectedly, and the frequency of replacement increased, resulting in a decrease in mining efficiency. In addition, the excavation slope using a rock cutting machine“2500SM” has a smoother surface and no large cracks. In addition, in the evaluation using methods of elastic wave exploration, ground penetrating radar and infrared camera, the slope of excavation is compared with that by blasting. It was confirmed that the soundness was high. The effects of cutting bit improvements was evaluated, the expected excavation area, the soundness and safety of the rock slope, and the expansion of the minable amount that were expected when the rock cutting machine “2500SM” was introduced. In this paper,we repot the evaluation results.
著者
森永 睦子 古川 聡子 岡本 操 河口 勝憲 辻岡 貴之 通山 薫
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.113-118, 2018-01-25 (Released:2018-01-27)
参考文献数
12

リチウム(以下,Li)は躁うつ病の治療薬として広く利用されており,治療濃度域と中毒濃度域が接近していることから治療薬物モニタリング(therapeutic drug monitoring; TDM)の対象薬物である。またLiは腎臓から排泄されるため腎機能が低下すると中毒症状を出現しやすい。今回,当院高度救命救急センターへ意識障害で搬送され,腎機能低下を伴う高Li血症がみられた2症例について報告する。症例1は30歳代,女性で医療に対する精神的不安感から多剤大量服用した患者で,Li推定服用量は12,800 mg/1回である。来院時の血中Li濃度は13.2 mEq/Lと極高値かつ腎機能低下を認めた。持続的血液透析(continuous hemodialysis; CHD)約30時間後の血中Li濃度は1.2 mEq/Lまで低下し,CHD離脱後21時間後の血中Li濃度は0.8 mEq/Lであり,リバウンドを認めることなく第3病日に退院となった。症例2は80歳代,女性でLiの服用に伴い定期的に血中Li濃度を測定し治療域を推移していた患者で,Li服用量は400 mg/dayである。来院時の血中Li濃度は1.8 mEq/Lと高値かつ腎機能低下を認めた。輸液により意識レベルは改善し同日帰宅となった。以降,Liの服用は中止された。当院に意識障害で搬送され,毒劇物解析室に分析依頼があった患者の集計を行った結果,約17年間でLi服用患者は47例でそのうち19例(40.4%)が高値側の中毒域であった。意識障害で搬送された患者にLiの服用歴がある場合,Li中毒,腎機能低下を疑い,さらにLi濃度測定を行うことで診療に貢献できると思われる。
著者
岡本 耕平
出版者
The Human Geographical Society of Japan
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.23-42, 1998-02-28 (Released:2009-04-28)
参考文献数
183
被引用文献数
5 4

Behavioral geography, which started in the 1960s, had lost its impetus on account of internal division and various criticism from radicals and humanists in geography after about 1980. Because of its perceived lack of social relevance at a time when social issues had become the major focus of human geography, behavioral research was often relegated to a minor role within the discipline.Behavioral geography, however, has revitalized since 1990. This stems from two sources: the theoretical pluralism in post-modern geography and interdisciplinary studies with psychology, cognitive science, and GIS.This paper has three purposes. First, it outlines a history of behavioral geography and describes its revitalization in the 1990s. Second, the geographical studies on cognitive map and cognitive mapping, which has been the most important research theme in behavioral geography, are critically examined. Third, this paper pursues the future development of behavioral geography surveying the new ideas in recent psychology and examining the raison d'être of cognitive studies in human geography.In discussion, this paper makes the following pleas. 1) Behavioral studies in geography should look hard at routinized non-awareness activities in our daily lives in societal and cultural context. 2) The focus of the study should be on ‘behavior in space’, not on‘spatial behavior’, 3) The study on ‘vista’ will bring fertile perspectives to behavioral geography. 4) Behavioral geographers should notice that human spatial knowledge has various aspects.
著者
岡本 牧子
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.34, no.10, pp.81-86, 2020

<p>日本の手漉き和紙技術は,ユネスコの無形文化遺産に登録されるなど世界に発信できる日本独自の文化である.特に南西諸島及び台湾に生息するアオガンピ(青雁皮)を原料とする琉球紙の製造技術は,沖縄県独自のテーマとして特色のある教材となるが,原料の調達が困難なため持続可能な教材として未だに確立していない.本研究では,学校現場での原料調達を可能にするべく,中学校技術科の生物育成分野の学習教材として取り扱えるよう,アオガンピの栽培方法やコスト,学習指導計画等を提案し,沖縄県独自の和紙製造技術を教材化することを目的としている.本論文では,アオガンピの栽培方法について専門用語をなるべく使用せず,学校現場でも準備可能な道具や方法についてまとめたので報告する.</p>
著者
林 勇樹 窓場 勝之 村田 伸 安彦 鉄平 井上 遼一 岡本 雄輝 澤田 貴大 村山 寛和 白岩 加代子 阿波 邦彦 堀江 淳
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.13-17, 2017

<p>登山前のスクワット運動が,登山後の大腿四頭筋の筋疲労耐性に与える効果を検討した。対象は健常成人20名とした。登山2週間前に,登山と類似したスクワット運動を行う介入群(10名)と介入を行わないコントロール群(10名)に分類した。大腿四頭筋の筋活動をより強調させるため片脚にて実施した。登山前後に最大随意収縮の50%に相当する大腿四頭筋筋力を91秒間持続させたときの中間周波数を用いて筋疲労を評価した。測定筋は内側広筋,外側広筋,大腿直筋の3筋とし,コントロール群と介入群を比較した。その結果,コントロール群では,登山後に測定したすべての筋が登山前と比べ中間周波数の低下が早期に起こり,筋疲労が確認された。介入群は,単関節筋である内側広筋,外側広筋の中間周波数の低下は早期に起こらず,筋疲労は軽減された。これらのことから,登山前にスクワット運動を行うことで,筋疲労が軽減する可能性が示された。</p>
著者
岡本 隆一 渡辺 守
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.522-527, 2016 (Released:2016-12-31)
参考文献数
36
被引用文献数
3 9

腸上皮は個体の内外を分け隔てる物理的な境界として存在するだけでなく,腸内細菌等が存在する体外の環境と免疫担当細胞等が存在する体内の環境を仲立ちし,機能的に調和を保つ重要な役割を担っている.このような腸上皮が炎症性疾患の発症・病態の形成に果たす役割の重要性が臨床・病態研究の両面において注目されている.例えば粘液を産生する機能を有する腸上皮細胞である杯細胞は潰瘍性大腸炎において「消失」することが知られているが,同細胞が粘液産生機能だけでなく多彩な免疫調節機能を有し,疾患の発症・進展を規定する重要な機能を内在していることが明らかとなっている.更に小腸に局在する腸上皮細胞であるパネート細胞は抗菌活性を有するペプチドを産生する機能が知られているが,複数のクローン病疾患感受性遺伝子により同細胞の機能・細胞死が制御されている可能性が示されている.従ってクローン病における「パネート細胞機能異常」は特定の病型において疾患発症・再燃の要因の一つとなっているものと考えられている.本稿では腸上皮の機能と炎症性腸疾患の病態に関する近年の知見について,概説したい.
著者
岡本 幹三
出版者
鳥取大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

診断技術の進歩と予後の改善によって多重がんの発生が増加しているが、多重がん患者の生存予後については余りわかっていない。今年度は、1979年から2003年までの25年間に亘る鳥取県がん登録資料を活用して単発がん患者と多重がん患者の生命予後について比較した。多重がん患者1,146名、単発がん患者15,022名について、罹患年齢、死亡年齢および第1がん罹患から死亡までの生存期間を求め、生存予後の比較はCox回帰による生存分析を用いておこなった。なお、多重がんの判定基準はIARC/IACRの規則に従い判定し、死亡票からの多重がんは除外した。その結果、多重がん患者は、第1がんの罹患年齢および死亡年齢とも単発がん患者に比して1歳弱高齢であった。第1がん罹患から死亡までの生存期間は、多重がん患者は4.3年で単発がん患者の2.8年に対して1歳弱長かった。Cox回帰による実測生存率曲線の比較では、10年生存までは、多重がん患者が単発がん患者より高い生存率を示し、その後第2がんの影響で逆転した。部位別には、特に直腸、胆嚢・胆管、膵臓、肺、前立腺で同様の傾向が観察されたが、食道、胃、結腸、肝臓、喉頭、乳房、子宮では顕著な違いは見られなかった。逆に皮膚、腎など、膀胱、甲状腺では単発がん患者が高い実測生存率を示した。以上の結果から、多重がん患者が単発がん患者より長生きすることが示唆された。おそらく、これは、第1がん罹患後の治療方法やライフスタイル(喫煙・飲酒)などによる影響が関与しているものと思われる。今後は、これらの点について検討していきたい。
著者
岡本 時子 山﨑 有香
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.290-292, 2018-05-25 (Released:2018-05-25)
参考文献数
4
被引用文献数
1

A new method to observe transmission electron microscope (TEM) images for the core-shell structure of emulsion particles was established. The TEM image for the cross section of the emulsion particles could be obtained by cryo-ultramicrotomy of the gelated emulsion with gelatin. Structural information of the emulsion particle with a core of epoxy-novolak resin and a shell of acrylic resin was thus obtained which had not been obtained before by conventional negative staining and cryo-ultramicrotomy.
著者
岡本 隆
出版者
公益社団法人 砂防学会
雑誌
砂防学会誌 (ISSN:02868385)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.56-60_2, 2006-05-15 (Released:2010-04-30)
参考文献数
3
著者
北村 智 岡本 絵莉
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.95-103, 2010
参考文献数
20
被引用文献数
2

本研究の目的は工学系大学院生の研究室教育に対する満足度および成長の自己評価と研究業績の関係を検討することである.本研究では工学系研究室に対する層化無作為抽出による質問紙調査を実施し,73研究室からデータを収集した.本研究でのデータは学生レベルと研究室レベルを含む階層的データであるため,学生レベルのモデルと研究室レベルのモデルに分けて相関係数を算出した.分析の結果,次の2点が示唆された.(1)研究室レベルで修士課程大学院生に査読有りの研究発表を求めていくことと,学生の学術コミュニケーション能力との間にはポジティブな関係がある一方で,満足度との間にはネガティブな関係がある,(2)修士課程大学院生に自分が第1著者となる研究以外の共同研究にも参画させていくことと,学生の満足度や成長の自己評価の間に研究室レベルでみてポジティブな関係がある.
著者
岡本 道孝 北本 幸義 吉田 輝 大野 進太郎 岡村 昭彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C(地圏工学)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.158-173, 2020

<p> ジオテキスタイルを始めとする面状補強材(シート材)を軟弱地盤の表面に敷設して地盤を補強する表層安定処理工法がある.筆者らは筒状織物にモルタルを充填して形成する補強材(ジオジャケット)を格子状に配置し,これによってシート材を補強する格子状補強シートを用いた表層安定処理工法を新たに開発した.従来のシート材を用いた表層安定処理工法では局所荷重によるシート材の破断が課題となっていたが,新工法ではジオジャケットの曲げ剛性によってそのリスクを軽減できる.また当シート上に施工された覆土層は,格子枠のせん断変形抑制効果によって従来のシート材を用いる場合より高い支持力を発揮できる.本報では,この格子状補強シートを用いた表層安定処理工法の特徴と適用事例について述べる.</p>