著者
稲谷 昌之 後藤 浩之 盛川 仁 小倉 祐美子 徳江 聡 Xin-rui ZHANG 岩崎 政浩 荒木 正之 澤田 純男 ZERVA Aspasia
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.I_758-I_766, 2013 (Released:2013-06-19)
参考文献数
7
被引用文献数
1

2011年東北地方太平洋沖地震では内陸部の宮城県大崎市古川地区において地震動による構造物被害が多く発生した.古川地区の中でも一部地域に被害が集中していることから,その原因の一つとして地盤震動特性の違いが考えられる.そこで,本研究では古川地区に展開されている超高密度地震観測のデータを利用して地盤震動特性の違いを検討した,古川地区内の地盤が各点毎に構造の異なる一次元水平成層構造であると仮定して地盤モデルを推定したところ,被害が集中した地域において表層地盤が厚くなる傾向が見られた.ただし,推定した地盤モデルを用いて時刻歴観測波形の再現を試みたところ,一部の観測点には再現出来ない特徴的なフェーズが認められた.このことは,表層の地盤構造を一次元水平成層構造でモデル化するという従来の枠組みでは,古川地区の地震動を説明する上で本質的に不十分であることを示唆している.
著者
岩崎 衣津 時岡 宏明 福島 臣啓 實金 健 奥 格 小林 浩之 石井 瑞恵
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.92-100, 2012-03-15 (Released:2012-05-18)
参考文献数
32
被引用文献数
1

【目的】わが国では敗血症性ショック患者に対してエンドトキシン吸着療法(以下PMX-DHP)が保険適応になって以来,敗血症治療の第一選択として行われることが多い。しかし,国際的には臨床的有用性は議論されており,治療法としては確立されていない。当院では,敗血症性ショック患者に対して,速やかな感染源の除去,適切な血行動態の維持,抗菌薬の早期投与等の集学的治療を行っている。PMX-DHPを用いない当院において,緊急手術を施行した下部消化管疾患による敗血症性ショック患者の治療成績について後ろ向きに検討した。【対象と方法】下部消化管疾患に対し緊急手術を施行され,周術期に敗血症性ショックとなり昇圧剤を必要とした成人症例を対象とした。血行動態の維持には,頻回の心臓超音波検査による前負荷と心機能の評価を行い,輸液を投与した。昇圧剤にはドパミン,ノルアドレナリン,少量バソプレシン等を用いた。【結果】緊急手術を施行した下部消化管疾患による敗血症性ショック患者28例の院内死亡率は17.9%でAPACHE IIから算出した予測死亡率63.3%に比較して良好であった。とくに大腸穿孔患者15例では,予測死亡率57.7%に対して院内死亡率は0%であった。【結論】下部消化管疾患による敗血症性ショック患者の治療は,心臓超音波検査による適切な前負荷の維持とノルアドレナリンとバソプレシンの使用により,PMX-DHPを用いなくても良好な成績を示した。
著者
土田 英三郎 植田 克己 檜山 哲彦 畑瞬 一郎 亀川 徹 関根 和江 岩崎 真 畑 瞬一郎
出版者
東京芸術大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

東京芸術大学が明治期以来の長い歴史の中で、学内各部署に分散蓄積してきた貴重な資料群の所在を確認し、目録を作成のうえ、近年とみに劣化が激しく、このままでは、死蔵されたまま歴史の片隅に埋もれてしまいかねないアナログ録音のオープンテープをデジタル化し、音のデータベース構築する基礎を形成できたこと、そして一部ではあるが、公開の機会を得ることができたことは、本研究の大きな成果である。今後は、本研究で採り上げられなかったアナログ資料をデジタル化し、積極的に公開する方法を探り、公共の財産として活用する方向を目指したい。
著者
関 孝敏 松田 光一 平澤 和司 轟 亮 山内 健治 岩崎 一孝 小井土 彰宏
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

申請テーマである「北海道南西沖地震に伴う家族生活と地域生活の破壊と再組織化」に関して、次の諸点が明らかになった。1)家族生活の破壊について。奥尻町における死者(不明者を含む)175名中107名(61%)が青苗地区に集中した。とくに70戸余の旧5区は、津波により地域社会が全減したため、犠牲者が多くみられた。青苗地区の被災者(家族)を中心に聞き取り調査を行った結果、家族の解体、家族成員の島外への転出、家族成員の病死・精神的後遺症・内体的疾患などが被災後みられた。2)地域生活の破壊。10年前の日本海中都沖地震による津波の経験(2名の犠牲者があり、防潮堤の一部整備が行われた)は、地域住民個々においては適切な避難行動につながる事例がみられたが、地域社会としては残念ながら生かされなかったように思われる。この原因は、何よりも、経験をはるかに超えた大規模な複合災害であったことよる。しかし、それに加えて、海岸に近接した漁業集落特有の形態が、災害のあり方とそのための防災システムのあり方を課題として鮮明にした。3)家族生活の再建。義援金の規模が被災家族における新築の恒久住宅建設を可能にした。多くの被災家族にとって、住宅再建が家族生活の再建にとって最大の課題であった。この住宅再建を通じて、職業と年齢によって家族生活の再組織化のあり方は異なることが鮮明になった。とくに、高齢者世帯家族、自営業家族、漁業経営者家族に顕著な特徴がみられた。4)地域社会の再建。災害前の住宅地図を手掛かりに、職業別の社会地図を作成し、地域社会の復元作業を試みた。その結果、被災後の住宅地図は、旧地区の住民が混住化しつつ地区成員の再組織化が行われたり、職業別分布の大幅な組み替えが見られた。とくに、商業者や自営業者は海側地区、民宿・旅館が高台地区、漁家と高齢者は両地区に混在することが明らかになった。
著者
岩崎 圭祐
出版者
全国社会科教育学会
雑誌
社会科研究 (ISSN:0289856X)
巻号頁・発行日
vol.95, pp.13-24, 2021-11-30 (Released:2022-10-27)

本稿は,米国の論争問題学習の教師教育に着目し,論争問題学習の効果的な指導法を開発したヘス (Diana. E. Hess)と論争問題学習の指導法を教える教師教育者に関する国際比較研究を行ったペース(Judith. L. Pace)の研究アプローチや研究成果を分析することで,日本において主権者教育や論争問題学習を実践するために必要な教師教育や教員養成のあり方を示すことを目的とするものである。 ヘスやペースの研究を分析した結果,論争問題学習を教室で広げるために教師教育において何が教えられるべきかについて,議論の形式や教材の選択,カリキュラム開発を行うといった論争問題学習に取り組むための教師の「スキル」育成から,政治的中立性の逸脱といった批判への対応や生徒の感情的な対立を抑制するというような論争問題学習で起こりうるリスクに取り組む教師の「ストラテジー」の育成へと議論が展開していることが明らかになった。その上で,2者の研究アプローチや研究成果は,現在の主権者教育において課題とされている,主権者教育に取り組む教員養成という視点からも重要な参照軸となることを示した。
著者
篠崎 純子 藤井 孝吉 久永 真央 梶浦 貴之 岩崎 敬治 津田 孝雄 不藤 亮介
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.296-305, 2014-12-20 (Released:2016-12-20)
参考文献数
13

腋臭は特定の細菌(腋臭菌)によって発生するので,デオドラント剤には各種抗菌剤が配合されている。これらの抗菌剤は多菌種に作用するので,常在菌への影響が大きい上に,腋臭菌が耐性を獲得して効果が減少する可能性もある。また,未知の腋臭菌に対して抗菌剤が効かない可能性もある。以上から,抗菌剤に代わる新規デオドラント素材が求められている。そこでわれわれは,新規腋臭菌の分離と腋臭の主成分である3-hydroxy-3-metyl-hexanoic acid(HMHA)の産生を抑制する素材を探索した。その結果,新規腋臭菌として2 菌株,Anaerococcus sp. 株とCorynebacterium genitalium株を分離し,これら腋臭菌のHMHA産生を抑制する素材としてペンタガロイルグルコース(PGG)を見出した。PGGを用いたヒト試験では,細菌遺伝子解析からPGG塗付によって腋臭菌が減少し,常在菌の菌数変動は少ないことを確認した。一方,新たに開発した腋ガス捕集法により定量したHMHA濃度には今回の試験条件では統計的に有意な減少は認められなかったが,PGG塗布により官能評価で腋臭強度の有意な減少が確認された。以上から,PGGは既存抗菌剤とは異なり,細菌叢に大きな影響を与えずに腋臭菌のみを減少させ,腋臭を低減できることが示された。
著者
竹村 邦夫 用田 裕樹 岩崎 正利 木村 康弘
出版者
公益社団法人 石油学会
雑誌
石油学会 年会・秋季大会講演要旨集 創立50周年記念国際シンポジウム/第38回石油・石油化学討論会
巻号頁・発行日
pp.138, 2008 (Released:2009-01-05)

カルシウムスルフォネートコンプレックスグリースは耐熱性、極圧性、耐摩耗性、耐水性、錆止め性などの点で優れた性能を有しており、産業機械での実用化が進みつつある。 これらの諸性能が産業機械の潤滑にどのように生かされているか、その実用例について報告する。
著者
野呂田 晋 岩崎 雄一 荻野 激
出版者
一般社団法人 資源・素材学会
雑誌
Journal of MMIJ (ISSN:18816118)
巻号頁・発行日
vol.139, no.4-8, pp.21-28, 2023-08-31 (Released:2023-08-18)
参考文献数
24

We analyzed the temporal changes in water quality variables (pH and concentrations of Fe and As) of mine drainages and downstream rivers at the Shojin-gawa Mine in Hokkaido, Japan, based on water quality monitoring data from 1992 to 2020. We also examined the correlations between mine drainages and river waters for these three water quality variables. With some exceptions (e.g., increasing trends in pH for mine drainages in the Shojin-gawa pit area), we found no trend of improvement in the three water quality variables over the studied period in most of the mine drainages and river waters. In addition, water quality variables at the most downstream study site, Orito-gawa A (the target site for achieving environmental water quality standards), showed higher correlations (r > 0.5) with those at the most downstream site of the Amemasu River affected by mine drainages from the Amemasu-gawa pit area than those at the most downstream site of the Shojin River affected by mine drainages from the Shojin-gawa pit area. Fe and As concentrations at the most downstream site of the Amemasu River were largely influenced by mine drainages from the Amemasu-gawa pit area (i.e., Taisei and Chugiri pits). These results highlight the importance of monitoring water quality at the most downstream site of the Amemasu River to assess the influence of mine drainages on the changes in water quality at site Orito-gawa A. Additionally, we observed relatively high correlations between electric conductivity (EC) and concentrations of several elements at the most downstream site of the Amemasu River. Therefore, in-situ measurement of EC may be beneficial for performing screening-level assessments or low-cost monitoring of water quality when considering and implementing sustainable water quality monitoring methods over the long term.
著者
中野 亮治 岩崎 信
出版者
東北大学大学院教育情報学研究部
雑誌
教育情報学研究 (ISSN:13481983)
巻号頁・発行日
no.2, pp.143-149, 2004-03

素朴概念についてはこれまで様々な研究がされてきた。しかし,必ずしも実際の教育現場にその成果がうまく還元されていない。その要因の一つに,素朴概念の研究成果が教育現場で利用されやすい形になっていないことが挙げられる.もし,インターネットでアクセス可能で,容易に利用できる素朴概念に関するデータベースのようなものがあれば教育現場でも,素朴概念研究においても役立つ.今回,収集期間も短く,その範囲も手近にあるものに限られるが,データベース構築の一環として,その最初の収集リストを示す.リストの構成は素朴概念,キーワード,調査対象学年,研究内容,著者,参照文献の6つからなる.
著者
及川 大輔 岩崎 圭音 後藤 文彦 青木 由香利
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.22-00348, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
22

橋梁の振動特性を把握することは,橋梁全体の剛性の評価などの観点から重要である.しかし,橋梁の振動測定で用いられるサーボ型速度計などの測定機器は高価なものが多く,点検目的や研究目的で誰もが容易に入手して使用できるものではない.そこで,本研究では加速度計が搭載されている安価なタブレット端末を用いて,木歩道橋に対して十分な精度の振動測定が行えるかどうかを検討した.最も卓越する鉛直逆対称モードに関しては,雑音の影響も少くタブレット端末による測定値と数値解析との誤差は−4.0%程度となり,加速度計を搭載したタブレット端末による振動測定の有用性が確認された.また,固有振動数や減衰定数の値を,鋼・コンクリート橋に対する概算式から得られる値と比較することで,測定した木歩道橋の振動特性について考察した.
著者
矢山 貴之 岩崎 丈紘 内多 訓久 藤井 翔平 窪田 綾子 大家 力矢 小島 康司 岡崎 三千代 賴田 顕辞
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.1117-1122, 2023 (Released:2023-06-20)
参考文献数
13

患者は46歳,女性.健康診断で上部消化管内視鏡を行い,Helicobacter pylori感染に加え,胃体中部小彎に0-Ⅱc病変を指摘され,組織生検でsig,早期胃癌の診断で当院に紹介となった.精査の結果ESDの適応拡大病変(現在のガイドラインでは絶対適応病変)であり2013年10月にESDを施行した.病理組織ではサイズは10mm,組織型はsig>tub2,深達度はM,pUL0,脈管侵襲及び断端陰性で治癒切除と診断した.以降5年間は内視鏡に加え胸腹部造影CTでフォロー,再発は認めていなかった.しかし,ESDから7年後に左鼠径部の腫瘤を契機に胃癌の鼠径リンパ節,骨転移の診断となり化学療法を施行したが救命できなかった症例を経験した.
著者
横畠 徳太 高橋 潔 江守 正多 仁科 一哉 田中 克政 井芹 慶彦 本田 靖 木口 雅司 鼎 信次郎 岡本 章子 岩崎 茜 前田 和 沖 大幹
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.214-230, 2021-09-30 (Released:2021-09-30)
参考文献数
45
被引用文献数
1

パリ協定における目標を達成するために脱炭素社会を実現し,今後も変化する気候に社会が適応するためには,多くの人々が気候変動のリスクに関して理解を深めることが重要な課題である。このため我々の研究グループは,これまでに気候変動リスク連鎖を包括的に分かりやすく可視化する手法の開発を行った。本論文では,我々が開発した手法によって得られた,水資源・食料・エネルギー・産業とインフラ・自然生態系・災害と安全保障・健康の7つの分野に関連するリスク連鎖の可視化結果(ネットワーク図・フローチャート)について議論することにより,気候リスク連鎖の全体像を明らかにする。また,可視化結果を利用して行った市民対話イベントの実例を紹介することにより,我々の開発したネットワーク図・フローチャートの有用性や,気候リスクに関する市民対話の重要性について論じる。さらに,日本における気候変動リスク評価の概要について紹介し,気候変動リスク連鎖を評価するための今後の課題について議論する。
著者
江頭 伸昭 三島 健一 岩崎 克典 中西 博 大石 了三 藤原 道弘
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.134, no.1, pp.3-7, 2009 (Released:2009-07-14)
参考文献数
47
被引用文献数
1

アルギニンバソプレシン(AVP)は古くから下垂体後葉ホルモンとして体液および循環系の恒常性の維持に重要な役割を果たしていることが知られている.AVPの受容体は,V1a,V1bおよびV2受容体の3つのサブタイプに分類されており,特にV1aおよびV1b受容体は大脳皮質や海馬など脳内に広く分布していることから,中枢における役割が注目されている.そこで本稿では,V1aおよびV1b受容体欠損マウスを用いた著者らの研究成果を紹介するとともに,精神機能におけるバソプレシン受容体の役割に関する最近の知見について報告する.バソプレシン受容体は,統合失調症,自閉症,うつ病,不安障害,摂食障害など様々な精神疾患との関与を示唆する知見が多数報告されており,その影響にはストレス反応の変化が一部関わっていることが推察される.また,V1aおよびV1b受容体欠損マウスを用いた検討から,バソプレシン受容体がストレスや情動行動,社会的行動,情報処理,空間学習などに関与していることが明らかとなった.一方,V1aおよびV1b受容体の選択的な拮抗薬の精神作用についても報告されている.今後,これらの研究結果を踏まえて,精神機能におけるバソプレシン受容体の役割が解明されれば,精神疾患の予防および治療のための戦略に新たな展開が期待できるものと考えられる.

3 0 0 0 OA 会津藩庁記録

著者
岩崎英重 編
出版者
日本史籍協会
巻号頁・発行日
vol.文久3年 第1, 1926
著者
留目 諒 三田 哲也 岩崎 隆志 米山 和良 高橋 勇樹
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.1-14, 2023-01-15 (Released:2023-02-07)
参考文献数
21

アミメノコギリガザミScylla serrataを対象として,流体解析と行動モデルを用いて,沈降死リスクや摂餌機会を評価可能なシミュレーションモデルを構築し,実際の種苗生産水槽へと適用することで,流場が飼育へ与える影響を評価した。その結果,摂餌には穏やかな流場の方が適しているのに対して,沈降の防除のためには,幼生のステージごとに適切な流場が変化することが示された。今後は同モデルを用いることで,飼育試験によらずに定量的に沈降死リスクや摂餌機会を評価でき,幼生の生残率向上に繋がると期待できる。