著者
赤坂 郁美 財城 真寿美 久保田 尚之 松本 淳
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2019, 2019

<b>1. </b><b>はじめに</b><br> <br>マニラでは、1865年からスペインのイエズス会士により気象観測が開始され(Udias, 2003)、戦時中を除き現在まで150年近くの気象観測データを得ることができる。20世紀前半以前の気象観測データを時間的・空間的に充分に得ることができない西部北太平洋モンスーン地域において、降水量とモンスーンの関係とその長期変化を明らかにする上で、貴重な観測データであるといえる。そのため、著者らはこれまで19世紀後半~20世紀前半の気象観測資料を収集し、データレスキューを進めてきた(赤坂,2014)。また、データの品質チェックも兼ねて、19世紀後半~20世紀前半の降水量の季節進行とその年々変動に関する解析を行っている(赤坂ほか,2017など)。そこで、本調査では風向の季節変化に関する調査を追加し、マニラにおける19世紀後半の降水量と風向の季節変化及びそれらの年々変動を明らかにすることを目的とした。<br><br> <br><br><b>2. </b><b>使用データ及び解析方法</b><br><br> 19世紀後半のマニラ観測所では、多くの気象要素の観測を時間単位で行っていた。そのため、降水量は日単位であるものの、風向・風速や気圧に関しては時間単位のデータを得ることが出来る。本調査では、日本の気象庁図書室やイギリス気象庁等で収集した気象観測資料(Observatorio Meteorologico de Manila)から、1890年1月~1900年12月の日降水量と風向・風速の1時間値を電子化して使用した。1870年代のデータも入手済みであるが、1870年代は風向・風速が3時間値のため、本稿では風の1時間値が得られる1890年代を対象とした。欠損期間は1891年10月、1893年6月である。<br><br> まず、降水と風向の季節変化を示すために、風向の半旬最多風向、半旬降水量を算出した。また、赤坂ほか(2017)と同様に雨季入りと雨季明けを定義し、半旬最多風向の季節変化との関係を考察した。<br><br> <br><br><b>3. </b><b>結果と考察</b><br><br> 1890~1900年の平均半旬降水量と半旬最多風向を図1に示す。大まかにみると、乾季における最多風向は北よりもしくは東よりの風で、雨季には南西風が持続している。乾季である1~4月(1~23半旬頃)の最多風向をみると、1月は北風であるが、2~4月には貿易風に対応する東~南東の風がみられる。この時期の降水量は特に少ない。5月中旬頃(27半旬)になると、降水量が年平均半旬降水量を超え、雨季に入る。最多風向は5月初旬(26半旬)に南西に変わり、5月下旬(29半旬頃)以降、南西風が持続するようになる。これは南西モンスーンの発達に対応すると考えられる。降水量は、6月中旬(34半旬)に一気に増加し、9月中旬(53半旬)にかけて最も多くなる。この期間の最多風向は南西のままほぼ変化しない。降水量は9月下旬(54半旬)に急激に減少し、その後、変動しながら年末にかけて徐々に減少していく。最多風向は9月下旬にはまだ南西であるが、10月初旬(56半旬)になると急激に北よりに変化し、1月まで北よりの風が持続する。この時期が北東モンスーン期に対応すると考えられる。<br><br> 最多風向の季節変化はかなり明瞭であるが、雨季と乾季の交替時期との間には2~3半旬の遅れがみられる。この時期に関しては最多風向だけでなく、風向の日変化も含めてどのように風向が変化していくのかを把握する必要がある。<br><br> 本稿では1890年代の半旬最多風向と降水量の季節変化について気候学的特徴のみを示したが、発表では19世紀後半の風向と降水量の季節変化における年々変動についても議論する。
著者
森口 弘美 井口 高志 太田 啓子 松本 理沙 モリグチ ヒロミ イグチ タカシ オオタ ケイコ マツモト リサ Moriguchi Hiromi Iguchi Takashi Ohta Keiko Matsumoto Risa
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Social science review (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.123, pp.83-99, 2017-12

研究ノート(Note)本稿では,知的障害者と一緒に取り組んだ調査活動を紹介し,インクルーシブリサーチの観点から検討を加えた。その観点とは,1)言語だけに頼らない多様な方法を用いること,2)知的障害者のポジティブな変化,3)障害のない人の変化である.今後我が国においては,知的障害者が自らの権利や差別といった問題をテーマとした調査研究にアクセスしたり,そのプロセスに参加したりできる状況を作っていく必要がある.In this paper, we introduce the research activity "What kind of cafeteria everyone likes to go?" in which we tried to research with people with intellectual disabilities, and reconsider the research activity in some aspects related to Inclusive Research. The aspects are 1) Various methods not limited to languages, 2) positive change of people with intellectual disabilities, 3) change of people without disabilities. In Japan, few inclusive research has been done. It is necessary to make people with intellectual disabilities to be able to access and participate in researches on their own rights or discrimination.
著者
坂本 光弘 松本 理器 十川 純平 端 祐一郎 武山 博文 小林 勝哉 下竹 昭寛 近藤 誉之 髙橋 良輔 池田 昭夫
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.10, pp.609-616, 2018 (Released:2018-10-24)
参考文献数
26
被引用文献数
4 2

自己免疫性てんかんが近年注目されているが,抗神経抗体以外の特異的な診断法は確立していない.今回我々は最初に病歴・臨床症候,次に検査成績と2段階で自己免疫性てんかんを診断するアルゴリズムを作成し,臨床的有用性を予備的に検討した.自己免疫性てんかんが疑われた70名に後方視的にアルゴリズムを適応した.MRI,髄液,FDG-PET検査のうち,2項目以上異常所見があれば診断に近づく可能性が示された.一方で抗体陽性13名のうち2名は,第一段階の臨床症候で自己免疫性てんかんの可能性は低いと判断された.包括的抗体検査のもと診断アルゴリズムの更なる検証,改訂が望まれる.
著者
松本 理器 菊池 隆幸 山尾 幸広 中江 卓郎 小林 勝哉 下竹 昭寛 吉田 和道 國枝 武治 池田 昭夫 宮本 享
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.316-325, 2019 (Released:2019-06-25)
参考文献数
12

適切に選択された2種類以上の抗てんかん薬で単独あるいは併用療法が行われても, 1年以上発作が抑制されないてんかんは薬剤治療抵抗性てんかんと定義される. 全てんかん患者の30~40%を占め, 外科治療適応を検討することが推奨されている. 本稿では, 最近の診断技術の進歩も踏まえて, 部分てんかんのてんかん焦点診断のためにキーとなるてんかん関連領域を概説し, 実際の症例提示から, てんかん焦点の術前診断のプロセスを紹介する. 焦点関連領域の評価にはさまざまな検査法を行うが, 単独で焦点診断に至る 「万能な」 検査はなく, 各検査の特性・限界を理解して, 各種検査間の結果の整合性を検討しながら, 包括的に術前評価を行うことが重要である.
著者
三村 直哉 井上 岳司 下竹 昭寛 松本 理器 池田 昭夫 髙橋 良輔
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.430-435, 2017 (Released:2017-08-31)
参考文献数
18
被引用文献数
1

34歳女性.肉類系統の食事の摂取,視聴により誘発されるてんかん発作を主訴に来院.20代前半よりミンチ肉を用いた食物を摂取した際に,フラッシュバックと心窩部不快感の単純部分発作(simple partial seizure; SPS)を認めた.33歳時,ホットドッグを摂取直後,その半年後には水餃子の調理映像を視聴した際に同様のSPSの後,全般性強直間代発作を生じた.上記調理映像を視聴中に脳波検査を施行,発作が誘発された.脳波所見では,左frontalからmid temporal最大のθ波が律動的に出現した後,全般化した.特定の食物の摂取で誘発,かつ視聴のみでも発作が誘発され,eating epilepsyの多様性を示唆した.
著者
田中 宏 江口 由紀 松本 明子 杉井 健祐 坂口 智香 丹後 ゆかり 丸濱 勉 藪嶒 恒夫
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.248-253, 2016 (Released:2016-11-02)
参考文献数
12

終末期における抗がん治療の現状を知り緩和ケア病棟(PCU)の意義を検討する目的で,2013年10月からの2年間に当院で死亡したがん患者414例(PCU 219例,一般病棟195例)を対象に,抗がん治療歴や緩和ケア状況を検討した.その結果,一般病棟ではPCUに比べ高齢で,診断が遅く,病勢進行が速い患者が多く,これらが標準的な抗がん治療や緩和ケアの機会を妨げる要因となった可能性が示唆された.一方,化学療法施行例においては,最終治療日から死亡までの中央値がPCU 110日に対し一般病棟は55日と有意に短く,死亡前1カ月間の化学療法施行率もPCU 2%に対し一般病棟は32%と高率であった.終末期の抗がん治療を適正化する上でPCUの意義は大きいと考えられたが,診断時期や病勢進行速度にかかわらず早期からの緩和ケアを実践するには,社会全体に向けた緩和ケアやアドバンスケアプランニングの普及啓発が大切である.
著者
村松 一弘 武井 利文 松本 秀樹 土肥 俊
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.50, pp.27-32, 1996-05-24
参考文献数
8
被引用文献数
1

大規模流体解析と同時に解析結果を可視化する、実時間可視化システムを開発した。本システムはUNIXベースのネットワーク分散環境に対応しており、計算サーバとしての分散メモリ型並列マシンCenju?3と、XおよびMotifが装備されているクライアントワークステーション()で動作する。並列計算サーバ上で、流体解析とイメージデータ生成までの処理を行ない、解析結果の可視化表示と可視化のための諸パラメータの制御をクライアントで実行する。またJPEGのような画像圧縮技術を実装することにより、サーバからクライアントへの転送データの削減を図っている。これにより、バンド幅の狭いネットワークでもサーバからクライアントへのデータ転送がネックにならないと考えられる。A real-time visualization software system has been developed for concurrent visualization of on-going large-scale flow simulation. This software runs in UNIX-base distributed environment composed of a Cenju-3 distributed-memory parallel computing server and a client workstation equipped with X and Motif. The flow simulation and generation of pixel images for display are performed on the parallel server, while graphical monitoring of the simulation results and steering of visualization parameters are performed on the client. Image compression techniques (such as JPEG) are also employed for the data transfer from the server to the client, so that the software can work on a standard low-cost network such as the Ethernet.
著者
相原 一貴 松下 和太郎 小野 武也 石倉 英樹 佐藤 勇太 松本 智博 田坂 厚志 積山 和加子 梅井 凡子 沖 貞明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】整形外科的手術で出血量抑制のために使用されるターニケットは,虚血再灌流障害を引き起こし骨格筋の浮腫や炎症,萎縮を発生させる可能性が報告されている。我々は先の動物実験において,圧力300mmHgで90分間ターニケットを使用すると,虚血再灌流後に筋収縮力の低下が生じ,その低下は再灌流後7日目においても完全回復に至らないことを明らかにした。しかし,7日目以降の筋収縮力の変化に関しては不明である。そこで,虚血再灌流後の筋収縮力の変化を明らかにする目的で,虚血再灌流後14日目における筋収縮力の測定,および歩行動作との関係について検討した。【方法】10週齢Wistar系雄ラット12匹(体重360.1±14.2g)を6匹ずつ正常群(以下C群)と虚血再灌流群(以下IR群)に分けた。IR群は,まず麻酔下で後肢にターニケットカフを巻き,圧力300mmHgで90分間の駆血を実施した。そして14日後に,両群の筋収縮力の測定と歩行観察を実施した。歩行観察は傾斜0°のラット用トレッドミル上を分速10m/minで歩行させ,その様子をビデオカメラで撮影し,その動画から足指伸展角と踵骨高を測定した。足指伸展角は爪先離地時に踵骨と第4中足骨を結ぶ線と床に平行な線がなす角度とし,値が小さい程伸展していることを示す。また踵骨高は足底接地時の踵骨と床の垂直距離とした。筋収縮力の測定は,ヒラメ筋を摘出し95%酸素および5%二酸化炭素の混合ガスを常時通気しているリンゲル液で満たしたオーガンバス内へ入れ,電気刺激を加え測定した。測定後のヒラメ筋は,凍結させHE染色し筋横断面短径を測定した。統計学的解析は,対応のないt検定を用い,危険率5%未満をもって有意差を判定した。【結果】筋収縮力はC群116.5±7.4g,IR群69.2±13.3g,筋横断面短径はC群58.6±2.8μm,IR群46.3±4.2μmであり,どちらもC群に比べIR群に有意な低下が認められた(P<0.05)。一方,歩行に関する測定項目である足指伸展角および踵骨高では,両群間に有意差は認められなかった(P<0.05)。【結論】本研究結果にて,筋収縮力や筋横断面短径はC群よりもIR群が有意に低下していたが,歩行に関する評価項目に有意差は認められなかった。一般的に筋収縮力は,筋横断面積と比例関係にある。また,虚血再灌流障害の症状として浮腫や炎症,筋萎縮が報告されている。そのため,IR群では虚血再灌流により低下した筋収縮力が完全回復していないことが推測できる。一方で,歩行に関して差がなかったことについては,歩行自体は低負荷の運動であるため,運動から筋機能の状態を評価するには,より負荷の高い運動に対する反応から判断する必要性が示唆されたと推測する。よって,虚血再灌流後14日では,歩行が正常であっても,筋機能の回復は完全ではない可能性があることを明らかにした。
著者
斉藤 幹貴 榎本 剛 松本 隆
出版者
一般社団法人 システム制御情報学会
雑誌
システム制御情報学会論文誌 (ISSN:13425668)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.10-16, 2002-01-15
参考文献数
7

A hierarchical Bayesian approach is formulated for nonlinear time series prediction problems with neural nets. The proposed scheme consists of several steps : <BR>(i) Formulae for posterior distributions of parameters, hyper parameters as well as models via Bayes formula.<BR>(ii) Derivation of predictive distributions of future values taking into account model marginal likelihoods.<BR>(iii) Using several drastic approximations for computing predictive mean of time series incorporating model marginal likelihoods.<BR>The proposed scheme is tested against two examples; (A) Time series data generated by noisy chaotic dynamical system, and (B) Building air-conditioning load prediction problem. The proposed scheme outperforms the algorithm previously used by the authors.
著者
杉本 毅 松本 征 丸山 伊広 TUYOSI SUGIMOTO SUSUMU MATUMOTO TADAHIRO MARUYAMA
出版者
京都府立大学学術報告委員会
雑誌
京都府立大学学術報告 農学 (ISSN:00757373)
巻号頁・発行日
no.21, pp.46-53, 1969-10

ハナキンポウゲの害虫キツネノボタンハモグリバエの個体群動態を研究するために, 先ず卵, 幼虫の密度および寄主植物の葉面積の推定法を検討した。1)卵および幼虫各令期における, 葉を抽出単位としたときの空間分布はいづれも集中的であることがわかった。よって資料の分散分析を行なうには予めもとの値xをsinh^<-1>√<(β-1)/(α-1)>xに変換すべきである。2)葉当り卵および幼虫数は枝タイプの間で有意差が認められるが, 株の間には認められなかった。他方, 葉当り葉面積は枝タイプおよび株の間に有意差が認められた。3)株当り葉数の変動を知るために, 便宜上株当りの枝数と枝当り葉数の変動を別々に検討した結果, 両者とも株間, 枝タイプ間に大した差はなく, したがって株当り葉数はこれらの要因によってあまり影響を受けないようである。4)株当り葉数と葉当り虫数または葉当り葉面積の間には相関は認められない。すなわちそれぞれ2つの量は互に独立変数として扱うことができる。他方, 葉当り虫数と葉当り葉面積の間にはかなり高い相関が認められた。5)以上から株当り虫数の有効な推定値を得るには枝タイプによって, また株当り葉面積の推定値をより効率よく求めるには, 技術上のはん雑を避けるために株間変動を無視して枝タイプによって母集団を2つに層別するのが望ましい。6)以上の分析に基づいて株当りの虫数, 株当りの葉面積および単位葉面積当りの虫数の推定法を示した。In the present paper it was intended to establish the sampling design to estimate the population density of the leaf mining fly, Phytomyza ranunculi, and the surface area of leaves of the garden ranunculus, Ranunculus asiaticus, as its host plant. The insect population distributed spacially in the overdispersed pattern in all stages of egg and larva. So the original counts (x) should be transformed to sin h^<-1>√<(β-1)/(α-1)>x before the analysis of variance. It was recognized that the number of insects per leaf varied significantly between branch types but did not between plants. On the other hand, the surface area of leaf of host plant per leaf differed significantly both between branch types and between plants. To know the variation of the number of leaves per plant, the number of branches on a plant and the number of leaves per branch were separately subjected to the analysis. The result showed that there were no significant differences between branch types and between plants. Also because there was no significant correlation between the number of leaves per plant and the number of insects per leaf or the surface area of leaf per leaf, two values in each pair seem to be independent of each other. The significant correlation, however, was recognized between the number of larvae per leaf and the surface area of leaf per leaf. From above analyses the population should be stratified basing upon the branch types so as to obtain the more efficient estimates of the number of insects per plant, of the surface area of leaf per plant and of the number of insects per unit surface area of leaf. The last section shows the methods to estimate those values by the subsampling or two-stage sampling with primary units of unequal size.
著者
角田 雅照 伏田 享平 亀井 靖高 中村 匡秀 三井 康平 後藤 慶多 松本 健一
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.874-881, 2011-12-15 (Released:2012-02-08)
参考文献数
12
被引用文献数
2

本稿では,時空間情報(位置,移動時間,移動距離)と動作に基づく認証方法を提案する.ユーザは時空間情報で定義された特定の認証点において,特定の動作を行うことにより認証に成功する.ただし,時空間情報を認証に用いる場合,認証に時間が掛かり,やり直しが容易ではないため,正しいユーザが認証に失敗する確率を抑える必要がある.そこで,認証行為の部分的な誤りを許容する,部分一致認証を提案する.また,時空間文字を用いて安全性の評価方法を定式化するとともに,提案手法が安全性において有効であることを実験により示す.実験により提案方法の安全性を評価した結果,本人拒否率は0.233%,他人受入率は0.010%となった.
著者
松本 苗緒 吉川 真弓 江田 邦章 小林 あゆみ 横島 真澄 村上 正人 金来 広文
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.211-222, 2008-06-25
被引用文献数
14

簡易に加工された農産物中残留農薬分析における簡易前処理法を検討した.試料をペースト状に細切均質化しガラス遠心管中でアセトニトリル抽出および塩析後,アセトニトリル/ヘキサン分配し,ミニカラム(グラファイトカーボン/NH<sub>2</sub>およびシリカゲル)で精製した.分析はGC/MSおよびLC/MS/MSを用いた.試験溶液のマトリックス効果を調べた結果,正負の両方で影響が見られたことから,マトリックス効果を排除するためにマトリックス検量線を用いた.試料8種(にんにくペースト,青ピーマンカット,グリーンピースペースト,セロリーペースト,さつまいもペースト,あずき(乾),たけのこ水煮,トマトペースト)について235農薬の添加回収試験を行った結果,いずれの試料とも214農薬で回収率は50~100%,変動係数は20%未満であった.本法は食品中残留農薬のスクリーニング方法として活用できると考える.
著者
松本 祐介 甲斐 恭平 山田 隆年 中島 明 佐藤 四三
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.7, pp.1786-1790, 2008 (Released:2009-01-06)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

症例は73歳,男性.3年2カ月前から当院内科にて慢性膵炎として外来通院していた.当初よりCTにて膵背側に嚢胞性の腫瘤があり膵仮性嚢胞の疑いで経過観察されていたが1年前より徐々に腫瘤が増大し血中CA19-9の異常高値(5,240U/ml)を認めた.悪性腫瘍との鑑別が困難なため手術目的で当科紹介となった.開腹すると膵背側の腫瘤は約4cmで周囲の組織にはさほど炎症所見が無く腫瘍性病変を考え膵体尾脾切除,胆嚢摘出術,膵管胃吻合を施行した.病理組織学的検査にて病変は大小2個の嚢胞より成り嚢胞壁は重層扁平上皮で覆われ所々にリンパ濾胞も有しておりリンパ上皮嚢腫(Lymphoepithelial cyst)と診断された.経過は良好で術後2カ月のCA19-9は11.4U/mlと正常化した.今回われわれは慢性膵炎の経過中に偶然発見され膵仮性嚢胞の疑いで経過観察の後に手術となった症例を経験した.病変が経過とともに増大していることと慢性膵炎を伴っていることからその成因を推測する上で示唆に富む症例であった.

1 0 0 0 OA 食べ物の味

著者
松本 仲子 松元 文子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.97-101, 1977-05-20 (Released:2013-04-26)
被引用文献数
8
著者
杉山 統哉 田中 宏太佳 鄭 丞媛 松本 大輔 近藤 克則
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.B3O2093, 2010

【目的】<BR> 脳卒中後の機能回復の予後において社会的サポートのレベルが高いほどActivities of Daily Living (以下ADL)点数が高くなるという報告がある.社会的サポートとは周囲の人々から得られる有形・無形の援助のことであり,家族介護者は社会的サポートの主な提供者の1つである.そこで介護力の有無により自宅退院率だけではなく,脳卒中後の機能回復に影響があるのかどうかを明らかにすることを目的とした.<BR> 日々の臨床においてもリハビリテーション(以下リハ)の対象となる患者は,関わる人が多い場合,帰結が良くなるという印象がある.仮説として特に家族介護者の関わりが多い方がより早く治したい,動けるようになりたいという感情が強くなり,帰結に影響を及ぼしているのではないかと考えた.しかし脳卒中後リハ対象患者において人の関わりがADLにどう影響を及ぼしているかを検討した報告はほとんどない.そこで多施設参加型データベースであるリハビリテーション患者データバンク(リハDB)に登録されている脳卒中患者のデータを使用し,検討したので報告する.<BR>【方法】<BR> 2009年5月までにリハビリテーション患者データバンク(以下リハDB)に登録された3,930名(30病院)のうち入院病棟区分が「一般病棟」の2,238名(19病院)から今回の検討するデータが入力されている9病院から入院時歩行不可である618名(男性365名,女性253名)を対象にした.患者選択基準は「発症前modified Rankin Scale(以下mRS)0~3」,「入院時mRS4・5 」,「55歳以上84歳以下」,「在院日数8日以上60日以下」,「発症後リハビリ開始病日21日以下」,「発症後入院病日7日以下」,以上の基準を満たすものを分析対象とした.対象の内訳は年齢72.4±7.9歳,発症から入院までの日数1.3±0.7日,発症後リハ開始病日2.8±2.8日,在院日数29.1±12.3日,リハ期間26.0±12.3日,1日あたりのリハ単位数(保険請求分)4.0±2.3単位であった.今回の検討は転・退院時の歩行状態が自立か非自立を帰結にした.そこで対象を転・退院時歩行自立294名と歩行非自立324名に分類した.転・退院時の歩行の自立・非自立の定義は入院時のFunctional Independence Measure(以下FIM)とmRSを掛け合わせることで設定した.リハDBのデータ項目の中から転・退院時の歩行状態を予測する因子として性別,年齢,確定脳卒中診断分類(脳梗塞,脳出血,くも膜下出血),在院日数,糖尿病の有無,高血圧の有無,合併症の有無,脳卒中既往歴,発病前mRS,発症後リハ開始病日,認知症の有無,意識レベル,下肢運動,入院時半側空間無視の有無,入院時感覚障害の有無,入院時FIM運動項目合計,入院時FIM認知項目合計,介護力の有無,装具処方の有無,リハ専門医の関与の有無,カンファレンスの実施状況,休日・付加的な訓練の有無,1日あたりのリハ単位数を選択した.上記の項目を独立変数とし,転・退院時の歩行自立・非自立を従属変数としてSPSSver12.0を用いてロジスティック回帰分析を行った.また,有意水準は5%未満とした.<BR>【説明と同意】<BR> 本研究において用いたデータは,リハDBについて説明の上同意した協力施設から,匿名化処理をし個人情報を削除したデータの提供を受けた.<BR>【結果】<BR> 選択した各変数の単変量解析(χ2検定)を行った結果,糖尿病の有無,高血圧の有無,発症後リハ開始病日,装具の処方の有無,カンファレンスの実施状況,1日あたりリハ単位数以外は有意確率0.05以下であった.<BR> ロジスティック回帰分析の結果は性別が「男」,脳卒中確定診断分類のうち「脳梗塞」,脳卒中既往歴「なし」,発症後リハ開始病日が「3日以内」,下肢運動「正常」,感覚障害「正常」,入院時運動・認知項目合計得点が高い,介護力「0~1人」「1人以上」,リハ専門医の関与「あり」が転・退院時の歩行自立が多い因子(p<0.05)であった.判別的中率は87.3%,HosmerとLemeshowの検定ではχ2=4.485(p=0.811)であった.今回の検討項目である介護力の有無に関してのオッズ比は歩行非自立を「1」としたとき,介護力「なし」に対して「0~1人」が7.142(95%信頼区間:1.846~27.625),「1人以上」が7.448(95%信頼区間:1.799~30.832)であった.<BR>【考察】<BR> 入院時の他の条件が同じ患者でも介護力が大きい人ほど歩行自立する確立が高いことが示された.1993年StrokeのGlassらによると高いレベルの社会的サポートは脳卒中後の機能回復に関連し,重要な予後因子であるかもしれないと報告している.今回の結果においても介護力の有無が脳卒中患者における歩行自立の重要な予後因子であるかもしれないということが示唆された.<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 本研究の結果から,急性期脳卒中患者において集約的合理的にリハを行う・予後予測する一助になると考えられる.