著者
鈴木 克明
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.50-61, 1995

ジョン・ケラーが提唱しているARCS動機づけモデルは、新奇性を超えたレベルで学習者の意欲をシステム的に扱うための提案として、「魅力ある教材」の設計・開発に有効と思われる。ARCSモデルは、教材設計者が教材の設計過程において動機づけの問題に取り組むことを援助するために、注意、関連性、自信、満足感の4要因の枠組みと動機づけ方略、ならびに動機づけ設計の手順を提案したものである。本論では、4要因とその下位分類の理論的裏付けを概観し、これまでに提案されている動機づけ方略とモデルの応用領域を列挙し、さらにARCSモデルについての研究を5つのタイプに整理して紹介している。
著者
鈴木 渉 齋藤 玲
出版者
宮城教育大学
雑誌
宮城教育大学紀要 (ISSN:13461621)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.223-230, 2015
被引用文献数
1

本稿の目的は,まず,第二言語習得研究(Second Language Acquisition Research),特に,第二言語学習におげるアウトプット(話すことや書くこと)の役割に関する研究について概観し,次いで,認知心理学の観点から,それらの研究の課題や今後の方向性について展望することである。本稿で取り上げる認知心理学における知見とは,記憶検索(memory retrieval)の現象のひとつとしての検索経験(retrieval practice)の効巣である。本稿では,検索経験の効果に関する近年の研究成果に基づいて,第二言語学習におけるアウトプット研究のこれからの展開の可能性を示したい。
著者
渋川 祥子 鈴木 咲枝
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.58-63, 1985-03-20

圧力鍋によってじゃがいもを加熱した時のいもの特性及び加熱条件等について, 同一条件のいもを圧力鍋と蒸器で比較, 検討した結果, 次のことが明らかになった。1. いもの中心部を刺して, ほぼ同様の硬さとなる加熱条件は, 約150gのいもについて蒸器では25分加熱, 圧力鍋では, 蒸らし時間5分とした時には, 蒸気噴出まで5分, 蒸気噴出後加熱継続3分の計13分であった。2. 中心部の硬さが蒸器, 圧力鍋ともほぼ同じになっても部位別の硬さには差があり, 圧力鍋では, はしの部分が過度に柔らかく, くずれやすかった。3. マッシュポテトにしてみると, 圧力鍋の方がねばりが強く, その加熱時間が少し長くなると, ねばりはより強くなった。4. つぶしたいもを水に懸濁すると, 溶出でんぷん量や水溶性ペクチン量は圧力鍋の方が多く, 顕微鏡観察でも細胞の崩壊が見られた。5. 加熱時のガス消費量及び調理時間とも, 圧力鍋では蒸器のほぼ1/2であった。
著者
渡辺悟 鈴木徹也
雑誌
第76回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, no.1, pp.199-200, 2014-03-11

古文書には変体仮名が使われており、その翻刻作業には多くの知識と労力を要する。それは変体仮名には、異なる読みをする類似形状の文字や同じ読みをする多様な形状の文字が存在するためである。以前我々の研究グループは古文書の翻刻支援を目的として制約充足による手書き変体仮名認識法を提案した。その手法では、各文字の読みの候補を挙げ、読みの組み合わせの中から最適な単語列を探索する。この手法には、制約が少ないとき、組み合わせ爆発を起こすことがあった。本研究では、単語の生起コストと連接コストを導入し、コスト最小法とN-best探索を用いて解の個数削減を図った。実験により従来手法の問題点を解決できたことを確認した。
著者
鈴木 順子
出版者
名古屋市立大学
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.113-126, 2007-12

現代の家族を特徴づけるものは核家族である。戦後の高度経済成長は急激な工業化や都市化を招き、都市への人口集中をもたらし、またその都市化の進行は家族形態を大家族から核家族へと移行させた。近年、それに加え、少子化傾向が見られ、政府はこの状況に対し、様々な子育て支援策を講じてきたが働く母親や育児負担を抱えている母親にとって充分な施策が行われているとはいえない。本稿では、この中で自治体の取り組みの一つであるファミリー・サポート・センターに焦点を当てる。このファミリー・サポート・センターが少子化対策の一つとして、また子育て支援システムの中でどのように子育てを支援し、位置づけがなされているか、実践報告を基に検討することで、ファミリー・サポートの住民相互援助という新しい形態が今後の子育て支援に重要な役割を果たしていくと考えている。
著者
鈴木 俊哉 鈴木 敦 菅谷 克行
雑誌
研究報告情報基礎とアクセス技術(IFAT)
巻号頁・発行日
vol.2015-IFAT-118, no.5, pp.1-6, 2015-03-23

甲骨文字のデジタル化において,文字符号化して問題ないか,あるいは画像として扱うべきかは,拓本資料の鮮明さや掲出例数を考慮して判断しなければならない.我々は印刷物として公表されたデータベースである 『殷墟卜辭綜類』 と 『殷墟甲骨刻辭類纂』 に基づいた検討をすすめているが,全て手書き資料であり,また,そこに模写された文字の集合も明確ではないため,文字認識的な手法をとることができない.本研究では,掲出例数を概算するため,両書に共通するレイアウト構造をもとに模写テキストを画像分解する方法を検討した.両書の画像分解精度が大きく異なる結果が得られたが,この原因は両書の編集・出版方針の違いによると推測される.また,本研究の手法の適用範囲についても報告する.
著者
齊藤 里奈 鈴木 誠 前野 隆司 眞山 博幸 野々村 美宗
出版者
公益社団法人 計測自動制御学会
雑誌
計測自動制御学会論文集 (ISSN:04534654)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.2-8, 2014 (Released:2014-02-05)
参考文献数
36
被引用文献数
5

The tactile texture of water is not necessarily favourable. When 20 subjects applied 0.1mL of water and five thickener solutions to artificial skin, the favourability score for water was the lowest among the six liquids. This unfavorability is caused by non-smooth and stick-slip feel, which reflect the increase of friction coefficient and their drastic changes on wet skin. The Stribeck plots show that the rupture of a fluid film on human skin can induce the stick-slip feel during application. These findings could potentially be applied for the design of cosmetic products and cleansing products.
著者
鈴木 準一郎
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、「植物個体は、地下部(根)から分泌される化学物質を介して、自己と非自己を認識し、自他の識別を行う」という仮説を設定した。その仮説から導かれる予測、「遺伝的に異なる個体間の競争では、根の成長方向は他個体の存在に影響をされないが、クローン個体間あるいはキメラ個体間での競争では、根は他個体と反対の方向へ成長し、根の競合を回避する」の実験的な検証を試みた。キメラ作成の可否に関する予備実験を行い、材料としてナス(Solanum melongena L.)を選定した。ナスを用いて、接ぎ木の手法により、キメラ個体を作成し、予測の検証を試みた。しかし、接ぎ木の成功率のバラツキが予想以上に大きく、とくに成長につれて枯死が非常に多くのキメラ個体で見られた。また、接ぎ木自体は成功しても成長量にバラツキが大きいことがわかった。さらに接ぎ木の操作を行った個体でウイルス感染による枯損が発生するなど予想外の事故も生じた。栽培が可能な季節の間、繰り返し実験を行ったが、当初予定していた反復数のデータ採集が出来なかった。接ぎ木処理により成長量のバラツキが大きくなることから、反復数を減らすことは出来なかった。さらに、反復数の不足を補う解析手法の開発も試みたが、反復数の不足を補い、当初予測していた仮説の検証を試みることは残念ながら出来なかった。そこで、栽培条件を検討するために行った予備実験の結果を、2報の論文として取りまとめ、投稿しそれらが現在審査中である。
著者
鈴木 和雄
出版者
弘前大学
雑誌
人文社会論叢. 社会科学篇 (ISSN:13450255)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.127-147, 2001
著者
横山 正 鈴木 創三 渡邉 泉 木村 園子ドロテア 大津 直子
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

福島県二本松市の放射性Csによる農耕地汚染実態の解明と植物-微生物相互作用によるその除去の加速化を検証した。二本松の優占粘土の雲母は、有機酸で固定したそれを放出した。阿武隈川流域の河川堆積物のその濃度は、秋季に減少し春季に増加した。水田ではオタマジャクシでその濃度が高く、イノシシ筋肉中のそれは自然減衰以上の減少を示した。また、鳥類の精巣や卵巣にその蓄積が見られた。畑の可給態のそれは2013年には1~5%に減少したが、森林土壌では3~13%を示した。植物はPGPR接種で、その吸収量を増大させたが、雲母が固定した分を吸収できず有機酸を生成するカリウム溶解菌の併用で、植物の吸収量を増加させられた。
著者
鈴木 俊哉
雑誌
研究報告デジタルドキュメント(DD)
巻号頁・発行日
vol.2010-DD-76, no.5, pp.1-6, 2010-07-15

第 67 回デジタルドキュメント研究会にて、ページ記述言語 PostScript における標準的な字形指定番号である Adobe CID から、TrueType フォントのグリフへのマッピング方法について発表した。アドホックなマッピング情報を持たないよう、PostScript 資源として提供されている情報のみでマッピングを決定しようとすれば、テーブル構築の際に 0.5~3 秒程度の遅延が発生することを示した。この負荷はラスタ処理が数十秒から数分におよび高解像度の印刷の場合には無視できるが、モニタ表示の観点では問題となる。この負荷は PostScript 資源をフォントごとに読み込んでマッピングを構築するためと考えられるので、PostScript 資源ではなく、近年普及が進みつつある TrueType フォントの UVS サポートを用いて、このマッピング処理を高速化する方法について検討する。
著者
鈴木 隆
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.345-351, 2006-05-20

症例1は27歳の1回経産婦。前回,妊娠中毒症および骨盤位で帝王切開術で分娩す。今回は経膣分娩(VBAC:vaginal birth after cesarean)を希望していた。今回の妊娠経過に特に異常は見られず。妊娠37週5日で破水のため入院す。感染予防のため抗生物質投与しつつ,自然陣痛の発来を待機する。破水後44時間経過し陣痛が発来しないため帝王切開術による分娩の終了を考えたが,桂枝茯苓丸エキスを頓服で投与したところ,子宮収縮が始まる。その後陣痛増強し,妊娠38週1日正常分娩す。症例2は33歳の1回経産婦。前回,微弱陣痛のためoxytocin による陣痛促進で経膣分娩す。今回妊娠39週5日で誘発分娩(社会的適応)希望のため入院す。前回経験した陣痛促進がつらかったため(本人の弁),今回のoxytocinの投与に躊躇が見られたので,桂枝茯苓丸エキスを頓服で投与したところ,子宮収縮が始まる。その後陣痛増強し,同日正常分娩す。桂枝茯苓丸は代表的な駆〓血薬として臨床の場で広く応用されている。一方,催生湯として,万病回春には陣痛促進作用をうかがわせる記述があるが,近年,桂枝茯苓丸を陣痛促進の目的で使用した報告は少ない。桂枝茯苓丸がoxytocinやprostaglandinの代用になるとは考えていないが,桂枝茯苓丸の投与で反復帝王切開術を回避し,また,陣痛を増強して正常分娩に導いた症例を経験したので報告した。
著者
鈴木 幹三 岸本 明比古 山本 俊幸 足立 暁 山本 和英 白井 智之
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.24, no.10, pp.1078-1082, 1986-10-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
18

剖検で確認した高齢者肺炎102例を臨床病理学的に検討した. 60歳以上の剖検180例中102例 (57%) に肺炎が認められ, このうち53例 (52%) は肺炎が直接死因となった. 基礎疾患は脳血管障害後遺症, 心疾患が大半を占めた. 病理学的な肺炎病巣の拡がりは肺炎死因率と正の相関を示した. 肺炎は両下葉および右上葉に好発し, 病理学的に炎症病変は巣状分布を示す例が最も多く, これらのなかに沈降性肺炎, 嚥下性肺炎の関与する例がみられた. 大葉性肺炎, 嚥下性肺炎, 肺化膿症は直接死因となる頻度が高く, 肺うっ血水腫は49%にみられた. 病変発現部位では, 肺胞性肺炎が70%を占め, 混合型肺炎は10%であった.
著者
沖谷 明紘 大根田 弥生 久保 友人 石井 剛志 鈴木 理世子 粟田 隆之 砂田 泰志 山下 幸恵 右田 光史郎 松石 昌典 畑江 敬子
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.170-176, 2008-04-15
被引用文献数
2 5 1

(1) スルメイカ外套膜を真空調理したとき,官能による測定では煮えたものの食感をもつ,軟らかい煮イカが得られる加熱時間は,50℃と55℃では4~5時間,60℃では1~4時間であった.この加熱時間で皮(表皮の第3層と第4層の膜で構成)が消失したので筋肉内コラーゲンも可溶化したと推察された.<BR>(2) 60℃で1時間真空調理したイカ肉と80℃で1時間真空加熱したイカ肉の破断強度は,環状筋筋線維に直角および平行に破断したときのいずれの場合も前者のイカ肉の方が小さかったが,両イカ肉間の差は平行に破断したときの方が著しく大きかった.<BR>(3)SDS-PAGE分析の結果,加熱によってイカ肉の筋原線維からアクチンが不可逆的に離脱することが明らかとなった.この反応は60℃で著しく進行し,2時間後でもアクチンは可溶化したままであった.80℃でもこの反応はわずかに認められたが,可溶化アクチンの出現は2分までであった.<BR>(4)(2)と(3)の結果より,60℃で1時間真空調理した煮イカが80℃で1時間加熱した煮イカより軟らかい原因の1つとして,筋肉中で加熱によって起るアクトミオシンからのアクチンの離脱可溶化度合が,前者でより大きいことが推察された.<BR>(5)すべての結果から,真空調理スルメイカ筋肉のソフト化は筋肉内コラーゲンの可溶化と筋原線維からのアクチンの離脱可溶化現象によって惹起されると示唆された.