著者
遠藤 優
出版者
金沢大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

ホログラフィと画像処理を組み合わせた計測技術(DH: Digital Holography)では,画像処理が複雑化・多様化し,その開発に要するコストの増大が問題となっている.本研究では,DHシステムにおける画像処理を最適化問題として統一的に扱う手法を提案し,スケーラブルかつ高性能なホログラム画像処理フレームワークの構築を目指す.また開発したフレームワークを様々なDHシステムに応用し,その有用性を実証する.
著者
松本 敬 遠藤伶 重野 寛
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.1310-1319, 2010-06-15
被引用文献数
2

P2Pファイル共有において,レアリティが高く入手の難しいブロックが発生し,ブロック収集効率が下がるブロックのレアリティ問題が存在する.ブロックとは,共有するファイルをあらかじめ決められたサイズに分割した断片のことである.そこで,本論文ではブロック収集効率をあげるためにブロックのレアリティを考慮したブロックを効率的に分散させるP2Pファイル共有手法CASの提案を行う.CASではレアリティ問題の原因であるブロックの分散速度とピア離脱の2点に対処することで,ブロックを収集するための効率をあげる.さらに,シミュレーション評価を行い,ネットワーク内のピア数に変動がない場合にネットワーク内の全ピアがファイル復元に要する時間が,CASは既存手法と比べ60%に短縮されることを示した.This paper discusses a rarity problem of blocks in P2P file sharing that degenerates the blocks collection efficiency of peer by the blocks that have high rarity and thus difficult to obtain it. Blocks are the divided fragments of shared files as which size is decided previously. The aim of this proposal is to improve the blocks collection efficiency of peer in P2P. We propose CAS which is a P2P file sharing method for efficient distribution of blocks that considers the rarity of blocks. In the proposal, CAS deals both the dispersion speed of blocks and the peer departure to improve the blocks collection efficiency. Moreover, we show through simulations when number of peer is stable that CAS reduces file reconstruction time of all peers in network to 60 percent than traditional method.
著者
遠藤 智比古
出版者
日本英学史学会
雑誌
英学史研究 (ISSN:03869490)
巻号頁・発行日
vol.1990, no.22, pp.119-136, 1989

When I found that the equivalent to hippopotamus was Kawamuma (河馬) in <I>AN ENGLISH-JAPANESE DICTIONARY</I> ('薩摩辞書') in 1869, I wanted to know when and how Kawamuma changed into Kaba (河馬).<BR>In Dutch-Japanese dictionaries compiled in the Edo era, I couldn't find the entry word of 'nijlpaard' which is the Dutch equivalent to hippopotamus.<BR>A Chinese word河馬first appeared in <I>A POCKET DICTIONARY OF THE ENGLISH AND JAPANESE LANGUAGE</I> ('英和対訳袖珍辞書') in 1862. How was the translation of河馬made?<BR>After presenting a report at the regular monthly meeting in May, 1988, the writer found'地球説略'which was put guiding marks beside Chinese characters by Gempo Mitsukuri (箕作阮甫).In this book, hippopotamus appeared as海馬.And by comparing'海國圖志'which was put guiding marks by Gempo Mitsukuri, '海國圖志'in the original in 60 vols. and the enlarged edition of which in 100 vols., the writer deduces that Gempo Mitsukuri played an important role in the introduction of the Chinese word河馬.<BR>According to the writer's research, '改正増補英語箋'in 1872 was the oldest book in which hippopotamus appeared as河馬with small <I>kana</I> printed alongside the Chinese characters.
著者
遠藤 智子 ヴァタネン アンナ 横森 大輔
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.160-174, 2018-09-30 (Released:2018-12-26)
参考文献数
29

本研究は,フィンランド語・日本語・中国語における先行発話に重なって開始される応答,特に同意的応答について,対面会話の録画をデータとして検討する.会話分析の手法を用いた分析により,まず,完結可能点より早い位置で同意を開始することは,話題に関する認識的独立性を主張し,同意的応答が持つ行為連鎖上の従属的な性質を調整するということに動機づけられていることを示す.重なって開始される同意的応答の構造的特徴として,(1)同意のパーティクル+理解の提示および(2)認識性に関する修正を含む繰り返しという2つのパターンが3言語に共通して見られた.また,重ねられる側の発話には,条件節や因果節による複文構造やトピック–コメント構造が3言語に共通して見られた一方で,フィンランド語と中国語ではSVX語順が,日本語では引用構文が観察された.これらの構造は,その前半または初めの部分が次にどのような内容が産出されるかを強く投射するため,聞き手が完結可能点よりも早く応答を開始することを可能にする.本研究は,発話の開始位置と発話の言語構造を調整することによって会話参与者間の知識状態に関する相対的な位置取りを交渉するということが,人類の文化に(あるいは少なくともここで取り上げた3言語に)共通してみられる普遍的なプラクティスであることを示唆するものである.
著者
遠藤 勝信
出版者
東京女子大学論集編集委員会
雑誌
東京女子大学紀要論集 (ISSN:04934350)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.31-45, 2017-03-15

This paper mainly focuses on a grammatical problem in Rev. 1 : 1–3, and considers the form of the revelation which John has at the beginning of his letter. The problem is that ἀποστέλλω lacks the object noun(s), and this ellipsis makes obscure ‘who (or what) is to be sent?’ In most Japanese translations, including Shinkyoudouyaku (Japan Bible Society, 1987), takes adverbial phrase διά τοῡ ἀγγέλου αὐτοῡ (by his angel) as the object and paraphrases it such as ‘He sent his angel.’ Even if this paraphrase may not be impossible, it needs some explanation how the adverbial phrase can be replaced by the object noun(s) in this context.
著者
遠藤 薫
出版者
横断型基幹科学技術研究団体連合(横幹連合)
雑誌
横幹連合コンファレンス予稿集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.72, 2009

This paper makes clear differences between the fads in former times and the internetfads mediated by social media today. Then, it points out that various fads or collective effervescenceshave been triggers of big social changes, or rather the triggers of social formation. Finally, itdiscusses that in today's world, which can be called as "inter-media" society because multi-layeredmedia including social media are embedded, collective effervescences are easy to be caused.
著者
福島 栄二 岩佐 正一 遠藤 伸夫 吉成 竜也
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.413-421, 1966 (Released:2007-07-05)
参考文献数
21
被引用文献数
3 6

1. 著者らは Camellia assimilis, C. granthamiana, C. hiemalis のそれぞれ1品種, C. japonica の14品 種, C. japonica subsp. rusticana の3品種, C. salicifolia, C. saluenensis のそれぞれ1品種, および不詳の C. spp. 3品種について体細胞染色体数の調査を行なうとともに一部の種については核型分析を行なつた。2. 核型分析の結果は次のごとくであつたC. japonica K(2n)=16V+8J+2Jt+4vC. japonica subsp. rusticana (野生1品種) K(2n)=16V+8J+J1t+J2t+4vC. salicifolia K(2n)=16V+8J+2Jt+4vC. saluenensis (1品種) K(2n)=17V+7J+J1t+J2t+4vC. japonica subsp. rusticana (野生1品種) とC. saluenensisの1品種と推定した“西王母”は核学的調査の結果染色体の構造的雑種あるいは真正雑種である可能性が強い。3. 染色体数の調査結果は第1表に示した。附表として取りまとめた現在までの研究結果に対して, 著者らにより新たに附加された知見は次のごとくである。(i) C. assimilis は2倍体種であること, (ii)C. japonicaにおいて低3倍体 (3X-1=44) および5倍体が見いだされたこと, (iii) C. reticulataの1品種“大谷唐椿”(2n=91) の染色体中には1つの小型過剰染色体が存在すること, (iv) ツバキ系の園芸品種と見られる“手向山”および“梅ケ香”はともに4倍体であること, などである。4. ツバキ属の倍数性系列は2倍体 (2n=30) から8倍体(2n=120)におよび, 染色体数の明らかにされた種の過半数は倍数体種であるか種内倍数性の分化を含む種である。しかも4倍体が意外に少なく3倍体, 6倍体が非常に多いことなどの事実は, ツバキ属の倍数性系列の成立には3倍体が主要な役割をになつてきたことを強く示唆する。ツバキの5倍体品種, ツバキ系4倍体品種 (雑種起源の疑いが強い) の発見は, 倍数体レベルでのツバキの交雑育種に対する強い期待をいだかせる。
著者
中村 学 遠藤 聡 佐藤 恵 手島 雅人 久米 亮一
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.272-276, 2019-04-18 (Released:2019-05-30)
参考文献数
5
被引用文献数
1

装具療法は脳卒中患者の立位・歩行獲得のために有効な手段であり,運動療法を合わせて実施することでその効果を高めることができる.セラピストの介入が少なくなる生活期においては,下肢の変形や異常運動を防ぐために下肢装具が重要な役割を担うが,その効果を発揮するためには,装具メンテナンスなどの患者指導も重要である.生活期でも多職種チームで連携してリハビリテーション診断と治療を行い,装具を装着したことによる歩行時の筋活動や下肢の運動を学習させる運動療法が重要である.さらに,介護保険サービスとの情報共有,地域の装具ユーザーやケアマネジャーへの相談窓口を設置するなど,地域連携も不可欠である.
著者
江木 盛時 黒田 泰弘 山田 亨 山田 博之 山元 良 吉田 健史 吉田 悠平 吉村 旬平 四本 竜一 米倉 寛 和田 剛志 渡邉 栄三 小谷 穣治 青木 誠 浅井 英樹 安部 隆国 五十嵐 豊 井口 直也 石川 雅巳 石丸 剛 磯川 修太郎 板倉 隆太 今長谷 尚史 志馬 伸朗 井村 春樹 入野田 崇 上原 健司 生塩 典敬 梅垣 岳志 江川 裕子 榎本 有希 太田 浩平 大地 嘉史 大野 孝則 谷口 巧 大邉 寛幸 岡 和幸 岡田 信長 岡田 遥平 岡野 弘 岡本 潤 奥田 拓史 小倉 崇以 小野寺 悠 小山 雄太 鶴田 良介 貝沼 関志 加古 英介 柏浦 正広 加藤 弘美 金谷 明浩 金子 唯 金畑 圭太 狩野 謙一 河野 浩幸 菊谷 知也 土井 研人 菊地 斉 城戸 崇裕 木村 翔 小網 博之 小橋 大輔 齊木 巌 堺 正仁 坂本 彩香 佐藤 哲哉 志賀 康浩 土井 松幸 下戸 学 下山 伸哉 庄古 知久 菅原 陽 杉田 篤紀 鈴木 聡 鈴木 祐二 壽原 朋宏 其田 健司 高氏 修平 中田 孝明 高島 光平 高橋 生 高橋 洋子 竹下 淳 田中 裕記 丹保 亜希仁 角山 泰一朗 鉄原 健一 徳永 健太郎 富岡 義裕 中根 正樹 冨田 健太朗 富永 直樹 豊﨑 光信 豊田 幸樹年 内藤 宏道 永田 功 長門 直 中村 嘉 中森 裕毅 名原 功 藤島 清太郎 奈良場 啓 成田 知大 西岡 典宏 西村 朋也 西山 慶 野村 智久 芳賀 大樹 萩原 祥弘 橋本 克彦 旗智 武志 小倉 裕司 細川 直登 浜崎 俊明 林 拓也 林 実 速水 宏樹 原口 剛 平野 洋平 藤井 遼 藤田 基 藤村 直幸 舩越 拓 升田 好樹 堀口 真仁 牧 盾 増永 直久 松村 洋輔 真弓 卓也 南 啓介 宮崎 裕也 宮本 和幸 村田 哲平 柳井 真知 松嶋 麻子 矢野 隆郎 山田 浩平 山田 直樹 山本 朋納 吉廣 尚大 田中 裕 西田 修 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会 松田 直之 山川 一馬 原 嘉孝 大下 慎一郎 青木 善孝 稲田 麻衣 梅村 穣 矢田部 智昭 河合 佑亮 近藤 豊 斎藤 浩輝 櫻谷 正明 對東 俊介 武田 親宗 寺山 毅郎 東平 日出夫 橋本 英樹 林田 敬 安宅 一晃 一二三 亨 廣瀬 智也 福田 龍将 藤井 智子 三浦 慎也 安田 英人 阿部 智一 安藤 幸吉 飯田 有輝 石原 唯史 井上 茂亮 井手 健太郎 伊藤 健太 伊藤 雄介 稲田 雄 宇都宮 明美 卯野木 健 遠藤 功二 大内 玲 尾崎 将之 小野 聡 射場 敏明 桂 守弘 川口 敦 川村 雄介 工藤 大介 久保 健児 倉橋 清泰 櫻本 秀明 下山 哲 鈴木 武志 関根 秀介 垣花 泰之 関野 元裕 高橋 希 高橋 世 高橋 弘 田上 隆 田島 吾郎 巽 博臣 谷 昌憲 土谷 飛鳥 堤 悠介 川崎 達也 内藤 貴基 長江 正晴 長澤 俊郎 中村 謙介 西村 哲郎 布宮 伸 則末 泰博 橋本 悟 長谷川 大祐 畠山 淳司 久志本 成樹 原 直己 東別府 直紀 古島 夏奈 古薗 弘隆 松石 雄二朗 松山 匡 峰松 佑輔 宮下 亮一 宮武 祐士 森安 恵実
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.28, 2020
被引用文献数
2

<p>日本集中治療医学会と日本救急医学会は,合同の特別委員会を組織し,2016 年に発表した日本版敗血症診療ガイドライン(J-SSCG) 2016 の改訂を行った。本ガイドライン(J-SSCG 2020)の目的は,J-SSCG 2016 と同様に,敗血症・敗血症性ショックの診療において,医療従事者が患者の予後改善のために適切な判断を下す支援を行うことである。改訂に際し,一般臨床家だけでなく多職種医療者にも理解しやすく,かつ質の高いガイドラインとすることによって,広い普及を目指した。J-SSCG 2016 ではSSCG 2016 にない新しい領域[ICU-acquired weakness( ICU-AW)と post-intensive care syndrome(PICS),体温管理など]を取り上げたが,J-SSCG 2020 では新たに注目すべき4 領域(Patient-and Family-Centered Care,sepsis treatment system,神経集中治療,ストレス潰瘍)を追加し,計22 領域とした。重要な118 の臨床課題(clinical question:CQ)をエビデンスの有無にかかわらず抽出した。これらのCQ には,本邦で特に注目されているCQ も含まれる。多領域にわたる大規模ガイドラインであることから,委員25 名を中心に,多職種(看護師,理学療法士,臨床工学技士,薬剤師)および患者経験者も含めたワーキンググループメンバー,両学会の公募によるシステマティックレビューメンバーによる総勢226 名の参加・協力を得た。また,中立的な立場で横断的に活躍するアカデミックガイドライン推進班をJ-SSCG 2016 に引き続き組織した。将来への橋渡しとなることを企図して,多くの若手医師をシステマティックレビューチーム・ワーキンググループに登用し,学会や施設の垣根を越えたネットワーク構築も進めた。作成工程においては,質の担保と作業過程の透明化を図るために様々な工夫を行い,パブリックコメント募集は計2 回行った。推奨作成にはGRADE方式を取り入れ,修正Delphi 法を用いて全委員の投票により推奨を決定した。結果,118CQ に対する回答として,79 個のGRADE による推奨,5 個のGPS(good practice statement),18 個のエキスパートコンセンサス,27 個のBQ(background question)の解説,および敗血症の定義と診断を示した。新たな試みとして,CQ ごとに診療フローなど時間軸に沿った視覚的情報を取り入れた。J-SSCG 2020 は,多職種が関わる国内外の敗血症診療の現場において,ベッドサイドで役立つガイドラインとして広く活用されることが期待される。なお,本ガイドラインは,日本集中治療医学会と日本救急医学会の両機関誌のガイドライン増刊号として同時掲載するものである。</p>
著者
遠藤 彰 斎藤 真澄 伏崎 弥三郎
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.85, no.9, pp.593-597,A47, 1964
被引用文献数
1

脂環式炭化水素類の環に直結した炭素間二重結合を有機過酸で酸化すると,一般のオレフィンと異なり環の拡大をともなうような例が報告されている。著者らはこの種の反応を詳しく調べるために,双環テルペンのカンフェンを過酢酸,過安息香酸で酸化しその反応生成物を調べ,また過酸の消費量を測定することによって反応速度を求めた。反応生成物は主としてカンフェニランアルデヒドで,その他に過酢酸酸化ではカンフユングリコールのモノ酢酸エステル,過安息香酸酸化ではカンフェンオキシドが認められた。反応速度は2次反応速度式で表わすことができ,種々の条件で2次反応速度定数が得られた。反応は溶媒の極性が大きいほど遅いことから,オレフィンの過酸によるエポキシ化反応と同じく分子機構で反応が進むと考えられる。
著者
遠藤 俊郎 下川 浩一 安田 貢 布施 洋 袴田 敦士 伊藤 潤二
出版者
山梨大学教育人間科学部附属教育実践総合センター
雑誌
教育実践学研究 : 山梨大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 = 教育実践学研究 : 山梨大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13454161)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.84-94, 2009-03-31

本研究は,大学における運動部活動(バレーボール)の練習場面における現代の集団規範の実態を把握するとともに,競技水準によってどのような違いがあるかを明らかにし今後のコーチングに役立てるための一資料にする.また,10年前の選手の集団規範と比較することによって今日の選手の特徴を明確にすることを目的とした.その結果,男子における集団規範下位尺度得点において,競技水準の高いチームに所属している選手が競技水準の低いチームに所属している選手に対してすべての下位尺度得点で高い値を示した.男子における社会的アイデンティティ各項目得点においては,競技水準の高いチームに所属している選手が競技水準の低いチームに所属している選手よりも高い評価が得られた.このことから,男子において競技水準が高いほうが集団帰属意識は強く,規範も厳しいことが示唆された.また,90年代と現代の集団規範の比較においては,「現代の選手」が3つの下位尺度得点(態度規範・上下序列規範・奉仕規範)で高い値を示した.このことから「現代の選手」において規範に対する耐性が低下している可能性があることが示唆された.
著者
池田 志織 遠藤 俊郎 安田 貢 三井 勇 田中 博史 横矢 勇一 飯塚 駿
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第67回(2016) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.141_2, 2016 (Released:2017-02-24)

チーム力とは「環境や課題の変化に適応しながら、成果に直結させることのできるチームレベルの能力」(池田、2009)と定義されているが、チーム力に関してスポーツチームを対象として行われた研究はわずかである。そこで本研究は2015年度春季関東及び関西大学バレーボール1部リーグに所属する男女バレーボールチーム(男子18チーム496名、女子19チーム603名)を対象に質問紙調査を行い、集合的効力感、チームの振り返り、スポーツ・コミットメントがチーム力にどのような影響を与えるかを検討することを目的とした。重回帰分析の結果、集合的効力感の「準備力」、「結束力」と、チームの振り返りの「タスクの振り返り」、「社会的振り返り」がチーム力のコミュニケーション能力(R2=.77)、目標設定(R2=.74)に対して正の影響を与えていた。このことから、日頃からチーム内で話し合いをして、課題を見極め改善していくことによって、チーム力が高まるのではないかと示唆された。また、各メンバーのコミットメント能力が高すぎると、チームとしての機能を失い、チーム力を低下させる可能性が示唆された。