著者
和泉 潔 後藤卓 松井 藤五郎
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.12, pp.3309-3315, 2011-12-15

本研究は,金融実務家から要望が高い,数週間以上の長期的でしかも個別銘柄より広範な市場分析に,テキストマイニング技術で挑戦した.長期市場分析に有効なテキスト情報として,経済の専門家や金融機関がWeb上に発行するマーケットリポートを分析対象とした.そのために,定期的に発行されるテキストデータから時間的な特徴の変化を抽出し,テキストに関連する外部の時系列データとの関係性を見つけるテキストマイニング技術を新たに開発した.本技術を用いて実際に経済市場分析を試み,実際の市場動向をどの程度説明しているのかについて検証を行った.日本国債の2年物,5年物,10年物で運用テストを行った結果,既存のサポートベクタ回帰や計量経済モデルと比べて,どの市場でも安定して,ほぼ最高水準の運用益をあげることができた.
著者
後藤 真孝 村上 瑛美 秋山 晴彦 村井 信哉
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.525-533, 2015-02-15

本稿は,Webシステム等で用いられるメモリキャッシュサーバを大容量化するため,SSDを記憶領域として用いたSSDキャッシュサーバについて述べる.ストレージ上のデータを,TCP/IPネットワークにCPU処理を介すことなく直接転送できるハードウェアエンジンを用い,低応答遅延のSSDキャッシュサーバを試作し評価した.メモリキャッシュサーバの概要,ハードウェアエンジンの概要について述べ,試作したキャッシュサーバの構造について述べる.また,実機評価について述べる.SSDを4台使用することにより,4KBのサイズのデータ参照への応答を,1秒間に6万5千回実施することができた.また,そのときの応答時間は,約500μ秒であった.
著者
後藤 茂子 林 浩昭 山岸 順子 米山 忠克 茅野 充男
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.391-396, 2002-08-05
被引用文献数
11

2種類の下水汚泥コンポストを20余年連用した試験圃場の深さ10cmまでの土壌中の亜鉛,銅,カドミウム,鉛含有量の経年変化と水平方向(試験区外)への移行について調べ,下水汚泥由来重金属の土壌への蓄積について棟討した.(1)下水汚泥コンポスト中の含有量が土壌中のそれよりも高かったモミガラコンポスト区,オガクズコンポスト区両区の亜鉛およびカドミウムと,モミガラコンポスト区の鉛は,施用によって土壌中に蓄積が認められたが,試験開始後10年が経過したころからは蓄積の鈍化あるいは停滞の傾向がみられた.一方,含有量が土壌より低かった両コンポスト区の銅およびオガクズコンポスト区の鉛は,土壌中に蓄積が認められなかった.(2)土壌に蓄積した重金属の水平方向の移行もまた,蓄積と同様に下水汚泥中含有量の高い亜鉛およびカドミウムで明らかに認められた.これは耕うんに伴う土の移動によると推定した.(3)下水汚泥の施用に伴ってモミガラコンポスト区に添加された亜鉛の分配を,隣接する化学肥料区との間で検討したところ,累積添加亜鉛量の約53.4%が区内の深さ10cmまでの土壌に,約6.5%が隣接する化学肥料区の深さ10cmまでの土壌に存在した.また,累積添加亜鉛量のほとんどが20cmまでの表層土中に存在し,下方への溶脱はそれほど多くはないと考えられた.
著者
鈴木 覚 後藤 義明 北村 兼三 高梨 聡 岡野 通明 野口 宏典 大谷 義一 坂本 知己
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.95, no.1, pp.32-36, 2013

平成24年5月6日に茨城県常総市からつくば市にかけて竜巻が発生した。つくば市山木地区と平沢地区の森林被害を調査した。平沢地区の標高50∼130 mの斜面に, 直径250∼300 mの円形の被害発生領域がみられ, この円形領域で竜巻が消滅したと考えられた。この竜巻が消滅した地点を除き, 次の特徴がみられた。 (1) 壊滅的な被害は100 m前後の幅で発生し, これは竜巻のスケールを反映していると考えられた。 (2) 広葉樹を主体とした森林や強風被害を受けにくい条件を備えた森林とも壊滅的な被害を受けたことから, ひとたび竜巻の経路にあたれば, 林況にかかわらず壊滅的な被害が生じると考えられた。 (3) 倒木は竜巻経路の中心に向かって倒れる傾向がみられた。これは竜巻による強風の特徴である風の収束を反映していると考えられた。
著者
寺西 正充 森山 史就 原 直之 安食 健一 園山 智宏 横手 克樹 平野 榮作 後藤 澄子 岩成 治
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.17, no.5, pp.670-674, 2014-10-31 (Released:2015-01-24)
参考文献数
6

常用薬の服用に関連する緊急入院症例に対する薬剤管理指導業務の内容を検討し,今後の業務改善に役立てることを目的として,2010年1月から2012年12月までの3年間に入院した患者について発現症状と原因薬剤,薬剤師の介入などを後方視的に調査した。入院症例数は10,152例,常用薬の服用を確認できた症例は4,095例,常用薬による症状・徴候が原因で入院したと思われる症例は142例,薬剤師が積極的に原因究明に介入した症例は31例であった。主な原因の多くは副作用(疑い)で,発現症状は電解質異常,循環器障害,出血徴候などが多かった。その原因薬剤として,血圧降下薬(利尿薬を含む),漢方薬,血液凝固阻止薬,抗血小板薬,糖尿病用薬などがあった。薬剤師が介入して常用薬や服薬状況などの情報を収集・評価して医師へ情報提供することで,より的確な診断と治療を行うために有用であるとともに医師の業務負担の軽減につながると推察された。
著者
所 光男 加藤 樹夫 後藤 喜一 渡辺 実 山田 不二造 酒向 俊雄 大塚 一幸 杉山 治 古川 雅宏 丹羽 昭司 長山 千秋
出版者
The Japanese Association for Infectious Diseases
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.58, no.10, pp.1038-1045, 1984
被引用文献数
2

1983年7月から9月にかけて岐阜県内で2事例の集団下痢症が発生した. 2事例の患者総数は31名であり, 患者の主症状は下痢 (100%), 腹痛 (93.5%), 嘔気 (80.6%), 嘔吐 (58.1%), 発熱 (35.5%) であった. 原因食品は事例1が鯛の塩焼き, 事例2が卵焼きであった.<BR>これら2事例の患者ふん便12件中11件 (91.7%) から腸炎ビブリオが, 8件 (66.7%) から<I>Vibrio fluoialis</I>が検出された. 腸炎ビブリオ分離株の血清型は事例1の患者5名から分離された15株がO5: K15であり, 事例2の患者7名から分離された28株のうち25株がO10: K19, 3株がO5: K17であった.<BR><I>V. fluvialis</I>分離株のうち, 事例1の患者由来の15株中8株, 事例2の患者由来の30株中12株および原因食品の卵焼きから分離された1株を任意に選び東京都立衛生研究所に依頼して血清型別試験を行った. その結果, 事例1の患者2名から分離された3株がTFO-12に, 事例2の患者2名から分離された2株がTFO-4に, 患者4名から分離された5株がTFO-17に型別され, 両事例とも患者間に血清型の一致が認められた. しかしながら, 事例1の残り5株, 事例2の残り5株および卵焼き由来の1株は型別不能であった.<BR>以上の結果から, これら2事例の集団下痢症は腸炎ビブリオと<I>V. fluvialis</I>の混合感染による食中毒事例であると結論した. 腸炎ビブリオと<I>V. fluvialis</I>の混合感染として細菌学的にも, 血清学的にも証明された食中毒事例はこれら2事例がわが国では最初のものと思われる.
著者
村上 圭一 中村 文子 後藤 逸男
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.453-457, 2004-08-05
被引用文献数
10

全国の根こぶ病発生地域では土壌中の可給態リン酸の過剰が進んでいたことから,土壌中のリン酸と根こぶ病発生との因果関係について検討した.根こぶ病の発病抑止土壌である黒ボク下層土に0〜50g kg^<-1>のリン酸を添加して,可給態リン酸が0.01〜3.57g kg^<-1>に及ぶ5段階のリン酸添加土壌を調整した.これらの土壌に0〜10^7 g^<-1>(8段階)の休眠胞子を加えた人工汚染土壌を作り,リン酸の増加に伴う土壌への休眠胞子吸着率,ハクサイの根毛感染率,ポット栽培によるチンゲンサイ根こぶ病の発病を調査した.その結果,土壌リン酸の増加に伴い,土壌への休眠胞子吸着率が低下するとともに,根毛感染率が上昇し,根こぶ病の発病度が高まった.以上の結果より,大量の陽電荷を有ずる黒ボク下層土は陰電荷を有する休眠胞子を吸着してその動きを抑制するため根こぶ病の発病を抑止する.しかし,その土壌にリン酸を施用すると,土壌コロイドの陽電荷が減少して休眠胞子の吸着率が低下するため休眠胞子が遊離し,アブラナ科野菜の根毛への感染確率が高まり根こぶ病の発病を助長する.すなわち,土壌へのリン酸過剰施用が根こぶ病の発病を助長することが明らかになった.
著者
矢木 大介 村田 健史 笠原 禎也 後藤 由貴
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.178-183, 2014-05-24 (Released:2014-12-01)
参考文献数
6

月探査衛星かぐやで観測した電界波形データには, 特徴的なバイポーラ型波形が多数確認されている. このバイポーラ型波形を観測データから自動抽出し, 波形の特性を求めるアルゴリズムを開発中であるが, 観測データの総容量が約190GBにも及ぶため, 情報通信研究機構(NICT)のサイエンスクラウド上でPwrakeを用いて並列処理による高速化を図った. 本論文では効率を評価した結果を報告する.
著者
下野 義人 広井 勝 上田 俊穂 後藤 康彦 高松 進
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会大会講演要旨集 日本菌学会第53回大会
巻号頁・発行日
pp.41, 2009 (Released:2009-10-30)

ニセクロハツには5型がある *下野義人1)・広井勝2) ・上田俊穂3) ・後藤康彦4) ・高松進5)(1)大阪府立香里丘高;2)郡山女子大;3)長岡京市;4)我孫子市;5)三重大生資) Russula subnigricans consists of the five genetic species, by *Y.Shimono1), M.Hiroi2), T.Ueda3), Y.Goto4), S.Takamatsu5)(1)Kourigaoka H. S.; 2) Koriyama Women’s col.; 3) Nagaokakyou City; 4) Abiko City; 5) Mie Univ.) ニセクロハツは子実体に触れたり,傷つけたり,あるいは子実体を切断すると,その部分が赤変したままで,クロハツやクロハツモドキのように赤変後,黒変しないきのこである.リボソームDNAの28SおよびITS領域に基づいたクロハツ節の解析結果から,クロハツは3型に,クロハツモドキは9型に,ニセクロハツは5型にそれぞれ分かれた.ここではニセクロハツの分子系統解析の結果,子実体の巨視的な形態的特徴・顕微鏡的な特徴に関して,報告する. 28Sを用いた分子系統解析ではニセクロハツは大きなグループを作り,遺伝的に異なった5群(型)に分かれた.しかし,ITS領域の解析ではニセクロハツの3型(B-2,B-3,B-4)は同一群に属したが,それ以外の2型(B-1,B-5)は3型と同じ群に属さなかった.タイプ標本を含むB-1はクロハツと同じ群を形成した. 子実体の巨視的な形態観察ではヒダが細かくて柄が長いB-2,ヒダの赤変性が強いB-3など,型間に違いが見られた.顕微鏡的な特徴では胞子の表面構造やカサの表皮の状態が,タイプ標本を含むB-1とB-3との間で明らかに異なった. 以上のことから,分子系統解析で得られた5型間に子実体の巨視的な,あるいは顕微鏡的な特徴の違いが見られたので,B-2やB-3はニセクロハツの別種か,あるいは変種と考えることができる.
著者
後藤 幸弘 日高 正博
出版者
宝塚医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

ハードな身体接触を伴う運動(「組ずもう」「カバディー」)は、身体接触を避けるように企図した運動(「棒ずもう」「タグカバディ」)よりも児童の攻撃的な感情の表出を押さえ、身体への気づきを高め得ることが認められた。また、「筋出力の制御力」の向上には、身体接触よりも大きな力を発揮するこの影響が示唆された。さらに、「組ずもう」と「カバディ」の学習効果は、量的に見た場合いずれの側面においても3・4年生よりも2年生で大きいと評価された。
著者
武田 英明 松村 真宏 相澤 彰子 市瀬 龍太郎 相原 健郎 大向 一輝 Cazabet Remy Putzke Johannes 後藤 孝行 朱 成敏 桂井 麻里衣
出版者
国立情報学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

Web上の創作活動は新しい創作スタイル、すなわち大規模かつ物理的接触のないコミュニティにおいてお互いの創作を利用し合うという互恵的関係によって創発的に制作されている。本課題ではこのようなオンラインコミュニティにおける創作活動を分析してモデル化を行い、その支援を行う仕組みについて研究を行った。ニコニコ動画のデータを収集し、そのデータにおける創作の影響関係について、コミュニケーションモデルによって分析し、特徴を明らかにした。またその影響関係を多様な視点で可視化するシステムを構築した。このほか、twitter, 学術論文、Wikipedia 等における共同的作業についての分析も行った。
著者
後藤 康志 Gotoh Yasushi
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.111-118, 2014-05-17

教員免許状更新講習選択領域では6,000を越える講習が開設されているが,受講者側からはどのような講習が受講できるか見えにくく,開設側からはトータルとしてどの領域がどれだけカバーできているかモニタリングしにくい.選択必修領域の新設の提言に伴い,選択頒域の講習を整理する枠組みについて検討する.
著者
宗宮 弘明 宮崎 多恵子 後藤 麻木
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

魚類、両生類(サンショウウオ)、爬虫類(ヤモリ、カメレオン)、鳥類(カナリヤ)さらには哺乳類の一部(ラット、マウス)も紫外線視覚(UV Vision)を持ち、摂餌、配偶者選択、コミュニケーション等に利用する(Yokoyama 2000)。初年度(H14)にショウワギスとボウズハゲギスの網膜を調べ、それらが紫外線視覚に関与するUV CONEを多数網膜底部に持つことを明らかにした(Miyazaki et al. 2002)。また、タペータムを持つカイワリ(アジ類)は紫外線視覚に関与するUV CONEを持たないことがわかった(Takei & Somiya 2002)。次年度(H15)にはテッポウウオが空中を見るにもかかわらず紫外線視覚に関与するUV CONEを持たないことがわかった。最終年度(H16)にはヨツメウオの視覚特性を探求し、それらが紫外線視覚を持つことがわかった。また、ヨツメウオの網膜特性の研究の結果、従来いわれていたように、ヨツメウオは腹側網膜で空中視を行い、背側網膜で水中視せずに水平Visual streakで空中視も水中視も受容していることを証明できた。しかし、ヨツメウオ紫外線視覚の機能については解明することが出来なかった。当初、研究の方針は、網膜の博物学的組織学と分子生物学の二本建てで進める予定であったが、分子生物学学的研究が思うようにはかどらず現在も継続中である。しかし、現時点で、今回の研究結果をまとめると次のようになる。魚類の祖先がすでに紫外線視覚を持っていたことは良く知られている。一般に紫外線の無い環境に生息する魚類、たとえば、シーラカンスは紫外線視覚を持たない(Yokoyama et al. 1999)。紫外線の多い環境にすむ魚種でもテッポウウオのように紫外線視覚を利用しない魚種もいる。おそらくそれは、紫外線が網膜に悪影響を与えることに関係しているかも知れない。