著者
早川 清雄 成 英瀾
出版者
日本医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

近年、生活習慣病とその基盤病態として『慢性炎症』が注目されている。申請者は、活性化されたマクロファージでは脂質代謝と炎症シグナルとが密接に連携して制御されていること、炎症刺激後に増加する脂質合成はカスパーゼ依存的であることを見いだした。炎症応答に伴うカスパーゼの活性化は従来よく知られた細胞死のシグナルとなるだけでなく、 脂質合成の亢進を介して炎症の慢性化を防ぐ生存シグナルとしても機能している可能性が高い。本研究ではカスパーゼを介する脂質代謝制御の観点から炎症慢性化の分子メカニズムを明らかにすることを目指す。
著者
早川 喜太 吉川 大弘 古橋 武
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第28回ファジィシステムシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.580-585, 2012 (Released:2013-07-25)

企業にとってアンケート調査は,市場の動向や消費者の嗜好などに対する知見を得るための重要な手段の一つである.しかし,これらアンケートにおいて,質問項目を適切に設計することは,重要な課題であると同時に,極めて困難な問題となっている.例として,回答者にとって同じ意味として捉えられる質問項目がアンケートに含まれている場合,同じ質問を複数回尋ねることとなり,アンケートの回答データを解析する上で,質問数あたりの情報量の減少につながる.しかしながら,質問項目を回答者がどのように捉えるか,あるいはそのばらつき方については,アンケートの質問項目の設計段階では予測することは難しい.一方で,アンケート実施後に,用いた質問項目の良し悪しや,回答者の質問の捉え方を解析することは可能であると考えられる.そこで本稿では,アンケートの回答データから,用いた質問項目間の関係を解析し,解析結果をもとに次回以降のアンケートの質問項目設計にフィードバックすることを目的とする.本稿では,対象空間における"質問ベクトル"を定義し,質問ベクトル間の角度に基づく質問間関係の解析手法を提案する.
著者
早川 弘輝 末永 昌宏 飛永 純一 武内 有城 内村 正史 野村 尚弘 飯田 俊雄
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.34, no.8, pp.1331-1335, 2001 (Released:2011-06-08)
参考文献数
20
被引用文献数
1

症例は41歳の女性. 手術歴はない. 平成3年と5年に下腹部痛で当院を受診. 平成11年11月7日夕方突然間欠的な右季肋部痛が出現, 次第に増強して当院内科を受診した. 右上腹部に強い圧痛を認め腸音は亢進していたが, 反跳痛や筋性防御はなく, 白血球数, CRP値も正常であった. 腹部X線写真, およびCTで肝前面の横隔膜下に鏡面像を伴った小腸の拡張を認めた. 嘔吐も出現し, イレウスの診断で経鼻胃管を挿入し内科入院したが, 鎮痛剤投与でも腹痛は続き外科紹介. 腹部は鼓張し腸音は金属音で内ヘルニアを疑い緊急手術を施行. 肝と腹壁の間にviolin string状の索状物を伴った著明な線維性癒着を認め, その間に小腸が入り込んでいた. 小腸を引き出し線維性癒着を切除してイレウス解除できた. 子宮附属器に軽度の炎症像を認め, 術後の採血でクラミジアIgA抗体は1.38, IgG抗体は5.41と陽性でクラミジア感染による肝周囲炎が原因のイレウスと考え報告した.
著者
早川 裕真 浅野 哲夫
雑誌
研究報告アルゴリズム(AL)
巻号頁・発行日
vol.2015-AL-152, no.8, pp.1-8, 2015-02-24

近年では社会の複雑化に伴って,より巨大なグラフに対する最短経路問題の解決が求められるようになってきている.しかし,巨大なグラフに対する最短経路問題を実際に計算機上で解くためには,グラフの大きさに比例した多くのメモリが必要になる.本研究では,平面上の最短経路問題を解く実用的でメモリ効率の良いアルゴリズムの開発を行う.また,現場では障害物をある対価を払って通過することがあり,そのような障害物に重みがついている場合への拡張も行う.
著者
早川 利郎 徐 錫元 伊賀上 郁夫
出版者
The Japanese Society of Applied Glycoscience
雑誌
澱粉科学 (ISSN:00215406)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.173-179, 1980-08-31 (Released:2011-07-01)
参考文献数
35
被引用文献数
4 10

コメ澱粉粒は7~25μ くらいの球形もしくは楕円体を呈し,澱粉粒を構成する澱粉小粒は4~6μ くらいの多角立方体である.1個の澱粉粒は20~60個くらいの澱粉小粒を含んでいる. 新潟県地方に栽培される12品種(もち種を含む)の精製澱粉をSEM観察した結果,一部の澱粉小粒の表面に凹みが観察された.澱粉小粒の形態に関して,品種間による差異は見いだしえなかった. 澱粉小粒中心部のTEM観察では,僅少ではあるが,小粒の中心部は周辺部に比較して,澱粉の一部が分解をうけ,粗構造を呈しているように思われた. 蛋白顆粒は3つの形態が観察された.オスミウム酸によって突起状組織を有するように染色され,径0.5~0.7μ くらいの小球形,中心部が濃く染色され1~3μ くらいの球形,そしてオスミウム酸に均一に染色され,球形もしくは角形で1~3μ くらいのものである. 澱粉小粒は蛋白質性膜物質に包まれており,この膜はオスミウム酸によって染色される蛋白質性顆粒物質に連絡しているのが観察された. 胚乳表層部の澱粉粒には蛋白顆粒が没入しているのが観察された.胚乳中心部においては澱粉粒と澱粉粒の間に蛋白顆粒がくさび状に干渉し,澱粉粒の一部が浸食を受けているように思われる箇所が観察された.
著者
早川 英明
出版者
Japan Association for Middle East Studies (JAMES)
雑誌
日本中東学会年報 (ISSN:09137858)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.41-69, 2018-01-15 (Released:2019-03-15)

本稿は、レバノンのマルクス主義思想家マフディー・アーミル(Mahdī ‘Āmil, 1936-1987)による宗派主義に関する理論を、アーミルがいかに国家というものを捉え、その宗派主義との関係を論じたかに特に注意しながら辿る。その上で、レバノンの左派における「世俗主義」の意味を巡る議論、およびアラブ知識人によるアラブ文化をめぐる議論の文脈に位置付けることで、新たな示唆を得ることを目指す。 アーミルはレバノン共産党の重要な知識人として主に1970-1980年代に活躍した。1975年にレバノン内戦が勃発し、共産党も宗派主義廃絶を掲げて参戦すると、アーミルは宗派主義や内戦について論じる著作を多く発表する。 アーミルは宗派主義を「ブルジョアジーが階級支配を実践する政治体制の特定の歴史的形態」、宗派を「従属諸階級と支配階級を結びつける政治的関係」と定義する。彼によれば、宗派主義はブルジョワ国家の体制であるから、宗派主義廃絶は社会主義への移行によってしかあり得ない。従って、内戦において宗派主義廃絶を掲げ戦った共産党の行動も、反ブルジョワ国家的行動と理解される。アーミルはまた、レバノンの資本主義の発展の遅れによって宗派主義が旧時代から残存したという見方を否定し、むしろ、資本主義的な社会構造において、ブルジョワ国家の体制としての機能を果たすことによって存在しているとした。旧時代の遅れた要素と考えられていた宗派主義が、実は近代ブルジョワ国家によって維持されていると主張したのである。 アーミルの宗派主義論を読むことで二つの示唆が得られる。第一に、レバノンの左派の「世俗主義」を、単なる「政治と宗教の分離」という主張ではなく、近代レバノン国家の再編成を目指すものとしても理解できる。これにより、レバノンの左派における「世俗主義」と「宗派主義」「近代」との複雑な関係も認識できるだろう。第二に、多くの現代アラブの思想家によってしばしば「後進的」と捉えられたアラブ地域の文化と、近代以降の国家との関係を批判的に再検討し、「近代」と「文化的遺産」を同時代の互いに絡み合ったものとして捉えるという、現代アラブ思想史におけるアーミルの位置付けを見出すことが出来るだろう。
著者
早川 尚志
出版者
京都大学大学院人間・環境学研究科「地域と環境」研究会
雑誌
地域と環境 (ISSN:13440985)
巻号頁・発行日
no.13, pp.91-107, 2014-12

日本の都城プランが中国の長安を模倣したものであるのに対し,恭仁京のプランは都を貫く大河,内在する港,偏在する内裏と「朱雀大路」,左右京に山地が介在する狭隘な甕原の選地,と例外だらけであったが,その原因は長らく究明されてこなかった。そこで筆者は恭仁京を隋唐のもう一つの都洛陽と比較検討することで,その例外性の原因に迫り,恭仁京が他の日本の都城と違って洛陽を模倣して成立したものである可能性が浮上した。
著者
早川 敬之 藤田 昌史 芳賀 弘和 坂本 康
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
水工学論文集 (ISSN:09167374)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.1531-1536, 2005-02-01 (Released:2011-06-27)
参考文献数
7

It is necessary to evaluate the characteristics of river environment for planning river works and for setting an environmental target of preservation and improvement of habitats. Therefore the technique to analyze the relation between the distribution of living things and physical, chemical and biological environments of river habitats is required. In this paper, we presented an integrated water quality index and an integrated river flow type index. The latter was based on results of principal component analysis applied to the factors involved in HIM (Morishita, 1998). The integrated indices were used as criterion variables for a multiple regression analysis of fish data and some indicator species were presented. The multiple regression model was used for the estimation of integrated index values of verification rivers and showed good performance.
著者
早川 太基
出版者
東方學會
雑誌
東方學 (ISSN:04957199)
巻号頁・発行日
vol.136, pp.22-39, 2018-07
著者
早川 東作 守 一雄
出版者
東京農工大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

笑顔装着具で「笑顔」を作らせた時の効果を実験的に検証した。効果の潜在指標として感情誤帰属手続き(Affect Misattribution Procedure, Payne et al., 2005)を用いた。市販の救急絆創膏2つを輪ゴムでつなぎ、輪ゴムを頭の上を通して絆創膏で両頬をつり上げる条件と、逆に顎の下を通して両頬を引き下げる装着具を作成した。大学生80名(男52名女28名)をランダムに頬引き上げ(=笑顔)条件と、引き下げ条件に割り当てた。実験の結果、笑顔条件では、AMPでの評価がより好ましい方向に変化することが確認された。
著者
平尾 滋章 山本 良平 西野 豊和 加藤 兼房 佐々 寛巳 水口 一衛 川口 克廣 早川 哲夫
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.671-674, 1992-06-15

免疫測定法において血清干渉因子による非特異的干渉作用を除去するには,測定系にゼラチンを添加することが有効である.しかし,ゼラチンの添加によりかえってバックグラウンドの上昇等が認められる場合がある.そこでケラチンを添加した緩衝液を作製し,その効果について検討した.ケラチンは,非特異的干渉作用を抑制し,かつゼラチンに見られるようなバックグラウンドの上昇を示さなかった.
著者
伊藤 嘉章 小泉 恵英 木川 りか 原田 あゆみ 白井 克也 志賀 智史 楠井 隆志 河野 一隆 早川 典子 大橋 有佳 渡辺 祐基 川村 佳男 望月 規史 川畑 憲子 森實 久美子 酒井田 千明
出版者
独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2018-04-01

初年度である今年度は、情報収集を兼ねて多角的に調査を開始した。タイでは、国立の伝統文化財部で現在行われている王室の御座船の修理方法や伝統的人形劇の人形、漆工品、色ガラスを多用した木製品、布製品、石造彫刻等の製作・修理技法のほか、寺院の壁画の修理技法について調査を実施した。インドネシアでは伝統的な影絵であるワヤン・クリの製作技法や機織りによるイカットの製作技法、伝統的な青銅製品(ゴング)の製作技法についての聴き取り調査を実施した。ミャンマーではこの地域に特有な性質をもつ漆工品の調査を行い、ベトナムでは伝統的木製品の修理のための調査のほか、藕糸の製作技法に関する調査を行った。また国内に存在するアジア地域に関連する文化財についても積極的に調査を進めた。中国式寺院の独特な様式をもつ仏像や金工品や、国内で保有しているアジア地域と関連する染織品(藕糸を使用したと考えられる絵画やインド更紗)、韓国の伝統的絵画(綿布に書かれた絵画)の修理方法についての調査、響銅(佐波理)の製作痕の調査、インドネシアのガムランの音色にかかわる構造などについての詳細調査を実施したほか、出土した茶入などの陶器についても製作技法を解明するためにCTによる詳細な構造調査を行った。このほか、修理技法と係る基礎研究としては、アジア地域で伝統的技法に多用されてきた灰汁について文書の修理への利用を念頭に、成分分析と修理対象となる紙に対する影響調査を行った。
著者
村田 希吉 大友 康裕 久志本 成樹 齋藤 大蔵 金子 直之 武田 宗和 白石 淳 遠藤 彰 早川 峰司 萩原 章嘉 佐々木 淳一 小倉 裕司 松岡 哲也 植嶋 利文 森村 尚登 石倉 宏恭 加藤 宏 横田 裕行 坂本 照夫 田中 裕 工藤 大介 金村 剛宗 渋沢 崇行 萩原 靖 古郡 慎太郎 仲村 佳彦 前川 邦彦 真山 剛 矢口 有乃 金 史英 高須 修 西山 和孝
出版者
一般社団法人 日本外傷学会
雑誌
日本外傷学会雑誌 (ISSN:13406264)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.341-347, 2016-07-20 (Released:2016-07-20)
参考文献数
26

【目的】重症外傷患者における病院前輸液と生命予後, 大量輸血および凝固異常との関連について明らかにする. 【対象と方法】Japanese Observational Study of Coagulation and Thrombolysis in Early Trauma (J–OCTET) で後方視的に収集したISS≧16の外傷796例について, 28日死亡, 大量輸血 (24時間Red Cell Concentrate : RCC10単位以上), 外傷性血液凝固障害 (Trauma–Associated Coagulopathy : TAC : PT–INR≥1.2と定義) の3つを評価項目として, 病院前輸液施行の有無の影響を検討するために多変量解析を行なった. さらに年齢 (65歳以上/未満), 性別, 重症頭部外傷合併の有無, 止血介入 (手術またはIVR) の有無により層別化解析した. 【結果】病院前輸液施行85例, 非施行711例であり, 両群間における年齢, 性別, 28日死亡, 大量輸血, 止血介入に有意差を認めなかった. 病院前輸液群ではISSが高く (中央値25 vs. 22, p=0.001), TACが高率であった (29.4% vs. 13.9%, p<0.001). 病院前輸液は28日死亡, 大量輸血の独立した規定因子ではなかった. TACの有無を従属変数とし, 年齢・性別・病院前輸液の有無・ISSを独立変数とするロジスティック回帰分析では, 病院前輸液 (オッズ比 (OR) 2.107, 95%CI 1.21–3.68, p=0.009) とISS (1点増加によるOR 1.08, 95%CI 1.06–1.10, p<0.001) は年齢とともに独立したリスク因子であった. 層別解析では, 65歳未満 (OR 3.24, 95%CI 1.60–6.55), 頭部外傷合併 (OR 3.04, 95%CI 1.44–6.42), 止血介入例 (OR 3.99, 95%CI 1.40–11.4) において, 病院前輸液は独立したTACのリスク因子であった. 【結語】ISS≧16の外傷患者に対する病院前輸液は, 28日死亡および大量輸血との関連は明らかではないが, TAC発症の独立したリスク因子である. 特に65歳未満, 頭部外傷合併, 止血介入を要する症例に対する病院前輸液は, TAC発症のリスクとなる可能性がある.
著者
山本 晴彦 岩谷 潔 鈴木 賢士 早川 誠而 鈴木 義則
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.424-430, 2000-09-05 (Released:2008-02-14)
参考文献数
23
被引用文献数
4 3

1999年9月24日早朝, 九州西岸に上陸した台風18号は, 九州を縦断し周防灘から山口県に再上陸し西中国地方を通過した後, 日本海に抜けた.台風の経路上および経路の東側に位置した気象官署では最大瞬間風速40m/s以上の強風が吹き, 最大風速も九州中南部を中心に20m/s以上を観測した.九州や西中国地方では台風の通過と満潮が重なり, 有明海沿岸や周防灘では高潮により堤防が決壊し, 農作物に塩害が発生した.台風に伴う九州7県の農作物および農業用施設の被害総額は914億円, 被害面積20万haにも及んだ.また, 山口県の小野田市や宇部市の消防本部では最大瞬間風速が52.0m/s, 58.9m/sの強風を観測した.宇部港では最高潮位が560cmを観測し, 推算満潮位351cmを209cmも上回る著しい高潮であった.このため, 周防灘に面した山口県内の市町では高潮災害が相次いで発生し, 農林水産被害は高潮に伴う農耕地の冠水と塩害, 強風に伴う農作物の倒伏, ビニールハウスや畜舎の損壊, 林地の倒木など約100億円に及んだ.山口市秋穂二島でも堤防の決壊により収穫直前の水稲や移植直後の野菜苗に約100haにわたり塩害が発生し, 収量が皆無となった.
著者
早川 哲史 今村 文彦
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.51-66, 2002-05-31
参考文献数
19
被引用文献数
3