著者
斉藤 美香 齋藤 暢一朗
出版者
札幌学院大学総合研究所 = Research Institute of Sapporo Gakuin University
雑誌
札幌学院大学心理学紀要 = Sapporo Gakuin University Bulletin of Faculty of Psychology
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.1-12, 2019-02-15

本研究は援助要請行動を促進する目的で作成されたメンタルヘルス教育プログラム(講習)の受講後に援助要請行動が促進された学生と促進されない回避型の学生の個人要因の違いを検討した。調査方法は大学生250名に受講前後の援助要請行動と自己肯定感,自己隠蔽,レジリエンス,コーピング尺度からなる質問紙を実施した。分析の結果,従来の情報提供中心の心理教育プログラムでは,自己肯定感の高い人,社交性の高い人,意味づけや課題解決型ストレスコーピングスタイルを持っている人には一定の効果が得られた。しかし,自己肯定感および社交性の低い人,他者の目を気にする恥意識の強い人に対しては,これらの個人要因に影響を与えるような効果的なプログラム構成の検討が必要であると考えられた。This study examined the differences in individual factors of students whose Help− Seeking Behaviors were promoted and those who did not promote after mental health education program (lecture) created to promote Help− Seeking Behaviors. In the survey method, we conducted a questionnaire consisting of 250 university students' Help−Seeking Behaviors and self−positivity, self−concealment, resilience, coping scale before and after mental health education lecture. Results indicated that the conventional psychological education program focusing on information provision has certain effects for people with high self−efficacy, highly sociable persons, people with meaning and problem−solving stress coping style. However, for people with low self−efficacy and low sociability, those with strong embarrassment who care about the eyes of others, it is necessary to consider more effective program composition that will affect these individual factors.論文
著者
黄 舜範 村田 厚夫 脇坂 晟 吉江 利香 土屋 克巳 斉藤 喬士 武市 俊明 阪井 哲男 高見 佳宏 林 潤一 会沢 勝夫
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.391-399, 2004
参考文献数
28

レーザー光照射装置と光増感物質の進歩により,Photodynamic therapy(PDT)は近年,癌などの治療に用いられるようになってきた。その細胞に及ぼす影響を分子生物学的に解明することは,本療法の副作用を防止して,その効果を充分に引き出す上で重要であろう。そこでヒト培養細胞にPDTを施行した際に生ずる遺伝子発現の変動をcDNA発現アレーによって解析することを試みた。健常成人皮膚より調製した線維芽細胞を,光増感剤talaporphin(mono-L-aspartylchlorin e6,NPe6)10mg/dlとともに37℃1時間培養し,ダイオード,イオン,レーザー照射装置を用いて,664nmの可視光により1.00J/cm^2の線量で照射し,その後,さらに37℃で10分間培養した。この細胞からRNAを抽出し,逆転写反応により[^33P]標識cDNAプローブを調製した。このプローブとNylon membrane arrayとをハイブリダイズし,その結果をイメージング,プレートおよびイメージ,スキャナーを用いて解析した。その結果,PDTを受けた直後の線維芽細胞においては,アポトーシス関連遺伝子では,RARB(retinoic acid receptor beta)以外には有意の発現増大を示す遺伝子は見られず,むしろ膜輸送,細胞増殖,細胞内シグナル伝達および転写などに関連する遺伝子,特にCキナーゼ,S6キナーゼおよびCREBなどの発現増大が特徴的であった。この結果はPDT処理直後の細胞においては,細胞内シグナリング,カスケードが活性化されていることを示唆するものと考えられる。
著者
斉藤 清 真辺 達男 入野 理
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.91, no.2, pp.105-109, 1988
被引用文献数
3

ifenprodil tartrateのマウスin vivoおよびヒトex vivo血小板凝集抑制作用の発現様式についての研究を行なった.マウスの血漿中ifenprodilレベルはifenprodil tartrate 30mg/kg経口投与20分後に最高値に達し,投与3時間後にかけて減衰した.一方,最大抑制作用は投与1時間後にみられた.このようにifenprodil tartrateは血漿中ifenprodilレベルが最高値に達した後に抑制作用を発現した.同様の現象はヒトex vivo血小板凝集に対するifenprodil tartrateの抑制作用においてもみられた.ifenprodilの血小板凝集抑制作用発現の遅れの理由を解明するため,マウスにおいて,本薬経口投与後の血小板内ifenprodil含量を測定した.血小板ifenprodil含量の推移パターンは抑制作用の推移パターンと酷似していることが判明した.このことはifenprodil tartrate経口投与による血小板凝集抑制作用の発現が血漿中ifenprodilレベルよりむしろ血小板内ifenprodil含量に直接的に関連していることを示唆している.
著者
斉藤 洋志 田畑 剛 田極 薫
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Db1228, 2012

【はじめに、目的】 当院では、2005年度より理学療法士・作業療法士が摂食・嚥下リハビリテーション(以下嚥下リハ)を実施してきた。嚥下リハに介入してから6年が経過するため、当院で嚥下リハを実施した患者の実状を調べるとともに、当院における嚥下リハの効果を検証し、今後の課題を明らかにすることを目的とした。【方法】 2007年1月~2011年3月に当院で嚥下リハを実施した症例252名(男性143名、女性109名)を対象とした。診療記録より後方視的に調査し、嚥下リハを実施した症例の摂食状況のレベル(藤島ら、Lv.1~Lv.10、以下摂食レベル)について、嚥下リハ開始時と終了時で比較した。また終了時の動作能力を、端坐位保持では「自立群(監視を含む)、介助群」に分けて両群の終了時の摂食レベルを比較した。移乗・歩行動作では、終了時の動作能力を「完全自立、修正自立、監視、最小介助、中等度介助、最大介助、全介助、非実施」の8段階に分け、各動作能力と終了時の摂食レベルとの相関を調べた。統計学的解析にはSPSS Ver.12.0を用い、有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 この研究はヘルシンキ宣言に基づいて行い、個人情報保護のため得られたデータは匿名化し、個人情報が特定できないように配慮した。【結果】 平均年齢は82.3±10.1歳で、全体の90%が70歳以上であった。疾患別では呼吸器疾患が50%と最も多く、次いで脳血管疾患、消化器疾患、骨関節疾患、神経疾患、心疾患の順であった。また、摂食レベルを嚥下リハ開始時と終了時で比較したところ、1レベルでも改善したのは全体の79%、変化なしは18%、悪化は3%で、Wilcoxonの符号付き順位検定にて有意差(p<0.001)を認めた。嚥下リハ開始時ではLv.4以上(経口摂取あり)は全体の17%と少なかったのに対し、終了時ではLv.4以上は59%と増加し、多くの症例が経口摂取できるようになっていた。また、嚥下リハ終了時の端坐位保持能力を自立群と介助群に分け両群の摂食レベルを比較した結果、自立群の摂食レベルが高く、Mann-WhitneyのU検定にて有意差(p<0.001)を認めた。介助群ではLv.6(3食の嚥下食経口摂取+代替栄養)以上は全体の26%であるのに対し、自立群では54%と増加していた。移乗・歩行動作能力を8段階に分け、各動作能力と終了時の摂食レベルとを比較した結果、各動作能力が高ければ摂食レベルも高く、Spearmanの順位相関係数にて弱い相関がみられた(移乗動作r=0.412、歩行動作r=0.378)。【考察】 当院で嚥下リハを実施した症例の90%が70歳以上であった。この結果は「70歳以上の高齢者では安静時の喉頭位置の下降が著しく、喉頭侵入や誤嚥の可能性が高くなる(古川1984)」という報告と一致する。よって、特に70歳以上の患者に対して、頭部拳上運動、喉頭周囲筋群のストレッチなどの間接練習をさらに充実させる必要がある。また、嚥下リハ開始時と終了時の摂食レベルを比較すると、全体の79%で改善がみられ、当院において理学療法士・作業療法士が積極的に嚥下リハに介入してきたことは有効であったと考えられる。嚥下リハ終了時の端坐位保持能力では自立群の摂食レベルが高く、移乗・歩行の動作能力においても動作能力が高ければ摂食レベルも高い結果であった。摂食・嚥下障害と運動機能、動作能力との関連については多数報告されており(樋浦2005、太田2006、高井2006ら)、今回もそれを再確認することとなった。嚥下リハとともに基本的動作能力主体のリハビリテーションを実施し、患者の基本的動作能力を改善させることは、摂食・嚥下機能の改善にも有効であると考えられる。また、終了時の摂食レベルが改善しなかった21%については、今後検討していく必要がある。【理学療法学研究としての意義】 今回の研究により、当院における嚥下リハの実状が明らかとなった。また、摂食・嚥下機能と動作能力との関連性が再確認され、運動機能や動作能力について専門性が高い理学療法士・作業療法士が嚥下リハに介入していくことは有効であると考えられる。
著者
高田 峰雄 斉藤 嘉昭
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要. 第2部 (ISSN:05776856)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.103-109, 1980-12-20

1.中学校技術科の栽培学習に利用できるような養液栽培装置を試作し,それを使用して実際に何種類かの作物を種々の培地条件のもとで栽培した。2.装置はおおむね満足できる状態ではたらき,各作物も一応の生育をとげた。3.使用した培地ではバーミキュライトと赤玉土がよく,れき・グラスウール,くん炭では生育が劣った。4.試作した装置は,(i)生徒一人一人に別々の一区画の培地を与えることができる。(ii)培地条件に変化を持たせることができる。(iii)調査に際して手軽に教室に持ち込むことができる。などの長所を有している。5.しかし,(i)教材として最適作物の検討が必要である。(ii)培養液の濃度,循環回数,循環時間,などについて検討する必要がある。(iii)の培地条件についてもさらに検討を要する。等々,これから検討すべき課題も多く残った。
著者
荒 邦章 斉藤 淳一 永井 桂一
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会 年会・大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2013, 2013

ナトリウムは優れた伝熱・流動性などを有し、高速炉の冷却材として使用されている。一方、酸素や水との化学的反応が活性であるという欠点を有する。本研究ではナトリウム中にナノ粒子を分散させて、ナトリウム自身の化学的活性度を抑制させることを目的としている。本発表では、そのアイデアとこれまでの試験データからの抑制メカニズムについて述べる。
著者
松岡 達郎 杜 勝久 斉藤 良仁
出版者
日本水産學會
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.880-888, 1995-11-15
参考文献数
16
被引用文献数
11 2

A method to assess size-selectivity of gillnets on the basis of variation of fish body forms was considered. Size-selectivity of a gillnet was defined as the probability both if a girth at anterior (around operculum) section of fish does not exceed a mesh perimetre and if the girth at the maximum body section exceeds it. In the present method, the probability distribution at each section against fish lengths were calculated according to normal distributions of the girth approximated with its means and standard deviations linearly correlated with lengths. Size-selectivity was derived from multiplication of the respective probability distributions. A series of tank experiments were conducted to obtain cartch ratios by tested gillnets for various sizes of tilapia, carp and rainbow trout. Selectivity curves of the tested gillnets for the species were calculated on measurements of body forms of the tested fish individuals, which were compared to the catch ratios. Regarding the wedged capture, the calculated selectivity curves were well supported by the catch ratios. It was concluded that the present method assesses <i>e</i>%-selectivity lengths of gillnets with errors less than 4% for species and size ranges caught by mainly the wedging function of gillnets.
著者
上岡 裕美子 斉藤 秀之 大橋 ゆかり 飯島 節
出版者
茨城県立医療大学
雑誌
茨城県立医療大学紀要 (ISSN:13420038)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.97-108, 2010-03

脳卒中者(以下患者)への理学療法の目標設定方法としてチェックリスト式患者参加型目標設定法(Patient Participation Goal-setting Method using Checklist: PPGMC)を用い、また目標達成度の測定にGoal Attainment Scaling (GAS) を用いて、その臨床有用性を検討した。3組の患者と担当理学療法士(以下PT)を対象に事例検討を行った。PPGMCは生活機能目標チェックリストと目標共有シートからなり、患者とPTが一緒に利用する。手順は、1)生活機能目標チェックリストに希望する目標をチェックする、2)目標を話し合う、3)決定した目標を目標共有シート記入する、4)理学療法を実施しGASで定期的に評価する、とした。最後にPTへ質問紙調査を行った。その結果、どの事例もPPGMCを用いることで各患者独自の生活機能目標を設定できた。質問紙から、PPGMCは活動・参加に関する患者の希望を把握しやすい、GASを用いて目標を段階的に達成し共通の認識を持つことで患者の意欲向上につながった、との意見が得られた。これらより脳卒中者への理学療法においてPPGMCとGASの使用が臨床的に有用であることが示唆された。
著者
斉藤 まなぶ 足立 匡基 中村 和彦 大里 絢子 栗林 理人 高橋 芳雄 吉田 恵心 安田 小響
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

発達障害の有病率及び併存率の推定:平成26年4月から平成28年10月までに健診に参加した全5才児3804名(月齢平均:63カ月)を解析の対象とした。一次スクリーニングは2923名(76.8%)から回答を得た。二次検診の対象児は607名(20.8%)であった。最終的に希望者31名を含む440名が二次健診に参加した。ASDの診断については、さらに補助診断検査としてASD診断を受けた対象者に後日ADI-RまたはADOSを施行した。その結果、自閉症スペクトラム障害(ASD)が3.30%、注意欠如・多動性障害(ADHD)が4.95%、発達性協調運動障害(DCD)が5.54%、知的障害/境界知能(ID/BIF)が3.33%であった。また、ASDではADHD合併が60.0%、DCDの合併が61.1%、ID/BIFの合併が40.0%であった。疫学調査における使用尺度の妥当性の検討:AD/HD-RSの内的整合性(N Takayanagi, et al. 2016)、ASSQ短縮版の5歳児適用における妥当性(足立ら、2016)を検証した。リスク因子の検討:得られた疫学データからロジスティック回帰分析を行い、ASDのリスク因子は出生体重2500g未満と父親の高齢が有意な結果となった。バイオマーカーの検討:ASD群でIGF-1、VLDL-Cho、VLDL-TGに有意な性差があった。バイオマーカーとASD、ADHD症状との関連性はIGF-1が実行機能の問題、VLDL-Choが相互的対人関係の問題、VLDL-TGが社会性、想像力、対人関係の問題と負の相関があったGazefinderを用いた注視点検査では、5歳のASD児は興味のある映像への注視は長く、興味のない映像への注視は短いことが確認された。