著者
荒木 優希 古川 善博
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

RNAは、遺伝情報の蓄積と生体反応の触媒の両方を担う分子として、生命の起源に最も重要な生体高分子と考えられている。初期地球におけるRNA(前生物的RNA)の形成は、粘土鉱物や金属イオンを触媒として起こったと考えられているが、その形成過程や環境について統一的な見解が得られていない。本研究では、高分解能の原子間力顕微鏡(FM-AFM)を用いてRNA形成(ヌクレオチドの重合)過程における水の挙動を分子スケールで観察する。ヌクレオチド表面が金属イオンによって局所的に脱水すること、水の存在によって粘土表面にヌクレオチドが秩序的に吸着することを明らかにし、生命起源における水の重要なはたらきを明らかにする。
著者
荒木 正弘 鳩山 紀一郎 佐野 可寸志 高橋 貴生
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.A_185-A_192, 2021-02-01 (Released:2021-02-20)
参考文献数
6

高齢化や過疎化が進む地域では、ライドシェアが新たな地域公共交通として着目されている。本研究では、ライドシェアが地域交流を促進する効果に着目し、交流促進を考慮したライドシェアの導入可能性について検討することを目的とする。具体的には、ライドシェアサービスの利用意向や提供意向などについて、新潟県の高齢・過疎地域で自動車依存度の異なる 2 つの地域を対象にアンケート調査を実施した。結果として、自動車依存度の低い地域では、利用意向は高く、利用者を増やせれば交流に繋がる可能性があると示された。他方、自動車依存度の高い地域では、利用意向は高くないものの、イベント等と組み合わせることで交流促進に活かせる可能性が示唆された。運転手の確保は両地域における課題であり、柔軟な対策が必要である。
著者
荒木 聡彦 塩井 成留実 澤田 均 松井 太衛
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

「がん細胞や白血球の血管貫通」における血管壁の開口現象の分子機構は、よく分かっていない。血管貫通においては、出血性ヘビ毒ADAMが血管開口を引き起こすことから、ADAMによる血管細胞間解離を解析した。既にLRP6の切断が血管壁開口現象に必要であることを示唆していたが、今回はADAMの結合標的を探索した。その結果ADAMBP1細胞膜タンパク質(仮称)がヘビ毒ADAMに結合することを示すとともに、ADAMBP1阻害抗体により細胞間解離等が阻害されることを示し、ヘビ毒ADAMの結合受容体であることを示唆した。また他にADAMに結合する候補タンパク質として、ADAMBP2,3,4,5を見出した。
著者
井上 さくら 荒木 徳博 木村 知史
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.127-132, 2001-06-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
9

本研究では創造的思考に着目し, 新しい発想を生み出そうとする場合の香りの効果を検討した。実験では創造性検査の一種である用途テストを用い, 「カンヅメのあきカン」の使い方を自由発想で20分間記述させた。用途テスト開始12分後にローズマリー, ペパーミント, オレンジ (以上香り呈示群), 香りなし (統制群) のいずれかを呈示した。回答は, 分類基準に従い, カンヅメのあきカンのもつ容器的使途と類似性の高い発想-Tタイプ-と, 類似性が低く独創的な発想-Hタイプ-の2種類のカテゴリーに分け, 各カテゴリーにおける香り呈示前後の回答数の変化を求めた。香り呈示群と統制群の回答数の変化を比較した結果, Tタイプでは, 香り呈示群と統制群との間に差はみられなかった。一方, Hタイプでは, ローズマリーとペパーミント呈示群は統制群と比較し回答数が有意に増加し, オレンジ呈示群では有意差はなかった。このことより, ローズマリーやペパーミントの香りに独創的な発想を促す効果がみられることが示唆された。さらに, 創造的態度得点の低い人がローズマリーやペパーミントの香りを嗅ぐと, より一層この効果が高くなる傾向がみられた。
著者
荒木 良太
出版者
認知症治療研究会
雑誌
認知症治療研究会会誌 (ISSN:21892806)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.32-34, 2021 (Released:2021-02-15)
参考文献数
24

植物由来成分であるフェルラ酸を含むサプリメントが認知症の周辺症状(Behavioral and psychological symptoms of dementia;BPSD)に対して有効である例が報告されている.しかしながら,その作用機序の詳細は明らかとなっていない.これまでに我々は,フェルラ酸が中枢神経系に及ぼす影響に関して,実験動物を用いた基礎研究を行い,フェルラ酸が神経幹/前駆細胞の増殖を促進することや5-HT1A受容体の部分作動薬として働くことを明らかにしてきた.本稿では,こうした我々の基礎研究結果をもとに,フェルラ酸がBPSD を改善するメカニズムとBPSD の治療におけるフェルラ酸の有用性について考察する.
著者
五味 文 岡留 剛 荒木 敬士 福山 尚 角所 考 井村 誠孝 小椋 有貴
出版者
兵庫医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)は元来予後良好な疾患とされていたが、病状が遷延し、重篤な視力低下に至ることもある。さらに近年ではCSCと加齢黄斑変性との関連が示唆されてきており、実際一部のCSC例は滲出型加齢黄斑変性に移行することがわかってきている。本研究の目的は、CSC症例における遷延・加齢黄斑変性移行例のリスク因子を見出し、早期の介入を促すことで更なる病状進展、視力低下を抑制することである。具体的には、①眼科画像検査、②身的・外的ストレス評価、③視覚異常のシミュレーション、の3つのアプローチで、ハイリスクCSC症例の早期発見を試みる。
著者
荒木 建次 山口 真史
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.88, no.2, pp.84-90, 2019-02-10 (Released:2019-09-20)
参考文献数
57
被引用文献数
1

電動自動車,ハイブリッド車の屋根に太陽電池を搭載し,太陽エネルギーで内部蓄電池を充電する構成の自動車に対する関心が高まっている.この車載用太陽電池は,太陽電池技術だけでなく,社会そのものを大きく変革する可能性をもっている.車載太陽電池により,70%の自家用車が給油や充電なしで走行できるようになるといった試算もある.残念ながら,車載用太陽電池は既存の太陽電池技術の延長線上にはない.つまり,住宅や発電プラント向けのソーラーパネルを自動車の屋根に取り付けただけでは十分に機能しないし,普及も望めない.本稿では,主に太陽電池サイドから,最近の技術開発動向や,本格普及のためにはどのような技術を研究開発する必要があるかについてまとめる.むろん,本技術は総合技術であり,自動車サイド,インフラサイドからのリソースも援用し,総合的なエネルギーソリューションを目指した研究開発が必要である.
著者
荒木 淳子 中原 淳 坂本 篤郎
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.319-329, 2011-03-30 (Released:2016-08-07)
参考文献数
43

日本では,企業で働く個人にも,自ら学びながら主体的にキャリア構築をすることが求められつつある.しかし,キャリア構築に向けた社会人の学習に関する研究は少ない(濱中2007).そこで本研究では,社会人の学習にとって重要な場である職場(松尾2006)に着目し,個人の仕事に対する態度(挑戦性・柔軟性),職場環境がキャリア確立(荒木2007,2009)に及ぼす影響について,階層線形モデル(hierarchical linear model)による分析をおこなった.17社,1214名の質問紙調査の回答を分析した結果,キャリア確立には個人の挑戦性,柔軟性が重要であること,職場における仕事内容の明示化は個人の挑戦性がキャリア確立に与える効果に正の影響を,知識やノウハウを教え合うといった支援的環境は負の影響を与えることが示された.個人の挑戦性をキャリア確立につなげるためには,職場において,仕事の目的や内容を明示化することが求められる.また,挑戦性が低い人には職場の支援的環境を整えることも必要であると言える.
著者
荒木 誠一 鈴木 護 藤本 昌俊 木村 誠
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.599-602, 1995-08-15 (Released:2008-02-15)
参考文献数
21
被引用文献数
29 37

ビタミンB2 6.25~100mg/kg を大腸菌接種1日前にマウスに筋注すると, 用量依存的な致死抑制効果が認められた. また, 緑膿菌, 肺炎桿菌, 黄色ブドウ球菌及びアクチノバシルス菌接種に対しても効果を発揮した. 末梢血白血球数の増加, 特に好中球及びマクロファージ数の増加が認められ, ざらにマクロファージの貧食能の亢進が認められた.
著者
荒木 利芳
出版者
三重大学
雑誌
産学が連携した研究開発成果の展開 研究成果展開事業 地域事業 地域イノベーション創出総合支援事業 シーズ発掘試験
巻号頁・発行日
2007

糖アルコールの1種であるキシリトールは虫歯予防や糖尿病患者用甘味料として注目をあびているが、ショ糖と比較して高価なため、より安価な製造法の開発が求められている。現在キシリトールの材料は白樺や樫の木などのβ-1,4-キシランが使用されているが、本研究では、地中海を中心に異常繁殖し、生態系の破壊や漁業に大きな被害を与えている変異種海藻イチイヅタ(Caulerpa taxifolia)の細胞壁構成成分であるβ-1,3-キシランに注目した。申請者はこれまで海域から単離した強力なβ-1,3-キシラン分解細菌Vibrio sp.XY-214 からキシリトール生産に必要な3種類の酵素(β-1,3-キシラナーゼ、β-1,3-キシロシダーゼ、キシロースレダクターゼ)の遺伝子のクローニングに成功している。よって、本研究ではこれら酵素遺伝子の大量発現系を確立し、得られた発現酵素を用いて固定化酵素システムを構築し、β-1,3-キシランからキシリトールを安価で大量に製造する新技術を開発することを目的とする。
著者
堀部 豪 荒木 信夫 小内 愛 井畑 真太朗 山口 智
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.34-40, 2023-02-01 (Released:2023-06-01)
参考文献数
25

【目的】神経サルコイドーシスは両側末梢性顔面神経麻痺の原因疾患の一つであるが、 これに対して鍼治療を実施した報告は我々が調査した限り存在しない。 今回、 両側末梢性顔面神経麻痺を発症、 神経サルコイドーシスが強く疑われた患者に対して鍼治療を実施し良好な経過を認めた症例を報告する。 【症例】73歳男性。 主訴:両側顔面神経麻痺。 現病歴:X年7月24日に右顔面神経麻痺発症、 27日に左顔面神経麻痺発症。 8月2日に当院脳神経内科を受診、 翌日に精査加療のため入院。 精査により神経サルコイドーシスが強く疑われステロイドパルス療法を実施。 8月26日に退院するも両側顔面神経麻痺は残存、 9月13日に当科を受診し鍼治療が開始。 身長159cm。 体重48.6kg。 神経学的所見:バレー徴候陰性、 病的反射陰性、 上下肢の深部腱反射や感覚検査は正常。 MMTは左足関節背屈のみ3。 柳原法:右26点、 左10点。 顔面神経を目標とした鍼通電刺激による表情筋収縮反応は、 右は0.04mAで収縮あり、 左は0.30mAで収縮なし。 右は軽度、 左は重度麻痺と考え、 麻痺の改善・後遺症の抑制を目的に鍼治療を実施。 鍼治療方法:右は聴会 (GB2)・下関 (ST7) へ鍼通電療法。 左は前頭筋、 眼輪筋の上・下、 上唇鼻翼挙筋、 鼻筋、 大・小頬骨筋、 口輪筋、 口角下制筋、 広頚筋へ置鍼治療を10分間実施、 106病日からは同部位に非同期鍼通電療法を実施。 治療頻度:週1-2回。 評価:柳原法。 経過:脳神経内科から処方されたステロイド薬に鍼治療を併用し、 右は170病日に38点、 左は204病日目に38点となった。 【考察・結語】本症例への治療効果は薬物治療と鍼治療の併用効果と言える。 神経サルコイドーシスが疑われた両側顔面神経麻痺患者に対して、 顔面神経の障害程度を考慮した鍼治療を実施した結果良好な治療成績を認め、 鍼治療は治療法の選択肢の一つとなり得る可能性が示唆された。
著者
荒木 透 柴田 浩司
出版者
The Iron and Steel Institute of Japan
雑誌
鉄と鋼 (ISSN:00211575)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.2226-2237, 1975-07-01 (Released:2010-10-12)
参考文献数
39

Grain refimng and plasticity induced by martensitic transformation are thought to be important for developing high strength steels with ductility. The phenomena are connected with the nucleation process of martensite, although the nucleation mechanism of martensite has been still obscure.In order to get some infbrmations of the nucleation effects of small pre-strain and austenitizing conditions on γ→α martensitic transformation of iron alloys have been investigated by measuring electric resistivity and hardness, and by optical-and electron-microscopy. A part of experimental results have been analyzed numerically by reaction rate equation. Merits and demerits of hitherto suggested models of martensitic nucleation are discussed comparing with the results of thiswork and adirection of future investigation is proposed.
著者
荒木創造 [著]
出版者
講談社
巻号頁・発行日
2001
著者
岡田 章 荒木 躋 金 政全 繁田 幸男 泉 寛治
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.89-94, 1972-03-31 (Released:2011-08-10)
参考文献数
17

Following ingestion of the caffeinated beverages, such as coffee, tea or green tea, with either sodium cyclamate or sucrose (20g) as a sweetening, changes in blood glucose, serum cholesterol, triglyceride and free fatty acid levels were studied in diabetics, and following results were obtained:1. The caffeine content ingested in this study was 370 mg/ 8 g of instant coffee, 150 mg/ 4g of instant tea and 110 mg/ 4g of green tea, respectively.2. Blood glucose levels did not change after ingestion of the caffeinated beverages with sodium cyclamate. With sucrose, a slight increase in blood glucose levels was observed in normal and diabetic subjects.3. A significant increase in free fatty acid levels was observed when the caffeinated beverages were ingested with sodium cyclamate. With sucrose, on the other hand, the increase in free fatty acid levels was suppressed during the first 2 hours after ingestion.4. The lipolytic effect was the greatest after coffee and the least after green tea among the three caffeinated beverages. The positive relationship between the lipolytic effect and the caffeine content in these beverages was found.5. There were no significant changes in serum cholesterol and triglyceride levels after ingestion of the caffeinated beverages.As judged by the change in free fatty acid levels, sucrose is recommended as a sweetening for the caffeinated beverages in mild diabetics.
著者
山野 亨 桐山 魁 岡本 修 猿渡 雄二 荒木 義則 森安 貞夫 高田 知典 河村 圭
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.F3-0127, 2023 (Released:2023-03-20)
参考文献数
11

近年,多大な人的被害を及ぼす豪雨に伴う激甚な土砂災害が起こっている.土砂災害発生時には,迅速な土砂災害調査が必要である.そこで我々は,マルチバンド受信機を使用することで,作業効率や調査員の安全性の向上を目指す災害調査支援システムを開発している.本稿では,広島県の災害復旧現場において,開発するシステムに使用する受信機の測位性能を評価する.劣悪環境下における定点測位精度の確認を目的とした砂防堰堤における実験では,水平方向の測位結果のばらつきが22mm(2DRMS)以下であることを確認した.森林中の測位性能の確認を目的とした森林中における実験では,水平方向の測位結果のばらつきが0.65m(2DRMS)以下であることを確認した.この結果,土砂災害調査におけるマルチバンド受信機の有用性が確認できた.