著者
吉川 肇子 白戸 智 藤井 聡 竹村 和久
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-8, 2003 (Released:2009-08-19)
参考文献数
11
被引用文献数
15 11

本稿では,社会技術研究で重要となる安全と安心の概念について,以下の4つの視点から論じた.第1に,安心と安全について,日常的にどのような文脈で使われているかを主に新聞記事をもとに検討した.第2に,それぞれの概念について専門家はどのように考えているのかについて,各分野の安全基準を参照しながら検討した.第3に,以上の検討をもとに筆者らは,安全は技術的に達成できる問題であり,安心とは,安全と大いに関連があるものの,それだけでは達成できない心理的な要素を含むものであると考えた.第4に,安心と安全を能動型と無知型に分類し,社会技術研究で目指すべき能動型安心を達成するあり方を議論した.
著者
白井 真理子 加藤 樹里 菊谷 まり子
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.94.22206, (Released:2023-03-10)
参考文献数
44

Emotional crying has been described as the shedding of tears consequent to an emotional event, a universal and uniquely human behavior. The purpose of the present study was to develop the Japanese version of the Beliefs About Crying Scale (BACS), which assesses beliefs about whether crying is beneficial for gaining positive feelings in both individual and interpersonal contexts. In Study 1, we examined factor structure and re-test reliability. The results indicated that the factor structure of the Japanese version and original version of the BACS are similar and possess acceptable re-test reliability. In Study 2, we tested validity. The results revealed that the Japanese version of the BACS had theoretically reasonable correlations with assumed variables. These results suggest that the Japanese version of the BACS has similar properties as the original version and has acceptable validity and reliability.
著者
白井 暁彦
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.286, 2019-02-15
著者
多久 和真 播元 和貴 白井 康智 森田 大輔
出版者
公益社団法人 日本数学教育学会
雑誌
日本数学教育学会誌 (ISSN:0021471X)
巻号頁・発行日
vol.104, no.3, pp.14-22, 2022-03-01 (Released:2023-04-25)
参考文献数
17

本稿の目的は,批判的に考える態度(批判的思考態度)の伸長を図った統計指導の設計ならびに実践を行い,生徒がどの程度,批判的思考態度の重要性を認識したかを明らかにすることである.教材開発にあたり,「現実の文脈の使用」「『読解の文脈』での活動の重視」「データの提示の方法」という点に留意した.そして,複数のデータの読み取りや,個人の考えを小グループで検討し,他者の考えを聞いた上で改めて個人の考えを再検討するという活動を導入した教材を開発した. 指導実践を通して,データの提示の仕方を工夫することで複数のデータを参照することの重要性が理解され,また,結論を何度も他者と意見交換することで,意見の変容が促され,他者との意見交流の重要性が理解された.そして,本実践を通して多くの生徒が批判的思考態度の重要性を認識したこと,また,批判的思考態度が表出する場面として,「新たなデータの必要性を問う場面」「複数のデータを参照して答えた場面」「最終的な意見を述べる場面」があることが明らかとなった.
著者
韓 旖睿 白 琳 孫 氷玉 湯淺 かさね 池邊 このみ
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.D1-0112, 2023 (Released:2023-04-20)
参考文献数
68

雪形は「山腹の雪の消え具合によってできる形」として定義されているもので,かつては農事暦として利用されてきたが,農耕の進歩などにより各地で伝承が消えつつある.2005年の『農林水産業に関連する文化的景観の保護に関する調査研究報告書(文化庁)』では,「独特の気象によって現れる景観」と「複合景観」にて6座の山の雪形を文化的景観候補として選出されたが,文化的景観の条件との整合性から,まだ認定されているものはない.本研究では,a)全国の雪形とその分布の特徴の把握,b)雪形データベースの構築及び評価項目の設定,c)全国の雪形の景観特性の分析と類型化,d)雪形に関する産業・文化特性と景観特性の相関性の明確化,以上4つの目的を通して雪形の価値評価について検討したものである.
著者
白河 潤一 永井 竜児
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.299-304, 2015-04-20 (Released:2016-04-20)
参考文献数
27
被引用文献数
1 2

メイラード反応は食品の加熱調理のみならず,生体内に存在する糖質とタンパク質間でも進行し,その後期生成物であるAGEsは老化や老化関連疾患の発症に関与している.以前AGEsは単なる老廃物として考えられていたが,AGEs化によって生体タンパク質が修飾されることにより,骨格タンパクの変性や,酵素の活性低下,タンパク質発現にも影響を与えると推察されている.そのため,生体AGEsの正確な測定は,病態のマーカーや創薬のターゲットという点からも注目されている.本稿では,生体の代謝・炎症など,さまざまな経路から生成するAGEsの測定法や,これまで明らかとなっている病態との関連性およびAGEs生成抑制物質の探索などについて紹介する.
著者
井上 友介 足立 厚子 白井 成鎬 山野 希
出版者
一般社団法人 日本皮膚免疫アレルギー学会
雑誌
日本皮膚免疫アレルギー学会雑誌 (ISSN:24337846)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.313-317, 2020-04-20 (Released:2020-11-24)
参考文献数
9

38歳,男性。30分間のランニングをした後に市販の栄養ドリンク剤を1本服用したところ,30分後に全身に蕁麻疹が出現した。その後意識消失し,救急搬送された。後日,原因精査を希望し当科を受診された。栄養ドリンク剤as isのプリックテストにて陽性を示したため,成分別プリックテストを施行した。合成タウリン(1%)のみ陽性を示し,ほかの成分はすべて陰性であったため,栄養ドリンク剤中の合成タウリンによるアナフィラキシーと診断した。栄養ドリンク剤による即時型アレルギーの報告は少なく,合成タウリンでの報告例は韓国からの1例のみであり,調べ得た限りではわが国で初の報告例である。タウリンは哺乳類の成長に重要な栄養素で,牡蠣やイカなどの食品に天然タウリンとして含まれるほかに,多数の栄養機能食品に配合されている。自験例はイカなど天然タウリンを多く含む食品の摂取制限は必要とせず,合成タウリンを含有する栄養機能食品の禁止のみで,再発はない。(日本皮膚免疫アレルギー学会雑誌,3(2):313-317,2020)
著者
白鳥 義彦
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.46-61, 1995-06-30 (Released:2010-01-29)
参考文献数
23

デュルケームの生きた第三共和政期のフランスは, 「非宗教的・無償・義務的」という原則に支えられた初等教育制度が確立されたことに端的に見られるように, 近代的な国民国家を目指した歩を進めようとしていた.同時に, 普仏戦争の敗北から出発した第三共和政には国家の再建ということが課せられており, その一環として, 初等・中等教育と並んで高等教育の改革もまた議論された。このような背景を踏まえ, 本論文では, デュルケームの教育論のなかでも初・中等教育の問題の陰にかくれ, これまで検討されることの少なかったかれの大学論に注目した. かれは, 高等教育の問題についてもまた深い論述を行っている.実際デュルケームは, 1900年前後の「新しいソルボンヌ」を代表する人物の一人でもあった。デュルケームの論述の検討を通じて, 改革に至る当時の大学の諸問題や, 改革の理念における大学像が明らかにされる.大学は, 職業的な専門教育をおこなうグラン・ゼコールとは区別され, 社会的紐帯を高める役割を期待された「科学」の場として把握されている. またデュルケールの社会学は, そのような科学観を背景に大学内に制度化されたのであり, 高等教育改革の議論と関連づけることにより, かれの社会学の性格も浮き彫りにされるのである。
著者
千田 いずみ 田中 秀治 高橋 宏幸 喜熨斗 智也 白川 透 島崎 修次
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.575-584, 2015-08-31 (Released:2015-08-31)
参考文献数
12
被引用文献数
1

背景:2011年10月に発表された救急蘇生法の指針に,心肺蘇生の学校へのさらなる普及の重要性が示された。目的:小学生の心肺蘇生法に対する理解力および実技能力を検討すること。対象方法:小学6年生96名を対象に心肺蘇生の知識の確認試験および1〜6年生214名を対象に実技試験を行った。結果:心肺蘇生法に関わる知識ではほとんどの問題で80%以上の正答率を得た。実技では高学年でも平均圧迫深さが30mmと十分な圧迫深度に達しなかった。人工呼吸では十分な吹き込みができたのが64%,AED操作は100%正しく操作することができた。考察:心肺蘇生に対する理解力は小学6年生で十分備わっていることが判明した。胸骨圧迫の確実な実施は難しいものの,人工呼吸やAED操作は正しく実施する可能性が見出せた。結論:中学生の体格では胸骨圧迫の実施が可能であると報告されていることから,小学生への心肺蘇生法教育の目的は今後の成長を見越した知識の習得および技術の獲得にあるといえる。
著者
白 孝卿
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.77, no.671, pp.227-234, 2012-01-30 (Released:2012-03-05)
被引用文献数
4

This study is to clear the demolition process of Japanese general government building in Korea which had been in Seoul from 1926 to 1997. Considering the usages of the building by American army and Korean government after the colonial period had eneded, it was not only the negative heritage but also it stood for the Korean government itself. Also it could be revealed in the demolition discussion which had done in the process of demolition by Korean government. Analyzing the discussions about the demolition in several sections of Korean society, this study reveals that what the that building stood for in Korean society and what kind of conservation value which the building had. And it concludes that what kind of meaning the demolition of the building has Korean society and how impact the demolition on the conservation of other colonial heritages in Korea.
著者
福田 あかり 白土 宏之 山口 弘道 大平 陽一 寺尾 富夫
出版者
北陸作物・育種学会
雑誌
北陸作物学会報 (ISSN:03888061)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.8-10, 2013-03-31 (Released:2017-03-25)
参考文献数
8
被引用文献数
1

水稲種子を60℃の温湯中に10分間浸す処理により,日本型品種萌えみのり,べこあおばにおいて発芽が早まる効果が見られた.特にべこあおばは,種子の発芽促進法として用いられる50℃,7日間の乾熱処理を行うと,発芽率の低下が起こったが,温湯処理では発芽が促進された.このことから,乾熱処理で発芽阻害が起こるべこあおばのような品種では,温湯処理は有効な発芽促進法となる可能性がある.また,温湯処理は,休眠性の高いインド型品種タカナリ,北陸193号において,乾熱処理には及ばないものの,発芽率を上昇させた.
著者
白井松次郎著
出版者
創元社
巻号頁・発行日
1935
著者
鈴木 静男 田中 康平 大沼 巧 玉置 慎吾 大庭 勝久 酒井 基至 竹口 昌之 白井 秀範 芳野 恭士
出版者
公益社団法人 日本工学教育協会
雑誌
工学教育 (ISSN:13412167)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.4_80-4_85, 2021 (Released:2021-08-01)
参考文献数
11

In the experiments performed in the advanced course of the National Institute of Technology, Numazu College, data science education was conducted remotely by using asynchronous and synchronous interactive methods. The Tellus platform with satellite and terrestrial data was used to analyze data in a cloud environment. We adopted the development of data engineering, data analysis, and value creation skills as basic educational guidelines. From the answers to the questionnaire, we conclude that 1) the asynchronous interactive method made us aware of many benefits, 2) the synchronous interactive methods gave us some issues to be solved, and 3) the three guidelines were successfully achieved.
著者
平尾 利行 山田 拓実 妹尾 賢和 白圡 英明
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.289-298, 2022-08-20 (Released:2022-08-20)
参考文献数
50

【目的】二次性変形性股関節症患者(以下,股OA)に対し理学療法を実施した際に病期によって疼痛,日常生活動作(以下,ADL),身体機能の経時変化に差があるかを明らかにすること。【方法】二次性股OA患者をKellgren/Lawrence分類Grade 1(以下,KL1)群14名,Grade 2(以下,KL2)群20名,Grade 3(以下,KL3)群16名に分類し理学療法を行った。疼痛,ADL, 身体機能を測定し3ヵ月の経過を分析した。【結果】3ヵ月を通じKL3群は疼痛が強く,ADLと身体機能は低下していたが,KL分類に関わらず3ヵ月間で改善を認めた。年齢調整後の屈曲,外転,内旋ROMはKL3群が低値を示し,このうち内旋ROMは3ヵ月間で有意な変化を認めなかった。【結論】二次性股OAに対し理学療法を実施した際,3ヵ月間の疼痛,ADL, 身体機能の経時変化は病期に関わらず改善を示す。
著者
諏訪 僚太 中村 崇 井口 亮 中村 雅子 守田 昌哉 加藤 亜記 藤田 和彦 井上 麻タ理 酒井 一彦 鈴木 淳 小池 勲夫 白山 義久 野尻 幸宏
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.21-40, 2010-01-05 (Released:2022-03-31)
参考文献数
103

産業革命以降の二酸化炭素(CO2)排出量の増加は,地球規模での様々な気候変動を引き起こし,夏季の異常高海水温は,サンゴ白化現象を引き起こすことでサンゴ礁生態系に悪影響を及ぼしたことが知られている。加えて,増加した大気中CO2が海水に溶け込み,酸として働くことで生じる海洋酸性化もまた,サンゴ礁生態系にとって大きな脅威であることが認識されつつある。本総説では,海洋酸性化が起こる仕組みと共に,海洋酸性化がサンゴ礁域の石灰化生物に与える影響についてのこれまでの知見を概説する。特に,サンゴ礁の主要な石灰化生物である造礁サンゴや紅藻サンゴモ,有孔虫に関しては,その石灰化機構を解説すると共に,海洋酸性化が及ぼす影響について調べた様々な研究例を取り上げる。また,これまでの研究から見えてきた海洋酸性化の生物への影響評価実験を行う上で注意すべき事項,そして今後必要となる研究の方向性についても述べたい。
著者
安井 柚夏 白井 孝尚 井尻 朋人 鈴木 俊明
出版者
関西理学療法学会
雑誌
関西理学療法 (ISSN:13469606)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.89-94, 2022 (Released:2022-12-23)
参考文献数
13

We report a case of postoperative fracture of the right femoral tuberosity with a resultant pain in the lateral part of the right hip experienced at the start of walking. During steady-state gait, right pelvic rotation with medial rotation of the right hip occurred in the right stance phase of the patient. However, at gait initiation, medial rotation of the right hip was limited. We focused on and treated the anterior fibers of the right gluteus medius muscles, which are responsible for internal hip rotation. Post treatment, the patient reported an improvement in the pain felt at gait initiation, an improvement in the medial rotation of the right hip during the right stance phase, and an improvement in walking stability.
著者
白波瀬 丈一郎
出版者
一般社団法人 日本産業保健法学会
雑誌
産業保健法学会誌 (ISSN:27582566)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.210-216, 2022-07-10 (Released:2023-02-22)
参考文献数
10

本稿では、メンタライゼーションの概念を用いて、パーソナリティ障害あるいは自閉症スペクトラム障をもつ労働者とやりとりするときに、我々が被る心理的重圧の影響と、この影響への対策について述べる。そのための布石として、精神医学を理解することの意味について論じる。