著者
蒋 宏偉 佐藤 廉也 横山 智 西本 太
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.324-338, 2023 (Released:2023-08-18)
参考文献数
15
被引用文献数
1

焼畑・漁労・狩猟・採集を生業としているラオス中部の少数民族マンコン集落において,雨季・乾季に分け,成人住民を中心とする生活時間配分調査を行い,主に(1)想起法によって収集した経時的な活動内容の記録,(2)GPSロガーによる生活活動空間情報の記録,および(3)身体活動に費やすエネルギーの加速度計による記録,の3つのデータを収集した.データの分析結果は,労働時間配分における成人男女の分業および男女活動範囲とその相違といった生活活動の時空間パターンを明らかにした.さらに,開発が急ピッチで進んでいるラオス中部地域に生活している焼畑農耕民の各種の生業間の時間配分のつり合いから対象地域の土地利用と生業の変化の解明に重要な手掛かりを提供した.
著者
戸ヶ里 泰典 山崎 喜比古 中山 和弘 横山 由香里 米倉 佑貴 竹内 朋子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.232-237, 2015 (Released:2015-06-25)
参考文献数
17
被引用文献数
1

目的 健康保持・ストレス対処力概念である sense of coherence (SOC)に関する研究は近年増加しており,介入研究のアウトカム指標として用いられる例も多くなってきている。その一方で SOC スケール日本語版は標準化が行われていない現状にある。そこで全国代表サンプルデータを用いて13項目 7 件法版 SOC スケール日本語版の基準値を得ること,すなわち,性・年齢別の得点分布,居住地域および都市規模とスケール得点との関係を明らかにすることを本研究の目的とした。方法 日本国内に居住する日本人で居住地域,都市規模,年齢,性別による層化 2 段抽出により2014年 1 月 1 日現在で25歳から74歳の男女4,000人を対象とした。2014年 2 月から 3 月にかけて自記式質問紙による郵送留置法を実施し,2,067票を回収した(回収率51.7%)。分析対象者は男性956人,女性1,107人,平均年齢(標準偏差(SD))は50.0(14.3)歳であった。結果 SOC スケールの平均(SD)得点は59.0(12.2)点であった。性別では,男性59.1(11.8)点,女性58.9(12.5)点で男女間で有意差はみられなかった(P=0.784)。年齢階層別の検討では,一元配置分散分析の結果有意(P<0.001)となり,多重比較の結果概ね高い年齢階層であるほど高い SOC 得点であることが明らかになった。SOC を従属変数,居住地域(11区分),都市規模(4 区分)およびその交互作用項を独立変数とし年齢を共変量とした共分散分析の結果,いずれも有意な関連はみられなかった。結論 本研究を通じて,日本国内に在住する日本人集団を代表する SOC スケール得点を得ることができた。また性差,地域差はみられず,年齢による影響がみられていた。本研究成果を基準値とすることで年齢などの影響を考慮した分析が可能になり,今後,SOC スケールの研究的・臨床的活用が期待される
著者
横山 拓真 橋本 千絵 古市 剛史
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第36回日本霊長類学会大会
巻号頁・発行日
pp.22, 2020 (Released:2021-04-23)

ボノボは類人猿の中で唯一、メス中心社会を築いている。メスの社会的順位はオスと同等またはそれ以上であり、社会的交渉や性的交渉、遊動の主導権はメスが握ると言われ、このようなメスの特徴が平和的な社会を維持するのに重要だとされている。またボノボは、交尾を繁殖目的だけではなく、食物分配のために行うなど、社会的機能を含むことがあり、メス同士では「ホカホカ」と呼ばれる特徴的な社会的・性的交渉が観察される。さらに、ボノボのメスには「ニセ発情」と呼ばれる、排卵を伴わずに性皮を腫脹させる特徴的な生理状態がある。チンパンジーと比較すると、ボノボは社会構造、社会的・性的交渉、メスの生理状態において大きく異なる特徴を持つ。 これまでの遺伝的研究では、ボノボの子どもの50%以上はアルファオスの子どもであるため、高順位オスは効率的に交尾を独占しているだろうと言われていた。一方で、行動観察からは、ボノボは常に複数のメスが同時に性皮を腫脹させているため、高順位オスは交尾を独占できないだろうとも言われていた。また、「ホカホカ」は社会的緊張の緩和や順位誇示など、複合的な機能があると考えられてきた。しかし、ボノボの社会的・性的交渉をメスの生理状態と行動学の見地から分析した研究は少ない。 本研究では、コンゴ民共和国ルオー学術保護区にて、ボノボの交尾と「ホカホカ」における相手選択の傾向と、メスの生理状態との関連を分析した。その結果、高順位オスは相手のメスの生理状態に関わらず、独占的に交尾をしている傾向が見られた。また、「ホカホカ」では、高順位メスが誘いかけることが多く、他の調査地で見られるような、マウントポジションを取ることによる順位誇示は行われていないことが明らかになった。
著者
山口 晴幸 横山 芳春
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
地球環境シンポジウム講演論文集 (ISSN:18848419)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.269-278, 1998-07-09 (Released:2011-06-27)
参考文献数
5

In this report, the present authors discussed on the coastal pollution by foreign drifted garbages. The field investigations were carried out at the points of 224 in Japanese seashore-lines. The type and classification of foreign drifted garbages were investigated. It was points out from the results of field investigations that the coastal pollution by foreign drifted garbages was very important environmental problem in Japan.
著者
長島 孝 横山 淳一 松田 信一 中平 勝子 福村 好美
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータと教育(CE) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.15, pp.81-87, 2005-02-19
被引用文献数
2

日本の製造業においては,暗黙知である高度技能の伝承が注目されている.高度技能は熟練者と被伝承者との長期間にわたる体験共有により継承がなされてきた.少子高齢化の傾向の中で,伝承期間の短縮と同時に被伝承者の成長が望まれていた.ここでマルチメディアのeラーニングを応用して,新たに開発した簡易編集機能により、熟練者による技能実演収録画像にノウハウ上のポイントを抽出して形式知化して明示した.新たな技術知識を含めて製作した教材のポイントを,納得ゆく繰返再生を被伝承者の意思で簡単にでき,従来と比べて短期間で技能五輪に出場可能な選手を育成することができた.Recently, Japanese production activity is focusing for high technical skill transfer to next generation. A high technical skill has been usually transferred by collaborated work between high skill worker and follower, but it has been not so success. New multimedia contents of high technical skill are proposed, which has utilized e-learning with the multimedia like a video record consisting from actual high skill worker's technique. This multimedia as explicit knowledge has developed by new easy editing system. So, the follower was easily able to learn by review himself for the multimedia until full understanding. Employing those contents on the training for Japanese Skills Competition, members of our team are successfully gotten to short period coaching.
著者
横山 恵子
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.15-26, 2022-12-20 (Released:2023-03-01)
参考文献数
60

新種のアントレプレナーシップ現象として,ソーシャル・アントレプレナーシップ(SE)への注目が高まっているが,研究が発展する中で,さまざまな概念化の試みが乱立して全体像の把握が困難になってきている.そこで,本稿はSE研究の軌跡を辿ることで,これまでのSE概念化の整理を行う.その上で,SE概念の固有性に着目して,その社会性基準および資源動員に関する中核的な論点を提示する.
著者
根本 敬 泉谷 陽子 磯崎 典世 井上 あえか 宇山 智彦 礒崎 敦仁 粕谷 祐子 横山 豪志 石塚 二葉 新谷 春乃 中野 亜里
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は権威主義体制の持続という現代世界を特徴づける検討課題を設定し、その中でも「建国の父」という正統性シンボルに着目して、アジア諸国(計8か国)を対象に比較分析を行うものである。主に歴史学と比較政治学のディシプリンを活用し比較定量分析による一般化可能な論点を抽出することも目指す。権威主義体制、ナショナリズム、歴史修正主義などの研究分野への貢献を視野に入れている。具体的な問いは次の2つである。(1)「建国の父」という正統性シンボルが、本人およびその後の後継エリートによってどのように構築され、継承、変化してきたのか(2)「建国の父」と権威主義体制の持続とのあいだにはいかなる関係があるのか
著者
横山 寿世理 金 瑛 柳田 洋夫
雑誌
聖学院大学論叢 = The Journal of Seigakuin University (ISSN:09152539)
巻号頁・発行日
vol.第34巻, no.第1号, pp.147-159, 2021-10-25

フランス社会学者モーリス・アルヴァックスの『聖地における福音書の伝説地誌:集合的記憶研究』の序論をここに邦訳する。本書は,聖地パレスチナについての集合的記憶の枠組みが,キリスト教集団において共有されてきたことを実証する研究であった。新約聖書に始まり,数々の文学作品や伝承における聖地の記述がそれぞれ少しずつ異なっても,聖地パレスチナにおいて聖地を特定することで生じる空間的枠組みはほぼ共通していることを示している。 膨大なアルヴァックスの著作に反して,日本では,邦訳された著作が非常に少ない。本翻訳はその一部に過ぎないが,その邦訳作業の一端になることを目指す。

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著者
横山健堂 著
出版者
春陽堂
巻号頁・発行日
1914
著者
藤田 朝彦 横山 良太 加藤 康充 井上 修 原田 守啓
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
pp.21-00021, (Released:2022-03-23)
参考文献数
53
被引用文献数
4

アユ Plecoglossus altivelis は日本の淡水魚として,も っとも重要な水産魚種の 1 つである.河川におけるアユの資源量は,漁業協同組合等の放流による寄与も大きいが,多くの河川では,自然な再生産による資源量維持が主体となっている場合が多い.また,アユは河川内において,河床の付着藻類を摂餌することから,藍藻類やカゲロウ類など特定の生物を増加させる等,河川内の藻類相,底生動物相に強く関わるため,河川生態系において重要な位置を占める種である.アユ産卵場環境や産卵生態についての過去の調査研究の歴史は長く,主に水産試験場や大学等で行われてきた報告が多数存在するが,アユの生態・生活史との関係性も含めた総括的な整理はなされておらず,産卵環境の保全のための指針となる基本的な物理環境条件についての知見の総合化はいまだ不十分であると考える.よって,本研究では,これまでに報告されているアユの産卵環境についての文献を広く収集し,産卵環境の物理環境条件に関するデータを抽出した上で,それらの情報を総括し,豊富な研究事例とアユの生態・生活史の理解に基づく "アユの産卵場" 適地の条件を明らかにすることを目的としたレビューを行った.文献は,アユの産卵に関する記載のある研究についての文献を網羅的に収集し,1895 年~2019 年までに出版された計 339 件の論文から,その産卵環境の物理的条件を整理した.これらの文献は 9 割近くが自然河川の産卵場で得られたデータを使用しているが,人工河川での実験事例や,人工造成箇所のデータも含まれる.物理的条件については,産卵場の流速,水深,河床材,貫入深(河床軟度),卵の埋没深の 5 つの物理的条件を抽出・整理した.今回整理された情報は,過去に一般的な知見として認識されているアユ産卵環境の条件と大きな差異は無かったが,アユの産卵に関わる生理生態情報や土砂水理学的考察を踏まえ,5 つの物理的条件は独立した変数ではなく,浮き石状態の小礫で構成された河床環境を有する早瀬が,アユの産卵場として選好されていることが描き出された.アユの産卵場は,出水による土砂移動によってもたらされた早瀬への土砂の堆積・侵食の過程によって形成され,有限の寿命がある一時的産卵場(temporary spawning habitat) とでもいうべきハビタットであると考えられる.
著者
沼澤 俊 寺田 昌史 横山 茂樹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.F-103, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに,目的】 足関節内反捻挫の受傷において,初発捻挫と再発捻挫ではその危険因子は異なる可能性がある。この点を明らかにすることを目的として,高校生バスケットボール選手を対象としたメディカルチェック活動を通して検討したので報告する。【方法】 対象は大阪府下の高校バスケットボール部,男女193名とした。調査項目は下肢関節可動域や筋力,下肢アライメントやバランス評価など8項目とした。調査開始時に測定を行い,1年間における足関節捻挫の傷害発生を調査した。統計学的処理として,受傷有無別の群間比較についてT検定,および足関節内反捻挫の既往有無別に従属変数を内反捻挫受傷の有無,独立変数を各測定項目としてロジスティック回帰分析を用いた。【倫理的配慮】 京都橘大学倫理委員会の規定に基づき,選手および指導者に対し事前に十分に説明し同意を得た上で本研究を実施した。また本研究に関して開示すべきCOIはない。【結果】 足関節内反捻挫受傷は,初発34名中7名(21%),再発159名中31名(20%)と既往歴による差はみられなかった。再発では,足関節内反捻挫受傷について荷重下の下腿前傾角度,足関節底屈角度,荷重位Q-angleがいずれも受傷群で減少する傾向を示したが,初発ではみられなかった。【考察】 足関節内反捻挫の再発群は,足関節可動域の制限がないことで再発に至る可能性が低くなることが示唆され,既往歴により危険因子が異なると考えられた。
著者
横山 広樹 玉置 昌孝 竹林 崇
出版者
一般社団法人 大阪府理学療法士会生涯学習センター
雑誌
総合理学療法学 (ISSN:24363871)
巻号頁・発行日
pp.2021-002, (Released:2021-12-23)
参考文献数
20

【目的】胸椎化膿性椎間板炎に対する脊椎固定術後の脊髄性運動失調を呈した症例に対して,歩行機能の改善を目的とした振動刺激療法を運動療法と併用した結果,改善を認めたため報告する。【方法】運動療法に併用して下肢に対して振動刺激療法を用いる介入期間を設けた。筋力強化練習や動作練習を中心とした運動療法を34日間実施した後に,振動刺激療法を追加して14日間実施した。そして,Walking Index for Spinal Cord Injury II(以下,WISCI II)を用いて歩行機能を評価した。【結果】WISCI IIは13点から16点へと改善し,自宅内移動動作の獲得や屋外歩行手段の獲得につながった。【結論】脊髄障害を伴った歩行障害に対して振動刺激療法を用いた介入が歩行機能の改善の一助となる可能性がある。
著者
佐賀 朝 塚田 孝 吉田 伸之 人見 佐知子 神田 由築 小野沢 あかね 松井 洋子 吉田 ゆり子 金 富子 浅野 秀剛 伊藤 毅 米谷 博 杉森 哲也 初田 香成 松田 法子 松本 良太 本康 宏史 横山 百合子
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本課題では、日本近世~近代における「遊廓社会」の形成・普及の歴史について、三都と中核とする列島各地や植民地の事例も視野に入れて、比較類型史論・都市社会=空間構造論の方法を用いて共同研究を実施した。その最大の成果は、『シリーズ遊廓社会』全2巻(吉川弘文館)であり、本課題の代表者・分担者・連携者・協力者21名による論稿を掲載することができた。列島各地で個別の現地調査や、調査と一体の研究会を開催し、遊廓研究のネットワーク化を図るとともに、府県別の遊廓・遊所の沿革と史料情報を内容とするデータベースWEBサイトを構築し、今後の遊廓・遊所研究の発展につながる基盤を構築した点も特筆すべき成果である。
著者
山本 浩二郎 前田 晃佑 原口 珠実 里岡 達哉 青山 瑛里子 横山 靖法 草薙 みか 大里 恭章
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.588-592, 2021-08-31 (Released:2021-08-31)
参考文献数
11

薬剤による重篤な有害事象の発生頻度は低く,患者の症状の変化が薬剤性であることを疑うには薬剤師の積極的な介入が有効である。薬剤による有害事象の1つである血管性浮腫は,舌・咽頭に発生すると気道閉塞を起こし重篤な転帰を招く可能性がある。八尾徳洲会総合病院(以下,当院と略す)では集中治療室(intensive care unit,以下ICUと略す)に薬剤師を配置し重症患者の薬物治療管理を行っている。今回われわれは急性の舌・咽頭浮腫により気道閉塞をきたし救急搬送された症例に対して,ICU常駐薬剤師が薬剤性を疑い,医師へ発症機序の説明,代替薬や必要な検査提案など積極的治療介入により診断に結びついた症例を経験したため報告する。また,ICUにおいて薬剤師が介入することで薬剤性の有害事象に関する情報提供をリアルタイムに行うなど,医師の診断と治療方針に大いに貢献し,救急・集中治療の充実を図ったので併せて報告する。