著者
李 殷松 鄭 然吉 荒木 真 福井 豊
出版者
日本卵子学会
雑誌
日本哺乳動物卵子学会誌 (ISSN:13417738)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.19-23, 1996
被引用文献数
6 3

ウシ血清アルブミンを含む合成卵管培養液(SOFM)に添加したヒトまたはマウス白血病抑制因子(leukemia inhibitory factor; LIF)が単一または集団培養したウシ桑実胚の体外発育に及ぼす影響およびLIFの最適添加用量について検討した.ウシ未成熟卵子を体外成熟,30時間体外受精後2~4細胞期へ分割した受精卵を体外培養し,受精後124時間目に桑実胚を回収した.桑実胚は0(対照区),500,1,000,2,000,4,000または6,000 U/mlのヒトまたはマウスLIFを添加したSOFMを用い,単一(1個/30 <i>&mu;</i>l microdrop)または集団(4~5個/30 <i>&mu;</i>l microdrop)培養した.その結果,集団培養は単一培養に比べ孵化胚盤胞への発生率が有意に(p<0.01)増加した.ヒトおよびマウスLIFは単一培養した桑実胚の孵化胚盤胞への発生率を有意に増加させたが(p<0.05),集団培養では有意な発育効果がみられなかった.マウスLIFでは1,000 U/mlが最も高い拡張および孵化胚盤胞への発生率を示したが(p<0.05),ヒトLIFでは500~6,000 U/mlの添加用量による発生率には有意差がみられなかった.以上の結果より,受精卵の集団培養は単一培養に比べ胚発育に効果的であり,SOFMに添加したヒトまたはマウスLIFは単一培養したウシ桑実胚の孵化胚盤胞への発育を改善することが示唆された.
著者
船坂 陽子 田村 真吾 薄木 晶子 荒木 敬司 大橋 明子 市橋 正光
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.138-143, 2002

2000年10月1日から2000年11月30日までの2ヵ月間に神戸大学医学部附属病院皮膚科外来を受診した女性の尋常性痙瘡患者22例に対し, 「ノブ (R) ACスキンケアシリーズ」の使用試験を実施した。<BR>本製品は, Propionibacterium acnesに対して抗菌作用を有する感光素201号, 抗炎症効果が知られるグリチルリチン酸ジカリウムを配合するなどしたスキンケアシリーズで, 化粧落とし, 洗顔料, 化粧水および保湿ジェルの4品からなる化粧品である。2週間の使用試験において副作用例はなく, 全症例22例中21例に安全性を認めた。1例において, 洗顔料の使用部位に本試験品とは因果関係不明の紅色丘疹を認めたが, 使用中止により症状は軽快した。<BR>これらの結果から, 本試験に供した「ノブ<SUP> &reg; </SUP>ACスキンケアシリーズ」は痙瘡患者に対しても安全に使用できるスキンケア製品と考えられる。
著者
荒木 浩太朗 中尾 彰文 山本 祐吾 吉田 登 中久保 豊彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.II_245-II_256, 2017 (Released:2018-04-01)
参考文献数
39
被引用文献数
2

本研究では,将来産業動向を見据えたうえで,全国規模での下水処理施設と産業工場,ごみ焼却場との連携によるGHG削減効果およびその要因について分析した.まず,下水処理施設における未利用汚泥量,産業工場における下水汚泥燃料の受入可能な容量,およびごみ焼却場での下水汚泥由来エネルギーの受入可能量を把握する.次に下水汚泥燃料化技術ごとにGHG収支を把握し,下水汚泥燃料を産業工場やごみ焼却場への配分ルールを設定し,GHG削減効果を分析した.その結果,2020~2030年において未利用汚泥の87.3%がエネルギー活用可能であり,最大GHG削減効果は3,320 [千t-CO2]と推計された.製紙工場の供給達成率は約73%であった.また,産業工場の将来動向の変化や製紙工場での汚泥燃料混焼率の変化に伴う,各業種のGHG削減効果への影響を明らかにした.
著者
荒木 厚 出雲 祐二 井上 潤一郎 服部 明徳 中村 哲郎 高橋 龍太郎 高梨 薫 手島 陸久 矢富 直美 冷水 豊 井藤 英喜
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.32, no.12, pp.804-809, 1995-12-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
12
被引用文献数
4 2

外来通院中の60歳以上の老年者糖尿病383例 (男132例, 女251例) を対象に, 食事療法の負担感に関する面接アンケート調査を家庭訪問により行った. カロリー制限, 食事のバランス, 規則正しい食事, 好物の制限, 間食の制限, 外食時の制限, 食事療法全体に対する負担感の7項目について質問し, 各質問の回答に「全く負担がない」の1点から「非常に負担である」の4点まで配点し, 7つの質問に対する回答の得点を合計して食事療法負担度のスケール化を行った (α係数=0.80). 食事療法負担度は女性, 老年前期, 高血糖例, 経口剤治療例で大きくなり, 食事療法の順守が良好であるほど軽減した. さらに食事療法負担度は社会や家族のポジティブサポートが大きい程小さくなり, ネガティブ社会サポートが大きくなる程大きくなり, 単に糖尿病の治療にかかわる要因のみでなく, 社会的要因によっても大きな影響を受けることが明らかとなった. また, 食事療法負担度が大きい程, モラールは低くなり (r=0.18, p<0.001), 食事療法に対する負担感の有無は, 老年糖尿病患者のQOLに大きな影響を与えることが示唆された.
著者
福井 眞 荒木 希和子
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.147-159, 2017 (Released:2017-08-03)
参考文献数
45
被引用文献数
3

種子植物にはクローン成長で親ラメットの近隣に娘ラメットを生産することで、遺伝的に同一な株の集合が個体となるクローナル植物がある。多くの陸上植物は固着性であり、一度定着したラメットはその場所から移動できないため、クローン成長によるクローンサイズの拡大に伴い、同一クローン内のラメットでも時間空間的な環境変動を経験する。このようなクローン成長に対し、種子繁殖は遠方への分散で環境変動のリスクを回避することができる。繁殖戦略の違いは分散戦略の違いと、遺伝組成の相違の観点から議論されてきた。成育地での撹乱は個体の死亡に大きく影響するが、個体の成育環境への適合性を前提として撹乱前後の成育環境の変化に注目した分散戦略の進化はこれまで考えられてはこなかった。本稿では、成育地への撹乱はそこにいる生物個体の死亡に直接影響するというよりも、成育地の土壌水分や光強度といった性質の変化を通して間接的に影響するものとして、成育環境の時空間変動を表現した空間明示型の個体ベースモデルによってシミュレーションを行った。時空間的に変動する成育環境において、クローン成長のみの繁殖は不適であった。しかし、少ない機会で種子繁殖による遺伝的多様性を保ちつつ、旺盛にクローン成長を行う戦略がこのような環境で有効性を発揮することが示された。また、自然界でクローン成長を行っている植物は、このような時空間的な環境の違いに応じた繁殖をおこなっているかをクローナル植物の野外データを用いて検証した。野外個体群内の個体の位置と遺伝子型を調べ、ペア相関関数によって空間的遺伝構造を種間で比較した。さらに、シミュレーションにおいても同様のデータの取り扱いが可能であるため、自然界で見られる空間的遺伝構造を再現するようさまざまな変動環境下でシミュレーションを行った。その結果、スズランの野外個体群のデータは、成育環境との適合性を考慮したうえで、インパクトの小さい環境変動が高頻度で起きているシミュレーションの空間的遺伝構造パターンが類似し、このような環境変動が個体群構造に影響していることが示唆された。
著者
坂本 圭 小渕 千絵 城間 将江 松田 帆 関 恵美子 荒木 隆一郎 池園 哲郎
出版者
日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.92-98, 2014

要旨: 人工内耳装用者 (以下CI装用者) の語音聴取における発話速度の影響と, 聴取能を補うための休止区間挿入の効果について検討した。対象は健聴者10名, CI装用者13名であり, 通常の発話速度 (以下, 基準文) を1倍速とし, これに対して2段階に倍速にした音声 (1.5倍速, 2.0倍速, 以下倍速文) の聴取成績を分析した。また, 各倍速音声に休止区間を文節, ランダムの2種の方法で挿入しその効果を実験的に検討した。この結果, 両対象者共に発話速度が速くなるにつれて有意に正答率の減少がみられた。特にCI装用者で顕著であり, 2.0倍速ではほとんどのCI装用者が聴取困難となった。また, 休止区間挿入の効果は, CI装用者で1.5倍速文においてのみ有効であった。倍速音声聴取が困難であるCI装用者であっても休止区間挿入により処理時間が確保され聴取能改善につながるため, 会話時においては意味的に区切って発話することの重要性が示唆された。
著者
早川 亮太 小林 直樹 加藤 登 工藤 由起子 荒木 惠美子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.402-409, 2013-12-25 (Released:2013-12-28)
参考文献数
20
被引用文献数
2

日本で流通する日本産海産魚におけるヒスタミン生成を明らかにするために,市販の73魚種について筋肉および腸管を混合したヒスタミン生成モデル試料を作製した.25℃で12時間保存した結果,35魚種において50 mg/kg以上のヒスタミン生成が認められ,これらの魚種がヒスタミン食中毒の原因となる可能性が示唆された.また,1か月の-45℃凍結によるヒスタミン生成の低減の検討では,一部魚種についてヒスタミンが生成され,ヒスタミン生成菌としてPhotobacterium damselaeおよびPhotobacterium iliopiscariumが分離されたが,全魚種について,ヒスタミン生成が低減したことから,この方法が有効なヒスタミン生成の制御方法であることが明らかになった.
著者
杉山 広 森嶋 康之 賀川 千里 荒木 潤 巖城 隆 小松 謙之 味口 裕仁 生野 博 川上 泰 朝倉 宏
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.103-108, 2020-08-25 (Released:2020-10-02)
参考文献数
20
被引用文献数
2

回虫は土壌伝播蠕虫の代表となる寄生虫で,ヒトは虫卵に汚染された植物性食品を摂食して感染する.日本では少数の国内感染症例が継続的に報告されているが,症例数の推移や感染源となる植物性食品の汚染状況は不明な点が多い.そこで,近年の回虫症例発生状況および感染源を明らかにするため,日本臨床寄生虫学会誌,PubMedおよび医中誌Webを用いた文献検索,および臨床検査機関・食品検査機関を対象としたアンケートによる聞き取り調査を行った.文献検索の結果では,1990より2018年の29年間に計193例の回虫症例が確認された(年平均6.7例).しかし2002年以降の報告数は激減し,年平均1.3例にとどまった.臨床検体における回虫症例数も,2000から2008年の年平均19.7例が,2009年以降2.8例と激減した.回虫の感染源となる植物性食品は12,304検体が検査されたが,アニサキス類の幼虫が検出された(11例)ものの,回虫は検出されなかった.ただしキムチは,173検体中の1検体から虫卵が検出され,回虫の感染源であることが疑われた.回虫症例は減少傾向が明らかだが,いまだに発生は確認され,このために感染源を特定して予防対策を確立するために,食品の調査を今後も継続する必要があると考えられた.
著者
奥 雄介 松延 毅 冨岡 拓矢 荒木 倫利
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.251-255, 2016-06-10 (Released:2016-09-27)
参考文献数
18

睡眠時無呼吸症候群 (Sleep Apnea Syndrome: SAS) を疑う場合, 問診, 簡易スクリーニング検査を施行し, 必要に応じて終夜睡眠ポリグラフ検査 (Polysomnograph: PSG) をおこなうことが一般的である. 現在本邦において CPAP の保険導入適応は, 簡易モニターで無呼吸低呼吸指数 (Apnea Hypopnea Index: AHI)≧40または PSG で AHI≧20となっている. しかし, 簡易モニターでは SAS 以外の睡眠障害を把握できないため, 診断には脳波, 筋電図, 眼電図なども含まれる PSG が望ましい. PSG 施行中にてんかん波形がみられた症例を経験したので報告する. PSG で SAS に加えて脳波異常が認められ, その後の脳波検査で特発性全般てんかんと診断された. 本症例のように SAS に他の睡眠障害が合併する可能性も留意しておく必要がある.
著者
菊池 友和 山口 智 荒木 信夫
出版者
日本自律神経学会
雑誌
自律神経 (ISSN:02889250)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.253-256, 2019

<p>日本の慢性頭痛のガイドライン2013では,一次性頭痛の急性期治療および予防に対する鍼治療は有効とされている.コクランレビューでは,片頭痛の予防に対する鍼治療は,予防薬物と比較し効果に差がないが,偽鍼と比較しても効果に差がない.しかし,episodicな片頭痛に限定すると偽鍼と真の鍼に効果の差が認められる.一方,本邦の報告でも,慢性片頭痛よりepisodicな片頭痛の方が効果が高いことが報告されている.鍼の作用機序については,片頭痛患者では,脳イメージングを用いた手法により,予防効果や発作期に対し,鍼刺激を行うことにより,主に脳の疼痛関連領域に影響がある可能性が示されている.</p>
著者
江藤 太 青木 志郎 祢津 智久 荒木 睦子 下村 怜 木下 直人 志賀 裕二 細見 直永 丸山 博文
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.380-384, 2019 (Released:2019-09-25)
参考文献数
10

要旨:症例は初産の37 歳女性.妊娠の経過は良好であったが分娩時に頭痛・左上下肢麻痺の出現を認めたため転院搬送された.頭部CT で右基底核領域の脳出血を認め,降圧加療を行い全身麻酔下で緊急帝王切開術を施行した.第14 病日の頭部MRI で頭蓋内血管に多発狭窄が見られreversible cerebral vasoconstriction syndrome(RCVS)と診断した.Transcranial color flow imaging(TC-CFI)では狭窄部に一致した流速の上昇を認めた.神経症状は徐々に改善し,MRI とTC-CFI で狭窄部の改善度を経時的に評価しえた.MRI と同様に,TC-CFI はRCVS の血管病変の継時的な評価が可能である.
著者
野瀬 和利 近藤 孝晴 荒木 修喜 津田 孝雄
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.161-165, 2005 (Released:2005-04-08)
参考文献数
12
被引用文献数
4 4

Since both acetone and β-hydroxybutyrate are metabolized compounds from acetoacetate, the relationship between the concentrations of acetone and β-hydroxybutyrate in gases released from human skin and blood, respectively, were studied. For collecting gases released from human skin, a home-made collector was used. The collector was a bag-type (inner volume, 70 ml), which was made with sheets of perfluoro (ethylene/propylene). After a finger was pushed into the collector at the center of a shield film made by PARAFILM®, its state was maintained for a period of 3 minutes for collecting human emanated gases from the inserted finger. Then, the acetone concentration in the collector was estimated by gas chromatography. We found a good relationship between them. Its correlation factor was 0.88 (p <0.01). The concentration of acetone can be used as an alternative marker for β-hydroxybutyrate in blood. The present proposed method for estimating the ketone-value is non-invasive, and its sampling procedure is very easy.