著者
今津 嘉宏 金 成俊 小田口 浩 柳澤 紘 崎山 武志
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.121-130, 2012 (Released:2012-10-04)
参考文献数
17
被引用文献数
3 13

背景:モデル・コア・カリキュラムに「和漢薬を概説できる」の一項目が追加され,漢方医学教育が採用された。目的:2007年から漢方医学教育は全国80の医学部全てで行われている。その現状を把握し,大学における漢方医学教育の問題点や,今後漢方専門医等学会に課せられた問題のヒントを得ることを目的に,アンケート調査を行なった。方法:日本東洋医学会渉外委員会は,全国80大学の漢方教育に関するアンケート調査を郵送で実施した。結果:80施設中67施設から回答(回収率83.8%)を得た。漢方医学が医療にとって必要(91%),教育成果の評価のために試験実施(77%),教員養成を行っている(46%)などの結果を得た。結論:卒前の漢方医学教育カリキュラムの充実と,標準化,臨床実習の整備が必要である。今後は卒後教育の確立が必要と考えられた。
著者
山崎 大 北 祐樹 木野 佳音 坂内 匠 野村 周平 神戸 育人 庄司 悟 金子 凌 芳村 圭
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.202-232, 2022-05-05 (Released:2022-05-06)
参考文献数
108

国際社会はパリ協定で気温上昇を産業革命前比2 ℃未満に抑えると合意し,近年は脱炭素をキーワードとした目標が次々発表されている.脱炭素の実現は京都議定書に基づいたこれまでの気候変動対策に比べ遥かに野心的で社会構造の大転換が求められるが,企業が組織する経済団体からも反発ではなく脱炭素に協働するという発表が相次いでいる.本研究は,気候科学の知見・各国の経済政策・企業と投資家の取り組み・NGO等の活動に着目してこれまでの動向を調査し,どうして世界は脱炭素に向けて動き始めたのか?という背景を俯瞰的視点から明らかにする.文献調査の結果,気候科学の発展が国際合意に影響したことに加えて,企業に気候リスク情報の開示を求めるTCFD といった新たな気候変動対策ツールの整備が脱炭素の動きを後押していることが確認できた.また,民間企業でも気候リスク低減と経済的利益がTCFD等を通して結びつき,「気候変動対策はもはや社会貢献ではなく自己の存続のために必要」という当事者意識のパラダイムシフトが起きていることが示唆された.これらの気候変動対策をサポートする社会情勢の変化を背景として,世界は脱炭素に向けて舵を切ったと考えられる.
著者
金 玲花 中野 亜里沙 安藤 元一
出版者
東京農業大学
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.137-144, 2014 (Released:2014-10-29)

自由行動ネコが野生鳥獣にどのような捕食圧を与えているか,神奈川県厚木市で調査した。神奈川県自然環境保全センターの傷病鳥獣保護記録を調べたところ,保護鳥獣の10%はネコに襲われたものであり,キジバトやスズメなど地上採餌性の種,あるいはヒヨドリなどの都市鳥が多かった。育雛期である5-7月には鳥類の巣内ヒナが半数以上を占め,ネコの襲いやすい位置に営巣するツバメなどが多かった。同市の住宅地帯および農村地帯におけるアンケート調査では,ネコは13%の世帯で飼育されていた。このうち屋外を自由行動できる飼いネコの比率は,住宅地で29%,農村で59%であり,生息密度に換算すると住宅地で2.2頭/ha,農村で0.35頭/haと推定された。こうしたネコが家に持ち帰る獲物の種類は,住宅地では小鳥と昆虫が多く,農村ではネズミ,小鳥や昆虫など多様であった。持ち帰った獲物の半分以上は食されなかった。これらのネコが年間60頭程度の鳥獣を捕らえると仮定すると,1年に捕食される鳥獣はそれぞれ132頭/ha,21頭/haと推定された。飼いネコによる生態系への影響を避けるためには,室内飼いが望まれる。
著者
岡島 寛 金田 泰昌 田村 友規 松永 信智
出版者
公益社団法人 計測自動制御学会
雑誌
計測自動制御学会論文集 (ISSN:04534654)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.245-251, 2019 (Released:2019-04-16)
参考文献数
26
被引用文献数
2 3

A design method of state estimation observer under outliers and data-lost environment is proposed in this paper. In networked control systems, the data-lost is one of the most important topic for solving. When data-lost occurred, the output data for the control system is disappeared. The data-lost is significant problems if we want to use state feedback. To overcome negative impact by outliers and data-lost, we propose a method to disappear negative impact by outliers and data-lost using median information. The effectiveness of the proposed observer is evaluated by numerical examples.
著者
野上 晋之介 山内 健介 金氏 毅 山本 哲彰 宮本 郁也 山下 善弘 高橋 哲
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR JAW DEFORMITIES
雑誌
日本顎変形症学会雑誌 (ISSN:09167048)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.190-194, 2011-08-15 (Released:2012-01-24)
参考文献数
11

The amount of postoperative bone resorption after genioplasty was studied in 13 patients. The subjects of this study were 4 patients who underwent genioplasty alone, and 5 who underwent genioplasty combined with other techniques for correcting skeletal Class II and Class III deformities.Large advancement genioplasties were performed on 13 patients by horizontal osteotomy of the inferior border of the mandible, with preservation of a musculoperiosteal pedicle to the advanced genial segment. Preoperative, immediate postoperative, and long-term follow-up lateral cephalometric radiographs were retrospectively analyzed to evaluate the osseous changes of the chin. We examined the correlation between bone resorption and the degree of advancement, the degree of mandible movement, the height of the genial segment, and the distance from the existing bone to the genial segment. The results showed a correlation between bone resorption and the distance from existing bone to the genial segment. This suggests that the supply of blood between existing bone and the genial segment has an influence on bone resorption.
著者
北村 淳一 金 銀眞 中島 淳 髙久 宏佑 諸澤 崇裕
出版者
一般社団法人 日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
pp.20-012, (Released:2020-12-18)
参考文献数
25

Habitat use of Misgurnus anguillicaudatus was surveyed at Tanushimaru, Kurume City, Fukuoka Prefecture, Kyushu Island, Japan, at winter season. The study site was composed as traditional agricultural ditches in parts of the paddy field with some parts of concrete artificial type of the canals. The spatial distribution of M. anguillicaudatus in the study area was examined in 36 square frames (1 m × 1 m) located spaced along agricultural pathway for approximately 20 m. Relationships between presence of M. anguillicaudatus and several environmental factors was analyzed using the generalized linear model (GLM). Result of the GLM analysis showed that probability of the presence of M. anguillicaudatus mainly explained by water depth and the probability increased with increasing water depth.
著者
金 洛年
出版者
土地制度史学会(現 政治経済学・経済史学会)
雑誌
土地制度史学 (ISSN:04933567)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.48-67, 1992

This paper elucidates one of the characteristic features of Japanese colonial rule over Korea, focusing on capital flows between the two economies. First, an attempt is made to estimate how much and in what sector capital investments were made from Japan to Korea in each phase of the colonial period. Based on these estimates significant findings include the followings: 1) In the early phase of colonial rule the Government-General took the lead in capital investments from Japan in areas such as railroad construction and the implementation of plans for increasing rice production. However, private direct investments increased rapidly beginning in the 1930s mainly in manufacturing and electric power industry. This process speeded up the transformation of the Koran economy into an integral part of the Japanese one. 2) During the Pacific War the financial institutions of Korea rapidly increased their purchases of securities, most of which were issued by Japanese government. This suggests that the role of financial institutions as principal agents of capital import was now reversed. 3) The increase of both capital inflows and outflows during the war indicates merely the transfer of purchasing power, which was not allowed to be realized by compulsory deposit and investment regulation policies. The result was a reallocation of resouces in Korea for war-related purposes. An attempt is also made to show how Japan could accelerate capital export to her colony. This paper emphasizes the role played by 1) the Korean monetary system, in which her currency was pegged to the Japanese one at an equal rate of exchange and in which the issue of the former is allowed on the basis of the latter, and by 2) the almost total dependence of Korea's trade structure on Japan. These two factors enabled Japan to accelerate capital export to Korea in spite of the shortage of foreign exchange reserves, particularly under the managed currency system. This resulted in expanded equilibrium within the Japanese colonial empire, as long as Japan's productive capacity was expanding. However, when it reached its upper limits during the war, Japan's capital exports under the trade control led to inflation in Korea.
著者
金 慶珠
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

日本の報道における歴史認識問題は「戦前の歴史をめぐる解釈の問題」として限定的にとらえている半面、韓国の報道においては「現在の日本社会における歴史の解釈の問題」としての時間軸の拡大を図っているところに大きな差が見られた。また、日韓両国ともに相手国の言動や反応に注目した記事が多く、その歴史認識問題の視点が自国内に向けられていないという共通点が見出される。こうした対立軸が合致しない現象(注視点のずれや視座の鮮明性)こそが日韓メディア情報における「視点の不一致」を生み出しており、そうした報道の視点構造が歴史認識問題に対する日韓の相互理解を妨げる一因であることが推察される結果となった。
著者
金 春姫
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.106-118, 2019-06-28 (Released:2019-06-28)

このケースでは,2013年に創業した名創優品産業に注目する。日本発ファストファッションデザインをコンセプトに,グローバル本社は東京銀座にあるとしながら,実質上は中国企業である。中国で空白だった格安雑貨ショップのビジネスモデルを作り上げ,最近は日本ブランドとして積極的に海外進出を進めている。本稿では,この中国発の日本ブランドが作られた経緯を整理する。
著者
金 政秀
出版者
[出版者不明]
巻号頁・発行日
2010-02

制度:新 ; 報告番号:甲3026号 ; 学位の種類:博士(工学) ; 授与年月日:2010/3/15 ; 早大学位記番号:新5286
著者
金水敏編
出版者
くろしお出版
巻号頁・発行日
2007
著者
永田 雅輝 宮内 信文 田中 俊一郎 比嘉 照夫 萬田 正治 金澤 晋二郎
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究の目的は,環境,一次産業,二次産業および医療分野でも普及しつつあるEM技術について,農業工学,土壌環境学,畜産学,園芸学および食品化学などの多方面の研究者が縦横に組織を組んで,客観的な調査を行い,今後の学術共同研究の方向性を創出することにある.調査の結果,これまでの事例から以下のように要約される.1)EMを構成する微生物は当初とは異なり,10種類程度でも土壌菌と共生的に効果を出すことが判明した.効果の発現は,環境中のEMの密度が高まって生態的に多勢となった場合に著効が認められ二次産業等における効果はEMが生成する多様な抗酸化物質によるものと判断される。2)水稲に対しては,EMと有機物の施用が適正であれば,数年で有機農業などへ転換可能であって,品質・収量ともに慣行法より向上し,また水田の除草時間も大幅に低減することを認めている.3)EM栽培したミニトマトの呼吸速度は対照区に比べて貯蔵初期で50%も低く,日持ちの良さを示唆している.4)EMの土壌改良材としての効果は顕著であることを認めている.5)畜産分野におけるEMは悪臭防除と病気予防に効果があることを認めている.6)EMの食品化学的有効性は,厳密な意味での確認できる例とデータは存在せず,その解明には多くの困難があり,時間が必要であると判断される.以上,EMの効果は現象的には,一部を除いて良好な事例もあることから,今後は (1)土壌菌と共生的に効果を出すメカニズム, (2)抗酸化物質の特定, (3)土壌改良の機作, (4)生態系改善の仕組み, (5)農産物の品質・貯蔵性向上の機構, (6)微生物群相遷移発達過程の実証, (7)EMの家畜腸内細菌に及ぼす影響, (8)食品化学的に厳密なEM効果の検証, など科学的・技術的な裏付けを行うことによって,環境保全型農業の推進に多大に寄与する研究分野であるといえる.
著者
守屋 純二 竹内 健二 上西 博章 赤澤 純代 元雄 良治 橋本 英樹 金嶋 光男 小林 淳二 山川 淳一
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.87-93, 2014 (Released:2014-10-17)
参考文献数
25
被引用文献数
1

慢性疲労症候群(Chronic Fatigue Syndrome : CFS)は6ヵ月以上持続する,休息後も改善しない強い疲労感を主症状とする。発熱,睡眠障害,頭痛などの症状を呈し,著しく生活の質が損なわれる。原因として,ウイルスによる先行感染,免疫学的な変調,中枢神経系の,特に海馬における形態的・機能的変化などが報告されている。しかし,明らかな原因は不明で,診断マーカーや治療法は確立していない。今回報告する症例は16歳男子高校生で,インフルエンザ罹患後の持続する発熱と強度の倦怠感などを主訴とした。既に複数の医療機関において約1年間の精査・加療を受けるも原因は不明で,CFSと診断された。当科紹介時に再度CFSの診断基準を満たすことを確認し,三黄瀉心湯エキス7.5g/分3とデュロキセチンを併用したところ,4週後には疲労・倦怠感は軽減した。しかし,熱型は不変,食欲低下を認めたため,補中益気湯エキス7.5g/分3を追加したところ,劇的に症状が改善した。西洋医学的に治療に難渋するCFS のような疾患に対して,漢方治療が有効な治療方法として使用できると考え報告する。
著者
金原 清之
出版者
公益財団法人大原記念労働科学研究所
雑誌
労働科学 (ISSN:0022443X)
巻号頁・発行日
vol.95, no.5-6, pp.150-162, 2019 (Released:2021-10-10)
参考文献数
35

奈良・東大寺の廬舎那仏像(いわゆる奈良・大仏)は,鋳了後,5か年を要して金メッキが施された。このメッキ法は,金アマルガムを鋳造像の表面に塗り,これを加熱して水銀を蒸発させ,表面に金を残す「アマルガム法」であった。このとき蒸発させた水銀蒸気により,多数の職人が水銀中毒にり患したと言われている。しかしながら,中毒が発生したとする根拠は明らかにされていない。そこで,本報では,金メッキ作業従事者の水銀中毒発生の可能性をリスクアセスメントにおけるリスク評価の方法を用いて検討した。その結果,作業は危険な状況で,多数の作業者が中毒したと判断された。