著者
戸苅 彰史 近藤 久貴 平居 貴生 兒玉 大介 新井 通次 後藤 滋巳
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.145, no.3, pp.140-145, 2015 (Released:2015-03-10)
参考文献数
45
被引用文献数
1 3

骨芽細胞および破骨細胞にアドレナリン受容体(AR)の発現が見出されて以来,骨代謝における交感神経系の生理的役割についての研究が著しく進展した.これら細胞へのARシグナルが神経由来であることも示されている.交感神経の骨代謝に及ぼす影響として,β2-ARによる骨吸収の促進および骨形成の抑制による骨量低下が認められている.一方,α1-ARによる骨形成の促進も見出されており,その促進機構を明らかにすると共に,骨芽細胞におけるβ2-ARとα1-ARシグナルの相互関連の解析が求められている.また,臨床的にβ-AR遮断薬が骨折リスクを低下させることが高血圧患者において認められているが,歯科矯正治療における歯の移動をβ-AR遮断薬およびβ-AR作動薬により調節できる可能性も動物実験で示されている.骨組織の局所におけるメカニカルストレスが交感神経活動を制御する機構を解析するため,交感神経と感覚神経との相互関連の解析も望まれる.
著者
山口 正貴 高見沢 圭一 原 慶宏 後藤 美和 横田 一彦 芳賀 信彦
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.305-314, 2016 (Released:2016-08-20)
参考文献数
36
被引用文献数
1

【目的】6 ヵ月以上持続している慢性の非特異的腰痛患者に対するMcKenzie 法(以下,M 群)とストレッチング(以下,S 群),その両方(以下,M+S 群)の介入効果について検討する。【方法】directional preference(DP)を認めた症例98名をM群31名,S群35名,M+S 群32名に分類し,週1 回の介入と4週間のセルフエクササイズを指導した。【結果】3 群とも介入前後でVAS,ROM,SF-36,JOABPEQ,Oswestry Disability Index(以下,ODI)の全項目で有意な改善を認めた。さらにROM はM+S 群>M 群・S 群,VAS(腰痛)とODI はS 群・M+S 群>M 群で有意差を認めた。【結論】3 群とも疼痛,身体機能,精神機能すべてに有効性を認めた。群間比較ではM+S 群>S 群>M 群の順に高い効果を認めた。
著者
齊藤 正和 佐藤 智秋 後藤 真希 坂本 薫 宮本 みづ江 田畑 陽一郎 伊東 春樹
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.47, no.7, pp.421-426, 2014 (Released:2014-08-02)
参考文献数
26

【目的】外来血液透析 (HD) 患者の身体活動量に関連する因子を検討するとともに, HD施設までの通院方法と身体活動量および身体機能との関連について検討した. 【方法】外来HD患者53例 (男性34例, 女性19例, 平均年齢62±13歳) を対象とし, 基本情報, 合併症の重症度指標であるComorbidity Index, 栄養状態の指標であるGeriatric Nutrition Risk Index (GNRI), 身体機能の指標であるHD患者移動動作評価表, 身体活動量の指標であるLife Space Assessment (LSA) を調査した. 各調査項目とLSA得点との相関係数を算出し, LSA得点と有意な相関関係を示した因子を独立変数, LSA得点を従属変数とした重回帰分析を実施した. また, HD施設までの通院方法により通院自立, 送迎 (歩行) および送迎 (車いす) に分類し, HD施設まで通院が自立しているか否かを予測するLSA得点ならびに移動動作得点のカットオフ値をROC曲線より決定した. 【結果】LAS得点と有意な相関を認めた因子は年齢, GNRI, 透析期間, Comorbidity Index, 移動動作得点であり (p<0.05), LSA得点の規定因子として身体機能および年齢が抽出された (R2=0.54, p<0.01). また, 通院自立, 送迎 (歩行), 送迎 (車いす) の順で移動動作得点およびLSA得点は有意に低値を示し (p<0.05), HD施設までの通院方法が自立か否かを規定するLSA得点は, 63点 (ACU : 0.861, p<0.01, 95%CI 0.760-0.962), 移動動作得点は, 44点であった (ACU : 0.912, p<0.01, 95%CI 0.835-0.990). 【結語】HD血液透析患者の身体活動量の規定因子として, 年齢ならびに移動動作能力が抽出された.
著者
後藤 眞
出版者
日本禁煙科学会
雑誌
禁煙科学 (ISSN:18833926)
巻号頁・発行日
vol.vol.7, no.08, pp.1-7, 2013 (Released:2021-08-09)

【要 旨】 背景:関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)は、原因不明の代表的な慢性炎症性疾患であり、発症・進展にはHLAな どの疾患感受性遺伝子に加え、免疫系と交絡する複数の環境因子が関与している。なかでも欧米での膨大な疫学研究と分 子生物学をはじめとする基礎研究により、環境リスクファクターとして、喫煙の重要性があぶり出されてきた。しかし、 我が国の専門家の間では、RA発症のリスクファクターとしてのタバコの認知度は高くなく、患者への指導はほとんどなさ れていない。日本の専門家への注意喚起を含めて、レビューしたい。 方法:PubMedならびに欧米の主要リウマチ関連雑誌の論文を参考にした。残念ながら、我が国での研究は、少ない。 結果:喫煙は、疾患感受性遺伝子を介する免疫異常を基礎とする慢性炎症によって、RAを発症、進展させる。しかし、RA の病態、予後に影響を与えない、という報告もある。 結語:喫煙は、RA発症を促進し、病態を修飾する可能性が高い。
著者
中川 摂子 阿部 雅光 辻 武寿 田渕 和雄 後藤 昌昭 香月 武
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.259-262, 1994-05-20 (Released:2017-06-02)
被引用文献数
2 2

陥没骨折の整復には,通常鋼線が使用される.しかし,多数の骨片よりなる複雑な陥没骨折の場合,骨片の歪み,粉砕による骨量の減少のため,通常の鋼線による固定では,外観に凹凸を生じたり,十分な強度が得られない場合がある.今回われわれは,多数の骨片よりなった複雑な陥没骨折の2症例に対して,チタンミニプレートを用い良好な頭蓋骨形成が得られたので報告した.術後プレート局囲の炎症反応もなく,また,術後のCT,MRIでのアーチファクトも少なく,読影に支障はなかった.
著者
藤田 朗 後藤 武 藤井 正昭 百武 ひろ子 久米 由美 豊田 晶子 岡田 曜子 高 美玲
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住宅総合研究財団研究論文集 (ISSN:18802702)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.67-77, 2005 (Released:2018-01-31)

本研究は,固有の地域文化を活用して地域再活性化を図るには,どのようなアプローチが有効であるかを考察することを目的としている。筆者らは,典型的な密集市街地である墨田区京島および横浜市鶴見区において,地域文化の使い方に関わる「まちの家」および「鶴見スタジオ」プロジェクトを実践してきた。それらを調査対象とし,そのプロセスや成果を「文化政策」「空間化」の観点から分析することを研究の方法としている。地域資源として見出された「長屋」「レストラン」「公共空間」「社会関係資本」といった要素を文化政策として扱っていくには,「空間の読解可能性」が重要な要件であることがわかった。
著者
後藤 倫子 Rinko Goto
出版者
同志社法學會
雑誌
同志社法學 = The Doshisha Hogaku (The Doshisha law review) (ISSN:03877612)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.599-671, 2018-07-31

ジェノサイド条約は、国際連合の下で準備作業が進められ、1948年12月9日に国際連合総会の全会一致の下で採択された。本稿は、「ジェノサイド」の造語を編み出し、ジェノサイド条約の準備作業にも参加したラファエル・レムキンが本条約の内容に与えた影響について、本条約の準備作業以前の彼の条約構想と本条約の規定を、準備作業の過程を踏まえて比較・検討することで、明らかにすることを目的とする。
著者
福井 花央 片山 修一 後藤 隆文 中原 康雄 大倉 隆宏 人見 浩介 青山 興司
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.1096-1100, 2018-08-20 (Released:2018-08-20)
参考文献数
13

卵巣広汎性浮腫massive ovarian edema(以下MOE)は正常の卵胞構造を有したまま,間質の浮腫により卵巣腫大を呈するまれな病態である.我々は女児に発症したMOEの2例を経験したので報告する.症例1は9歳,女児.主訴は食思不振,嘔吐,腹部腫瘤.下腹部正中から右側に,10 cm大の腫瘤を認めた.MRIで骨盤内腫瘤の被膜下にMOEに特徴的な所見であるネックレスサインと呼ばれる多数の小囊胞構造を認めた.術中所見では右卵巣が捻転しており,腫瘍や壊死の可能性を考え付属器切除術を施行した.症例2は4歳,女児.主訴は腹痛,嘔吐.MRIでネックレスサインを認めた.画像,臨床経験から術前にMOEと診断し,腹腔鏡下右卵巣捻転解除術および固定術を施行した.女児の急性腹症ではMOEの可能性を念頭におくべきである.
著者
後藤 力 東 幸仁 佐々木 正太 中河 啓吾 木村 祐之 野間 玄督 原 佳子 茶山 一彰 河村 光俊 奈良 勲
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.87-91, 2002 (Released:2002-08-20)
参考文献数
12

本研究では有酸素運動を行うことで一酸化窒素(NO)産生増加を介する血管内皮機能にどのような影響を及ぼすかを検討した。対象は運動習慣を持たない健常男性8名(平均年齢:27±3歳)とした。血管内皮依存性拡張物質としてアセチルコリン(ACh)を使用し,血管内皮非依存性拡張物質として 硝酸イソソルビド(ISDN)を使用した。また,NO合成酵素阻害薬としてNG-モノメチル-L-アルギニン(L-NMMA)を使用した。運動方法は最大酸素摂取量の50%とし,1日30分,5回/週の頻度で3ヶ月間行った。前腕血流量の変化はプレチスモグラフにて測定した。ACh投与では運動後に有意な増加を認め,NO合成酵素阻害薬であるL-NMMA投与下では消失した。血管内皮非依存性拡張反応では有意な変化を認めなかった。これらより有酸素運動による血管内皮機能の増強は,NO産生増加を介することが示唆された。
著者
後藤 知子
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

うつ病患者では、血清亜鉛濃度の低下、脳内セロトニン分泌の低下などが臨床報告されてきた。そこで、成長期からの潜在的亜鉛欠乏が精神発達・気分障害に及ぼす影響を明らかにするためラットを用いて検討した。睡眠時(明期)に対する活動時(暗期)自発行動量は、亜鉛欠乏食給餌12日目で有意に低下し、以降は低値を維持し、うつ様行動の可能性が考えらえれた。実験食給餌0~4日目のラットで、視床下部外側野におけるセロトニン・ノルエピネフリン放出量をマイクロダイアリシス法にて追跡した。その結果、亜鉛欠乏食給餌4日目の高カリウム刺激時におけるセロトニン・ノルエピネフリン放出量が低下傾向を示した。
著者
田渕 浩康 河原崎 秀志 桑村 友章 山田 和生 横田 克長 宮島 一人 鈴木 史忠 後藤 正夫 木嶋 利男
出版者
日本有機農業学会
雑誌
有機農業研究 (ISSN:18845665)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.69-78, 2017-09-30 (Released:2019-05-21)
参考文献数
31

有機農法,自然農法による畑地の連作栽培の可能性とその特性を明らかにすることを目的に,1996年秋作より,有機物のみの連用によるキャベツの連作栽培試験を実施した.その結果,10年間の平均収量は,化学肥料(化肥)区で22,700kg/haに対して,牛糞堆肥(牛糞)区で22,800kg/ha, 草質堆肥(草質)区で22,400kg/haであった.春作における収量推移は開始当初,化肥区に比べて堆肥区で収量が低く,1年目から3年目の間にいずれの処理区も減収していった.4年目からはいずれの処理区も増加に転じ,連作5,6年目には収量が回復しつつ,それ以降は処理区間の収量差はみられなかった.秋作では,開始から5年間の収量は化肥区で16,200-32,700kg/haに対し,牛糞区で25,100-39,300kg/ha, 草質区で18,100-36,600kg/haと比較的安定し,春作のような1~3年目の減収はみられなかった.6年目以降の収量は全体的に低下していき,堆肥区に比べて化肥区で低いことが多かった.主な発生病害は,春作ではRhizoctonia solaniによる株腐病,秋作ではSclerotinia sclerotiorumによる菌核病であったが,連作7年目に激発した菌核病被害が8年目以降はほんどみられなくなる「発病衰退現象」が観察された.土壌化学性では,有機物の連用により可給態窒素や有効態リン酸含量の増加が確認された.牛糞堆肥の連用ではカリウムの蓄積による塩基バランスのくずれ等に配慮が必要であることが示唆された.

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著者
後藤静香 著
出版者
希望社出版部
巻号頁・発行日
1926
著者
佐々 朋幸 後藤 和秋 長谷川 浩一 池田 重人
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.43-58, 1990-12-30 (Released:2017-10-20)
被引用文献数
10

They say, forests are being damaged in many parts of Europe, North America and Scandinavia by acid rain. In Japan also, the decline of adult Sugi tree (Cryptomeria japonica D. Don.) is going in urban areas, which is supposed by acid rain or acid materials from exhaust gases. The authors have an opinion that the influences of acid water will appear firstly on increase of soil acidity. Because, many kind of metals in soil will be exchanged to poisonous ions for tree fine roots or mycorrhizae, under such an acid soil condition. But, as it is extremely rare that rain water reaches forest floor directly without any touches on leaves, twigs, branches and stems, the water supplied to soil will certainly contain much amount of soluble nutrient elements derived from tree body, other than the amount in rain water. The other words, "the rain fall dropped on soil" means the throughfall or the stem flow changed in quality by such nutrient elements. The authors schement out a new method for collecting the stem flow and studied about the differences of acidity among rain fall, through fall and stem flow in relation to those nutrients' concentration. As the results of their study, they listed the following topics. 1) The acidity of stem flow always seems to converge to characteristic pH value in every species, independently of that of rain fall, as followings; Cryptomeria japonica: pH3.5〜pH4.1 Larix leptolepis: pH4.2〜pH4.8 Pinus densiflora: pH4.5〜pH5.2 Thujopsis dolabrata: pH5.0〜pH6.0 Fagus crenata: pH5.9〜pH6.5 2) The pH value of throughfall is always between that of rain fall and that of stem flow. 3) The pH value of stem flow is determined by multiple ionic action, not by single element. 4) The larger istheratio of(Ca+Mg+K+Na)/ organic-C in stem flow, the lower is the acidity. 5) The succeeding stem flow is different from the beginning one in the proportion between alkaline earth metals and alkali metals.
著者
後藤 宏行
出版者
日仏経営学会
雑誌
日仏経営学会誌 (ISSN:09151206)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.64-78, 2021 (Released:2021-09-20)

原価を計算すること、いくつかの決算データの評価基準を決定すること、損益を解明すること、費用・収益の予測を立てること、予測データと確認済データの差異を解釈すること。これらが企業の管理手段として考案された管理会計の目的である。 本書の目的は、図式・図表などを用いて管理会計(企業の管理手段)についての明瞭で構造化された総合的ビジョンを提供することであり、管理会計の仕組や企業にとっての意思決定支援手段としての有用性を理解するのに必要な知識体系(知識)が、全部原価計算、操業基準原価計算、その他の諸項目に割当てられるように構成された総括という形で提示されている。模範解答とともに提示された多数の設例、練習問題、適用例によって、更にこの分野についての実地経験(技術的知識・情報)を得ることが可能となる。 著者によれば、本書第16版(2015-16年)は法・経済学部の全学生、会計・管理・監査(CCA)の学士号・修士課程の学生、第三種上級技術者免状(BTS)を持つ学生、経営専門学校の学生を対象とするテキストである。
著者
後藤 宏行
出版者
日仏経営学会
雑誌
日仏経営学会誌 (ISSN:09151206)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.26-44, 2022-07-30 (Released:2022-09-01)

企業経営上の新たな要求を満たすため、活動基準原価計算すなわちABC(Activity Based Costing)法と呼ばれる新たな全部原価計算が提唱されている。この方式は、機能別原価分類よりもむしろ企業のさまざまな工程の横断面分析(価値連鎖)に立脚している。操業度と関連した費用態様の分析では、特定の経営構造において、企業の一部の費用は製造量または操業度に応じて増減するが、他の費用は操業度と無関係であることが認められるに至っている。操業度と費用の増減との関連を明らかにするため、費用を変動費と固定費に分類し、その増減を特徴づけて予測をするのに用いられる数学モデルを導出することが有用である。費用の可変性の分析では、操業度に応じて総原価または単位原価が増減することが証明されている。このような状況は全部原価計算の重大な欠点となる。合理的配賦法の原則は、固定費の全額が明示すべき正常操業度に対応するという事実に立脚している。原価に算入される固定費は正常操業度との関連で計算される。
著者
大川 順也 雲居 玄道 後藤 正幸
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会誌 (ISSN:09187324)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.31-46, 2021-06-15 (Released:2021-06-30)
参考文献数
25

一般的な質問応答システムでは,ユーザから与えられた質問を解析し,情報源となる文書集合から,質問に対する適切な回答を検索するモデル(回答文書検索モデル)を構築することで回答候補を抽出し,回答の自動化を実現している.コミュニティQAサイト(cQAサイト)における質問・回答文書に対して,回答文書検索モデルを構築する場合,基本的な手法として質問文書の類似度による手法が考えられる.しかし,cQAサイトで見られるような,質問ごとに存在する回答文書の多様性を的確に掴みながら,適切な内容の回答文書を提示することは困難であると考えられる.そこで本研究では,トピックモデルの代表的な手法であるLatent Dirichlet Allocation(LDA)を用いることで,従来手法では対応できなかった回答文書の多様性を考慮可能な回答文書検索モデルの構築手法を提案する.最後に,提案モデルの有効性を検証するため,実際にcQAサイトに投稿された質問・回答文書を用いた検証実験を行い,検索結果の性能を評価するとともに,得られた結果に基づいて考察を行う.