著者
山﨑 裕司 片岡 千春 大倉 三洋 酒井 寿美 栗山 裕司 稲岡 忠勝 宮崎 登美子 柏 智之 中野 良哉
出版者
学校法人高知学園 高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.61-66, 2009-03-31 (Released:2018-11-06)
参考文献数
13
被引用文献数
2

固定用ベルトを併用したHand Held Dynamometer(以下,HHD)による新たな股関節外転筋力(以下,股外転筋力)測定方法を考案し,その再現性について検討した.<研究1:検者内再現性>健常者20名の両下肢40脚を対象とした.固定用ベルトを使用したHHDにはアニマ社製徒手筋力測定機器μTasMF-01を用いた.固定用ベルトを使用しないHHDには酒井医療社製徒手筋力センサEG-230及び220を使用した.股外転筋力値は1日目,2日目とも固定用ベルト不使用下(23.1kgf,23.0kgf)に比較し,固定用ベルト使用下(28.2kgf,28.7kgf)において有意に高値を示した(p<0.01).ベルト不使用下,使用下での級内相関係数(以下,ICC)は,それぞれ0.917,0.953であった.両測定方法間での筋力差とベルト使用下における筋力値の間には,有意な相関(r=0.783,p<0.01)を認め,筋力値が大きいほど測定方法間での差が大きくなった.<研究2: 検者間再現性>健常成人17名の両下肢34脚を対象とした.体格の異なる2名の検者によって,研究1と同じ固定用ベルトを使用したHHDを用いて股外転筋力の測定を実施した.筋力値は検者A,Bの順に31.1kgf,32.8kgfであり,検者間に有意差は認めなかった.検者間ICCは0.915であった.以上の結果から,今回の固定用ベルトを使用した股外転筋力測定方法は良好な検者内,検者間再現性を有することが明らかとなった.一方,固定用ベルトを使用しない方法は,筋力値の大きな対象群において測定値の妥当性に問題があるものと考えられた.
著者
池田 幸夫 酒井 啓雄 古川 博
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.17-18, 2007 (Released:2018-04-07)

潮汐現象は高校地学で学習する身近な自然現象の一つである。高校地学の教科書では、潮汐は次のように説明されている。①潮汐は主に月の引力と地球の公転による遠心力の合力によって起こる、②月に面した側とその反対側で満潮となる。③満月と新月の時に干満差が最大になる(大潮)。④満潮と干潮は一日にほぼ2回起こる。このうち満潮と干潮の時刻については、問題があるのである。満月の日に月が南中するのは真夜中の 0 時である。したがって、①が正しいならば、大潮の日の満潮は真夜中と真昼に起こらなければならない。ところが、実際には朝と夕方に満潮となり説明と矛盾している。この矛盾は、潮汐の波の速度(約 200 ㎞/s)が地表面に対する月の移動速度(約 470 ㎞/s)に比べてはるかに遅く、月の動きについて行けないことが原因である。本研究では、潮汐を単振動モデルで表し、月の引力の変動に対する海水の運動を力学的に考察して、月の運動に対して潮汐波の位相が 180 °のときに周期的に安定した運動になると考えれば、この矛盾を説明できることが明らかになった。
著者
酒井 浩二 吉川 秀樹 徳田 仁子 松本 しのぶ 千葉 晃央 西川 潤 中木 直子 高見 茂
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.3, pp.180-187, 2023-10-16 (Released:2023-10-16)

大学設置基準改正で,2019年度から大学は学部等が連携して編成する教育課程「学部等連係課程」を置くことができるよう制度化された.本稿では,学部等連係課程の特色を概観し,本学で設置された学部等連係課程「人間健康学群」を事例として,設置の背景,連係学部,教育プログラムの特徴を概説する.社会課題の発見・解決力を修得して社会で活躍するための教育課程として,学部等連係課程の効率性と有効性を考察する.
著者
酒井 朗 碓井 彰
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.774-779, 1999-07-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
15
被引用文献数
3

マスク材を表面に部分的に形成して成長を行う選択横方向成長方法により,転位密度の少ない高品質窒化ガリウムが得られた.成長手法として八イドライド気相成長を用いたが,成長初期の段階で安定なファセット構造が出現し,成長モードが変化することに対応して,転位がその伝播方向を変えることが断面透過電子顕微鏡観察で見い出された.窒化ガリウム中の転位構造とその挙動を詳細に観察し・選択横方向成長による転位削減機構を探る.
著者
児玉 実優 酒井 浩之 永並 健吾 高野 海斗 中川 慧
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022)
巻号頁・発行日
pp.3K4GS1001, 2022 (Released:2022-07-11)

近年, 投資家は, ESG(E:環境,S:社会,G:統治)情報を投資判断において重視しており,ESG関連情報をテキストデータから抽出する技術が必要とされている. ESG関連情報は統合報告書に多く記載がある. しかし, 企業によってレイアウトや内容が異なり, 学習データの作成が困難である. そこで本研究では, まず有価証券報告書(有報)から ESG関連情報を抽出する. 有報にも統合報告書ほどではないが, ESG 関連情報の記述がある. また, レイアウトはどの企業も同じであり, さらに XBRL 形式と呼ばれるテキスト形式で配布されているので, テキスト処理を行いやすい. 次に有報から抽出したESG関連情報を学習データとして,BERTモデルをファインチューニングする. 最後に当該BERTモデルを用いて統合報告書からESG関連情報を抽出することで,統合報告書から直接学習データを作成する困難を解決できた. 実際に, 本手法で各企業の統合報告書から ESG 関連情報を抽出した.結果, E,S,Gに関する情報をそれぞれ93.3%,91.7%,77.4%の適合率で取得でき,良好な結果が得られた.
著者
梅崎 高行 酒井 厚 眞榮城 和美 前川 浩子 則定 百合子
出版者
日本スポーツ心理学会
雑誌
スポーツ心理学研究 (ISSN:03887014)
巻号頁・発行日
pp.2023-2109, (Released:2023-08-29)
参考文献数
47

The purpose of this study was to longitudinally examine the effects of parent and peer motivational climate on sport autonomy motivation in early adolescent athletes. We hypothesized that parents’ performance-oriented motivational climate would negatively affect player autonomy, but peers’ mastery-oriented motivational climate would moderate negative effects on player autonomy. Participants were 74 soccer players (66 male, 8 female) who completed the study at two time points separated by one year, with a mean age of 11.04 years (SD=0.71 years) at the first time point. At Time 1, a self-report questionnaire measured soccer competence (The Basic Needs Satisfaction in Sport Scale; BNSSS) as a control variable and parent-initiated motivational climate (Parent-Initiated Motivational Climate Questionnaire 2; PIMCQ-2) and peer motivational climate (Peer Motivational Climate in Youth Sport Questionnaire; PeerMCYSQ) as explanatory variables. At Time 2, the level of motivational autonomy (revised Sport Motivation Scale; SMS-II) was measured as an objective variable. After calculating correlations to confirm the relationships between the variables, a hierarchical multiple regression analysis was conducted, including an interaction term between parent and peer motivational climate. Results indicated that an anxiety-promoting parental motivational climate predicted low player autonomy under different peer motivational climates and did not support the hypothesis that a masteryoriented peer motivational climate moderate negative parental influences. We discussed the importance of a mastery-oriented parental motivational climate in supporting player autonomy motivation during the developmental transition from childhood to adolescence.
著者
中村 祐介 吉富 秀幸 清水 宏明 大塚 将之 加藤 厚 古川 勝規 高屋敷 吏 久保木 知 高野 重紹 岡村 大樹 鈴木 大亮 酒井 望 賀川 真吾 宮崎 勝
出版者
一般社団法人 日本膵臓学会
雑誌
膵臓 (ISSN:09130071)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.258-264, 2015-04-20 (Released:2015-05-08)
参考文献数
16
被引用文献数
2 2

【目的】膵腺房細胞癌(以下ACC)は稀な膵腫瘍であり,その発生頻度は全膵腫瘍の約0.4%とされる.本疾患の臨床病理学的特徴には未だ不明な点も多く,自験例での検討を行った.【対象】2004年から2011年までに当教室で経験し,組織学的に確認し得たACC 4症例.【結果】平均年齢は68.2歳,全例男性で,CT検査画像では境界明瞭で内部不均一な低濃度腫瘤影を呈し,血液検査では血清エラスターゼ1,AFP値の上昇を認めた.治療は3例に根治的切除が施行され,切除不能例には5-FU+放射線照射併用療法が施行された.切除例全例に肝転移再発を認め,追加切除または全身化学療法を施行した.治療成績では追加切除例で68.4ヶ月,切除不能例で70.0ヶ月の長期生存例を経験した.【結論】今後も症例の集積により,再発・転移例に対する積極的な制癌治療を含む治療戦略の検討が必要と考えられた.
著者
酒井 秀樹 土屋 好司 山口 俊介 遠藤 健司
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.11-19, 2018 (Released:2019-09-02)
参考文献数
37
被引用文献数
2 1

両親媒性分子が形成する二分子膜閉鎖体であるベシクルは,細胞膜の構造との類似性から人工の細胞膜モデルや,ドラッグデリバリーシステム(DDS)における薬物担体としての応用の試みが活発に行われている。また,ベシクルはその内部に水溶性物質を保持可能であり,また二分子膜内部には油溶性物質をも保持(可溶化)可能であることから,最近では香粧品・食品・化成品など幅広い分野への応用も試みられるようになってきている。本稿では,ベシクルの形成条件やその安定性を支配する因子について概説する。さらに,両親媒性分子混合系における分散安定性に優れるベシクル・ニオソームの調製,さらにはベシクルを構造指向剤として利用したナノサイズのシリカ中空粒子の調製法について紹介する。
著者
酒井 麻依子
出版者
日本メルロ=ポンティ・サークル
雑誌
メルロ=ポンティ研究 (ISSN:18845479)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.73-92, 2020 (Released:2020-12-09)
参考文献数
19

Le problème de la sexualité que Beauvoir a posé dans le Deuxième Sexe (1949) était aussi essentiel pour Merleau-Ponty dès la Phénoménologie de la Perception (1945). En outre, dans ses Cours de Sorbonne (1949-1952), présentant Le Deuxième sexe, il semble approfondir ses réflexions à propos de la sexualité et du corps sexuel de femme, qui sont encore lacunaires dans la Phénoménologie. Dans cette recherche, nous examinons comment les théories beauvoirienne et merleau-pontienne de la sexualité se recroisent. Nous mettons en évidence une différence entre leurs conceptions de la psychanalyse et du matérialisme historique. Après avoir examiné ces deux domaines « au sens large », Merleau-Ponty se réfère à l’étude culturaliste de Margaret Mead pour donner suite à la discussion beauvoirienne, et nie ainsi l’idée d’une « nature » permanente de femme (et de l’homme) qui n’aurait aucun rapport avec son environnement social et sa culture.
著者
鈴木 登紀子 酒井 麻里 山下 重幸 冨田 賢吾 服部 裕一
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.151, no.3, pp.111-116, 2018 (Released:2018-03-10)
参考文献数
55
被引用文献数
2 2

敗血症は,高齢者人口の増加,悪性腫瘍や移植時の化学療法などによる免疫機能の低下,多剤耐性菌の出現などにより,症例数は増加の一途をたどり,現在においてもなお高い死亡率を有している.敗血症の定義は,これまで「感染によって引き起こされた全身性炎症反応症候群」とされてきたが,2016年になって「感染に対する制御不能な宿主反応による生命に関わる臓器不全」として15年ぶりに改訂された.新しい定義における「臓器不全」には,急性肺傷害,播種性血管内凝固,脳症,肝障害,腎障害に加えて,心機能障害も含まれている.心機能障害により酸素の需要・供給のバランスが損なわれ,多臓器不全の進展につながることから,心機能障害の有無は,敗血症の予後に非常に重要である.実際,敗血症患者で心機能障害が存在した場合は,非常に高い死亡率に関係すると報告されている.国際敗血症ガイドラインで,敗血症性ショックにおいて推奨されている強心薬はドブタミンであるが,その臨床成績には限界が指摘されている.本稿では,敗血症性心機能障害について,これまで報告されてきた病態生理学的メカニズムについて概説し,ドブタミンに替わる新たな強心薬の治療効果の可能性について考察する.
著者
笠置 智道 高見 和久 山田 明子 坂井 聡美 原 高志 酒井 勝央 安田 圭吾 今井 裕一
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.336-341, 2015-05-30 (Released:2015-06-01)
参考文献数
11

症例はうつ病の36歳女性.糖尿病は未診断.入院1週間前より食事をせず飲酒のみの生活が続き,反復する嘔吐と共に意識状態が悪化し救急搬送された.糖尿病性ケトアシドーシスと診断しインスリン持続投与を開始.それに伴い血清K値は入院時の2.7 mEq/lから1.3 mEq/lまで低下したため,インスリン投与を一時中断しその間72時間で計660 mEqのKを補充した.その後血中ケトン体は減少するもアシデミアがさらに進行し,低Alb血症,低P血症を伴い複雑な酸塩基平衡異常を呈した.Stewartのphysicochemical approachにより酸塩基平衡を解析すると,強イオン性代謝性アシドーシスが主体で,原因として希釈,大量食塩水負荷,急性尿細管障害,ケトン体尿排泄の関与が示唆された.種々の電解質の欠乏を伴った酸塩基,水電解質平衡を総合的に理解するためにStewart法が有用であった.
著者
無漏田 芳信 酒井 要
雑誌
福山大学工学部紀要
巻号頁・発行日
vol.26, pp.39-48, 2002-12

The pavilions called Tuji-Dou, Yotsu-Dou and so on, which have four pillars and no wall, exist actually in Bingo District, but the origin of the outlines has not been made clear yet. Such pavilions widely exist even in Chugoku and Shikoku District except for Bingo District, and have similarities at their outlines and uses. To begin with, we surveyed the actual condition of their geographical areas and the name in each region, in order to grasp the characteristics of their geographical distribution. Then, we investigated the descriptions of common name and form about Dou without wall throughout historical documents of municipalities of Bingo District and so on, and grasped the origin of the outlines and the reason why various pavilions have been called Tuji-Dou. (1) The name called Tuji-Dou is only Chugoku District. Particularly, the pavilions exist densely in most of Bingo and Bitchu District, and in a part of Inaba, Houki, Suou and Nagato District. The pavilions called Cha-Dou only in Shikoku District exist densely in the border with Iyo and Tosa District, and in a part of the west Awa District. (2) The Tuji-Dou is a generic name of the various pavilions by the roadside in Bingo District, because each ancient document at the Edo period has only one name about Tuji-Dou. The some errors of historical documents of part of municipalities are caused by the quotation from the chronicle of Numakuma histories. In our viewpoint, the old style of Tuji-Dou in Bingo District is Yotsu-Dou which has four pillars and no wall.
著者
二宮 周平 田中 通裕 村本 邦子 渡辺 惺之 櫻田 嘉章 中野 俊一郎 佐上 善和 渡辺 千原 山口 亮子 松本 克美 立石 直子 松村 歌子 廣井 亮一 酒井 一 織田 有基子 長田 真理 高杉 直 北坂 尚洋 黄 ジンティ 加波 眞一 樋爪 誠 中村 正 団 士郎 佐々木 健 松久 和彦
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

家事紛争の中でも未成年の子のいる夫婦の紛争は、当事者の葛藤の程度に応じて3段階に分けることができる。葛藤が低い場合には、情報の提供や相談対応で、合意解決の可能性があり、中程度の場合には、家裁の家事調停において、調停委員や家裁調査官の働きかけによって合意解決の可能性がある。DVや児童虐待など高葛藤の場合には、家裁の裁判官が当事者を説得し、再度の和解や付調停により合意解決を図るとともに、監視付き面会交流など公的な場所、機関によるサポートや養育費の強制的な取り立てなど裁判所がコントロールする。当事者の合意による解決を促進する仕組みを葛藤の段階に対応して設けることが必要である。
著者
酒井 望 石川 文彦 関 雅史 伊藤 博 諏訪 敏一 宮崎 勝
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.7, pp.1899-1903, 2013 (Released:2014-01-25)
参考文献数
18
被引用文献数
2 2

症例は56歳,女性.上腹部痛の精査にて腹腔内腫瘤を指摘された.腹部CTでは腹部大動脈左側,椎体腹側に径3.2cmの辺縁整で内部が不均一に造影される腫瘍を認めた.腹部MRIではCTと同部位に41.4×31.6×25.8mmの辺縁整な腫瘤を認めた.T1強調画像では低信号,T2強調画像,STIR像では均一な等信号で,内部は軽度濃染していた.間葉系腫瘍を疑い手術を施行したところ腫瘍はTreitz靱帯より約2cm肛側の空腸間膜に認められた.腸管,腸間膜血管との連続性はなく腫瘍を摘出した.H.E.染色では,小型類円核を有する腫瘍細胞が地図状,シート状もしくはロゼット状に増殖しており,線維血管性の間質により分画されていた.免疫組織染色では,神経内分泌マーカーはいずれも陽性で,MIB-1標識率は1%以下であった.以上より,NET G1と診断された.腸間膜原発の神経内分泌腫瘍は極めてまれであり,報告する.
著者
酒井 高良 涌井 優尚 赤松 隆
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.22-00341, 2023 (Released:2023-04-20)
参考文献数
30
被引用文献数
1

本研究では,超大規模離散空間におけるFujita-Ogawa (FO)モデルの効率的数値解法を提案する.具体的にはまず,FOモデルにおける主体の確定的選択行動をランダム効用理論(ロジット・モデル)に基づき一般化した確率的FOモデルを提示する.続いて,この確率的FOモデルの等価最適化問題を導出し,さらにその問題が,企業の立地分布を決定するマスター問題と,家計の居住地・勤務地分布を決定するサブ問題とに階層分解できることを明らかにする.ここで,サブ問題はエントロピー正則化付きの最適輸送問題,マスター問題は制約条件付き非凸計画問題の数理構造を持つ.これらの数理構造を活かし,サブ問題に対してはバランシング法を,マスター問題に対しては加速勾配法を適用する階層的最適化アルゴリズムを構築する.
著者
涌井 優尚 酒井 高良 赤松 隆
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.22-00301, 2023 (Released:2023-04-20)
参考文献数
20

本研究では,一起点多終点ネットワークにおける経路選択DUE配分の効率的解法を開発した.具体的には,まず待ち行列にpoint queueを仮定したうえで,DUE配分を線形相補性問題として定式化した.そしてこの問題と等価な最適化問題に対し,大規模問題に適用可能な効率的アルゴリズムを提案した.数値実験を通して提案解法は,既存研究における数値計算例を大幅に上回る規模の巨大ネットワークに対しても,素朴な解法の100倍から1000倍程度以上の計算効率を誇り,かつきわめて高精度な均衡解が計算できることが示された.