著者
金 信琴 勝浦 哲夫 岩永 光一 下村 義弘 井上 学
出版者
日本生理人類学会
雑誌
日本生理人類学会誌 (ISSN:13423215)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.9-16, 2005-02-25 (Released:2017-07-28)
参考文献数
32

This study measured and analyzed the amount of saliva and the taste threshold in response to lighting conditions (illuminance and color temperature) in different ethnic groups. Ten Japanese and ten Chinese healthy non-smoking male college students participated in the study. According to the results of repeated-measure ANOVA, the effect of illumination on the amount of saliva was significant in the Japanese students, and the Chinese students showed same tendencies regarding their saliva response, but not significant. On the other hand, the effect of illuminance on the taste threshold was considered significant in both these groups. Regarding the effect of color temperature, this study found significant changes in taste threshold only for Chinese. It is interesting to note that significant differences in the taste threshold regarding a salty taste were seen between the subject groups. The results of the present study indicated that the lighting condition could be considered an important parameter of taste sensation.
著者
金 明秀 稲月 正 豊島 慎一郎 太郎丸 博 田中 重人 堤 要
出版者
京都光華女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究の中で実施された調査と、1995年に実施された「在日韓国人の社会成層と社会意識全国調査」および「社会階層と社会移動に関する全国調査」との比較分析に基づき、以下の諸点が明らかになった。(1)[文化資本に関する分析]日本人男性に比べて在日韓国人男性の文化資本は低いこと。父、母の学歴が高いほど出身家庭の文化資本は高まる傾向があること。出身家庭の文化資本が高いほど本人の学歴は高くなる傾向があること。(2)[在日韓国人女性の職業に関する分析]初職の企業規模は、9人以下の小規模の企業がほぼ半分を占めており、周辺セクターの労働市場に追いやられている。現職についても、9人以下の小規模な企業に従事する者が7割近く、さらに小規模企業への集中が強まっている。(3)[社会保障に関する分析]医療保険については、医療保険未加入者は加入者と比較して健康状態がよくない傾向が見られた。年金保険については、在日韓国人高齢者に分析を限定したところ、年金保険未加入者は、加入者より所得が低い傾向も見られた。(4)[母国とのネットワークに関する分析]民族への愛着や伝統への嗜好は、母国に親戚のいる人のほうが強い傾向にあることがわかった。また、母国語の使用や民族団体への参加においても、彼らはより積極的であることがわかった。しかし、母国に親戚をもつ人は日本人との付き合いが弱くなるのかと思われたが、むしろ彼らの間のほうが日本人との付き合いをもつ人が多くみられた。(5)[民族認識に関する分析]在日韓国人は民族を構成する要件として、(1)自分自身を韓国(朝鮮)人だと思う、意識的側面を強く重視しているが、(2)韓国生まれであることや人生の大部分を韓国で暮らしているという、場的側面はあまり重要視しておらず、(3)それら以外の要件は中程度に重要視している。どの要件を重要視するかは、世代のみである。
著者
金 明秀
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.36-53, 2015-06-25 (Released:2017-09-22)
被引用文献数
1

近年、日本でもマイノリティへのヘイトスピーチなどを特徴とする極右運動が問題視されるようになったが、それを下支えする社会的態度だと考えられている排外主義について、計量的なアプローチを用いて規定要因を探索的に特定することが本稿の目的である。データは2012年に「外国人集住都市会議」に加盟する自治体の有権者を対象に郵送法によって実施された調査である。分析モデルを構築するにあたっては、多数の態度概念を媒介させることで、社会構造上の位置をあらわす変数と従属変数の共変関係の「意味」を精緻に特定する社会意識論のフレームを用いた。分析の結果、次の3点が明らかになった。すなわち、(1)排外主義の形成に直接作用する社会構造変数はみられず、社会意識が媒介するかたちで排外主義が変動する、(2)排外主義を直接的に押し上げる最大の要因は同化主義である。同化主義は年齢が高いほど強い、(3)排外主義を直接的に抑制する要因は一般的信頼である。一般的信頼は社会的ネットワークの幅が広いほど高く、社会的ネットワークの幅は教育達成が高いほど広い。以上の発見に基づいて、社会全体の統合や秩序を毀損する排外主義を抑制するためには、「多文化関係資源」とでも呼びうる希少資源が重要であること、また、「多文化関係資源」の価値を再評価し、資源を再生産するシステマティックな取り組みが必要であることを論じた。
著者
小林 裕章 金子 剛 西本 紘嗣郎 内田 厚
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.63-65, 2010-01

Penile strangulation is one of the emergent urologic disorders, because immediate release is the critical treatment to prevent penile necrosis, urethral injury, erectile disorder, and other unfavorable events. A 66- year-old man was transferred to the emergency room of our hospital for the penile swelling and pain, occurring by penile insertion to the beverage bottle for masturbation. The penis was completely relieved using an electric plaster cutter without any injury. The strangulation time was four hours and a half, and there were no complications. We recommend an electric plaster cutter as a useful tool for this incident.
著者
大沢 真理 シャイア カレン マルガリータ エステベス=アベ 阿部 彩 金 英
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-10-21

日本の生活保障システムは、先進諸国の中で最も強固な「男性稼ぎ主」型であり、政府の所得再分配が貧困を削減する効果が、就業者の多い世帯や子どもにとってきわめて弱く、効果がマイナスである場合も少なくない。労働力人口の減少が憂慮される社会としてきわめて非効率で不合理なシステムであること、しかし所得再分配の効率性を高めれば、税・社会保障負担を増すことなく国民の生活を改善できることも、明らかになった。2014年2月には福井県において社会的排除に関するアンケート調査を実施した。働き者の福井の女性が、より働きがいを感じ、地域活動にも参加する条件について示唆を得られた。
著者
金 一虹 大橋 史恵
出版者
ジェンダー史学会
雑誌
ジェンダー史学 (ISSN:18804357)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.5-28, 2010

This essay will examine the complex influences on the movement to create Iron Girls during the Cultural Revolution, evaluating the impact of the political campaign and accompanying administrative intervention on the gender division of labor. The analysis will consider the underlying economic motivations for the intervention, the ideological implications of the mobilization, and their relation to gendered social relations.<BR>"Iron Girls" are one of the best-known artifacts of an extreme form of gender equality promoted during the Cultural Revolution, expressed under the slogan "men and women are the same." This essay examines the origins and decline of the movement for Iron Girls, asking why the government encouraged women to challenge the traditional model of the gender division of labor, why women responded so enthusiastically to the campaign, and whether their actions were carried out with a conscious recognition that they were struggling for equality with men. This essay will provide an objective and historical evaluation, considering whether the movement for Iron Girls was able to transform the traditional gender division of labor, whether it led to the liberation of women, and how in our own day we look upon the slogan of "men and women are the same."
著者
金森 修
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

一九六〇年代を中心に我が国のSFの発展を跡づける作業をしている内に、SF史だけに限定するのではない、より広範な視点が必要だということが分かってきた。SFは、同時代の他分野の文学・芸術活動と陰に陽に繋がっているからである。そして、その過程で、いわゆるSF作家と呼ばれる人々よりも広いカテゴリーにある作家たちの調査を始めた。そしてその中で、単なるSF作家とはいえず、戦後文学の重要な一画をなし、まだ充分な研究が進んでいない安部公房の存在の大きさを改めて認識するようになった。そのため、安部公房の全作品を集め、現在入手可能な安部公房論、また海外の安部公房並びにその周辺に関する文献群をすべて集めた。こうして、資料体的には完璧な準備が進んだので、現在改めてゆっくりと評論と作品自体を通読しているところである。もうかなりの量は読破したので、年度末、つまりこの研究の完成する頃には或る程度の目安がついているはずだ。というわけで現在は、安部公房を中心とした文学評論の執筆を目指して努力しているところである。
著者
中山 聖子 木村 将士 金子 誠也 山崎 和哉 外山 太一郎 池澤 広美 加納 光樹
出版者
アクオス研究所
雑誌
水生動物 (ISSN:24348643)
巻号頁・発行日
vol.2024, pp.AA2024-2, 2024-01-11 (Released:2024-01-11)

東南アジア諸国の水産上重要種であるウシエビPenaeus monodonは、インド・西太平洋の熱帯から温帯地域で生息が確認されており、その分布の北限は東京湾もしくは房総半島沿岸とされてきた。しかしながら、2021年9月から2023年11月にかけて両海域よりも北に位置する茨城県の江戸上川・久慈川・那珂川・利根川河口域と汽水湖涸沼において本種の稚エビ計20個体(頭胸甲長4.8–28.3 mm)が採集されるとともに、江戸上川産の標本に基づいて本種の北限記録を更新した。これらの採集年については、黒潮からの暖水波及と部分的に関連付けられる20 °C以上の高水温の期間が平年と比べて長かった。本種は低水温への耐性がないため茨城県沿岸海域で越冬する可能性は低いものの、今後、海水温の上昇によって稚エビの加入が増えていく可能性がある。
著者
梅村 光俊 金指 努 杉浦 佑樹 竹中 千里
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.97, no.1, pp.44-50, 2015-02-01 (Released:2015-04-07)
参考文献数
20
被引用文献数
1

東京電力福島第一原子力発電所事故で放出された放射性セシウム137 (137Cs) の福島県内のモウソウチク林における分布を明らかにするため,2012年5,6月に,事故前後に発筍したタケの稈,枝,葉,地下茎,タケノコを採取した。また2014年4月に経根吸収の実態を把握するため,深度別土壌と地下茎,および土壌表層と下層に伸びる地下茎根を採取した。2010年以前発筍稈の節部には放射性物質が高濃度で強固に付着しており,2012年時点で,降雨で洗脱されずに地上部に残留していることが明らかとなった。また,事故前後に発筍した稈の各器官中の137Cs濃度は同程度であった。このことから,137Csは地下茎を介した転流等によって拡散し,2011年発筍稈に含まれる137Csの起源として,フォールアウトの影響を受けた成竹からの転流と事故直後の可給態137Csの経根吸収の関与が示唆された。一方,地下部において137Cs濃度が地下茎の深さや根の方向に関係していないことから,現時点では137Csの経根吸収は少ないことが推測され,事故直後に吸収された137Csが地下茎を通して竹林全体に拡散していることが考えられた。
著者
金野 亮太 井上 修平 山本 正嘉
出版者
日本トレーニング科学会
雑誌
トレーニング科学 (ISSN:13494414)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.357-365, 2010 (Released:2014-04-03)
参考文献数
27
被引用文献数
2

暑熱環境(気温35 ℃,湿度80%)に設定した人工気象室において,8名の自転車競技選手が長時間の自転車ペダリング運動を行い,その運動の途中で全身に冷水をかけて身体冷却を行った場合に,体温をはじめとする生理応答や,主観的な指標にどのような効果があるかを検討した. 被験者は,レースで使用するロードレーサーを用いて,走行速度を40km/h に固定し,90 分間の運動を行った.この運動強度は乳酸閾値を超えないものであり,実際のレースにおける運動強度からみると,比較的弱い部類に属するものであった.被験者は,運動開始から60 分を経過したところで,全身に5 ℃の水をかぶる条件(以下,水かぶり)と,それを行わない対照条件の 2 通りを,ランダムな順序で行った. その結果,水かぶりを行うことによって体温(直腸温度,平均皮膚温度)の上昇は抑制され,その効果は運動終了までの30 分間持続した.また水かぶり後には心拍数や酸素摂取量も低値を示し,運動効率の改善が窺えた.以上の結果から,暑熱環境下で行う水かぶりは,熱中症を予防したり,運動パフォーマンスを維持する上で,実用的で効果の高い手段であることが示唆された.
著者
金子 希代子 福内 友子 稲沢 克紀 山岡 法子 藤森 新
出版者
一般社団法人 日本痛風・核酸代謝学会
雑誌
痛風と核酸代謝 (ISSN:13449796)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.7-21, 2015-07-25 (Released:2015-07-25)
被引用文献数
1 2

筆者らは以前から食品中のプリン体含量を測定してガイドライン附表などで報告しているが,本論文では新たに測定した品目を加えた292種の食品中プリン体含量を示すとともに量に従って分類し,それらの塩基別(アデニン,グアニン,ヒポキサンチン,キサンチン)含有率を比較した.卵類,果物,乳製品,芋類,穀類,野菜類,きのこ類,大豆製品は,どれも概ね50mg/100gの非常に少ない食品(ランク1)に分類され,主にアデニンとグアニンを含んでいた.肉類,魚類は100mg以上/100gの中程度以上の食品(ランク3)で,ヒポキサンチンを総プリン体の50%以上含むものも多かった.レバー,白子は300mg以上/100gの非常に多い食品(ランク5)であった.光沢のある魚の表面はグアニン結晶でできているが,これらの魚類はグアニンの比率が高かった.ヒポキサンチンは血清尿酸値を上昇させる作用が強く,グアニンはその作用が殆どないことから,総プリン体含量も多めでヒポキサンチンの比率の高い肉類,魚類の摂取は少なめにし,光沢のある魚は食べ過ぎずある程度摂取するのが望ましいと考えられる.卵類,果物,乳製品,芋類,穀類,野菜類,きのこ類,大豆製品はプリン体量も少なく勧められる食材である.
著者
藤綱 隆太朗 白川 和宏 石田 径子 井上 聡 鳥海 聡 金子 翔太郎 土屋 光正 宮嶌 和宏 三吉 貴大 植松 敬子 金尾 邦生 春成 学 竹村 成秀 進藤 健 塩島 裕樹 荘司 清 齋藤 豊 田熊 清継
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.285-287, 2018-12-31 (Released:2018-12-28)
参考文献数
14

ナツメグは香辛料としてハンバーグなどの肉料理に用いられ, わが国でも容易に入手可能である。欧米では急性中毒を起こす原因物質として一般的に知られており, 死亡例も報告されている。米国の報告では自殺目的の大量摂取のほか, 意図せずにナツメグ中毒となっている例も半数以上を占めている。しかしわが国では症例報告は少なく, 中毒の原因としてはあまり知られていない。本症例は香辛料としてナツメグ10gを摂取した。その後, 浮遊感, 動悸などが出現, 不穏となった。自身でインターネット検索し, ナツメグ中毒の症状と合致することに気づき, 救急要請した。来院時, 不安感と口渇感を訴え, 興奮気味であったが, 安静にて経過観察を行い, 症状は改善した。本症例は患者自らのナツメグ摂取の申告により診断に至ったが, 本人の自覚なくナツメグ中毒に至る症例もあると思われる。そのため, 急性の精神異常を呈した症例では原因中毒物質として鑑別にあげる必要があると考える。
著者
小笹 勝巳 住友 理浩 川田 悦子 角 明子 中塚 えりか 高井 浩志 古武 陽子 金本 巨万 林 道治
出版者
公益財団法人 天理よろづ相談所 医学研究所
雑誌
天理医学紀要 (ISSN:13441817)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.34-38, 2014 (Released:2014-07-01)
参考文献数
8

緒言: A 群溶連菌(Group A Streptococcus; GAS)による重症感染症が1980年代より報告されるようになってきた.一般には咽頭や皮膚からの感染が多いとされているが,感染経路が不明なことも多い.今回我々は子宮内膜細胞診後に発症した重症GAS 感染症を2例経験したので報告する.症例1: 46歳女性.帯下異常及び外陰掻痒感を主訴として当科初診.腟分泌物細菌培養及び子宮内膜細胞診を施行した.翌日に突然の腹痛をきたし,翌々日,当科再診した.来院時ショック状態であり,骨盤内炎症性疾患(pelvic inflammatory disease; PID)の所見を認めたため,抗生剤投与及び抗ショック療法を開始した.初診時の腟培養及び入院時血液培養からGASが検出されたため,toxic shock-like syndrome (TSLS)を疑い免疫グロブリン投与,エンドトキシン吸着療法も施行.血圧安定後,腹腔鏡下に腹腔内洗浄ドレナージを施行.集学的治療で全身状態は改善し軽快退院となった.症例2: 52歳女性.子宮癌検診として子宮内膜細胞診が施行され,当日夕方より嘔吐,下腹部痛,悪寒,戦慄が出現した.翌日,当院救急外来受診.受診時38℃台の発熱とショックを認めた.内診で子宮の可動痛著明であり,子宮内膜細胞診を契機とした敗血症性ショックと診断した.初診時の血液培養,腟培養からGASが検出されTSLS の診断基準は満たさないものの,それに準じた病態と考え,抗生剤,昇圧薬,免疫グロブリン投与を施行し軽快退院となった.結語: 子宮内膜細胞診後に発症した侵襲性GAS 感染症を2 例経験した.子宮内膜細胞診は日常診療でしばしば用いられる手技であるが,重篤な合併症の報告はまれである.子宮内膜細胞診の合併症として侵襲性GAS感染症が発症しうるということを念頭に置いた対応が必要と考えられた.
著者
金子 國吉
出版者
慶應義塾大学
雑誌
体育研究所紀要 (ISSN:02866951)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.25-39, 1975-12

1. はじめに2. 古代末期の剣技について3. 鎌倉時代の剣技についての概説4. 南北朝時代の剣技について5. まとめ

91 0 0 0 OA 国癌切開

著者
金振九 著
出版者
名古屋出版社
巻号頁・発行日
1936
著者
太刀川 貴子 渡理 英二 染谷 健二 池田 年純 荒明 美奈子 藤巻 わかえ 金井 孝夫 内山 竹彦 宮永 嘉隆
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.255-263, 1999-11-30 (Released:2010-07-21)
参考文献数
21
被引用文献数
2

弱酸性電解水の各種病原微生物に対する効果を検討した.弱酸性電解水は電解添加液 (NaCl, HCl) を微量添加した水道水を隔壁膜のない電気槽で電気分解し, pH5.0-6.0に設定することにより, 次亜塩素酸を効率よく有効利用する目的で開発された.細菌に対する効果は含有塩素濃度, pH, 温度, 作用時間の影響を検討した.無芽胞菌 (13種を検討) においては本電解水含有塩素濃度30ppm, 作用時間30秒で被験菌株のほとんどについて生存菌数が検出限界以下であったが, P. aeruginosaの殺菌には50PPmが必要であった.有芽胞菌 (3種を検討) の場合, C. perfrigensとC. botulinumは含有塩素濃度60ppm, 作用時間1分で検出限界以下になった.B.subtilisは含有塩素濃度50ppm, 作用時間5分で検出限界以下になった.ウイルスに対する効果は50ppmではInfluenzavirus A/PR/8/34株, Semliki forest virusにおいては5秒, Adenovirus8型では15秒, Herpes simplex virus 1型HS株では1分, 2型KP株では5分以内で検出限界以下となった.Humanimmunodeficiency virus1型IIIB株においては30ppm, 5秒で検出限界以下となった.また, 応用として, 手指除菌効果の検討, 噴霧による実験動物飼育室の除菌効果の比較を行ったが, いずれも除菌効果があった.本弱酸性電解水は各種病原微生物に対して優れた殺菌効果があり, 安全で種々の用途への応用が期待される.