著者
二ノ宮 史絵 古林 賢恒
出版者
「野生生物と社会」学会
雑誌
野生生物保護 (ISSN:13418777)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.63-77, 2004-02-25 (Released:2017-10-18)
参考文献数
43
被引用文献数
1

This paper describes a study of the spatial structure and gap dynamics of a beech forest affected by the overbrowsing by sika deer (Cervus nippon) in the eastern part of the Tanzawa mountain zone of Kanagawa Prefecture. Beech (Fagus crenata), walnut (Pterocarya rhoifolia), linden (Tilia japonica) and fir (Abies homolepis) dominate the canopy layer of the forest, but the shrub layer is dominated by epaullete trees (Pterostyrax hispidata), which are pioneer plants and unpalatable for sika deer. All seedlings except these are subject to great stress caused by sika deer overbrowsing. It assumed that epaullete trees invade and grow rapidly in many gaps in the beech forest, without competition from other species. On the other hand, seedlings of other species grow normally in areas protected by fence. In conclusion, control of the sika deer population is required for normal regeneration of the beech forest.
著者
林 鎭代 ハヤシ シズコ Hayashi Shizuyo
雑誌
研究紀要
巻号頁・発行日
vol.12, pp.37-46, 2011-03-31

昔話は,子どもが好む児童文化の一つとして,長い間子どもに語り継がれ親しまれてきたものである。しかし,昔話には子どもが楽しむというだけでなく,大人が子どもに重要な様々な情報を知らせる方法の一つとしても活用されてきたのである。そうした意味からも,昔話に登場するものは,子どもに示すべき何かを象徴するという役割をもっているのである。 日本の昔話には,恐ろしい存在としての"鬼"が度々登場してくる。そして,韓国の昔話にも,日本の"鬼"と同じ姿を持つ"トッケビ"が登場している。しかし,"鬼"と"トッケビ"は,その性質が同じようには表現されていない。日本の"鬼"と韓国の"トッケビ"は,どのような象徴とされ,どのような意図を持って子どもに語られてきたかを考察した。Folk tales have been handed down to children, and attracted widespread popularity as a child culture children favor. However, folktales have been utilized not only as children's amusement, but also as one of the ways that adults make a variety of important information known to the children. From this eaning, what appears in folk tales has a role to symbolize something that should be shown to children. In Japanese folktales, "Oni" appears frequently as a terror. And also in Korean folk tales, "Tokkebi" a has the same form with Japanese "Oni". However, the characteristics of "Oni" and "Tokkebi" are not described in the same way. What Japanese "Oni" and Korean "Tokkebi" have symbolized and what adults have intended when they talk to children were considered.
著者
三島 美佐子 小林 良彦 吉岡 瑞樹
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.31-43, 2022-01

著者らは,福岡県内に存在している(いた)サイエンスカフェについて情報収集し,特に継続的 に運営している(いた)サイエンスカフェを抽出することにより,過去14 年間にわたる福岡県での 「継続的サイエンスカフェ」の開催状況を明らかにした.また,それら「継続的サイエンスカフェ」 の多くが,「研究者」によって運営されている(いた)ことが分かった.加えて,より長期的に運営 されている(いた)「継続的サイエンスカフェ」に着目することにより,特定会場での開催がサイエ ンスカフェの継続性に関わる可能性がみえてきた.過去のサイエンスカフェの開催記録は,主に開 催案内・開催報告がインターネット上にのみ存在している場合が多い.現代における文化・実践の ひとつとしてのサイエンスカフェを,調査分析し,より広範に比較可能とするために,また,後年 分析可能な形で記録を継承するためにも,個々のサイエンスカフェ運営者による実践記録とその公 開促進の事業化が望まれる.
著者
春成 秀爾 小林 謙一 坂本 稔 今村 峯雄 尾嵜 大真 藤尾 慎一郎 西本 豊弘
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.163, pp.133-176, 2011-03

奈良県桜井市箸墓古墳・東田大塚・矢塚・纏向石塚および纏向遺跡群・大福遺跡・上ノ庄遺跡で出土した木材・種実・土器付着物を対象に,加速器質量分析法による炭素14年代測定を行い,それらを年輪年代が判明している日本産樹木の炭素14年代にもとづいて較正して得た古墳出現期の年代について考察した結果について報告する。その目的は,最古古墳,弥生墳丘墓および集落跡ならびに併行する時期の出土試料の炭素14年代に基づいて,これらの遺跡の年代を調べ,統合することで弥生後期から古墳時代にかけての年代を推定することである。基本的には桜井市纏向遺跡群などの測定結果を,日本産樹木年輪の炭素14年代に基づいた較正曲線と照合することによって個々の試料の年代を推定したが,その際に出土状況からみた遺構との関係(纏向石塚・東田大塚・箸墓古墳の築造中,直後,後)による先後関係によって検討を行った。そして土器型式および古墳の築造過程の年代を推定した。その結果,古墳出現期の箸墓古墳が築造された直後の年代を西暦240~260年と判断した。
著者
林田 一輝 水田 秀子 近藤 正樹
出版者
日本神経心理学会
雑誌
神経心理学 (ISSN:09111085)
巻号頁・発行日
pp.17130, (Released:2021-12-08)
参考文献数
25

異常感覚に伴って左上肢の無意味な運動が出現した脳梗塞症例を報告した.頭部MRIでは右中心後回,頭頂間溝前部,頭頂弁蓋部,島皮質後部に病変を認めた.運動麻痺はなく,左上肢の表在・深部感覚は脱失していた.拮抗失行,道具の強迫的使用は認めなかった.また,左手への他者接触時や他動運動時に痛みやしびれ感ではない不快な異常感覚を認め,それに伴って自己が意図しない左上肢の無意味な運動が出現していた.一方で自ら左手で対象物に接触したり,右手で左手を触った時には異常感覚は軽度であった.受動的な感覚に誘発された異常感覚が無意味運動の発現機序に関与している可能性が示唆された.
著者
小林 武夫 石毛 美代子
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.158-161, 2012 (Released:2012-06-11)
参考文献数
9
被引用文献数
1

17歳のとき月経痛がひどく,男性化作用のあるダイホルモンデポ®を投与され,音声障害を引き起こした女性を30年間にわたり追跡した.声は翻転し,話声位は低下した.18歳の初診時の話声位はB3で,30歳までこの状態が続き,48歳の現在話声位はF3となっている.この状態を声も相同と考えられる一卵性双生児の妹と比較した.ホルモン投与の当初,話声位は3半音低下を見た.自家で行った音声訓練にかかわらず,声は回復しなかった.
著者
林 良雄 今野 翔 ⼩林 清孝 神⾕ 亘 千⽥ 俊哉 千⽥ 美紀 ⼩島 正樹 ⽩坂 善之
雑誌
日本薬学会第141年会(広島)
巻号頁・発行日
2021-02-01

2019年末に発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、パンデミックを引き起こし、世界中に感染が拡大している。この克服には、原因ウイルスであるSARS-CoV-2を標的とする治療薬の開発が不可欠である。ウイルスプロテアーゼ阻害剤は、エイズやC型肝炎の特効薬となっているが、SARS-CoV-2も感染細胞でのウイルス複製に不可欠な3CLプロテアーゼ(3CL-ProまたはM-Pro)を有している。したがって、当該酵素を標的とする選択的阻害剤は、明確な作用機序に基づいたCOVID-19治療薬の候補になると思われる。 我々は、 2002年のSARSの発生を機にSARS-CoVが有する3CL-Proの阻害剤開発を進めてきた。1-6 その結果、 アリールケトン型阻害剤4-Methoxyindole-2-carbonyl-Leu-Ala((S)-2-oxopyrrolidin-3-yl)-2-benzothiazole(YH-53、 Ki = 6 nM against SARS-CoV 3CL-Pro)の創製に至った。本阻害剤は、当該システインプロテアーゼの活性中心にあるSH基に対して、アリールケトン部が可逆的な化学反応を起こし、強力な競合型阻害を示す。 SARS-CoVとSARS-CoV-2における3CL-Proのアミノ酸配列相同性が非常に高いことから、我々はSARS-CoV-2に対するYH-53の効果を現在検討している。最新のデータではYH-53はSARS-CoV-2の3CL-Proに対し、強力な酵素阻害活性を示す。更に細胞ベースの抗ウイルス評価においてSARS-CoV-2の感染を良好に抑制することを確認した。シンポジウムではYH-53の開発経緯と共に評価結果を報告したい。References: 1) Sydnes, O. M., Kiso, Y., et al., Tetrahedron, 2006, 62, 8601-8609. 2) Regnier, T., Kiso, Y., et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 2009, 19, 2722-2727. 3) Konno, S., Hayashi, Y., et al., Bioorg. Med. Chem., 2013, 21, 412-424. 4) Thanigaimalai, P., Hayashi, Y., et al., Eur. J. Med. Chem., 2013, 65, 436-447. 5) Thanigaimalai, P., Hayashi, Y., et al., Eur. J. Med. Chem., 2013, 68, 372-384. 6) Thanigaimalai, P., et al., J. Med. Chem., 2016, 59, 6595-6628 (総説).
著者
小林 信彦 Nobuhiko Kobayashi
雑誌
国際文化論集 = INTERCULTURAL STUDIES (ISSN:09170219)
巻号頁・発行日
no.30, pp.3-50, 2004-07-01

In the story of Jataka 316, a hare jumps into fire to offer his own body as broiled meat. This is a story of extreme self-sacrifice. The hare does this extreme act in order to satisfy a condition for becoming a buddha. This story was transmitted to Japan and adapted as konjakumonogatari-shu(今昔物語集) 5.13. However, its keystone has changed. The Japanese hare is not interested in becoming a buddha. Instead, the hare aims to acquire makoto-no-kokoro (誠ノ心 sincere heart): one who is possessed of it is said to defer his own profit to the interest of others.
著者
陸 金林 安藤 裕司 粕谷 英樹
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.48, no.9, pp.642-648, 1992-09-01 (Released:2017-06-02)
参考文献数
20
被引用文献数
2

本論文では音声音源波形を生成するために拡張したRosenberg-Klattモデル(RKモデル)を述べ、音声信号から半自動的にモデルパラメータを精度よく推定する方法を提案する。また、音声音源特性と発声様式の関係を調べる。弱い発生などによく見られる相対的に強い基本波成分を生成するため、RKモデルに一つのパラメータを追加する。音源パラメータの推定は声門逆フィルタリングとモデルパラメータの抽出の2段階からなっている。声門逆フィルタに用いられるホルマント周波数とバンド幅の推定には、我々が最近提案した複数閉鎖区間線形予測分析法(MCLP)を用いる。男性2名が異なる強さと高さで発声した母音サンプルを用いて音源パラメータを分析した。その結果、モデルパラメータの幾つかは発声の強さ及びピッチ周波数と系統的に関係することを示した。
著者
山本 幹雄 小林 聡 中川 聖一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.33, no.11, pp.1322-1330, 1992-11-15
参考文献数
11
被引用文献数
20

音声対話における発話文は 言い淀み 言い直し 間投詞 助詞の省略 倒置などの話し言葉特有の特徴を持つため これまでの書き言葉に対する自然言語の解析手法をそのまま適用するには問題がある・本論文では解析において まず問題と通る名詞文節の助詞落ちと倒置について 実際の音声対話文約1 800文を分析し その結果をもとに解析手法を提案する.音声対話文では 名詞文節の約4%の助詞が省略されていた.省略される助詞は「が を に は」など述部に係る場合に必須格の機能を持つものが80%を占めていた.係り先の性質としては 述部に係る助詞落ち名詞文節の99%が最も近くの述部に係る.また 文頭にある助詞落ち名詞文節は「は」が省略される可能性が高く(68%) 遠くに係る可能性を持っているまた 係り関係(格)については 述部の格構造の簡単な意味制約によって 90%が推定できることが分かった.倒置に関しては 述部に係る文節が倒置される場合が94%を占めており 倒置された句が1つ前の文節に係る場合が91%であった.また 倒置された句の直前の文節は必ず終止形で終わっていることが分かった.以上の分析を反映したヒューりスティックスを助詞落ちに関して5つ 倒置に関して2つ提案した.語彙が700の小規模な実験タスクで評価した結果 助詞落ち 倒趣共に約90%の例を正しく解析できることが分かった.
著者
筒井 昭仁 小林 清吾 野上 成樹 境 脩 堀井 欣一
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.79-88, 1983 (Released:2010-11-26)
参考文献数
33
被引用文献数
8

4つの小学校からの卒業生が進学する新潟県燕市立燕中学校の1年生計502名を対象に, 1980年5月, 検査者盲検法 (Blind Recerding Method) によりう蝕の状況と歯牙不潔度を調査した。その結果, 4つの小学校からの卒業生を, それぞれA, B, C, D群とした時, 小学校において特記すべき歯科保健対策の採られてこなかったA群はDMFS index 8.24 (SE=0.54), B群8.70 (0.54) であった。これに対し, 歯科保健対策として毎給食後の歯みがきを学校で実施してきたC群歯みがき群は7.99 (0.47) であり, 小学校入学時よりフッ素洗口法を行なってきたD群フッ素洗口群は4.56 (0.41) であった. C群のDMF Sindexは, A, B群を合わせた対照群に比べ5.8%少なかった。しかし, この差は統計学的に有意ではなかった。一方, D群のDMFSindexは, 対照群に比べ46.2%少なく, この差は統計学的に高度に有意であった。各群単位でみた歯牙不潔度, 治療歯率は, それぞれの群の間に統計学的な有意差は認められなかった。また, 別に調べたD群の出身小学校6年生のDMFT indexは, フッ素洗口法を開始した1973年の6年生が4.84 (SE=0.26) であったが, 8年後の1981年の6年生では3.00 (0.27) で, その差は38.0%であり, 統計学的に有意であった。以上, 小学校における毎給食後の歯みがきの励行は, 中学1年生時のう蝕り患状況の改善には有意に作用しなかった。一方, 小学校における週3回のフッ素洗口法の実施は有意に作用し, 同年齢の非フッ素洗口群に比べ口腔全体で40%前後のう蝕抑制効果をもたらした。これらの歯口清掃群およびフッ素洗口群の結果から, 学校歯科保健対策として採るべき方策について考察した。
著者
小林 利行
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.52-72, 2019 (Released:2019-05-20)

本リポートでは、NHK放送文化研究所が国際比較調査グループ(ISSP)の一員として、2018年10月から11月にかけて実施した「宗教」に関する調査の日本の結果について、過去の調査結果との時系列比較を中心に報告する。結果を簡単にまとめると以下のようになる。①信仰している宗教の割合は変わらないものの、信仰心は薄くなり、神仏を拝む頻度は低くなっている。②日本人の伝統的な価値観だと捉えられてきた“お天道様がみている”“人知を超えた力の存在”“自然に宿る神”といった感覚を持つ人は少なくなっている。③宗教に「癒し」などの役割を期待する人は減少している。宗教に危険性を感じる人は、感じない人よりも多い。④各宗教徒別では、「イスラム教徒」への否定感が他の宗教徒に比べて高い。日本ではこれまで、宗教について深く考えたことのなかった人も多いと思われる。しかし、改正出入国管理法の施行(2019年4月)によって、外国人材の受け入れが進む中で事情が変わる可能性がある。異なる宗教観を持った人達との付き合いが増えれば、今まで以上に「日本人と宗教」について考えなければならないケースが出てくるかもしれない。
著者
田中 孝昌 外山 史 宮道 壽一 東海林 健二
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.64, no.12, pp.1933-1939, 2010-12-01 (Released:2011-03-01)
参考文献数
13
被引用文献数
7 1

Today, the demand is increasing for comic contents on cellular phones and speech software for the visually impaired. When speech software reads aloud a comic character's speech, it is useful for both the visually impaired and unimpaired to have the character's voice injected with his/her feeling, which is inferred from types of speech balloons. As a result, comic contents come to life. In this research, a method has been developed to detect speech balloons on comic pages and then classify them into four types. In this method, speech balloon candidates are extracted based on speech text information detected by AdaBoost, and then speech balloons are selected and classified using SVM. Experimental results show that the proposed method successfully detected and classified 86 percent of 2844 speech balloons.
著者
小林 尚登 増渕 英行
出版者
The Society of Instrument and Control Engineers
雑誌
計測自動制御学会論文集 (ISSN:04534654)
巻号頁・発行日
vol.30, no.9, pp.1123-1125, 1994-09-30
参考文献数
5
被引用文献数
1

This paper investigates the possibility of detecting emergency voice. We adopt wavelet transformation for pre-processing the sounds, and we use a neural network for recognizing abnormalities.
著者
中林 敏郎
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.9, no.7, pp.284-289, 1962-10-15 (Released:2009-04-21)
参考文献数
6
被引用文献数
1

上述の実験結果から明らかなように,ナリンギナーゼの反応速度を支配するおもな因子であるpHと糖度,および湿度の影響に基いて作製した苦味消失時間を求める計算式は,実際に果汁を用いた試験の結果とほぼ一致する値を与える。したがってこれらの計算式を用いれば,与えられた条件の下で果汁の苦味を何時間で除表できるか,あるいはある一定の時間内で苦味を除去するためのもっとも有効な酵素の使用量は,何単位かなどをあらかじめ知ることが可能となる。そして実際に工場で試験した結果でも,ほぼ予想した時間で苦味の除かれた果汁を得ることができた。しかしこの際反応時間が長すぎた場合には,果汁の変色や香気の悪変およびパルプ質の分離などの現象がみられた。したがってこれらの点を改善するには酵素剤の精製,とくにペクチナーゼ活性の除去を行なうとともに,低温度で長時間反応させるなど,酵素の使用法についてもさらに検討することが必要であろう。なおこの実験で作製した計算式は,ナリンギナーゼANに対しては直ちに適用することができるが,前に報告3)したようにナリンギナーゼには,その種類によって性質に多少の差異があるので,他の酵素剤を使用する場合には,計算式の係数に多少の変更を加える必要があると考えられる。以上の結果を要約すれば,夏ミカン果汁の苦味除去にナリンギナーゼANを用いた場合。(1) pH 2.6~3.4の間では活性はpHの低下に直線的に比例して減少する。(2) 反応温度が50℃までの間では活性は温度の自乗に直線的に比例して増加する。(3) グルコースが4%までのときは,活性はグルコース濃度の平方根に逆比例して直線的に減少する。(4) (1), (2), (3)の結果に基いて,果汁の苦味除去に要する時間を予測する計算式を実験的に作製した。(5) 果汁1tに対し50~100万単位の酵素を作用させた場合は,実測値と計算値とが一致し,このときの酵素量がもっとも有効な添加量となる。
著者
若林 崇雄
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.19-22, 2013 (Released:2013-05-02)
参考文献数
19

要 旨 震災を契機に日本人と医療について考察した. 日本人は以前よりつながりを重視する文化を有していた. これはリスクを回避する役割があり, 重大な災害時でも秩序だった行動を可能にした. このような文化を有する日本人は欧米流の契約を主体としたプロフェッショナリズムを完全に受容しているわけではなく, むしろ「義理」や「人情」といったつながりを基盤とした思考に行動を規定されているのではないかと考えた. 我々日本人は日本の文化的基盤に即したプロフェッショナリズムを構築する必要があると考えた.