著者
鈴木 秀史
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.47-61, 2012-03-25
参考文献数
75

本論において,中期中新世の横尾層と伊勢山層の泥岩から産出した,深海性サメ類であるツノザメ目3科4属の歯化石を形態的特徴をもとに記載した.これまでの研究と合わせるとツノザメ目5科8属の化石がこの地層から産出したことになる.中新統の地層では,同一の産出地点から同類化石が集中して産出することは極めて珍しい.産状として注目されるのは,最も深い生息域に棲むカラスザメ属,ユメザメ属,フンナガユメザメ属の,生存時に近いと考えられる数本の歯が接合した形で産出したことと,ヨロイザメでは上下顎歯群と皮小歯群が一塊として産出したことである.これらの発見は,サメの接合歯や皮小歯が生存時か死後直後に体から離れ,速やかに泥が被覆し化石化したことを示す.また,これらの化石は中期中新世の北部フォッサマグナ地域の古海況を考察するうえで重要な情報となる.本論により,横尾層上部から伊勢山層下部の地層は,陸棚斜面から深海平原へと連続的に深海化が進んでいったことが明らかとなった.
著者
古村 和恵 宮下 光令 木澤 義之 川越 正平 秋月 伸哉 山岸 暁美 的場 元弘 鈴木 聡 木下 寛也 白髭 豊 森田 達也 江口 研二
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.237-245, 2011 (Released:2011-11-16)
参考文献数
13
被引用文献数
3 4

より良い緩和ケアを提供するために, がん患者やその家族の意見を収集することは重要である. 本研究の目的は, 「緩和ケア普及のための地域プロジェクト」(OPTIM)の介入前に行われた, 進行がん患者と遺族を対象とした質問紙調査で得られた自由記述欄の内容を分析し, がん治療と緩和ケアに対する要望と良かった点を収集・分類することである. 全国4地域の進行がん患者1,493名, 遺族1,658名に調査票を送付し, 回収した調査票のうち, 自由記述欄に回答のあったがん患者271名, 遺族550名を対象とした. 本研究の結果から, がん患者と遺族は, 患者・医療者間のコミュニケーションの充実, 苦痛緩和の質の向上, 療養に関わる経済的負担の軽減, 緩和ケアに関する啓発活動の増加, 病院内外の連携システムの改善, などの要望を持っていることが明らかとなった. Palliat Care Res 2011; 6(2): 237-245
著者
鈴木 美加
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

読解は大変複雑な過程を経て行われ、読解の成否を左右する要因についてはまだ解明されるべき点が多い。その過程ではトップダウン処理、ボトムアップ処理が同時に並行して、また相補的に行われているとされる。2006〜2008年度には読解に含まれる言語要素の処理の自動化と、学習者の読解時の意味処理過程の分析を中心に、研究を行った。読解に大きく影響を与える「語」とその意味に関する知識についての分析と、その拡充のための教材作成、効果の分析を行った。1)読解中の語彙処理を促す教材を作成、改良を行い、読解トレーニングの授業で学習者合計142名(2005、2006年度)に使用した。2005年度のアンケート(学習者71名)の結果から、本教材を含む読解トレーニングの教材、授業ともに9割の学習者から役に立つという回答を得た。自由記述の欄で、本教材の有用性が多くの学習者によって指摘された。2)意味的に関連する語や言語要素を結びつけて処理する練習において、学習者による語の結びつけの傾向を調べた。その結果、以下の処理を行っている場合があり、このような時、語の知識が不十分なために文章の理解につながらない原因となると言える。・既習の似た意味を持つ語に影響されたと推測される処理(例 学習対象語「戒めて」-誤った結びつき語「平気で」:「落ち着いて」等の意味と混同か)・対象語あるいは結びつけ語と同じ漢字を使用する既習語の意味をもとにした処理(例学習対象語「昨夜」-誤った結びっき語「夕焼け」:「夕べ」の意味と混同しただろう)また、文章に含まれる未知語や句・節の省略箇所の処理について、アイカメラを使用し、学習者の読みを分析した。未知語が含まれる文章を読む際、その語の初出の時には、意味処理に長い時間がかかるが、2回目以降の処理には、初出に要した時間の約3分の1の時間で処理をしていた。さらに、学習者の文章読解時間と理解度の分析から、文章中に省略が含まれる箇所で読み時間が長くなる場合と長くならない場合があることがわかった。これは、語の知識及び文章の理解度(読みのコントロール可能度)との関連が推測される。
著者
鈴木 真一朗 西本 一志
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.31, pp.37-42, 2008-03-21

本研究では,コミュニケーションの情緒的側面を支援する一手段として,`思い出'に着目し,思い出を同期的に語り合うためのシステム`Sweethearts Client'と非同期に追体験を促すためのシステム`Mobile Sweetheart'からなるコミュニケーションメディア`Lovebird's-Eye'を提案する.特に,コミュニケーションにおける情緒的側面を強く求めるのは恋人たちであろうと想定し,実際に恋愛中の3組の男女に対して約4週間の評価を行った.評価から,Sweethearts Clientが場所にまつわる話題を提供し,Mobile Sweetheartが思い出を共有したいという欲求を促進していることが確認され,これらが連携することによって,さらに情緒的なコミュニケーションが創出される可能性も示唆された.This paper describes novel communication media named ``Lovebird's-Eye'' for enhancing affective communications.Lovebird's-Eye consists of two subsystems, i.e., ``Sweethearts Client'' and ``Mobile Sweetheart.''Sweethearts Client is a synchronous chat system for two people that is equipped with a shared map to let users talk about location-based topics.Mobile Sweetheart delivers a chat log to a user's cell-phone when he/she is near a real place where the conversation in the chat log was held.We conducted user studies with three sweetheart couples for four weeks.As a result, we confirmed that they talked about their memories related to some places using Sweethearts Client and they tried to get the logs in the real world using Mobile Sweetheart to vicariously experience there.
著者
鈴木 拓 溝端 佐登史
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.1_23-1_43, 2018 (Released:2018-02-22)
参考文献数
96

市場経済移行研究では汚職問題は早期から注目されていたが,その分析視点は発散傾向にある.そこで本稿では331件の文献に基づき,政治・経済的要因及び文化・価値観といった観点から14の仮説検証を通じて体系的レビューを行う.その結果,自由化・私有化は汚職に拡大と縮小の両義的な影響を与えており,かつ文化・価値観の影響も無視できないこと,そしていわゆる“潤滑油仮説”はほぼ否定されていることが明らかになった.
著者
横畑 綾治 石田 悠記 西尾 正也 山本 哲司 森 卓也 鈴木 不律 蓮見 基充 岡野 哲也 森本 拓也 藤井 健吉
出版者
一般社団法人 日本リスク学会
雑誌
リスク学研究 (ISSN:24358428)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.5-28, 2020-09-25 (Released:2020-10-09)
参考文献数
87
被引用文献数
9

Coronavirus disease 2019 (COVID-19) is an emerging social risk with a rapid increase in cases of 5,200,000 and deaths of 330,000 (23/May/2020) since its first identification in Wuhan China, in December 2019. The COVID-19 is spreading all over the world as an emerging pandemic, and global society need fundamental risk management concepts against SARS-CoV-2 infection. Human-to-human transmissions have been facilitating via droplets and contaminated surfaces to hands. Therefore, we developed the systematic review comprehensively using available information about coronaviruses on environmental surfaces and inactivation mechanisms of antiviral chemicals possible to apply as chemical disinfectants. The analysis of literatures revealed that SARS-CoV-2 can persist on environmental surfaces like plastics and glasses for up to 7 days, but might be efficiently inactivated with 45–81% ethanol, 50–80% 2-propanol, 0.05–0.3% benzalkonium chloride, various detergents, >0.5% hydrogen peroxide or >0.045% sodium hypochlorite within 30 sec–10 min or 30 min. As no specific therapies are available for SARS-CoV-2, we propose the risk mitigation on the contact infection route by anti-virus household products is promising for prevention of further spread via hands to mouth, nose, and eyes. and to control this novel social problem.
著者
鈴木 泰博 大田 秀隆
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

最近,脳波のガンマー帯域に相当する40Hzの 神経刺激(視聴覚や触覚)が,アルツハイマー病などの認知症治療に有効である可能性が示されている。それらの研究では従来,強度が一定の神経刺激が用いられてきたが,本研究では熟練技術者のマッサージの圧力変化を参考に,快の感情を惹起させる40Hzの神経刺激を生成する。そして生成された神経刺激により認知症患者へ介入する臨床研究を行い,その有効性を調査する。一般に認知症は患者によって病状の変化や多様性大きい。そのため,神経刺激に対する生体応答を蓄積して学習することで,個別医療的に各々の患者にあわせ最適な神経刺激を提供することが可能なシステムを構築する。
著者
鷲見 みゆき 大泉 宏 三井 翔太 崎山 直夫 鈴木 聡 樽 創
出版者
日本セトロジー研究会
雑誌
日本セトロジー研究 (ISSN:18813445)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.1-7, 2023-11-20 (Released:2023-11-30)

スジイルカStenella coeruleoalbaは,世界中の熱帯から温帯の海域にかけて広く分布するハクジラ亜目に属する小型鯨類である.本研究では,本種の食性解明のための基礎的知見を得ることを目的として,2019年1月から2021年5月までに相模湾の神奈川県沿岸に漂着した10個体の胃内容物を調査した.その結果,6個体の胃から頭足類(カギイカ,ホタルイカモドキなど5科3種)の顎板,魚類(ハダカイワシ,オオクチイワシなど2科3種)の耳石が確認された.魚類・頭足類ともに日周鉛直移動を行う中・深層性の種が主体であったことから,漂着したスジイルカ6個体が索餌のため中・深層まで潜水したか,或いは夜間に表層へ浮上した小型遊泳動物を採餌していたことが示唆された.
著者
高畑 雅一 冨永 佳也 神崎 亮平 青木 清 宗岡 洋二郎 水波 誠 山口 恒夫 堀田 凱樹 横張 文男 鈴木 良次 桑澤 清明 勝木 元也
出版者
北海道大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
1998

平成10〜13年度に実施した特定領域研究(A)「微小脳システムの適応的設計」の研究成果を、2つの研究項目についてそれぞれの班長および領域代表が中心となって詳細に吟味し、領域としての到達点と今後の展望を取りまとめて、研究成果報告書を作成し関係者に配付した。到達点として特に着目される業績としては、感覚連合中枢であるキノコ体のモジュール構造の発見やキノコ体のシグナル伝達機構の解明、また、湿度温度受容を含む機械感覚統合に関する多くの新しい知見などがあげられる。研究報告書には、計画および公募研究課題で公表された主要論文の別刷を添付し、最終的は400頁を越える分量となった。また、平成14年10月に文部科学省にて実施された最終ヒアリングにおいて、領域代表と研究項目代表者が出席して、領域研究の成果が、<わが国における節足動物微小脳による行動制御機構の研究を、従来の個々のモダリティーの感覚情報処理、個々の種特異的行動のパターン形成機構、具体的行動から単離され一般化された神経回路網の学習・記憶機構などの研究から、個体レベルの行動の多様性および複雑性と密接に関連づける研究という方向に向けて、大きく舵を切ったものと意義づけられる>という結論を報告し、審査員と質疑応答を行った結果、<期待どおり研究が進展した>との評価Aを受けた。また、審査報告に述べられた<今後もさらに個体レベルの行動の多様性や複雑性の解明へと取り組んでいただきたい>とのコメントを受け、次年度からの新しい微小脳プロジェクト申請のための打合せ会議を開催し、「微小脳システムの適応的設計」での成果をさらに発展させる目的で平成15年度特定領域研究「コミュニケーションのニューロン機構」(領域代表横張文男福岡大学教授)を申請した。
著者
福島 秀晃 三浦 雄一郎 鈴木 俊明
出版者
関西理学療法学会
雑誌
関西理学療法 (ISSN:13469606)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.85-89, 2006 (Released:2007-01-30)
参考文献数
15
被引用文献数
5

Lateral shift in sitting is indispensable in daily life, and it has a big influence on the activities of daily living (ADL) in standing-up and walking. The purpose of this study was to clarify the function of each fiber of the trapezius-muscle during lateral shift in sitting by normal subjects using surface electromyography. The integrated electromyogram (IEMG) of the trapezius muscle in the non-shift side, tended to increase. Specifically, in the lower part fiber trapezius muscle, IEMG at 20 cm distance was significantly greater than others. On the other hand, IEMG of the trapezius muscle in the shift side tended to increase with the lateral distance of movement. In the middle fiber of trapezius muscle, IEMG at 20 cm distance was significantly greater than others. It was thought that the activity of the fiber of the lower part of the trapezius muscle in the non-shift side participated in braking the upper part of the trunk inclination which accompanies the increase of the distance. It was thought that the activity of the fiber of the middle part of the trapezius muscle in shift side participated in preservation of the controlled scapula. To stabilize the upper part of trunk to improve sitting, it is necessary to aim at the function of the fiber of the lower part of the trapezius muscle in the non-shift side.
著者
大塚 雄一郎 茶薗 英明 鈴木 誉 大熊 雄介 櫻井 利興 花澤 豊行 岡本 美孝
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.116, no.11, pp.1200-1207, 2013-11-20 (Released:2014-01-16)
参考文献数
14
被引用文献数
1 5

石灰沈着性頸長筋腱炎の8例を経験した. いずれも頸部痛, 頸部可動制限, 嚥下痛を主訴に来院した. 診断と鑑別にはCT, MRIが有用であり, CTで頸長筋腱の石灰沈着を認めた. また造影CTでは咽後膿瘍においてみられる造影効果 (ring enhance) を認めなかった. MRIでは頸長筋が腫大しT2強調画像で高信号を呈した. これらの画像検査で咽後膿瘍, 化膿性脊椎炎を否定した上で7例を入院加療, 1例を外来加療とした.本疾患は特別な治療は不要とされるが, 症状が強いため咽後膿瘍, 化膿性脊椎炎が否定しきれず抗生剤を投与することが多い. 今回の8例でも全例で抗生剤が投与されていた. 本疾患は周知されておらず, 加療中に本疾患と診断された症例は4例だけであり, 残りの4例は咽頭後間隙炎, 咽後膿瘍の疑いの診断で加療されていた.
著者
鈴木 啓輔 佐藤 理史
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第24回 (2010)
巻号頁・発行日
pp.3D43, 2010 (Released:2018-07-30)

本研究では文章生成の研究の一つとして、回文の自動生成を取り上げる。本稿では、その第一段階として、文法的に可能な構造を持つ回文の生成法を提案する。この手法は、出発点となる文節の前後に新たな文節を接続することで、回文を生成する。この過程で、文法的な接続の可否をチェックする。同時に、複数個の文節を接続して回文となる可能性があるかどうかをチェックすることで、効率的に回文を自動生成する。
著者
鈴木 隆
出版者
公益社団法人におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.346-356, 2013-11-25 (Released:2017-10-11)
参考文献数
15

においを表す語彙の少なさについてはよく知られている.しかし,香料開発の現場を始めとして,かおりやにおいの分類や表現にさまざまなことばが使われているのも事実である.本稿ではそうしたことばが使われる場面や目的を,同定,記憶,描写,評価に分けて考察し,分類用語を含めた言語表現の具体的な機能について考察する.また,共感覚表現やオノマトペが多用される意義や,評価において特徴的に見られる,ネガティブ要素の探索という行為が,においのことばを生成するのみならず,嗅覚感度に影響を与える可能性を検討する.
著者
野村 泰伸 鈴木 康之 清野 健 付 春江 吉川 直也 佐古田 三郎
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.185-195, 2015 (Released:2016-04-15)
参考文献数
24
被引用文献数
1

本解説では,静止立位姿勢および定常二足歩行の間欠制御仮説と,それに関連する最近の研究を紹介する.特に,これらの運動を生成する神経制御が実現すべき運動の特徴として,(1)直立姿勢あるいは周期的歩行(歩行サイクル)の平衡状態からの偏差の時間的変動(運動揺らぎ)として表出する関節の柔軟性,および,(2)運動揺らぎの時間パターンが示すフラクタル性あるいはべき乗則に従う長期相関に注目する.さらに,直立姿勢の安定性に関して,(3)体性感覚情報の神経伝達時間に起因する時間遅れ誘因性不安定化(delay-induced instability)を回避する姿勢制御メカニズム,および,(4)対応する制御器のパラメータ変化に対する姿勢安定化メカニズムのロバスト性に関して議論する.運動計測データに表出する(1)およ(2)の特徴は,(3)と(4)に関わる姿勢の安定化メカニズムが機能した結果として生成されると考えられる.そこで,本稿では,安定性と柔軟性という一見相反する運動特性を実現する制御戦略の有力候補の一つである間欠制御仮説に関して議論する.
著者
土屋 誠司 鈴木 基之 任 福継 渡部 広一
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.367-379, 2012-12-14 (Released:2013-03-19)
参考文献数
21
被引用文献数
5 3

オノマトペとは,擬音語や擬態語の総称である.文章で物事を表現する際に,より印象深く,豊かで臨場感のあるものにするために利用される.このようなオノマトペによる表現は,その言語を母語としている人であれば非常に容易に理解することができるため,国語辞書などにあえて記載されることは稀なケースである.また,記載があったとしても,使用されているオノマトペをすべて網羅して記載していることはない.そのため,その言語を母語としない人にとっては学習し難い言語表現である.そこで本稿では,オノマトペが表現する印象を推定する手法を提案する.日本語を対象に,オノマトペを構成する文字の種類やパターン,音的な特徴などを手がかりに,そのオノマトペが表現している印象を自動推定する.これにより,日本語を母語としない人に対して,日本語で表現されたオノマトペの理解の支援に繋がると考えられる.結果として,オノマトペの表記内のモーラ系列間の類似度とオノマトペの表記全体の音象徴ベクトルによる類似度を用いた手法が最も良い推定結果となり,参考値である人間同士の一致率の8割程度にまで近づくことができた.