著者
鈴木 元彦
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.123, no.7, pp.553-556, 2020-07-20 (Released:2020-08-06)
参考文献数
8

嗅覚障害は日常生活での危険を生じさせたり, 良いにおいを感じる幸せを消失させたりして, Quality of life に強く影響する疾患である. また, 耳鼻咽喉科外来においても嗅覚障害を主訴に受診する患者は少なくなく, 臨床上重要な疾患である. しかし, 嗅覚障害のメカニズムに関してはいまだに分かっていないことも多く, 診断法や治療法についても施設によってさまざまである. そしてこういった事情を克服するといった理由も含め, 近年嗅覚障害診療ガイドラインが日本鼻科学会より発刊された. また嗅覚障害に対する発症機序の解明や新規治療法の開発といった目的にて, 嗅覚障害に関する研究も進んでいる. 以上を踏まえ, 本稿では嗅覚障害診療ガイドラインと嗅覚障害に対する最近の研究と知見について概説する.
著者
鈴木 佐内
出版者
智山勧学会
雑誌
智山学報 (ISSN:02865661)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.171-189, 1988-03-31 (Released:2017-08-31)

丹後守藤原為忠とその子たち、特に常盤の三寂、為業寂念、為経寂超、頼業寂然の事歴を、白河院の近臣受領という方面から追い、三寂の発心が、院が特に心をかけた待賢門院一流の勢力の衰退に関わることを考察した。藤原為忠の事歴については、井上宗雄氏が「常盤三寂年譜考 附藤原隆信略年譜」でふれておられるが、表題の示すとおり、為忠の子常盤の三寂についての事歴が主であり、白河院の近臣受領としての為忠をみるには十分ではない。知綱以来、白河院と強い縁で結ばれてきた常盤一族の盛衰が、白河院勢力のそれと深いかかわりをもつのも当然であって、本稿は、為忠の近臣受領としての姿をあきらかにする意味で、井上氏の年譜を拠り所とし、同氏が記述されなかった事歴をも加え、私見を付し、更に、これによって、近臣受領の子という、その子たちの消息から、特に出家の動機を探ってみたい。
著者
小島 美世 山﨑 理 堀井 淳一 井上 陽子 鈴木 一恵 田邊 直仁 村山 伸子 小川 佳子 中川 圭子 草野 亮子 関 芳美 波田野 智穂 磯部 澄枝 栃倉 恵理 石田 絵美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.232-242, 2020

<p>【目的】新潟県では,1965年代から脳血管疾患対策として様々な減塩運動を展開してきた。しかし,脳血管疾患年齢調整死亡率は全国平均より高く,食塩摂取量も全国平均を上回る結果だった。そこで2009年度から新たな減塩運動「にいがた減塩ルネサンス運動」に10年間取り組んだ。その取組をとおし栄養・食生活分野におけるPDCAサイクルに基づく成果の見える栄養施策の展開を試みた。</p><p>【方法】実態把握から優先順位の高い健康課題の抽出と,その背景となる栄養・食生活の要因を分析し,その要因が改善されるよう施策を整理し目標達成を目指した。また,各々の施策の事業効果が目標達成にどう影響を及ぼしているかが見える化できるよう評価枠組を整理した。評価枠組は各施策の事業効果が質的,量的にどう影響を及ぼすかが明確になるよう結果評価,影響評価,経過評価に分け,目標達成に影響を及ぼす施策とその成果が分かるよう施策を展開した。</p><p>【結果】経過評価に位置付けた,市町村や関係機関での取組が増加した。影響評価に位置づけた,県民の高食塩摂取量に関連する食行動が有意に改善した。結果評価に位置づけた食塩摂取量や収縮期血圧値や脳血管疾患死亡数及び虚血性心疾患死亡数が減少した。</p><p>【結論】PDCAサイクルに基づく展開と,目標達成につながる評価枠組を整理し枠組順に客観的に評価したことで,施策が目標達成にどのように影響を及ぼしたのかその関連性を見える化することができた。</p>
著者
杉浦 淳吉 吉川 肇子 鈴木 あい子
出版者
NPO法人 日本シミュレーション&ゲーミング学会
雑誌
シミュレーション&ゲーミング (ISSN:13451499)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.37-49, 2006-06-25 (Released:2020-08-28)
参考文献数
11
被引用文献数
3

本研究の目的は,商品販売・購入場面における交渉過程を再現した交渉ゲームを「説得納得ゲーム」(杉浦,2003)のフレームを用いて開発することである.説得納得ゲームは,説得役と被説得役の2つのグループに分かれ,相互作用を繰り返すゲームであり,当初環境教育のツールとして開発されたものである.説得納得ゲームを改変した『SNG:販売編』は,傘やメガネといった商品アイディアの開発を行い,その後,商品を販売する役割と,それを購入する役割に分かれて交歩を行う.販売者はなるべく多くの商品を売ることが求められ,購買者は賢い消費者として自分の気に入った商品を限られた金額の範囲内で購入することが求められる.大学生等を対象とした実践により,このゲームのバリエーションの有効性が確認された.最後に,説得納得ゲームのフレームゲームとしての消費者教育や交渉トレーニングヘの利用可能性が議論された.
著者
鈴木栄助著
出版者
岩波書店
巻号頁・発行日
1978
著者
鈴木 仁美 大西 一雅
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1981, no.7, pp.1117-1120, 1981
被引用文献数
1

ジクロロメタン中でビス(ペンタメチルベンジル)セレニドに硝酸(d=1.5)を作用させると,還元的な開裂が起こり,単体セレンを分離してペンタメチルベンジルニトラートがほぼ定量的に生成する。ビス(p-クロロおよびp-ニトロベンジル)セレニドの同様な反応では,炭素-セレン結合の開裂はみられず,セレン原子が酸化されて,対応するセレノキシドが得られるが,芳香環のニトロ化はみられない。ジベンジルセレニドと硝酸の反応では,セレノキシドの硝酸塩が水溶性の白色結晶として得られる。一連のビス(置換ベンジル)セレニドについて,その反応形式におよぼす置換基の顕著な効果を検討し,それぞれの反応過程について考察した。
著者
鈴木 涼太郎
出版者
観光学術学会
雑誌
観光学評論 (ISSN:21876649)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.141-154, 2019 (Released:2021-09-30)

本稿では、新潟県佐渡島の伝統芸能・鬼太鼓を事例に、民俗芸能を介した体験・交流プログラムにおける観光経験について考察する。佐渡島は全国的な知名度を誇る民謡・佐渡おけさや能、世界的太鼓集団「鼓童」の存在によって「芸能の島」とも称されている。そのなかで鬼太鼓は、全島の集落で広く伝承されている芸能であり、佐渡の観光宣伝の文脈では戦前から島を代表する伝統文化として位置づけられてきた。佐渡市高千地区では、毎年8月13日に「夏の彩典たかち芸能祭」というイベントが行われている。このイベントでは2009年より神奈川県の大学生が参加する芸能体験プログラムが行われており、学生たちは約1週間高千地区に滞在し、集落に伝わる鬼太鼓を学び芸能祭本番では伝承者とともに観衆に向けて披露する。このプログラムを対象に筆者が2009年以来行ってきたアクション・リサーチから明らかになったのは、民俗芸能という身体技法の習得をともなう交流プログラムにおいては、束の間の「師匠と弟子」の関係が構築されるということである。さらに参加学生が伝承者とともに鬼太鼓を披露して地域の人々や観光客に「観られる」側となる状況では、「地域文化観光」論で指摘されているような真摯な交流がもたらされ、観光者としての参加者が実存的真正性を経験することが可能になる。だが同時に重要なのは、そのような真正な経験が、このプログラムが管理された団体旅行であり、受け入れる地域と参加する学生にとって「一時的な楽しみ」であることによって支えられているという点である。
著者
森脇 広 永迫 俊郎 鈴木 毅彦 寺山 怜 松風 潤 小田 龍平
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2020, 2020

<p><b> </b></p><p><b>はじめに:</b>南九州・南西諸島の古環境と文化の諸要素の高精度編年を進めている.今回は南西諸島の喜界島のテフラと古砂丘を取り上げる.喜界島は全島がサンゴ礁段丘からなる.段丘は多くの年代測定が行われ,最終間氷期MIS 5eの段丘面が標高200mに達し,日本では隆起量が最も大きいことで知られる.このため,最終氷期の亜間氷期MIS 3の段丘面群(上位からD面,E面,F面:太田・大村,2000)が高度90m~15mで,現在の陸上に広く出現している.</p><p></p><p><b> </b>砂丘は喜界島南西部のMIS 3の段丘地帯を広く覆う.それらは,現在の海岸近くにある完新世の砂丘,内陸のMIS 3面上に分布する更新世の水天宮古砂丘(角田,1997)からなる.その地形や堆積物,形成時期について,古くから関心が持たれてきた(三位・木越,1966;武永,1968;成瀬・井上,1987など).</p><p></p><p> 最近,水天宮砂丘地帯において,広範囲の耕地整理工事がなされ,砂丘の地形と堆積物の全体的な様相が明らかとなってきた.この報告では,水天宮古砂丘の分布と堆積物の構造,テフラの同定・編年,及び<sup>14</sup>C年代資料に基づく古砂丘の編年と形成を検討する.</p><p></p><p> <b>テフラ</b>:喜界島のテフラについては,同定や層序,年代などまだよくわかっていない.今回の調査で,9枚のテフラを見いだした.このうち2枚は,バブルウォール型の火山ガラスを豊富に含むガラス質火山灰で,上位はK-Ah, 下位はATに同定される.他の7枚は斑晶や微細軽石に富む淡褐色火山灰で,ここでは,上位からKj-1〜Kj-7と名づける.鉱物は斜方輝石,単斜輝石,角閃石,磁鉄鉱,チタン鉄鉱,長石,石英で,スコリアを含むものもある.全体として特徴的に高温石英を含む.それらの鉱物の含有の有無・度合い,層相・層位などからそれぞれのテフラの識別が可能で,南西諸島の島々やトカラ列島の諸火山でこれまで知られているテフラに一部対比可能なものもみられる.ATはKj-6とKj-7の間にある.K-AhとKjテフラ群との層位関係は同一露頭断面で直接確認できないが,土壌の厚さなどから,K-AhはKjテフラ群より上位にあるものと推定される.</p><p></p><p><b> 砂丘の地形と堆積物:</b>これまで水天宮古砂丘は,喜界島南西部の孤立した丘陵一帯を広く構成しているとされてきた.しかし今回の調査で,水天宮古砂丘とされる丘陵の南半部のほとんどは基盤のサンゴ石灰岩からなるD面,E面で,砂丘はこれらの段丘面を部分的に覆っているにすぎないことが明らかとなった.南半部では,段丘崖や崖上にリッジ状に分布しており,当時の海岸沿いに形成されていったことを示す.</p><p></p><p> 一方,北半部は最大20m以上に及ぶ厚い砂丘堆積物が全体を覆う.部分的には膠結砂丘砂からなっている.この中には少なくとも2枚の土壌が挟まれる.砂丘地形は南北に細長い谷を挟む砂丘列をなす.テフラと下記の<sup>14</sup>C年代は,谷と砂丘の形成期はほぼ同じであることを示す.したがって,谷は砂丘形成後の侵食によってできたものではなく,砂丘形成時の凹地として形成されたもので,水天宮北側の砂丘列は縦列砂丘として形成されたと解釈される.いくつかの地点での堆積物の層理の走向も,この砂丘列の方向と調和し,北方の海岸からの砂の運搬・供給を示す.この水天宮古砂丘はMIS 3段丘群最下位のF面の北端まで続き,この付近の海浜からの砂の供給によって形成されたことを示す.</p><p></p><p> <b>砂丘の編年と形成</b>:古砂丘堆積物を覆う土壌中に認められる上記テフラのうち,もっとも古いのはATである. Kj-7は現在のところ認められない.北半部の厚い砂丘堆積物上部から得られた陸生貝化石の<sup>14</sup>C年代は33,000〜34,000 cal BPを示し,テフラ編年と整合する.ATの層位とこの年代からみて,水天宮古砂丘の主要部をなす北半部の古砂丘は,MIS 3後期の3.5万年前前後に形成されたものと考えられる.段丘面との関係,テフラ,<sup>14</sup>C年代を総合すると,水天宮古砂丘は,MIS 3前期は当時の海岸縁辺に小規模な砂丘が形成され,後期になると,北側の海岸からの砂の供給による大規模な砂丘形成があったと考えられる.</p>
著者
清水 洋 松本 聡 酒井 慎一 岡田 知己 渡辺 俊樹 飯尾 能久 相澤 広記 松島 健 高橋 浩晃 中尾 茂 鈴木 康弘 後藤 秀昭 大倉 敬宏 山本 希 中道 治久 山中 浩明 神野 達夫 三宅 弘恵 纐纈 一起 浅野 公之 松島 信一 福岡 浩 若井 明彦 大井 昌弘 田村 圭子 木村 玲欧 井ノ口 宗成 前原 喜彦 赤星 朋比古 宇津木 充 上嶋 誠 王 功輝 ハザリカ ヘマンタ 矢田 俊文 高橋 和雄
出版者
九州大学
雑誌
特別研究促進費
巻号頁・発行日
2016-04-22

2016年熊本地震について、地震活動や地殻変動、活断層、火山活動への影響、地震災害の特徴などを調査した。その結果、熊本地震は布田川・日奈久断層帯の右横ずれ運動によって発生したが、複数の断層面と複雑な断層形状を持つことを明らかにした。また、建物被害や土砂災害の地盤との関係、特に、地盤の過剰間隙水圧が地すべりの発生要因であることを明らかにした。さらに、災害情報や災害過程、被災救援、エコノミークラス症候群などについての調査から、広域複合災害の問題点と対応策を提示した。
著者
村上 平 榊原 宣 堤 京子 田中 三千雄 丸山 正隆 鈴木 茂 橋本 忠美 金山 和子 長谷川 利弘 吉田 操 山田 明義 鈴木 博孝 遠藤 光夫
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.20, no.7, pp.623-629_1, 1978

Early-stage cancer located on the upper part of the stomach, especially near the esophagogastric junction, is still difficult to diagnose, and frequently undiscoverd until it is too late. Minute cancers so far discovered, in particular, are few in number, and much remains obscure about their morphology, , including such problems as strophic and metaplastic changes in the mucous membrane over the said area. We looked into diagnosis and morphology of minute cancers of the said region in patients encountered by us. Subjects consisted of 12 patients with early-stage gastric cancer the size of 2 cm or less in maximum diameter, a margin of which was within distance of 2 cm from the junction. Total 13 such lesions were found in them. Our findings were as follows : (1) Straight-view fibescope is more useful in observation snd biopsy of small lesions adjacent to the junction, while lateral-view fiberscope has slight advantages with small lesions off the junction, (2) of small, early-stage gastric cancers near the junction, those adjacent to the junction are frequently protuberant, and those off the junction tend to be concave, (3) the majority of small, early-stage gastric cancers near the junction are histologically highly differentiated.
著者
鈴木 勉
出版者
星薬科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、methylphenidate(MPD)の中枢興奮作用をmethamphetamine(METH)と比較検討した。METHおよびMPD処置により側坐核におけるdopamine濃度の上昇が認められ、この作用はphosphoinositide 3-kinase(PI3-K)阻害薬の前処置により抑制された。しかしながら、METHは5-HT濃度を上昇させたのに対し、MPDは5-HT濃度に影響を及ぼさなかった。また、METH処置により自発運動促進作用に対する逆耐性が形成されたが、MPDは逆耐性を形成しなかった。さらに、両薬物による報酬効果が消失後、再燃されるか否かを検討した結果、METH誘発報酬効果は再燃されたのに対し、MPD誘発報酬効果は再燃されなかった。次に、両薬物がastrocyteおよび神経細胞に与える影響を検討した。その結果、前脳部由来初代培養神経/glia共培養細胞にMETHまたはMPDを処置することによりastrocyteの活性化が惹起され、この作用はPI3-K阻害薬の共処置により抑制された。さらに、高濃度のMETHは神経のマーカーであるMAP-2alb陽性細胞数の減少およびapoptosis関連タンパクcleaved caspase-3の誘導を引き起こしたが、MPDはこのような作用を示さなかった。以上、本研究の結果から、METHおよびMPD誘発dopamine遊離作用ならびにastrocyte活性化作用にPI3Kが関与することが明らかとなった。さらに、両薬物の作用には相違点が存在し、METHによる強力な薬理作用発現や神経細胞死誘発には5-HT神経系とdopamine神経系の相互作用が一部関与している可能性が示唆された。