著者
小林 享夫 岡本 崇
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.89-104, 2003-12-30
被引用文献数
1

本報告は1998年8月および2000年3月に東京都小笠原村母島において,著者の1人岡本により採集された28点の植物病害標本上に認められた,植物寄生菌類の同定結果とそれらに関する若干の菌学的補遺について述べたものである。すなわち16科19属19種の植物上に22種の菌類と未同定2属の菌類による28種類の病害が観察された。これらのうちハチジョウススキ紫眼斑病菌Ascochyta miscanthi, マルバツユクサ斑点病菌Cercospora japonica, リュウケツジュ赤斑病菌Microsphaeropsis boninensis, シマギョクシンカ褐斑病菌Mycosphaerella tarennicola, およびヘクソカズラ灰褐斑病菌Phyllosticta boninensisの5種はそれぞれ新種として発表した。また日本新産種としてホウライショウ灰色葉枯病菌Fusicoccum vagans(Dothiorellaより転属処理),シュロガヤツリ灰色葉枯病菌Ascohyta papyricola, ムニンセンニンソウ褐斑病菌Ascochyta vitalbae, グアバ・モモタマナペスタロチア病菌Pestalotiopsis toxica, マンゴー灰色葉枯病菌Phomopsis mangiferae, パパイアホモプシス葉枯病菌Phomopsis papayae, マンゴー褐色葉枯病菌Phyllosticta anacardiacearumの7種を記録した。そのほか小笠原未記録種としてColeosporoum eupaederiae(ヘクソカズラさび病菌,種名変更),Colletotrichum capsici(パッションフルーツ炭疽病菌),Fusicoccum aesculi(キュウリ褐色葉枯病菌),Pestalotiopsis adusta(ヘクソカズラペスタロチア病菌),Pseudocercospora paederiicola(ヘクソカズラ角斑病菌),Pseudocercosporella oxalidis(ムラサキカタバミ褐斑病),Septoria pastinacina(パッションフルーツ円斑病菌,種名変更)の7種が加えられた。上記の菌類を加えて小笠原産の植物寄生菌は約170種となる。
著者
友永 雅己 森阪 匡通 伊村 知子 中原 史生 林 美里 田中 正之 足立 幾磨
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2011-05-31

チンパンジーなどの大型類人猿とハンドウイルカなどの鯨類を主たる対象として、われわれ人間の知性の進化を、特に系統発生的制約と環境適応という観点から比較認知科学の手法を駆使して検討を行ってきた。研究は、物理的世界および社会的世界の知覚・認識・理解に関して様々な観点から多様な種を対象に実施された。その結果、基礎的視知覚、空間認識における身体的制約、イルカ類における道具使用的行動、概念的メタファーの理解、他個体認識、聴覚コミュニケーションの種特異性と一般性、オランウータンやイルカにおける向社会行動の発現過程、チンパンジー、オランウータン、イロワケイルカにおける母子間関係の発達的変化を明らかにした。
著者
林 雅清
出版者
関西大学
雑誌
關西大學中國文學會紀要 (ISSN:09105328)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.89-105, 2006-03-20
著者
堀込実岐 堀込実岐 山崎 恭平 若林 靖史
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.42, no.8, pp.1081-1086, 2010 (Released:2012-03-23)
参考文献数
11

拡張型心筋症(dilated cardiomyopathy; DCM)で加療中の42歳, 男性. 38歳時に持続性心室頻拍を指摘され, 植込み型除細動器(implantable cardioverter defibrillator; ICD)を挿入後, 同時期より塩酸アミオダロンの投与が開始された. その後, 定期的な内分泌学的検査にて, 甲状腺機能異常は認めていなかった. 2007年(42歳)7月より頸部圧迫感あり, 当院外来を受診. 甲状腺のび漫性腫大を認め, エコーでは内部不均一な甲状腺両葉の腫大を認めた. 血液検査ではTSH 5.5µIU/mL, fT3 3.7pg/mL, fT4 1.0ng/dLと正常で抗TSH受容体抗体(TRAb)や抗サイログロブリン抗体(TgAb), 抗ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)は正常範囲内であり巨大な単純性のび漫性甲状腺腫と診断した. アミオダロンによるものと考え, アミオダロンを中止したところ甲状腺腫は徐々に縮小傾向を認めた. しかし, その後アミオダロンを中止した約10カ月後より8kg/月程度の著明な体重減少を認めたため, 甲状腺機能を測定したところfT3 17.2pg/mL, TSH 0.003µIU/mLと著しい甲状腺中毒症を認めた. 破壊性甲状腺炎の診断でプレドニゾロンとチアマゾールを投与し約半年で甲状腺機能の改善を認めた. アミオダロンにより甲状腺中毒症や機能低下症を発症することは知られているが, 今回の症例では, アミオダロンによると思われる単純性甲状腺腫を認め, アミオダロン投与中止の10カ月後に甲状腺中毒症を呈した, 非常に稀な症例と考えられた.
著者
小林 英嗣 倉田 直道 上野 武 小篠 隆生 坂井 猛 小松 尚 鶴崎 直樹 斎尾 直子 遠藤 新 三宅 諭
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

地域・環境の再生を実現するために、関わる主体の関わり方、システム、実現組織のあり方という3つの分析視点を持ち、国内外の事例調査を行った。研究成果として、地域・環境の再生を実現に導くための共創の状態とは、既存の主体同士の中で実現されるものではなく、新たな主体同士の関わり方が必要であること、その中で、大学の果たす役割が非常に重要であること、また、活動の具体的な場所や地域の設定が重要であることが明らかになった。
著者
小森 広嗣 広部 誠一 新井 真理 東間 未来 大場 豪 大野 幸恵 鎌形 正一郎 林 奐
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.361-364, 2011
被引用文献数
1

症例は4歳女児,生後10か月時に脂肪組織を内容とする白線ヘルニアと診断され,経過観察にて軽快しないため手術を行う方針とした.ヘルニア門は剣状突起と臍のほぼ中間点で,1×1cm大の腫瘤として触知した.手術は腹腔鏡下でヘルニア門の直接閉鎖を行った.臍下に5mmカメラ・ポート,左側腹部に5mmワーキング・ポートを挿入.肝円索に覆われた1×1cmのヘルニア門を同定,ヘルニア内容は腹膜前脂肪織であった.ヘルニア門の閉鎖にラパヘルクロージャーを用い同じ穿刺部から左右に向きを変えて挿入したラパヘルクロージャー針で糸をループ状に左右の腹直筋に運針し,皮下で結紮固定した.ヘルニア門を含む上下2cmの距離を左右の腹直筋を非吸収糸にて計7針で縫合閉鎖した.術後経過は良好で,手技的に安全,簡便で,整容性においても満足な結果であった.
著者
伊藤 徹 荻野 雄 昆野 伸幸 平子 友長 長妻 三佐雄 笠原 一人 平芳 幸浩 松隈 洋 西川 貴子 日比 嘉高 若林 雅哉 秋富 克哉 宮野 真生子
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、日本語としての「主体性」の概念の成立と使用の歴史を、哲学、社会思想、文学、美術、演劇、建築など多様な分野において、追跡したものである。それによって、日本が近代化に伴って経験した人間理解の変化を、多様なアスペクトにおいて解明することができた。また海外の日本文化研究者との共同研究および出版事業を通じて、日本におけるテクノロジーの発展と文化との関係についての知見を国際的に発信することができた。
著者
吉田 司雄 林 真理 一柳 廣孝
出版者
工学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究プロジェクトは、科学言説と文学言説を中心とする他の言説群との相互関連性を問題とし、文学研究の内側に止まるのではなく、科学史・科学思想の領域の研究者と共同して情報データベースを作成し、脱領域的なレベルでの積極的な議論を行える場所をつくることを通して、文化研究の新たな地平をひらこうとするものであった。研究期間中には特に近代日本の「動物学雑誌」等の学術雑誌、啓蒙的な大衆科学雑誌、少年向け雑誌、1970年代の各種メディアにおけるオカルト(疑似科学)に関する言説等を調査し、科学言説の非専門家層への伝播とその過程での変容や屈折を分析した。また、年1回ペースで公開研究会を開催し、脱領域的な研究ネットワークを構築することを目指した。第1回(2005年2月11日)は奈良崎英穂氏、松永俊男氏、第2回(2006年2月19日)は溝口元氏、曾根博義氏、第3回(2006年12月16日)は安齊順子氏、竹内瑞穂氏、小倉めぐみ氏、井山弘幸氏、第4回(2007年12月9日)は下坂英氏、伊藤龍平氏に報告をお願いし、コメンテーターを始め多くの参加者を交えて活発な議論を戦わせた。近代日本の文学言説がいかに様々な科学言説と交差することで生成展開していったか、その全貌を明らかにすることは研究期間内にはとても叶わなかったが、従来の文学史・科学史・文化史の枠組に囚われない新たな史的叙述の可能性を確信し、これまで学問的に注目されることの乏しかった分野の資料を博捜することで多くの知見を得ることができた。
著者
入山 義久 小林 淳彦
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.200-203, 2012 (Released:2013-04-16)
参考文献数
2

積雪寒冷地における水田畦畔管理の省力化を目的に,草丈の低いクリーピングベントグラスを用いた水田畦畔の緑化方法を検討した。長野県内の5 ヶ所の水田畦畔および畑地法面において,幾つかの播種方法を比較し,ベントグラスの被度の推移を調査した。泥団子の投げつけおよびジョーロによる散布は,資材の混合や播種作業に手間が掛かり,また張芝は養生のための土地の確保が問題となった。一方,作業性およびベントグラスの定着から見ると,種子を実播した後に,水に溶かした糊剤を動力噴霧器あるいは背負子式噴霧器を用いて散布する方法が最適であった。また,埋土種子からの雑草の発芽に備え,除草剤の散布と播種時期の選定が重要であった。
著者
栗原 麻子 桑山 由文 井上 文則 小林 功 山内 暁子 佐野 光宣 中尾 恭三 南雲 泰輔
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

ギリシア、ローマそしてビザンツにおける宗教・政治儀礼と政治体制との関係性を共通のテーマとして、個別・具体的な事例研究をおこなった。政治史的な事実と宗教儀礼とを結びつける際の危うさ踏まえたうえで、法と儀礼の相互関連性、パン・ヘレニックな祭祀拡大におけるポリス社会の関与、ビザンツ皇帝の即位における都市民衆の儀礼的関与といった具体的な個別事例について、シンポジウムで公開し、比較・検討をおこなった。
著者
中林 敏郎
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.27, no.11, pp.813-818, 1953
被引用文献数
1 1

By the method of two-dimensional paper chromatography of the polyphenolic substances in apple fruit, three spots were detected, i.e., L-epi-catechin which was epimerized to L-cate-chin by heating, D-catechin which gave a small spot and was epimerized to D-epi-catechin, and chlorogenic acid which was hydrolized to caffeic acid (Fig. 1).<br> In these, L-epi-catechin and chlorogenic acid were isolated in crystalline form from fresh apple fruit (Kokko). These were expectedly oxidized by polyphenol oxidase of apple fruit (Fig. 2).<br> Catechins were estimated by nephelometry (Fig. 4), and chlorogenic acid was estimated by cdlorimetry (Fig. 4), and the relation was studied between the contents of these polyphenols and the quality of apple fruit, but no evidence was obtained (Table 2).
著者
川井 啓市 劉 輝雄 施 壽全 楊 國郷 翁 昭紋 林 肇堂 王 正一 王 徳宏 渡辺 能行 山口 俊晴 土橋 康成 高橋 俊雄 CHUAN Shin-Shou YANG Kuo-Ching MIN Weng-Chao LIN Jaw-Town WANG Cheng-Yi WANG Teh-Hong LIU Hui-Hsiung 青池 晟
出版者
京都府立医科大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1991

十二指腸潰瘍が胃潰瘍よりも多く,かつ胃瘍が少ない沖繩県に隣接する台湾でも十二指潰腸瘍が胃潰瘍より多いといわれており,台湾における胃癌や大腸癌の実態を明かにし,その発生要因を検討するのが本研究の目的である。記述疫学的に死亡統計をみてみると,台湾では,男で胃癌の漸減傾向,直腸癌と結腸癌の増加傾向が,女で胃癌の減少傾向,結腸癌の漸減傾向,直腸癌の漸増傾向がみられたのに対して,日本では男で台湾と同様の推移が,女で胃癌が減少傾向,直腸癌が漸減傾向,結腸癌が増加傾向を示していた。また,日本では結腸癌の増加傾向が著しいが,台湾では過去15年間に一貫して結腸癌の方が直腸癌よりも高率であり,いわゆる欧米的なパターンを呈していたことが強調される。臨床統計として台湾大学医学院内科において1992年1年間に診断したすべての胃癌患者は男52例,女30例,合計82例であった。同様に大腸癌は男22例,女18例,合計40例であった。大腸癌の部位は結腸癌23例(男11例,女12例),直腸癌17例(男11例,女6例)と,男では結腸癌と直腸癌は同数であったが,女と合計では結腸癌の方が多かった。1990年1年間の京都府立医大・第一外学教室で新たに診療したすべての胃癌患者は男73例,女38例,合計111例であった。同様に大腸癌は男20例,女13例,合計33例であった。その部位は結腸癌15例(男8例,女7例),直腸癌18例(男12例,女6例)で,直腸癌の方が多かった。台湾におけるこれらの胃癌の組織型をみてみると,well differentiated adenocarcinoma10%,moderate differentiated adenocarcinoma15%,poorly differentiated adenocarcinoma45%,signet ring cell carcioma11%,その他9%不明11%であった。同様に台湾の大腸癌の組織型は,well differentiated adenocarcinoma 5%,moderate differentiated adenocarcinoma48%,poorly differentiated adenocarcinoma3%,詳細不明のadenocarcinoma38%,その他8%であった。このような組織型はわが国における実験と大差なかった。1991年12月より台湾大学医学院内科他3施設において内視鏡検査受診者に対するライフスタイルなどの調査を開始した。1993年1月末現在で上部消化管内視鏡検査受診者7856人と大腸内視鏡検査受診者589人分の資料を収集した。最終的に胃癌患者は約100例,大腸癌患者は約50例になる予定である。このうち,既に整理の終わった胃癌患者30例と大腸癌患者24例の資料を用いて分析疫学の症例・対照研究の手法で台湾における胃癌と大腸癌のリスク・ファクターの検討を行った。解析に用いた胃癌症例は男18例,女12例,合計30例である。対照は上部消化管内視鏡検査で著変なかった男47例,女156例,合計203例である。これらの対象の既往歴,癌の家族歴,飲酒,喫煙及び食餌習慣について性・年齢階級の絞絡を補正するためにMantel-Haenzel法によって各要因単独の暴露ありのオッズ比を求めた。その結果,統計学的に10%以上の有意水準で有意であった要因について,相互の絞絡を補正するために多変量解析のunconditional logistic regression analysisを用いて解析した。高血圧の既往があることとのオッズ比は0.02であり,香辛料を週に2-3回以上摂取することのオッズ比は0.07でともに有意に胃癌のリスを下げていた。同様に大腸癌症例男13例,女11例,合計24例と大腸内視鏡検査で著変なかった対照の男47例,女60例,合計107例について単独の要因について解析した。牛肉を週を1-2回以上摂取することは有意に大腸癌のリスクを0.30に下げ,塩からい食品を毎日摂取することは有意に大腸癌のリスク3.52倍高めていた。なお,大腸癌については少数例であり多変量解析は行えなかった。この結果の評価については,最終的に収集できた全胃癌症例と大腸癌症例を用いて行う予定である。また,背景の遺伝子の解析としてPGC RFLPパターンは台湾の胃潰瘍では前庭部と他部位で異なっていた。
著者
小林 和裕
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

入手容易な出発原料から合成できる、オルト位(ベンゼン環の隣り合った位置)に官能基(化学的反応し易い置換基)を有するフェニルイソチオシアナート(ベンゼン環にイソチオシアナート基:-N=C=Sがついた化合物)誘導体を用いて、従来の方法では構築が困難であり、かつ医薬や農薬などの創製に役立つ可能性の高いヘテロ環(環の構成元素として、窒素,酸素、硫黄などのヘテロ原素を含む環状有機化合物)誘導体や新規へテロ環骨格の簡便かつ一般的な合成法を23方法開発した。