- 著者
-
高瀬 寛子
荒木田 美香子
- 出版者
- 日本公衆衛生学会
- 雑誌
- 日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
- 巻号頁・発行日
- pp.21-108, (Released:2022-06-30)
- 参考文献数
- 31
目的 本研究は,父親の子育て参加促進に向けた基礎資料とするために,1歳から3歳未満の第1子をもつ父親を対象に育児および家事における実施状況とその関連要因を明らかにすることを目的とした。方法 2020年10月にWEB調査を行った。調査項目は基本属性,就業状況,子育てに関する情報,育児と家事の実施頻度,夫婦関係満足尺度(以下,QMI),ワーク・ファミリー・コンフリクト尺度日本語版(以下,WFCS),K6日本語版について尋ねた。育児と家事の実施頻度を各高低で2群化し,さらに育児と家事の各高低群を4群に分類した。育児高低群,家事高低群,育児家事の4群を各々従属変数とした多重ロジスティック回帰分析を行った。結果 44の都道府県から回答が得られ,406人(欠損値なし)を分析対象とした。育児と家事の実施頻度の高い項目は,抱っこする,一緒に遊ぶ,ゴミだしであり,低い項目は定期健診や予防接種の受診,病院受診,食事をつくる,寝かしつけであった。多重ロジスティック回帰分析の結果,育児の実施頻度の高い群において,両親学級や父親学級の参加あり,育児休業取得あり,妻の就労あり,残業時間10時間未満,最終学歴(中学・高校・専門・高専・短大卒業:非大学卒業),低いWFCS,高いQMIとの関連が認められた。一方,家事の実施頻度の高い群において,両親との同居なし,交替勤務あり,両親学級や父親学級の参加あり,世帯年収600万円以上,最終学歴(非大学卒業),妻の就労あり,妻の健康状態(普通・悪い・とても悪い),高いQMIとの関連が認められ,育児の実施頻度の関連要因とは異なる項目が抽出された。続いて4群に分類したところ,育児家事高群(38.4%),育児高く家事低い群(14.0%),育児低く家事高い群(19.5%),育児家事低群(28.1%)に分類された。この4群において,最も関連のあったものは両親学級や父親学級の参加,残業時間,妻の就労,QMIであった。結論 父親の育児および家事の実施頻度において,両親学級や父親学級への参加,残業時間,妻の就労,QMIとの関連が明らかになった。子育て参加への促進に向け,実施頻度の少ない育児や家事への働きかけや父親を対象とした学級等の支援方法の検討の必要性が示唆された。