著者
岩崎 晋弥
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
地球化学 (ISSN:03864073)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.319-335, 2014-12-25 (Released:2015-01-06)
参考文献数
80

The Antarctic ice core records revealed atmospheric CO2 concentrations (pCO2) during glacial periods were ~80 ppm lower than those of interglacial periods. The mechanism of understanding the low atmospheric pCO2 of glacial periods is one of the most important problems in the global carbon cycle study. Most of paleoclimatologists consider that the deep-sea must have been an active pool of global carbon cycle on this timescale. However, there is no broadly accepted evidence that the deep sea played a role as the effective carbon pool during glacial periods. The reconstruction of deep-sea carbonate chemistry that is provided by oceanic CaCO3 cycle (CaCO3 preservation and dissolution) with glacial-interglacial cycles is a key to solve the mechanism of ocean carbon cycle. Number of previous studies reconstructed the pattern of CaCO3 dissolution on the seafloor during glacial-interglacial periods. These previous studies employed dissolution intensity proxies based on carbonate microfossils preserved in sediments. However, existing proxies are insufficient in order to obtain quantitative data for ocean carbon budget. This is due to the low accuracy of existing dissolution proxies and the lack of knowledge about carbonate dissolution mechanism. This review paper summarizes the principles, characteristics, application to paleoceanography and problems of carbonate dissolution proxies, and then discusses future possible development.
著者
岩崎 憲治 宮崎 直幸
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.153-156, 2020 (Released:2020-05-27)
参考文献数
7

An ultra-stable artificial protein cage was created by using TRAP (trp RNA-binding attenuation protein). Adding a gold (I) triphenylphosphine compound to a cysteine-substituted TRAP generated a cage 22 nm in diameter. The TRAP cage resisted severe conditions, such as high temperature, denaturing agents, and acidic and basic solvents. However, it was instantly disassembled when reducing agents were added to the solution. We can therefore fully control both assembly and disassembly of the TRAP cage. Cryo-EM single-particle analysis revealed a chiral pair of TRAP cages and their atomic structures, in which gold atoms acted as staples to connect the TRAP rings.
著者
霜野 慧亮 中野 公彦 鈴木 彰一 岩崎 克康 須田 義大
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.85-89, 2022-02-01 (Released:2022-02-25)
参考文献数
11

自動運転の社会実装には,実際の交通環境下で自動運転車両がどのように走行しているのかを,社会に対して適切に伝えることが望ましい.実交通環境下での自動運転車両の走行データ収集は,そのようなコミュニケーションの際に有用な情報をもたらすだけでなく,より高度な自動運転車両の機能開発や運用上の工夫等の観点からも,有益な情報をもたらすと期待される.柏市柏の葉地区では,2019 年11 月から長期間実証実験として自動運転バスが営業走行している.この取り組みは,長期間にわたり自動運転車両が走行していることから,将来的に自動運転車両が実装された際の状況に比較的近い状態にあると考えられる.この自動運転バスにドライビングレコーダを搭載し,運転手による手動介入時の映像データ取得を行い,介入時の周辺交通や道路環境の要因について分析を行う取り組みを開始している.本稿では,この取り組みの概要を紹介する.
著者
岩崎 久美子
出版者
日本キャリア教育学会
雑誌
進路指導研究 (ISSN:13433768)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.26-34, 1999-01-30 (Released:2017-09-22)

A questionnaire survey was conducted with 168 cram school students to examine their consciousness of future career and achievement based on attribution theory and self-esteem. For the purpose of comparison, data were simultaneously obtained from 132 local elementary school students as the control group. It was found that over 60% of the cram school students wanted to receive higher education whereas over 60% of local elementary school students indicated that they were not decided or uncertain about the prospect. Early career decision is apparently influenced greatly by information and cultural capital that the family retains. In addition, advancement to the higher education appears to be governed more by the possibility of admission to prestigious schools than by the students' aptitude, capacity or interests. For psychological factors in achievement, cram school students with high self-esteem tended to have good scores were the result of controllable factors such as their own efforts and ability. By contrast students with low self-esteem tended to consider good scores as the result of uncontrollable factors such as the degree of difficulty of the examination. This phenomenon has been termed self-serving bias. There was also a positive correlation between self-esteem and family support of the items of attribution of good score. This suggests a connection among parents' attitude, self-esteem and achievement. There was a significant difference between career consciousness and self-esteem. This result suggests that to foster self-esteem it is essential to instill a career consciousness right from elementary school.
著者
飯島 慈裕 会田 健太郎 浅沼 順 石川 守 岩崎 博之 太田 岳史 小谷 亜由美 佐藤 友徳 篠田 雅人 杉浦 幸之助 朴 昊澤 檜山 哲哉 平沢 尚彦 金子 有紀 堀 雅裕 GOMBOLUUDEV Purevjav OYUNBAATAR Dambaravjaa IIJIMA Yoshihiro AIDA Kentaro ASANUMA Jun ISHIKAWA Mamoru IWASAKI Hiroyuki OHTA Takeshi KOTANI Ayumi SATO Tomonori SHINODA Masato SUGIURA Konosuke PARK Hotaek HIYAMA Tetsuya HIRASAWA Naohiko KANEKO Yuki HORI Masahiro
出版者
三重大学大学院生物資源学研究科
雑誌
三重大学大学院生物資源学研究科紀要
巻号頁・発行日
no.43, pp.15-25, 2017-09

宇宙航空研究開発機構によって2014年2月に打ち上げられた全球降水観測計画(GPM: Global Precipitation Measurement)の主衛星は高緯度地域の降水量が新規に得られる。このデータの検証は,今後の寒冷圏陸域の水循環・水資源研究等への利用促進に向けた観測精度の向上を図るうえで必要不可欠である。本研究プロジェクトでは,観測研究を実施してきた国内外の機関が協働して,北東ユーラシア(主としてモンゴル・東シベリア)で既設の観測システムを改良し,他の衛星データ解析と合わせて,夏季降水(降雨),冬季降水(降積雪)およびそれらの空間分布に関する地上検証を行う。また,今後の応用研究に向けて,陸面モデル・分布型河川流出モデル,メソ気象モデルを利用した,地域規模のGPM観測データの利用可能性を検討する。
著者
岩崎 弥生
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学看護学部紀要 (ISSN:03877272)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.29-40, 1998-03
被引用文献数
10

精神病患者の家族の情動的負担と対処方法を明らかにすることを目的に,書面による調査同意の得られた分裂病患者を在宅でケアする5家族6名に対して,McCrackenの質的研究方法である"長時間インタビュー"に基づき半構成的対面式インタビューを行い,その内容を分析した.その結果,家族は情動的負担として自責態と無力感,孤立無援態,荷重態を持ち,それぞれ知識の欠如,精神病に対する偏見,および患者の依存や症状が影響していた.ケア知識を欠いた家族は,患者の苦痛に何の手だてを講じることもできないことから自責感を持つと同時に無力感を持っていた.また,精神病への偏見から患者を守るため広く援助を求めることをためらい,ほぼ孤立無援の状態でケアをしていた.そして,時には患者の依存や症状が重荷に感じられケアから逃げ出したい気持ちを抱くこともあった.対処方法は適切なケア提供に関する行動と,自分自身のケアに関する行動から成り立っていた.ケア提供に関しては,家族は試行錯誤しながらケア技術を習得し,患者の話を受け止め,気分転換を促し,社会との接点を見出すなどをとおして適切な心理社会的的環境を提供しようとしていた.ケア提供者自身のケアはケア提供者の健康を保ち患者へのケアを継続するうえで重要で,精神的支援の獲得,自分自身の時間の確保,およびものごとの肯定的解釈を含んでいた.
著者
岩崎 寛
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.446-451, 2010 (Released:2010-09-15)
参考文献数
25

1942年に非脱分極性筋弛緩薬クラーレが臨床に用いられてから,脱分極性筋弛緩薬の迅速な筋弛緩効果発現に近づく安全な非脱分極性筋弛緩薬の開発が待たれていた.2007年,日本で効果発現が迅速な非脱分極性筋弛緩薬ロクロニウムの臨床使用が可能となった.このロクロニウムは欧米各国ではすでに1990年代前半から使用開始されている筋弛緩薬である.日本で最も使用頻度の高いベクロニウムと類似するステロイド系筋弛緩薬であるが,力価はベクロニウムの約1/6と低いが効果発現はベクロニウムと比較して迅速であることが特徴である.したがって,通常の気管挿管ばかりでなく迅速気管挿管において脱分極性筋弛緩薬にとって代わる可能性が期待されている.一方,ロクロニウムは体内でほとんど代謝されず,血漿中にきわめて少量検出される代謝産物の筋弛緩作用もほとんど認めず,長時間投与にも問題ないとされる.短時間効果発現と蓄積性を有さない非脱分極性筋弛緩薬ロクロニウムの特徴をこれまで広く用いられてきた筋弛緩薬ベクロニウムおよびスキサメトニウム(SCC)と臨床的に比較し,ロクロニウムの特徴を気管挿管,麻酔維持,そして拮抗について解説する.
著者
吉永 鐵大郎 岩崎 浩満 河野 賢太郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1990, no.11, pp.1256-1262, 1990-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
28
被引用文献数
1

有機化合物のpKaあるいは酸,塩基の強さと分子構造の関係についてはこれまで多くの研究がなされているが,いずれも,単独の方法あるいは指標を用いただけで十分満足できるものはない。著者らは今回,半経験的分子軌道法(PPP法,CNDO/2法,Ext-HMO)を用い,従来から利用されている指標すなわち・H+の授受に関与す為原子位置(X)でのπ電子密度(I1)と中島らの提案したイオン化ポテンシャル(ΣQp(pp|XX)δZ)(12)とを組み合わせて線形結合をつくり,指標の重みぬくキ ラをパラメ._..ターとして変化させ,pKaとの相関係数が最大になるような条件下での指標を新しい指標とした。この方法をMCC法(Maximum Correlation Coefficient Method) と名付けた。この方法を用いるとほとんどの場合,単独の指標を用いる場合より相関係数がかなり高くなるが,各化合物群に対して得られた最適化パラメーターの値から逆に基本骨格分子の特定の原子のクーロン積分値の変化量を見積れる可能性も得た(なんらかの補正を要するとしても)。今回,対象とした化合物群は主としてN原子を含む共役系化合物であったが非共役系化合物にも適用できる可能性がある。
著者
岩崎 修
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.930-933, 2011-07-15

米国Aniomagic社が開発,販売を行っている「スキーマ」や「スパークル」をはじめとするツールキットは,導電性糸を用いて縫って美しく光り輝く電子手芸が手軽に楽しめます.ハンダ付けを前提とした電子工作と比べて最初に揃えなければならない道具も少なくて済み,基本的には縫い物など手芸のテクニックそのままで作品を作り上げることができるのが大きな特徴です.
著者
大塚 攻 堀口 健雄 Lopes R.M. Choi K.H. 岩崎 敬二
出版者
日本プランクトン学会
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.101-118, 2004 (Released:2011-07-08)
著者
岩崎 正洋
出版者
日本公共政策学会
雑誌
公共政策研究 (ISSN:21865868)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.87-97, 2020-12-10 (Released:2021-10-02)
参考文献数
34

2020年は,世界中がCOVID-19の感染拡大に直面した年として,後々まで語り継がれることになるであろう。我々の日常は大きく変化し,これまでの当り前が当たり前ではなくなり,以前とは明らかに異なる「新しい日常」が求められるようになった。まさに,社会のさまざまな側面が変化から逃れることはできなかった。COVID-19の登場により,人類が経験した新しい現象は,まさに公共的な問題であり,その問題解決のためには,公共政策による取り組みが必要になる。それゆえ,公共政策学の研究領域にCOVID-19が含まれることになり,新たな研究対象として位置づけられることとなった。そこで,本稿は,公共政策学の研究において,COⅥD-19を取り扱うには,どのような見方があるか,どのような見方が必要かという点について考えることを目的とする。本稿では,とりわけ,日本におけ,る2020年1月から5月までの感染拡大の「第一波」の時期に焦点を向け,政策過程論的アプローチと比較政治学的アプローチという二つの点から議論を進めていく。その意味で,本稿は,公共政策学における研究対象として,COVID-19を取り扱う際の論点抽出の役割を果たすものとして位置づけられる。
著者
宮ノ下 明大 宍戸 功一 岩崎 修
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.19-22, 2019-03-25 (Released:2020-03-25)
参考文献数
8
被引用文献数
4

形状の異なる切り干し大根(輪切り,千切り,割り干し)におけるノシメマダラメイガの発育を,温度25°C,相対湿度60%,日長:明期16 h,暗期8 hの条件で調べた.その孵化幼虫から羽化までの平均発育日数は,輪切りでは34.8±0.3日,千切りでは37.0±0.4日,割り干しでは40.9±0.4日であり,それぞれ有意に異なっていた.これらの発育日数は,生きた本種幼虫が切り干し大根から発見された場合,その混入時期推定の目安になると思われる.同じ条件で玄米での平均発育日数は35.8±0.5日であり,切り干し大根の輪切りや千切りとは差がなかった.切り干し大根(割り干し)と玄米で発育した本種雌成虫の産卵選好性を,玄米と切り干し大根を対象にして調べたところ,いずれも切り干し大根に対して産卵する割合が有意に高かった.今回の発育や産卵選好性の試験結果から,切り干し大根は本種の食害や混入を受けやすいと考えられ,その管理・保管には注意する必要がある.
著者
田中 京子 岩崎 香織
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.50, pp.77, 2007

<B>【目的】</B><BR> マズローの欲求階層説によれば、生理的欲求を満たすことが人間の最も基礎的な欲求とされる。食生活の知識・技能の習得は、生理的欲求を自ら満たす術を身につけることであり、愛情と所属欲求や自尊欲求、自己実現欲求といった、より上位の欲求を満たす基盤になると考えられる。日本の子どもの自尊感情は、世界的にみて低いことが指摘されており、1990年代以降、家庭科教育においても子どもの自尊感情を育てることへの関心が高まってきている。<BR>本研究は、高等学校家庭科食領域の授業において、生徒の食生活の知識・技能を向上させる上で有効と考えられるプログラムを実験的に開発・実践し、1)食生活の知識・技能の習得、および2)子どもの自尊感情(Self-esteem)の2点から授業効果の検討を行うことにより、家庭科教育への示唆を得ることを目的とする。<BR>第1報では、開発した授業の内容と実施した授業の様子について報告する。第2報では、実施した授業の効果について報告する。<BR><B>【方法】</B><BR>1、調査の概要<BR>お茶の水女子大学附属高校3年生(3クラス、女子117名)の家庭科(家庭総合)の授業(2006年4月~2007年1月)を対象として、調理実習を中心とする食生活の授業(ミニマムエッセンシャル調理実習)の開発と授業効果の測定を行う。授業開発・実施を田中が担当し、調査設計・効果測定を岩?が担当する。授業効果の測定は、1)参与観察(4月~1月、週1回、1クラスを対象)と2)質問紙調査(記名自記式、同一内容調査を授業前5月と2学期末12月の2回、全クラスを対象として実施)の2つの方法を採用する。<BR>2、授業開発の経緯<BR>田中は、高校家庭科の指導経験をもとに、生活での実践につながる、材料と手順を単純化した基本的な料理を『ミニマムエッセンシャルクッキングカード』にまとめた(田中2006)。本研究では、このレシピをもとに、3年生対象の1コマ(45分)の授業時間で[材料・調理法の説明、調理、試食、片付け]の全てを実施する調理実習を開発した。授業内容は1)親子丼(7月)、2)中華風あんかけ焼きそば(9月)、3)ドライカレー(11月)、4)ビビンパ風丼(12月)、5)赤飯(1月)の全5回である。これらの実習は、食生活領域としてまとめて実施するのではなく、「自立に向けて」を包括的なテーマとして、家庭経営や住居領域の授業と並行させて実施した。<BR>3、附属高校家庭科の特徴<BR>対象校の家庭科の授業は、2004年度入学生から家庭総合5単位を実施することとなり、対象者は1・2年次に、食生活の科学と文化を学習し、調理の基礎(1年次)献立調理(2年次)を経験している。本研究で対象とする3年生の授業は、1・2年次の授業を基礎として、実生活で応用する力を身につけることをねらいとした。また、1・2年次は家庭総合のすべての授業で班別学習を実施しているが、3年次は2単位のうち1単位分のみが班別学習となっている。<BR><B>【結果】</B><BR>参与観察の結果、実習初期(7月~9月)には、作り方が途中で分からなくなる生徒、作業分担の出来ない生徒が多くみられたが、実習後期(11月~1月)には、教師からの調理法の説明の際に自ら質問する生徒、事前に班内で手順を確認し、班員の行動を先読みして次の行動を選択する生徒が現れた。また、実習後期には、試食中の発話が増え、自己の食生活の反省(毎日の夕食にコンビニ弁当を購入する、最近家族が料理を作ってくれない)や、自分の作った料理に対する感動(「やっぱり家庭料理が一番だよね」)等が現れ、生徒が自己の食生活の知識・技能に自信を深める様子が観察された。