著者
野並 芳樹 近藤 樹里 山本 彰 山城 敏行 笹栗 志朗
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.91-95, 2003-03-15
被引用文献数
9 5

症例は66歳,男性.37度前後の微熱と右胸部鈍痛を訴えて入院した.胸部画像検査で右胸腔に小児頭大の被覆化された腫瘤様陰影を認め,好酸球増多を伴う白血球増加(38,900/μl)とCRPの中等度高値を示したため,当初,膿胸を疑った.血清Granulocyte Colony Stimulating Factor (以下G-CSF)値が高値を示し,且つ,腫瘍の経皮的針生検では細胞壊死が広範に認められたが,一部に癌の疑いがあったため,G-CSF産生肺癌の診断のもと,下葉切除,上中葉部分切除,胸壁,および横隔膜部分切除を行った.切除肺,胸壁,腫瘍の総重量は約1600グラムで,腫瘍は抗G-CSFモノクローナル抗体による免疫組織化学染色で陽性を示す肺大細胞癌であった.術後2週間で血清G-CSF値は正常域となった.その後,paclitaxel + carboplatin併用の抗癌化学療法を行ったが,手術6ヵ月後に血清G-CSF値の上昇とともに,胸壁の切除断端より再発を来たし,手術8ヵ月後に癌性胸膜炎による呼吸不全で死亡した.手術を行ったG-CSF産生肺大細胞癌の本邦報告例は自験例を入れて15例あるが,術後数ヵ月以内に死亡している症例が多い.また本例は術前IL-6も高値を呈し,G-CSF以外のサイトカインとも関連を持った症例であると考えられた.
著者
近藤 信太郎 内藤 宗孝 松野 昌展 高井 正成 五十嵐 由里子
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

下顎骨の外側面に見られる隆起の形態的特徴と機能を明らかにするために非ヒト霊長類778個体を観察した。比較検討のために下顎骨外側面に見られる窩を同時に観察した。マカク属,サバンナモンキー属,マンガベイ属では隆起と窩の両方が見られた。隆起は緻密骨から成り,ヒトの下顎隆起に類似していた。発達の良い隆起は頬袋の入り口に近接していた。深く大きい窩はヒヒ属,ゲラダヒヒ属,マンドリル属の全個体に見られた。窩は第一大臼歯部が最も深く,この部位では骨質が薄くなっていた。隆起より前方に位置した。隆起と窩は下顎骨を補強する,あるいは負荷の軽減の機能をもち,咀嚼に対する適応的な形態と考えられる。
著者
星野 久 近藤 孝造 赤尾 泰子 KUMAHARA Rie HAMADA Kumiko 濱田 久美子 山田 知子 水島 かな江
出版者
四国学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

1.研究の目的§本研究の理論仮説,及びその実証課題は次のとおりである。すなわち,家族とは親族の下位組織であり,その第1次的機能は生産・消費を基本とする福祉実現である。この組織は生産力の発達段階と照応して変化する。従って,今日の高度工業化社会では,(組織的経済活動を営む)伝統的家族は(諸個人が経済行為の単位となった)新型家族へと変化したと考えられるがその実像はどのようなものか,俗に「個人化」と総括されるが果たして如何がなものか。これを解明しようというのが,本研究のポイントである。2.研究の方法§ (1)調査地点は札幌,神奈川,京都,広島,及び福岡の生協会員1/1000を抽出した約2000名を対象とした。(有効表は420)(2)分析はSPSSに拠った。(因子分析を中心に帰納法的手法を用いた。)3.研究の成果§ わが国を代表する家族の型として「家族主義的夫婦家族」を抽出した。その特色は,(1)家族と共にいることが最高の幸せで,家族のためには犠牲をも厭わない。家族の中に何一つ隠し事はなく,団結力もある。以上の考えに強く賛成する人は27%,大体賛成は46%,併せて73%がこの型である。(2)以上と高い相関がある「自己実現」因子は67%に達している。(3)年齢層は30〜50歳台に平均して観られる。(4)学歴は関係せず,職業の有無では無職が圧倒的に多い。(5)家族構成及びライフコ一スでは有意差は観られない。(6)ストレスと相関する母子固着型は,両者ともに負の相関である。(7)結婚観における伝統性,補完性は大体肯定的、互酬性は高く肯定的である。いえ因子は否定的。(8)ライフスタイルでは弱い団欒志向と負の家事合理性に相関が観られる。(9)意志決定では,家庭管理及び育児教育は妻に決定権があり,結婚生活の計画・実行は夫妻協同である。(10)夫妻関係では大体において夫信頼型であり,姉さん女房型,新婚気分の持続型と,多少のニューアンスはことなるが,夫や子どもの身の回りの世話を細々とする。(11)性意識ではやや貞女志向であり,精神的愛情を尊重し,フリーセックスはやはり駄目と否定的である。(12)中・高校家庭科では高齢化社会,環境問題等のカリキュラム化が必用だとし,男らしさ・女らしさの躾教育は否定的である。以上が日本型conjugal familyの諸特性である。この他,個人主義型の分析や特に経営形態との分析等,まだかなりの部分が残されており,別の機会に発表することとしたい。
著者
廣瀬 圭 土岐 仁 近藤 亜希子
出版者
日本スポーツ産業学会
雑誌
スポーツ産業学研究 (ISSN:13430688)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.255-262, 2012 (Released:2012-11-16)
参考文献数
12
被引用文献数
3 10

This paper proposes a measurement system and computation method for 3D motion analysis in sports. The measurement system that consists of inertial and magnetic field sensors is able to measure 3-axis angular velocity, 3-axis acceleration and 3-axis magnetic field. We can easily perform the experiment in sports because this system is directly attached to the body. Introducing the sensor fusion algorithm using Kalman filter, we can avoid storage error by the drift of the gyro sensor. The computation method provides the angles by compensation of centrifugal and tangential acceleration and sensor fusion.     In order to confirm the accuracy of this proposed system and computation method, we compared the value obtained by this system with the value obtained by a rotary encoder. It was found that the measurement system and computation method provided the accurate value. It is shown that the proposed method can be used for motion analysis in sports.
著者
沢井 晃 近藤 恒夫 荒 智
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.175-179, 1983-07-28

フェノール酸による繊維のエステル化と,酵素による分解率とのあいだの関係を調べた。オーチャードグラスの中性デタージェント繊維(NDF)・酸性デタージェント繊維(ADF),濾紙,以上3種の繊維をフェルラ酸(FA)・p-クマル酸(PCA)でエステル化し,セルラーゼで分解した。分解率はエステル化に伴って直線的に低下した。エステル化したFA・PCAの含有率に対する繊維の分解率の回帰係数は,-6.7% NDF/% FA,-4.0% NDF/% ,-13.1% ADF/% FAまたはPCA,-9.4%濾紙/%FAまたはPCAであった。NDFのほうがADFよりも,臭化アセチル可溶リグニンを多く含み,酵素による分解率が低かったことから,酸可溶リグニンも酵素による繊維の分解を阻害することを示唆した。
著者
近藤 功 アンドレア クティチ 田中 宏征 坂野 鋭
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.573, pp.13-18, 2005-01-14

画像検索性能向上を目的とした, スティーラブルフィルタによるテクスチャ記述方法を提案する.従来のテクスチャ記述方法として, ガボールフィルタリングにより得られる画像の方向・空間周波数構造を利用したテクスチャ記述方法がある.ただし, ガボールフィルタリングにより得られる方向性は, 実用上, 特定の方向に限定される.そのため, 従来のガボールフィルタによるテクスチャ記述方法は, 方向性特徴を十分に活用できていない問題を持つ.この問題を解決するため, 我々は, 任意方向に指向性を持つスティーラブルフィルタを採用した.また, テクスチャ記述性能の向上のため, 方向に加え, 空間周波数, エッジ種類の解析を行った.予備的な実験により, 提案手法の可能性を検討した.
著者
近藤 光子
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.401-405, 2005

気管支鏡を介して, 気管支内に生理食塩水を注入し, 肺胞や末梢気道レベルを洗浄し, その回収液の細胞成分や液性成分を解析する方法で, 反復して施行することも可能である. 1970年代に開発され, 1980年代にびまん性肺疾患に対する有用性が確立された. 1990年代にはBALのガイドラインが示され, 標準化がなされるようになってきている. 現在, びまん性肺疾患の診断, 病態解析などに広く用いられている. 通常の気管支鏡と同様の前処置を行い, 気管支鏡を楔入し, そのチャンネルを通して生理食塩水を通常, シリンジで50mlを用手的に3回注入, 回収する. 回収時には気管支の虚脱が起こらないように陰圧は強くかけすぎない. 洗浄部位はびまん性肺疾患では中葉や舌区の区域支または亜区域支を選択することが多い. 病変が限局しているときは病変部を選択することもあるが, 回収率が不良になる可能性がある. 洗浄部位の記載は忘れずに行う. BAL施行中の咳嗽は回収率を低下させ, またcontact bleedingによる血液混入は結果の解釈に影響するので, 十分麻酔して咳嗽を防止する.
著者
近藤 純正
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.269-277, 1998-04-30
被引用文献数
6

いろいろな気候域と各種地表面における蒸発散量を比較するために, 新しく導入されたポテンシャル蒸発量(可能蒸発量)で蒸発散量と降水量を無次元化し, それらの気候学的な関係を求めた.裸地面においては, 降水量の少ない乾燥域では年蒸発量は土壌の種類によらず年降水量にほぼ等しいが, 降水量が増加すると年蒸発量は土壌の種類に依存するようになり, さらに降水量が増加すると無次元年蒸発量は土壌の種類によって決まる上限値をもち, 無次元年降水量(気候湿潤度)に依存しなくなる.上限値は保水性のよいローム質土壌で0.6〜0.9, 排水性のよい粗砂地で0.3程度である.森林では, 葉面積指数が大きく雨の日の濡れた樹体からの遮断蒸発量が多く, 蒸発散量は降水量または降水日数と共に増加する.しかし, この傾向は芝生地や牧草地では明瞭ではない.無次元蒸発散量は暖候期の水田や森林では0.7〜0.9, 浅い水面では0.7程度, 芝生など草地では0.5〜0.6, 夏のツンドラや乾燥域のオアシスでは0.5前後である.また, 乾期・雨期の明瞭な地域については, 精度の高い観測資料が少なく確定的ではないが, 無次元蒸発散量の年間値は年降水量の増加と共に大きくなり, その最大値は0.4程度(主として草地)〜0.8程度(主として森林)に収束するように思われる.この値からのばらつきは雨の集中性, つまり雨季・乾期の顕著さに依存すると考えられる.今後の研究では, 蒸発散量は相対誤差10%以内の精度で観測し, これらの数値を確定することが重要である.
著者
近藤 龍彰
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.38-46, 2014

本研究は,幼児は答えられない質問に適切に「わからない」と回答するのか,およびその発達的変化を検討した。年少児27名(男児15名,女児12名,平均月齢49.81カ月),年中児31名(男児16名,女児15名,平均月齢61.45カ月),年長児34名(男児19名,女児15名,平均月齢73.74カ月)を対象に,3つの課題を行った。いずれの課題でも,幼児に答えがわかるだけの十分な情報を示した質問(答えられる質問)と,情報を示していない質問(答えられない質問)を行った。また,幼児の「わからない」という反応を引き出しやすくするために,「わからない」ことを視覚的に示す選択肢(「?」カード)を用意した。その結果,年少児時点でも答えられない質問に対して,適切な「わからない」反応を行うこと,「わからない」反応は年中段階で低下することが示された。さらに,明確な「わからない」反応以外にも「わからない」ことを示す非言語的な指標が存在することが示唆された。このことより,「わからない」反応を行える年齢が,先行研究で示されているよりも年齢の低い時期にまで拡張されること,年少児と年中児では「わからない」反応を行うことの意味が異なってくることが示唆された。
著者
近藤 悟 平井 伸博 菅谷 純子
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

リンゴ樹を供試し、光量条件が花芽形成に及ぼす影響を検討した。リンゴの花芽形成に関連する遺伝子として、幼若性に関連するMdTFL1および花形成に関連するMdFT1の発現について検討した。MdTFL1の発現は光量制限下で高くなった。この結果は、リンゴの花芽形成に及ぼす光量制限の影響はMdTFL1との関わりが強いことを示唆する。ブドウ樹を供試し、夜間における青色光あるいは赤色光LEDの照射が果実のアブシシン酸(ABA)代謝およびアントシアニン合成に及ぼす影響を検討した。夜間の赤色LED照射は内生ABA濃度に影響するが、必ずしもアントシアニン濃度とは一致しないこと、青色LED照射は内生ABAに及ぼす影響は大きくないものの、mybA1などアントシアニン合成に関連する遺伝子に影響することが示唆された。
著者
近藤 功行 安保 英勇 江崎 一朗 簗瀬 誠 與古田 孝夫 木ノ上 高章
出版者
沖縄キリスト教学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

9.研究成果の概要昨今、雇用は重要な社会問題でもある。とりわけ、深刻な問題は障害者雇用である。日本では、障害者の分類が3つに分かれている。すなわち、身体障害、知的障害、精神障害の3つである。これまで障害者雇用率にカウントされていなかった精神障害者の雇用がカウントされることが重要な課題であるが、このことは非常に大切な視点をはらんでいると考えられる。そのような中で、私たちは鹿児島県奄美大島にある精神障害者小規模作業所:「明りの家」に着目している。精神障害者の雇用率がアップすること、障害者雇用率をあげることは重要であるがこの点について我々は奄美鳩骸市(旧名瀬市)にある、「明りの家」を通して追って来ている。本研究で得た、知見は以下の通りである。1.鹿児島県奄美大島にある「明りの家」は非常に重要な視点をはらんでいる。明りの家では比較的高い賃金を利用者に支払うことが可能となっていた。その理由としては、行政から委託された仕事(公民館の清掃、道路ののり面の整備関連の仕事など)やスーパーのビラ配りなど、地域と密着した仕事を受注できていることにある。その背景には、これまでの明りの家の仕事ぶりが、地域の人々から評価され、信頼を得ていることにある。明りの家の所長は、今後の展開として、単に仕事を請けるだけではなく、自らが主体となる方向を考えている。今後とも精神障害者の雇用を考える上で、明りの家の活動は、着目すべき精神福祉、就労のモデルになると考えられる。2.障害者雇用を考究する上では、日本人の障害者観が問題になるのではないかと考えている。地域、行政、医療福祉関連に従事する人々、学校、などであるが、障害者雇用の理解に際しては、学校教育に関連した内容に関しては(社会人や大学のみの教育ではなく)小学校から大学までの教育において重要になると考えている。
著者
近藤 俊明
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

オイルパームプランテーションの拡大によって東南アジアの熱帯林は急速に減少している。本研究では、プランテーションに媒介昆虫として導入されるアフリカ産のゾウムシ(外来種)と、断片化した熱帯林のネットワーク形成に寄与するプランテーション内の残存林に生息する昆虫種(自生種)について、パーム種子生産への貢献度を比較した。その結果、熱帯林が残存するプランテーションでは、自生種のコバエ類も種子生産に貢献していることなどが明らかとなった。つまり、残存生態系により提供される送粉サービスの活用が、断片化した熱帯林のネットワーク形成のみならず、安定的なオイルパーム種子の生産にも寄与することを示唆するものであった。
著者
所澤 潤 中田 敏夫 入澤 充 小川 早百合 古屋 健 江原 裕美 澤野 由紀子 志賀 幹郎 山口 陽弘 田中 麻里 YOFFE LEONID G 服部 美奈 山崎 瑞紀 日暮 トモ子 猪股 剛 小池 亜子 小室 広佐子 近藤 孝弘 三輪 千明 市川 誠 音山 若穂 前田 亜紀子 徳江 基行 モラレス松原 礼子 佐藤 久恵 林 恵 清水 真紀 福田 えり (石司 えり) 白石 淳子
出版者
東京未来大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-11-18

ドイツ、イタリア、チェコ、ブラジルは、学齢児の就学義務を設定している。ドイツとイタリアでは子供は社会の責任で国籍に拠らずに最低限の教育を受けさせねばならないという考えがあり、また、4国には、居住する子供を国籍で判別することが技術的に困難であるという共通の事情がある。それに対して、中国、韓国、台湾、タイでは、日本と同様、国家は自国民の子供に対してだけ就学/教育義務を課すという考えが主流である。いずれの国でも教授言語を習得させる特別な教育が設定されているが、並行して母語保持教育を実施する点についてはいずれの国もほとんど制度化が進行していない。
著者
上村 佐知子 下田 裕子 近藤 直樹 津曲 良子 佐々木 誠
出版者
秋田大学
雑誌
秋田大学医学部保健学科紀要 (ISSN:13478664)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.52-57, 2005-03-31

本研究の目的は,身体活動能力の低下を伴う痴呆患者における愛他的行動の出現頻度や出現内容を観察するとともに,愛他的行動の出現が痴呆の重症度・症状類型やセルフケアの自立度と関連するかを明らかにすることである.一般総合病院で理学療法を受けている入院痴呆患者39名を対象に,1ヶ月間の愛他的行動の出現を観察し,また,改訂版長谷川式簡易知能評価スケール(以下HDS-R)と高齢者用多元観察尺度(以下MOSES)を用いて,痴呆の重症度と社会活動性を評価した.愛他的行動の出現頻度は1〜45回,1回も出現しなかった患者は2名であり,総数では605回の愛他的行動が観察された.愛他的行動の出現頻度は,HDS-Rとの間に相関関係を認めなかったが,MOSESの総点との間に有意な相関関係を認めた.愛他的行動の出現頻度に最も影響するMOSESの下位尺度は「引きこもり」と「イライラ感」であった.結果より,痴呆患者においても少なからず愛他的行動が残存し,それは引きこもりやイライラ感が少ない者で多く観察されることが示された.