著者
林 宇一 永田 信
出版者
一般財団法人 林業経済研究所
雑誌
林業経済 (ISSN:03888614)
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.1-13, 2016 (Released:2017-04-27)
参考文献数
6
被引用文献数
1

日本林業は、森林組合等の法人林業事業体の労働者と林家及び非法人林業事業体の労働者により担われている。国勢調査の「従業上の地位」分類では、それぞれ役員を含む【雇用者】とそれ以外の非【雇用者】に対応すると考えられる。それらについて、産業分類上の「林業」就業者と職業分類上の「林業作業者」の動向を1980年から2010年について明らかにすることを目的とした。非【雇用者】・「林業」就業者では、「農林漁業作業者」が95%以上で、【雇用者】・「林業」就業者では「林業作業者」が60~65%、「事務従事者」が20%強であった。いずれでも「林業作業者」が増加傾向にあった。「林業作業者」 の産業構成を見ると、「協同組合」の定義変更の影響は【雇用者】において顕著で、非【雇用者】においてはそもそも「協同組合」就業者はいなかった。また「従業上の地位」を踏まえて林業労働者総数の推計を行なったところ、2010年については7万4千人となった。
著者
林 康史 木下 直俊
出版者
立正大学経済学会
雑誌
経済学季報 (ISSN:02883457)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.35-65, 2014-07

ドル化は,自国の象徴としての存在意義や通シニョレッジ貨発行権益を喪失し,政府は通貨供給能力と為替政策を放棄することになるが,通貨の発行造幣および管理といったコストを削減でき,理論上,中央銀行は不要になると考えられている.実際,パナマには中央銀行は存在しない.しかし,エクアドルおよびエルサルバドルでは,ドル化政策の実施から10 年以上が経っても中央銀行が存在する.パナマは1903 年にコロンビアから分離独立し,米国の承認のもと米ドルを法定通貨として以来,100 年以上にわたり実質的な自国通貨を持たず,中央銀行もない.金融政策もまったくとられていない.エルサルバドルは対内直接投資の増加や放漫財政に陥るリスクへの対策,さらなる経済的な安定を企図して,2001 年にドル化政策を実施した.事実上,金融政策はとられていない.エクアドルはインフレが昂進し,経済混乱のなか,経済を建て直す最後の方策として,2000 年にドル化に至った.エクアドル中央銀行(BCE: Banco Central de Ecuador)は新たに銀行規制を講じている.市場金利を8 つのセクターに分けて上限金利を設定したほか,預金の60% を国内に留保し,国内市場での運用を義務づけた.結果,民間銀行は与信基準を緩和することになり,貸出が増加し,マネーストックは拡大した.これらドル化政策実施国の事例は,ドル化政策に至った経緯のみならず,運用実態においても各国のドル化の様相は異なっていることを示している.エクアドルは,ドル化によって生じる制約下にあって,銀行規制や資本規制を行うことで,マクロ経済安定化のための金融政策の手段を取り戻すという,一見伝統的ではない,独自の方策を編み出し実施している.こうした試みは,銀行規制・資本規制が一国のマクロ経済安定化にとって有効たりうることを示唆しており,金融の新しい実験ともいえ,例えば,米ドルへのドル化を実施した国のみならず,欧州連合加盟・非加盟を問わずユーロを導入する欧州諸国の中央銀行にとっても銀行規制・資本規制が応用可能な金融手段となりうるとも考えられる.
著者
岡山 加奈 藤井 宝恵 小野寺 一 荒川 満枝 小林 敏生 片岡 健
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.269-277, 2011 (Released:2011-12-05)
参考文献数
23
被引用文献数
1

2002年にCenters for Disease Control and Prevention (CDC)より公表された “Guideline for Hand Hygiene in Health-Care Settings” や2009年にWorld Health Organization (WHO)より公表された “WHO Guidelines on Hand Hygiene in Health Care” では,現場でより効果的に運用可能な擦式アルコール製剤を用いたラビング法と自然爪の長さが6.35 mm未満であることが推奨されている.我々は,自然爪の長さが擦式アルコール製剤を用いた手指消毒と手指細菌叢に及ぼす影響を細菌学的に明らかにするため,手指衛生について学習経験のある看護学生および大学院生17名を対象に検討を行った.その結果,自然爪の長さが短い群(2.4 mm)と長い群(5.4 mm)で比較すると,手指消毒後の手指菌数において,自然爪の長さが短い群は4.3 CFU,長い群は40 CFUと長い群の菌数が有意に多かった.爪下菌数は,手指消毒前後とも自然爪の長短による有意差を認めなかったが,手指消毒後にも関わらず自然爪の長さが2.4 mm以上では1.6×103 CFU/mm2以上の細菌が検出された.爪下と手指から検出される菌種は類似しており,coagulase-negative staphylococciやBacillus spp.の検出率が高く,菌数も多くを占めていた.さらに,自然爪の長さが長くなるとmethicillin-resistant S. aureusやS. aureusのような医療関連感染原因菌が手指と爪下へ残存しており,除去することが困難であった.本研究結果は,自然爪の長さが長いと擦式アルコール製剤を用いた手指消毒効果が減弱することを示唆している.
著者
三木 貴弘 藤田 直輝 竹林 庸雄
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11517, (Released:2019-02-09)
参考文献数
29

【目的】近年,症状ごとに患者を分類し,対応する特異的介入を行う方法が提言されており,頸部痛において,Treatment Based Classification(以下,TBC)と呼ばれる分類法が提唱されている。今回,頸部痛に対しTBC を基に臨床推理を行い,生物心理社会的モデルに基づいた介入を行ったので報告する。【症例と経過】安静時・夜間の頸部痛が主訴であり,些細なことでも頸部痛が増強するのではないかと不安になることが多い70 歳代男性であった。患者情報および客観的評価よりExercise and conditioning に分類し,「患者教育」「頸部筋および肩甲骨周囲筋の筋持久力および協調性改善」「有酸素運動」を中心とした介入を約5 週間行った。【結果】愁訴は軽減し,さらに痛みに対して前向きに捉える発言が多くなった。【結語】頸部痛をTBC を基に分類し,多面的な介入を行うことで効果を上げることが可能であった。
著者
農林省水産局 編
出版者
農林省水産局
巻号頁・発行日
vol.大正15年3月, 1926
著者
野口 貴弘 戸嶋 和也 中西 千江 今井 志保 竹林 崇
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.114-119, 2021-02-15 (Released:2021-02-15)
参考文献数
21

要旨:麻痺手の実使用を増やすためにCI療法のTransfer package(以下,TP)を修正し,病棟と協業することを目的とした.修正TPは以下の手順で実施した(①TPの対象となる活動の映像を撮影,②看護師に動画を用いて伝達,③ADLで病棟看護師が動画を参考に実動作を指導).対象者は回復期病棟入院中の4名とした.4症例の変化量の結果を以下に示す.4症例ともにMotor Activity Log(以下,MAL)のQuality of Movement(以下,QOM)が向上した.本研究では,2症例が先行研究のMAL(QOM)の臨床上重要な最小変化量を超えた.病棟での看護師によるTPは,麻痺手の使用行動に良い影響を与える可能性がある.
著者
青木 賢人 林 紀代美 AOKI Tatsuto HAYASHI Kiyomi
出版者
金沢大学人間社会研究域人間科学系
雑誌
金沢大学人間科学系研究紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Sciences Kanazawa University (ISSN:18835368)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.1-26, 2021-03-31

While the occurrence of an inland earthquake with an active fault, which is a low-frequency and high-intensity disaster, is assumed with a high probability, in recent years, in Kanazawa city and its surroundings in Ishikawa Prefecture that have not experienced large-scale disasters. We conducted questionnaires survey to parents who are using nursery school. Among them, the authors investigated the recognition (occurrence probability, seismic intensity, etc.) for active fault earthquakes and how we assumed the disaster situation and investigated the perception of the difficulty of hand over their children. As a result, both nursery schools and parents highlighted that knowledge and recognition of the active fault earthquakes were not sufficient, and it became clear that the perception of 'difficulties to hand over the children' is low.
著者
小林 大輔 小山 侑 清水 博之 杉山 健太郎
出版者
日本口腔顔面痛学会
雑誌
日本口腔顔面痛学会雑誌 (ISSN:1883308X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.19-25, 2016-12-25 (Released:2017-04-12)
参考文献数
22
被引用文献数
1

目的:三叉神経痛の治療法はカルバマゼピン(以下CBZ)の投与である程度確立されているが,副作用で服用の中断を余儀なくされる症例や,抵抗性を示す症例に遭遇することがある.そのような症例の臨床的特徴が明らかになれば治療の一助となると考え,三叉神経痛患者の臨床的検討を行った.方法:2010年4月から2015年3月に東京都立多摩総合医療センター歯科口腔外科を受診した三叉神経痛患者48例について年齢,性別,罹患部位,頭部MRI所見,治療法,副作用について調査を行った.結果:初診時年齢は29~96歳で平均年齢は67.9歳であった.性別は男性が11例(22.9%),女性が37例(77.1%)であった.罹患部位は第Ⅱ枝が25例(52.1%)と半数以上を占めた.頭部MRI撮影を行った44例において18例(40.9%)で原因血管の同定が可能であり,うち上小脳動脈が9例(50.0%)と最も多かった.3例(6.8%)に脳腫瘍を認め,3例の内訳は聴神経腫瘍および髄膜腫,類上皮腫であった.CBZを投与した45例のうち,34例(75.6%)で症状が寛解したが,11例(24.4%)についてはCBZの内服のみでは症状は寛解せず,追加の治療を必要とした.CBZの奏効量は200mgが19例(55.9%)と最も多かった.副作用は14例(31.1%)に認め,最も多い副作用はふらつきで6例であった.結語:今回われわれは三叉神経痛患者48例について臨床的検討を行った.しかしCBZに副作用,抵抗性を示す症例に明らかな臨床的特徴は見出すことができなかった.
著者
林 一真 梅田 恭子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.44109, (Released:2021-01-19)
参考文献数
20

本研究の目的は,1人1台のタブレット端末を活用した情報活用能力を育成する授業設計の留意点の提案である.この目標を達成するため,情報活用の場面を教育活動に応じて7つの区分に分け,公立小学校第6学年を対象として,1人1台のタブレット端末を活用した社会科の授業実践に取り組んだ.1学期は児童が自ら情報を収集し,整理,分析する「考える授業」,2学期は分析の結果を生かす「表現・伝達」をゴールに見据えた「探求的な学習」に取り組んだ.4回のスキル調査や評価テスト,5回のワークシートの内容や文字数の調査で,授業実践による児童の情報活用能力の変容を測り,分析を行った.
著者
若林 明雄
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
性格心理学研究 (ISSN:13453629)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.122-137, 1998

本論は, 1980年以降アメリカを中心に社会現象にまでなった`多重人格(現在は解離性同一性障害)'という現象について, その基底症状である解離という現象と併せて精神病理学的ならびに認知心理学的に再検討し, その症状の発現メカニズムについて考察することを目的とする.まず, 多重人格の基底症状である解離性障害(従来のヒステリー)について精神分析学的視点から病因論的に考察し, Freud以降心因論的に説明されていた解離症状が外傷性障害として再認識される傾向があることを指摘した.次に, パーソナリティ傾向と多重人格との関係について, 被催眠性-ヒステリー傾向の観点から両者の親和性を明らかにした.さらに, 多重人格を含む解離性障害の基本症状である健忘(記憶障害)について認知心理学的に検討し, 解離は心因性の記憶機能障害であり, 脳神経レベルの機能障害を伴うこと, そして多重人格は特殊な場合における記憶障害である可能性があることを示唆した.さらに, 解離および多重人格と記憶に関する神経生理学的研究から, 障害の基底に大脳辺縁系が関与していることを示した.以上の諸点を整理した結果, 多重人格症状は, 生得的な被催眠性の高さを準備状態とし, そこに自我形成期の前後にわたる重大な外傷的体験を被ることによって形成される個人内同一性間健忘という特殊な解離症状として説明できることを明らかにした.
著者
林紀 代美
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.472-483, 2003-05-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
28
被引用文献数
3 4

本稿では,中国におけるトラフグ養殖と輸出,および日本市場の対応を考察する.その成果を,フグ流通,水産物流通の空間構造を検討する一助とする.中国の養殖業者は,高収益を得るため,高級魚であるトラフグの養殖に着手した.日本との立地条件などの違いから,異なる養殖手法が開発され,日本より低密度で大量の生産が行われている.今後は,生産拡大により生じる供給過剰への対策が必要で,中国国内でのフグ食自由化,市場形成が望まれる.今日の日本のトラフグ流通は,低価格の中国産フグが新たな構成要素として加わり,集荷地域が海外へも拡大するとともに,フグ利用・消費層が広がった.調理・提供の都合から生産するフグのサイズの目標が決まるなど,販売・消費のニーズが,流通の構造や構成要素とその活動,要素間の相互関係を規定する大きな要因となっている.また,中間魚輸入や,市場卸売業者によるフグ食文化の紹介や中間魚取引の仲介も確認された.