著者
岩田 憲治 イワタ ケンジ Kenji Iwata
雑誌
経営情報研究 : 摂南大学経営情報学部論集
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.67-84, 2004-07

本稿の目的は、消費者運動をめぐる当該労働組合の対応を明らかにし、その論理を検討することである。公害や物価など消費者運動に対して企業内労働組合の対応は多様である。その中で本稿は、当該労働組合が消費者運動と企業との関係をどのように対応して調整の役割を果たしたかを検討することによって、消費者運動に対する企業内組合の論理をさぐる。カラーテレビの価格引下げを求める不買運動に対し、ある電機メーカーの労働組合が消費者団体と接触しその要求を経営側に伝えて、解決策を見出すことに貢献した。また、森永ミルク中毒事件では、被害者団体と不買運動を展開する諸団体に労働組合が働きかけ、経営側には被害者団体の要望を受け入れるよう促した。労働組合が消費者団体等の要求を経営側にうけいれられるよう働きかけるのは、直接的には組合員の雇用の確保と労働条件の維持であるが、経営改善を求める要求でもある。その背景には、長期雇用の保障を中心とする相互信頼的労使関係がある。
著者
木村 大輔 岩田 晃 川﨑 純 島 雅人 奥田 邦晴
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.59-66, 2012-04-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
16
被引用文献数
1

【目的】本研究では,運動学的視点から,車いすテニス選手のサーブ動作の特徴をあきらかにすることを目的とした。【方法】三次元動作解析装置と表面筋電図を用いて,車いすテニス選手8名による通常のサーブ動作を計測し,一般テニス選手のサーブ動作と比較した。【結果】車いすテニス選手と一般テニス選手のサーブ動作を比較すると,車いすテニス選手では,最大外旋位で肩関節外旋角度が有意に低値を示し,インパクト時では,水平内転角度が有意に高値を示し,外転角度が有意に低値を示した。最大外旋位からインパクトまでのフォワードスイング相における水平内転・内転運動が特徴的であった。【結論】車いすテニスのサーブでは,もっとも肩関節への負荷が大きいとされるフォワードスイング相において,肩関節が固定されず,水平内転・内転運動しており,肩甲骨と上腕骨を安定させた状態での上腕骨の回旋を困難にしている。これより車いすテニスのサーブ動作は肩関節障害の発生リスクを高めることが示唆された。
著者
岩田 一男
出版者
日本情報経営学会
雑誌
日本情報経営学会誌 (ISSN:18822614)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.74-85, 2015-12-18 (Released:2017-08-07)

This paper examines the actual typing exercises done by students and their results as well as typing performance and tests that may be influenced by these exercises. The study investigates whether there are any implications that can serve as a guide for computer literacy in the future by analyzing the data from various angles. For example, when and how much do students practice of their own volition? Does practice bring a corresponding level of achievement? Furthermore, is there any relationship between Excel skills and students' personalities? It was found that while typing is a simple operation, it relates not only to the role of data input in information processing but also to various other issues. Note that the term "information science" used throughout this paper does not refer to subjects of study but to major courses provided at high schools.
著者
本江 哲行 佐藤 秀紀 岩田 佳雄 小松崎 俊彦
出版者
日本学術会議 「機械工学委員会・土木工学・建築学委員会合同IUTAM分科会」
雑誌
理論応用力学講演会 講演論文集 第52回理論応用力学講演会 講演論文集
巻号頁・発行日
pp.202, 2003 (Released:2003-03-25)

ゴルフボールの飛距離に影響を与えるスピンに関する研究が多く行われているが,ロフト角,摩擦係数,反発係数,ボールの慣性モーメントなどのパラメータが衝突中のスピンに与える影響が明確になっていない. そこで,本研究では,先に提案したボールの材料の物性値と形状を考慮できる衝突モデルを用い,滑りと回転を考慮するために衝突モデルにスライダーと接線方法のばねを付加し,ゴルフボールとフェイスの斜め衝突のシミュレーショを行う.そして,ロフト角や摩擦係数,反発係数,慣性モーメントなどのパラメータと衝突特性の関係を調べる.
著者
岩田 大吾 土岐 知弘 大森 保 石橋 純一郎 高井 研
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.137, 2008

鳩間海丘は南部沖縄トラフの水深1,500 mに位置する直径約4 kmのカルデラ火山である。沖縄トラフの海底熱水系は背弧・島弧系であり,堆積物が豊富であるという特殊な環境から世界で初めて海底面からの二酸化炭素ハイドレートの噴出が観測されるなど,日本における熱水研究に様々な科学的題材を提供してきた。鳩間海丘における熱水活動は,1999年の有人潜水探査船「しんかい2000」による潜航調査において初めて発見された。2006年8月に行われたNHKの取材時には,世界で初めて熱水が青く見える現象が観測された。過去の調査では観測されたことのない青色熱水であることから,海底熱水活動の活発化した可能性等が指摘された。本研究では,発見当時青く観測された熱水噴出孔から2007年3月及び7月に熱水試料を採取し,化学分析すると共に分光学的に解析を行い,2000年の分析結果と比較して化学組成の変化と青く観測された原因を明らかにした。
著者
田内 都子 門 浄彦 岩田 健太郎 伊福 明 前川 利雄 北井 豪
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.DdPF2055, 2011

【目的】 <BR> 拡張型心筋症(DCM)は慢性進行性のことが多く、予後は不良である。DCMに対する過度の運動は避けるべきで、運動療法中には突然死の危険性が上がるため、運動処方には注意を要する。今回、DCMによる僧帽弁閉鎖不全、三尖弁閉鎖不全を合併し外科的手術に至った症例の開心術後から自宅退院可能な能力を獲得するまでの期間介入できたので報告する。<BR>【方法】 <BR> 69歳、男性。身長158.3cm、体重52kg、BMI 20.7。診断名はDCM、僧帽弁閉鎖不全。平成13年、DCMと診断。平成18年9月、意識消失発作があり、その後入退院を繰り返している(NYHAII度) 。平成22年2月、ICDの体内植え込み手術施行。平成22年6月に入り自覚症状がNYHAIII度に増悪し自宅周辺の坂道の移動も困難となった。平成22年7月30日、手術目的にて当院入院。平成22年8月11日、僧帽弁形成術、三尖弁形成術、左室形成術を施行した。合併症に糖尿病(インスリン使用中)あり。術前心エコーでは左室駆出率(LVEF)31%、拡張末期容積(EDV)211ml、収縮期容積(ESV)145mlであり、術後心エコーでは、 LVEF29%、 EDV141ml、ESV100mlであった。<BR>【説明と同意】<BR> 本研究を実施する際に、事前に研究の趣旨、個人情報収集の目的とデータ利用の範囲について十分説明し、同意を得た上で行った。<BR>【結果】<BR> 理学療法は心電図モニター監視下にて、当院の心臓血管外科術後クリニカルパスに準じて行った。術後翌日よりPT開始したが、安静時より心房細動、心房粗動を繰り返しており離床は困難であった。術後4日目にはICDが作動している。術後5日目、端座位開始。術後7日目、歩行練習開始。運動時、特発性心房細動(Paf)や心室性期外収縮(PVC)3連発出現し一時中断することがあったが、医師の指示のもと経過観察となった。術後14日には約400mの歩行可能となり、ADLは自立したが心房細動のコントロールは不良であり薬物療法及び体外式ペースメーカーを装着し、個別運動療法を継続した。内容は病棟でのウォーキング、下肢筋力強化運動(スクワット、かかと上げ、股関節外転運動)とし、運動前後の血圧、運動中の低血圧症状(冷や汗、吐き気、めまい等) 、自覚的運動強度に注意し、心電図モニターにて新たな不整脈が出現しないか確認しながら行った。徐々にPafやPVCが減少していき、術後35日目、在宅での運動耐容能評価のため、心肺運動負荷試験(CPX)を実施。AT時VO2:9ml/kg/min(2.6Mets)最高酸素摂取量(peakVO2)は12ml/kg/min(3.4Mets) であった。この結果を元に、個別療法の運動量を調節し、集団心臓リハビリテーションプログラムにも参加した。集団療法では、有酸素運動(エルゴメメーター25w負荷から、1日1回20分)を開始した。その結果、1ヵ月後のCPXで、AT時VO2は15ml/kg/min(4.2Mets) 、peakVO2は18mL/kg/min(5.2Mets)であった。心エコーではLVEF32%、 EDV178ml、 ESV120mlであった。トレッドミルでの坂道運動、階段昇降も可能となった。<BR>【考察】<BR> 今回、重症不整脈を呈する低心機能のDCMに対し、長期間監視型運動療法を行った。その結果、著明な運動耐容能の改善と不整脈の改善がみられた。<BR> 運動耐容能に関しては、術後と最終の所見を比較すると、心エコー所見の変化に比べ、AT及びpeakVO2が著明に改善した。これは、最大心拍出量の増加、心室収縮能の改善などの中枢因子の効果に比べ、末梢循環や骨格筋機能の改善などの末梢因子の改善が主たる機序と考えられる。<BR> 不整脈に関しては、術後みられた重症不整脈が最終時にはみられなくなった。これは、薬物療法の効果に加えて、運動療法による酸素需要の低減・酸素供給の改善による虚血改善、また副交感神経活性の亢進による心臓交感神経活性の抑制などの効果であると推測される。<BR> また、モニター監視下にて症候限界性にトレッドミルでの坂道歩行練習を行った結果、自宅周辺の坂道も対応可能と確認でき、病態の改善に加え、症状においても改善がみられた。<BR>【理学療法学研究としての意義】 <BR> 本症例は重症不整脈遷延により長期的な介入が必要であった。今回、適切なリスク管理の下に運動処方を行った結果、患者が日常生活を再獲得するに至った。DCMは予後不良と言われているが、末梢能を改善させることができ、重症心不全に対しても運動療法の重要性を確認することができた。<BR>
著者
岩田 隆 大亦 郁子 緒方 邦安
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.350-358, 1969 (Released:2007-07-05)
参考文献数
8
被引用文献数
1 2

前報で, 収穫後の果実の成熟に伴う呼吸型は3種に分類するのが適当であることを述べたが, 本報はこれをエチレンとの関係について検討したものである。一時上昇型 (climacteric 型) としてトマトおよびバナナ, 末期上昇型としてイチゴ•カキおよびモモ, 漸減型果実として温州ミカンを選んだ。(1) トマト緑白色果はエチレン処理によつて着色が促進された。同一圃場から得られた緑白色果でも, 遅い時期に収穫されたもののほうが効果が大であつた。呼吸の climacteric rise はエチレン処理によつて早く現われた。着色果に処理した場合には効果がなかつた。緑白色果を貯蔵すると, 着色に伴つて果実組織内のエチレン濃度が著しく増大し, また, 呼吸上昇以前にかなりの水準に達していた。(2) バナナ緑色果にエチレン処理を行なうと急速に成熟が進んだ。やはり climacteric rise が促進されたがピーク値は自然な climacteric の場合よりもかなり大きくなつた。(3) イチゴは, 緑色が消失して白色に近い状態となつた果実を収穫し, エチレン処理を行なつたが, 着色や軟化の進みかたに影響はなかつた。呼吸量についても処理効果はみられなかつた。果実組織内エチレン濃度は白色果でかなりの値となり, 以後はあまり変わらないようであつた。(4) モモ未熟果にエチレン処理を行なつても, 軟化の進展に影響はなく, 呼吸量もほとんど変わらなかつた。果肉組織内エチレン濃度は, かなり未熟な段階でも高い値となつた。(5) カキ未熟果はエチレン処理によつて急速に着色し, 軟化が進んだ。渋ガキは脱渋された。呼吸量は未熟果, 熟果ともにエチレン処理によつて著しく増大した。果肉組織内エチレン濃度は, かなり軟化した段階でやや大きくなつたが, 全般に低い値であつた。(6) 温州ミカン未熟果はエチレンによつて黄化が促進された。呼吸量は未熟果, 熟果とも処理によつて著しく増大した。エチレン処理によつて呼吸の増大した果実から, エチレンを除去すると, 呼吸量は無処理のものと同じ水準に戻り, これにエチレンを処理すると, また増大した。果実内エチレン濃度は全般に低い値であつた。(7) エチレン処理の効果の有無は, 処理時の果実内エチレン濃度が生理的に活性な値にあるかどうかによるものであり, エチレン処理に対する反応から climacteric の有無を区別することはできないと考えられた。
著者
星 加奈子 瀧本 篤 岩田 誠一郎 深野 雅彦 池田 義雄
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.1747-1750, 2002-07-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
4
被引用文献数
5 5

症例は59歳,男性.平成5年7月, S状結腸癌の診断でS状結腸切除術を施行,中分化腺癌, sm, n(-), P0, H0, M(-), stage I, cur Aで,術後再発は認めなかった.平成13年2月大腸内視鏡検査で,吻合部に約4分の1周性の粘膜下腫瘍様の隆起性病変を認め,粘膜下腫瘍あるいは大腸癌粘膜下再発の診断で3月29日手術を行った.吻合部に直径2cm大で弾性硬の球形の腫瘤を触知し,吻合部を含めた結腸部分切除術を施行した.組織学的には腫瘤に悪性所見はなく,固有筋層を押し下げるように大腸粘膜により内面が覆われた嚢胞がみられ,嚢胞の内容は濃縮された粘液と少量のバリウムであった.以上によりimplantation cystと診断した.大腸吻合部に発生したimplantation cystは非常に稀で本邦報告例は本症例を含め2例であり,文献的考察を加えて報告する.
著者
鶴田 昌三 伴 清治 岩田 純士 川瀬 真由 鈴木 崇由 安藤 正彦
出版者
愛知学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

鏡面研磨した歯科修復用ジルコニアは撥水性であるが、(1) 歯磨によって水のぬれ性が向上すること、(2) 673K以上に加熱すると同じく優れたぬれ性を得ることを見出した。加熱試料上は細胞増殖能に優れ、インプラントの前処理として可能であった。XPS分析によると、表面に吸着したカーボン量が歯磨や加熱により減少していた。すなわち、歯磨には加熱と同様にジルコニア表面に吸着したカーボンを除去する働きがあり、このため親水性を獲得することを明らかにした。
著者
東 聖 伊藤 大介 石田 貴仁 岩田 明彦 菅原 賢悟 森本 茂雄
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌D(産業応用部門誌) (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.139, no.5, pp.495-502, 2019-05-01 (Released:2019-05-01)
参考文献数
15
被引用文献数
2

This paper proposes countermeasures to reduce radiated AM radio frequency noise caused by the VVVF (variable-voltage/variable-frequency) inverter system incorporated with an electric railway car. First, the common-mode current flowing through a cooling fin earth line is studied, and the connection change of the line shows good attenuation of the 1.26MHz resonance component. Second, the common-mode current flowing though the motor earth line with a capacitor is focused upon, and the modified connections of the line to the outside of the input common-mode core achieves fine noise reduction in the range from 500kHz to 1.5MHz. In such cases, the existing input common-mode core is utilized to establish the impedance, which is efficient in both the noise reduction and the countermeasure cost reduction. Finally, a current simulation model which is paid attention to the AM radio frequency range is examined with the measured impedance data of the VVVF inverter system. The currents flowing thorough the cooling fin earth line and the motor earth line is simulated, and these simulated currents show good agreement with the measured one.
著者
岩田 夏穂
出版者
お茶の水女子大学日本言語文化学研究会
雑誌
言語文化と日本語教育 (ISSN:09174206)
巻号頁・発行日
no.33, pp.1-10, 2007-06

日本語を第一言語とする母語話者(NS)と第二言語とする非母語話者(NNS)の会話では、言語能力において強い立場にあるNSが会話のイニシアチブを取ると考えられてきたが、実際に教育現場でのやり取りを見ると、多様な参加の様相が見られる。本稿では、発話の連鎖の仕方から会話参加の様相を明らかにするイニシアチブ-レスポンス分析を用いて、留学生と日本人学生のペア5組の自由会話に見られる参加のパターンを探り、さらにミクロレベルの質的分析を通してそのパターンの背後にある特徴を調べた。その結果、2組のペアでパターンの一致(対称的参加)、3組にパターンの不一致(非対称的参加)が見られたことから、言語能力が参加の様相を決定するのではないこと、参加の対称性を左右するのは、談話推進のリソースとなる情報が両参加者から提供されるかどうかが重要であることがわかった。この結果から、自由会話という活動とNSとNNSの会話への参加の仕方に見られる特徴との関連を考察した。
著者
永井 知代子 岩田 誠
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.16-23, 2001 (Released:2006-04-25)
参考文献数
24
被引用文献数
2 1

Gerstmann 症候群をめぐる論点 (Benton 1992) のうち,四徴は同一の基盤を持つ症候群といえるのか,に関して1症例を通して考察した。症例は左頭頂葉出血の 47歳右利き男性。手指および自己・他者身体の左右認知障害,数の概念理解障害を伴う失算,漢字の想起困難主体の失書を認めた。さらに模写・写字・復唱など模倣は良好だが,視覚的記憶からの描画や口述・動物名想起や特徴口述はできなかった。また辞典を引く際五十音順が想起できず,WAIS-R では絵画完成・配列・積木・類似問題が,WMS-R では対連合記憶が不良であった。以上は (1) ある系列の中での対象の順番や配置を理解・操作できない, (2) 視覚刺激のない状況下で記憶から対象を記述できない,とまとめられ,この中に Gerstmann 症候群の四徴も含む。これは心的イメージ形成における,部分を適切な配置に並べる処理過程 (Kosslyn 1988) の障害ととらえられ,四徴の共通の基盤と考えられる。
著者
森本 侃 岩田 徹 江崎 昭彦 坂田 眞砂代 平山 忠一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1994, no.8, pp.726-730, 1994-08-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
14
被引用文献数
1

ポリエチレンイミンを配位子とし,セルロースをマトリックスとする繊維状吸着剤(Ce11-PEI)を調製し,この吸着剤を用いて,種々のタンパク質水溶液からのエンドトキシン選択吸着除去を試みた。CeH-PEIのアニオン交換容量は,調製時のビスコースに対するポリエチレンイミンの添加量を調節することにより容易に制御できた。同吸着剤のエンドトキシン吸着能は,吸着剤のアニオン交換容量の増大とともに増大し,吸着時のイオン強度の上昇とともに低下した。しかしながら,同吸着剤(アニオン交換容量1.1-3.4meq/g)は幅広いイオン強度域(μ=0.05-0,4)で,高いエンドトキシン吸着能を保持した。さらに,同吸着剤(アニオン交換容量1.1meq/g)を用いて,エンドトキシンを添加したウシ血清アルブミン(BSA)水溶液中からのエンドトキシンの選択吸着除去を試みたところ,イオン強度μ=0.05-0.2,中性付近のpH域下で,BSAをほとんど吸着することなく,エンドトキシンのみの選択的吸着除去ができた。
著者
石本 朗 菊池 健次郎 浦 信行 岩田 至博 買手 順一 曳田 信一 椎木 衛 和田 篤志 飯村 攻
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析療法学会雑誌 (ISSN:09115889)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.77-82, 1993

成人型溶血性尿毒症症候群の発症3か月後に血漿交換を施行し, 血液透析を離脱し得た1例を経験した. 症例は31歳男性. 22歳時健診で高血圧 (140/100mH) と診断されたが, 特に自覚症状もないため放置していた. 平成2年8月下旬より全身倦怠感, 息切れが出現し, 某病院にて重症高血圧, 溶血性貧血, 腎機能不全を指摘され入院加療を受けるも改善せず, 9月21日当科へ転入院となった. 入院時の検査で血小板減少, 微小血管障害性溶血性貧血を伴う急性腎不全を認めたため, 成人型溶血性尿毒症症候群と診断し, 直ちに降圧療法, 抗血小板療法, 抗凝固療法, 新鮮凍結血漿輸血と共に血液透析を開始した. その結果, 血小板減少, 溶血性貧血は間もなく改善したが腎機能不全は治療抵抗性で, 発症約2か月後にはほぼ無尿状態となった. 病態の改善を目指し, 発症約3か月後より週1回の血漿交換を併用したところ, 1日尿量は漸増して血漿交換開始2か月後には1,500m<i>l</i>以上に増加, Ccrも15.0m<i>l</i>/minまで改善し, 血漿交換中止後も同程度の腎機能が保持された. さらに発症約7か月後には血液透析を離脱し, 外来通院が可能となった. 成人型溶血性尿毒症症候群は, 幼児や学童にみられる典型例に比し重篤であり, 救命し得てもその約80%が慢性血液透析に移行するとされている. 一方近年, 発症早期からの血液透析の導入, 血漿交換療法, 新鮮凍結血漿輸血, 抗血小板療法, 抗凝固療法などの施行により, 腎機能不全が寛解した例も少なからず報告されている. 本症に対する血漿交換療法の有用性についての評価はいまだ確定していないが, 少なくとも本例ではその臨床上の有効性が示された. 殊に本例では, 発症後3か月以上を経た時期の血漿交換療法が腎機能の改善, 血液透析の離脱に大きく寄与したと考えられ, かかる報告例は未だみず, 貴重な1例と思われ報告した.