著者
金子 秀
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.12, pp.892-899, 2012 (Released:2017-12-18)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

醤油のうま味成分の主体はグルタミン酸,アスパラギン酸などのアミノ酸であるが,それ以外の醤油のうま味寄与成分については,不明な点が多い。そこで,著者はそれ自身はうま味を示さないにも関わらず,グルタミン酸ナトリウムのうま味を強めるアマドリ化合物であるFru-pGlu[N-(1-デオキシ-D-フラクトス-1-イル)ピログルタミン酸],Fru-Val,Fru-Met,ピログルタミルペプチドであるpGlu-Gln(ピログルタミルグルタミン),pGlu-Glyを単離・同定したので,解説いただいた。
著者
中尾 雄太 山下 泰治 齋藤 翔太 金森 雅 南都 智紀 笠間 周平 内山 侑紀 道免 和久
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.64-68, 2020-04-30 (Released:2020-08-31)
参考文献数
18

症例は63 歳男性,筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者である.上肢の巧緻運動障害,歩行障害,体重減少で発症し,ALS と診断された.その後,緩徐に呼吸機能と嚥下機能が低下し,夜間NPPV 導入および軟菜食,水分にとろみ付けを行い自宅で生活していた.今回,誤嚥性肺炎による呼吸不全のため救急搬送され,気管切開・人工呼吸器管理などの集中治療のため安静臥床を要した.舌圧を含む嚥下関連筋の急激な筋力低下を認めたことから,原疾患の進行のみならず,臥床に伴う廃用症候群の合併を考慮し,負荷量に留意した舌筋の筋力増強訓練を施行した.その結果,最大舌圧および嚥下機能の改善を認め,3 食経口摂取となった.ALS においても,廃用の要素が大きい際には嚥下筋の筋力増強訓練は有効である可能性が示唆されたため,文献的考察とともに報告する.
著者
奥田 圭 關 義和 小金澤 正昭
出版者
一般社団法人 日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.94, no.5, pp.236-242, 2012-10-01 (Released:2012-11-22)
参考文献数
50
被引用文献数
11 5

シカの高密度化に伴う植生改変による鳥類群集への影響を明らかにするため, 栃木県奥日光のシカ密度の異なる3地域 (各地域8地点) において植生構造と鳥類群集の種組成の関係を調べた。シカ密度と植生条件との関係を調べた結果, シカ密度と生木本数, 胸高断面積合計, 樹種数との間に負の相関がみられ, シカの高密度化により植生構造が改変していることが示唆された。次に, TWINSPANと判別分析を用い, 鳥類群集の種組成の変化要因を調べた。TWINSPANの結果, 調査地点はグループA (シカ高密度地点) とB (シカ低密度地点) に, 鳥類はグループ1∼4に分類された。開放的な環境を選好する鳥種は主にグループ1に属し, グループAに多く出現した。低木層を採食場所とする鳥種は主にグループ4に属し, グループBに多く出現した。樹洞営巣性の鳥種は主にグループ2と3に属し, グループAとBに同程度出現した。また, 判別分析の結果, グループAとBの違いを最もよく判別する植生条件は, 低木層と亜高木層の生木本数と, 低木層の樹種数であった。以上から, 本調査地の鳥類群集の種組成が変化した主要因は, シカの高密度化に伴う植生改変であると結論した。
著者
松本 雄一 内田 将太 福本 有香 金屋 紗弥 平野 彩夏 渡邉 啓一
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.233-239, 2021 (Released:2021-06-30)
参考文献数
25

キクイモ栽培における重要課題である白絹病の抑制技術について検討を行った.培地での白絹病菌叢の伸展程度および培土でのキクイモ発病度は,いずれもpH 8以上の条件で抑制効果が見られた.一方,「野菜類」作物群に登録のある殺菌剤を添加した培地では,水和硫黄剤の2剤で菌叢の伸展が抑制された.土壌混和が可能な資材のうち水和硫黄剤の主成分である硫黄を含む肥料においても培地での菌叢伸展の抑制および培土でのキクイモ発病度の抑制効果が見られた.この硫黄資材を汚染圃場に施用したキクイモ栽培においても生育中の白絹病による枯死株率は低下した.さらに,系統間での耐病性の比較においては,三瀬在来系統よりもサンフラワーポテト系統の方が枯死株率は低く,耐病性を有していると考えられた.これらの結果から,キクイモ栽培において硫黄資材の施用と耐用性系統を併用することで,キクイモ白絹病に対する抑制効果を高められる可能性が考えられた.
著者
小林 果 永吉 真子 金森 悟 徳増 一樹 中部 貴央 桑原 恵介
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.78, pp.23005, 2023 (Released:2023-12-08)
参考文献数
12

The recruitment and training of early-career researchers are important for the development of science, especially in countries with low birth rates, such as Japan. In several academic societies for social medicine, early-career researchers have formed associations for the purposes of networking and career development. However, to date, little information about the activities of these associations has been shared. Therefore, we organized a symposium at the 93rd Annual Meeting of the Japanese Society for Hygiene (March 4, 2023) to introduce the early-career researcher associations that have been formed within five academic societies namely the Japanese Society for Hygiene, Japan Epidemiological Association, Japan Society for Occupational Health, Japan Society for Medical Education, and Japan Society for Healthcare Administration. In this paper, we summarize the activities, challenges, and future prospects of each association and their strategies for future development and collaboration on the basis of presentations and discussions at the symposium.
著者
片山 和紬 金城 伶奈 山田 孝
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.43-51, 2023-05-31 (Released:2023-12-11)
参考文献数
18

土石流に伴う流木群の国内外の映像資料を収集・判読し,その運動の定性的な特徴を明らかにした。流木群は土石流先頭部の前方に存在し,土石流先頭部に押されて流下しているように観察された。さらに,現地調査により,流木群の規模やその内部構造を調べ,流域内で発生した流木体積量の約9 割が流木群の体積量であること,流木群上流端付近に土石流先頭部の土砂が堆積していることが明らかにされた。
著者
金好 純子 古田 貴音 塩田 俊 赤阪 信二 柳本 裕子 栗久 宏昭
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.19-26, 2014-01-15 (Released:2014-03-31)
参考文献数
30
被引用文献数
5 4

レモン3品種の自然交雑種子を播種し,1果実当たりの三倍体の出現数は,0.36~0.70個体/果であった.発芽した実生における三倍体出現率は,重量が大粒種子の1/3未満1/5以上の小粒種子では46.6~59.6%,1/5未満の極小粒種子では37.5~47.6%で高いことから,レモンでは二倍体どうしの交配においては,小粒の種子を選抜すれば,効率よく三倍体が得られることが明らかになった.自然交雑実生から得られた三倍体は,88.2%が花粉を形成したが,花粉量は少なく,種子数は1個未満が80%で無核性の系統が多かった.また,‘道谷系ビラフランカ’の自然交雑実生から三倍体を選抜し,レモン新品種‘イエローベル’を育成した.樹勢は強く枝梢は密に発生し,枝梢の長さは中で節間は短い.枝梢のとげの発生割合は65.8%で多い.成熟期は果汁割合が高くなる12月中旬である.果実は球~長球形で,果実重は約214 gである.果皮はやや滑らかで,果皮は5.1 mmで薄く果汁が多い.香気は中である.種子は1果当たり2.9個で少ない.酸度は約5.3%でまろやかな食味である.このように‘イエローベル’は,酸度が低い,果汁が多い,種子が少ないなどの特長があり,レモンの需要拡大への利用が期待される.
著者
小田 眞由 木阪 吉保 小川 明子 横山 桂 砂金 光太郎 田鶴谷 奈友 田中 良憲
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.64, no.12, pp.632-640, 2023-12-01 (Released:2023-12-11)
参考文献数
32
被引用文献数
1

症例は61歳男性.6年前から糖尿病性腎症による腎不全で血液透析を導入された.30代でC型慢性肝炎を指摘されインターフェロン療法を受けたがウイルスは消失しなかった.40代から肝細胞癌に対して穿刺局所療法や塞栓療法を繰り返し受けてきたが,多発再発が指摘された際に造影剤アレルギーが発症したため塞栓療法が施行困難となり,アテゾリズマブ(Atezo)+ベバシズマブ(Bev)併用療法を開始した.Atezo+Bev併用療法は透析患者に対する投与の報告例はなく有効性や安全性は不明である.我々の症例ではAtezo+Bev併用療法開始後に甲状腺機能低下症と脳出血を来した.しかし,レボチロキシンナトリウム水和物投与とBev投与中止することで長期間にわたり投与継続できており,有害事象の早期発見と対応を行うことで血液透析中の肝細胞癌患者にもAtezo+Bev併用療法を行うことができると考えられた.
著者
神 雄太 西山 亮 小金井 雄太 木村 大輝 青山 純也 中野 容 今井 俊一 下河原 達也 山田 暢 江川 智久
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.64, no.12, pp.641-648, 2023-12-01 (Released:2023-12-11)
参考文献数
25

50代男性.未治療B型慢性肝炎の既往があり,人間ドックで肝腫瘤を指摘され,精査の結果肝細胞癌(Hepatocellular carcinoma:HCC)の診断に至った.病変はS8に2カ所あり,開腹肝前区域切除を行い,病理組織診断でvp2を認めた.術後2カ月で施行した造影CT検査で門脈左枝に門脈腫瘍栓(Portal vein tumor thrombosis:PVTT)を認めた.術後早期再発したPVTTであり再肝切除後の再発のリスクが高いと考え,観察期間を設けるためLenvatinib(LEN)投与を開始した.PVTTは放射線定位照射したが,術後9カ月に肝右葉微小転移が指摘された.LEN投与下にPVTTと微小転移は増悪を認めず,AFP値が正常化したため,再発後11カ月で再肝切除を行った.その後,微小転移に対してサイバーナイフを施行し完全寛解した.現在,初回術後43カ月無再発生存中である.
著者
大根 久美子 可児 里美 北村 由之 鷺 陽香 金子 敦 大橋 実 菊池 祥平 田中 靖人 井上 貴子
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.64, no.12, pp.656-659, 2023-12-01 (Released:2023-12-11)
参考文献数
1

We developed and reported a fully automated, high-sensitivity hepatitis B core-related antigen assay (iTACT-HBcrAg). This study aimed to evaluate the impact of carryover during the use of iTACT-HBcrAg by analyzing samples with high HBcrAg levels. A negative sample tested immediately after a sample with an HBcrAg of 8.7 LogU/mL showed an HBcrAg of 2.4 LogU/mL, thus confirming carryover. The sample with an HBcrAg of 8.8 LogU/mL and collection tubes containing the negative samples were continuously opened to check for the effects of sample splashing and aerosols. The results showed that sample splashing and aerosols did not account for the carryover. The iTACT-HBcrAg is a highly sensitive assay; therefore, carryover can occur when magnetic particle-antigen complexes are introduced into the next sample via the BF wash nozzle. Any sample determined to be positive for HBcrAg after the testing of a sample with an HBcrAg above the measurement range should be retested for confirmation.
著者
金銅 英二
出版者
特定非営利活動法人 日本顎咬合学会
雑誌
日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学 (ISSN:13468111)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.307-316, 2014-11-25 (Released:2015-12-23)
参考文献数
18

神経障害性疼痛は,知覚神経が機能異常を起こし痛みを惹起している.近年,神経障害性疼痛の発症メカニズムに関して様々で活発な研究が行われ,神経障害性疼痛に関与する神経伝達物質や関連分子が神経回路のどの部位でどう作用しているのか,その詳細が明らかになりつつある.正常状態の場合,知覚神経細胞は末梢で各種の刺激を受けると,その刺激情報は電気的な信号に変換され中枢へと伝えられる.一方,中枢側の終末では電気的な変化を受け,神経伝達物質が放出される。その物質が次の神経細胞の細胞膜上の神経伝達物質受容体に結合し,再び電気信号変換が惹起され,さらに上位中枢へと伝えられる.これらの電気信号変換や神経細胞間の伝達機構において,過剰興奮や過敏反応,脱抑制などが生じ,神経障害性疼痛が発症していることが明らかになってきたが,まだ全てが解明されたわけではない.現在までに明らかになっているメカニズムを概説し,神経障害性疼痛に対する理解を深め,臨床現場の様々な痛みへの最良の診断方法や治療法が一日も早く確立されることに期待したい.【顎咬合誌 34(3):307-316,2014】
著者
三好 紀子 松本 恵 金井 講治
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

自閉症スペクトラム(ASD)は社会不適応に至る症例も多く、その一因として感覚特性の影響、中でも聴覚特性の影響が指摘されている。聴覚特性には「選択的聴覚注意障害」と「聴覚過敏」があり、支援に違いがあるが、臨床的に区別が困難な例が多い。聴覚情報処理障害(APD)は「聴力は正常であるが、聞き取りにくさが生じる」一群で、社会的不適応になる例が散見される。本研究の目的は、心理検査、APDの検査である聴覚検査などを組み合わせることで、ASDの聴覚特性の特徴を詳細に検討し、概念を整理することである。最終的には聴覚特性に起因する社会不適応への支援を検討することが目的である。
著者
笠岡 俊志 大塚 洋平 牟田口 真 熊谷 和美 金子 唯 河村 宜克 鶴田 良介 前川 剛志
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.283-288, 2010-06-30 (Released:2023-03-31)
参考文献数
9

救急隊の活動中には現場や搬送の状況により良質な胸骨圧迫を実施できない可能性が指摘されている。本研究の目的は救急隊による心肺蘇生の質的評価と課題について検討することとし,救急救命士を対象に心肺蘇生の質に関するアンケート調査を行うとともに,蘇生訓練用シミュレーターを用いて胸骨圧迫の質および身体的ストレス度について評価した。アンケート調査では,蘇生活動時間のうち平均27%(中央値5分)は良質な胸骨圧迫を実施できていなかった。シミュレーターによる評価では,2分間の胸骨圧迫のうち約30%は良質な胸骨圧迫ではなかった。救急救命士の血圧・脈拍数・呼吸数で評価したストレス度は,胸骨圧迫実施前に比べ胸骨圧迫後に有意に上昇した。救急隊による心肺蘇生中には良質な胸骨圧迫を実施できない時間が存在し,改善策が必要である。
著者
金森 耀平 村上 賢 松井 徹 舟場 正幸
出版者
日本微量栄養素学会
雑誌
微量栄養素研究 (ISSN:13462334)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.88-98, 2014-12-15 (Released:2022-12-28)
参考文献数
76

The liver-derived peptide hormone hepcidin is a master regulator of systemic iron homeostatis. Hepcidin binds to an iron exporter ferroportin expressing on the basolateral membrane of enterocytes and induces the internalization and degradation of ferroportin, leading to a decrease in intestinal iron absorption. Various stimuli such as body iron stores, inflammation, erythropoiesis, and hypoxia affect hepcidin expression through the transcriptional regulation. This mini-review summarizes current understandings on the factors affecting hepcidin expression.