著者
野口 孝俊 渡部 要一 鈴木 弘之 堺谷 常廣 梯 浩一郎 小倉 勝利 水野 健太
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C(地圏工学) (ISSN:21856516)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.150-162, 2012 (Released:2012-02-20)
参考文献数
16
被引用文献数
1

東京国際空港(羽田空港)は,日本の国内航空ネットワークのハブ空港となっている.増加する旅客数に対して発着能力が限界に達していることに加え,国際線発着枠の拡大に対する要請も強い.そこで,新たな離発着能力を創出するために,沖合に4本目の滑走路を新設する羽田空港再拡張事業が2007年3月末に着工され,2010年10月末に供用開始した.羽田空港D滑走路の建設事業は,軟弱地盤が厚く堆積する地盤上の建設であること,河口部に位置するため,洪水時の河川流量を確保する観点から,一部に桟橋構造が採用されていること,短い工事期間が設定されたことなどから,最新の土木技術を集結し,さまざまな設計・施工上の工夫をした.本稿は,当該事業について,主に地盤工学の立場から,事業内容,地盤調査,人工島設計の概要をとりまとめたものである.
著者
鈴木 宏子
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.424-420, 2020-03

[要約]『土佐日記』は、五十五日間におよぶ舟旅の日記であり、旅の始まりから終わりまでの枠組みの中に五十五日分の小単位が連なるという構造を持つ。そして、それら小単位の中には、その日に起きたことや思ったことでさえあれば、どのような内容でも書き込める自由さがある。小稿では『土佐日記』の中から三つの場面を取り上げて、この作品の多彩な魅力を探りたい。一つめは二月五日条で、舟旅の困難さや、世俗の人へのシニカルな批評意識、また緊密に照応しあう言葉の連鎖が看取される。二つめは十二月二十七日条で、土佐で亡くした幼い娘に対する悲嘆と思慕が書き記される。三つめは一月二十日条で、月の出入りを通して海の広がりを捉える方法や、『古今集』撰者でもある紀貫之の文学論を読み取ることができる。
著者
大久 長範 鈴木 直樹 斎藤 毅 畑中 和成 佐々木 準哉 西川 正純
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.287-291, 2013 (Released:2013-10-18)
参考文献数
19

高電圧マイナスイオン発生器を油フライヤーに使用したときの油の酸化劣化を評価した。500nmにおける吸光度,トランス脂肪酸の生成は高電圧マイナスイオン発生器を作動させると進行が抑制された。食パンの揚げ試験において,対照に比べ高電圧マイナスイオン発生器の使用では有意に水分含量の低下が認められた。高電圧マイナスイオン発生器の使用により14種の油臭成分が半減することが示された。高電圧マイナスイオン発生器を作動させると槽内の温度が速やかに低下する傾向があり,槽内の油の流動が高まっていると考えられた。
著者
中島 彩 村田 伸 飯田 康平 井内 敏揮 鈴木 景太 中嶋 大喜 中村 葵 白岩 加代子 安彦 鉄平 阿波 邦彦 窓場 勝之 堀江 淳
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.133-137, 2016-09-30 (Released:2016-10-22)
参考文献数
18
被引用文献数
1

本研究は健常成人女性14名を対象に,ヒールの高さの違いが歩行パラメータと下肢筋活動に及ぼす影響について検討した。ヒールなしおよびヒール高3cm と7cm 靴を着用した歩行中の歩行パラメータと下肢筋活動を計測した結果,歩行速度および歩幅とストライド長はヒールなし歩行に比べて,ヒール高7cm 歩行で有意に低下した。ヒールなし歩行とヒール高3cm 歩行のそれらの歩行パラメータには,有意差は認められなかった。両脚支持時間は,ヒールなし歩行に比べてヒール高3cm と7cm 歩行で有意に短縮したが,遊脚時間は後者が有意に増大した。下肢筋活動においては,測定した4筋すべてにおいて有意差が認められなかった。以上のことから,ヒール高3cm 以上で歩行中の立脚時間や遊脚時間に影響を与えるが,ヒール高3cm までであれば,歩行速度および歩幅やストライド長には影響が少ないことが示唆された。
著者
國土 将平 中野 貴博 佐川 哲也 笠井 直美 小磯 透 鈴木 和弘 下田 敦子 大澤 清二
出版者
日本発育発達学会
雑誌
発育発達研究 (ISSN:13408682)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.46, pp.46_11-46_26, 2010 (Released:2011-02-20)
参考文献数
36
被引用文献数
1

The purpose of this study was to investigate the standardization of height growth curves of 8 ethnic groups in Thailand and Union of Myanmar. The height of 16,000 children from 5 to 18 years old of 8 ethnic groups, i. e., Thai, Karen, Hmong, Lisu, Akha, and Lahu in Thailand, Burmese and Mon in Myanmar, was measured from 1994 to 2004 in Thailand, from 2005 to 2008 in the Myanmar. Modified BTT model was applied to height growth curve, and the fluctuation of standard deviation was smoothed using weighted moving variation and smoothing function developed by the authors. Finally growth charts were obtained using z-score of normal distribution. Resultant growth charts were generally satisfactory and were seemed to be useful from the perspective of data utilization. Though there are a few problems on the growth charts such as variance was decreased for more than 15 years old, or height growth has continued till 18 years old in some ethnic groups. Representing heights were different more than 10 cm among ethnic groups at 18 years of age. It was confirmed that it is important to create a growth chart by ethnic group respectively and utilize it in order to evaluate properly the growth status and the nutritional condition of the children.
著者
蔭山 雅洋 鈴木 智晴 岩本 峰明 中島 一 前田 明
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.737-757, 2015 (Released:2015-12-18)
参考文献数
39

The purpose of the present study was to clarify the profiles of the lower limb and trunk motion during baseball pitching in relation to their differences between the wind-up and the set positions, and to determine how the ball pitching velocity can be increased in the set position. The subjects were 12 high school baseball pitchers (age: 16.4±0.5 yr, height: 173.7±4.8 cm, weight: 64.8±8.1 kg). Pitching was assessed using a three-dimensional motion system and 2 multicomponent force plates. It was found that 1) the maximum and average pitched ball velocities were significantly lower in the set position than in the wind-up position, 2) the maximum ground-reaction force of the pivot and stride legs and the impulse of pivot during the stride phase (from the time of maximal stride knee height to the time of maximal anterior push-off force) were significantly lower in the set position than in the wind-up position, and 3) the maximum upper torso/trunk twist angular velocity and the pelvis/upper torso angular velocity at moment of the stride foot contact were significantly lower in the set position than in the wind-up position. These results indicate that 1) the ball pitching velocity in the set position is lower than in the wind-up position. In addition, the factors associated with this lower ball velocity are suggested to be 2) decreased momentum of the pivot leg and 3) decreased rotation motion of the trunk during the arm acceleration phase.   Therefore, in order to increase ball pitching velocity in the set position, increasing the moment to the rear of the pivot leg during a short period and improvement of lower limb strength/power with the extension movement of the hip and knee joint may be important factors.
著者
武田 篤 鈴木 徹 藤井 慶博 高田屋 陽子
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究では、複合的場面緘黙児の実態を把握するとともに、学校での支援体制や学級での具体的な支援方略を構築することを目的とした。平成30年度は、複合的場面緘黙児に関する質問紙調査を実施した。A市の小学校(41校)・幼稚園(6園)・こども園(11園)の58校園を対象に質問紙調査を実施した。調査内容は、1)場面緘黙児の有無、該当児童がいた場合、2)場面緘黙の状態と3)自閉症スペクトラム傾向、4)学級内での具体的な支援、とした(2)以降の質問内容については、場面緘黙児のいるクラス担任に回答を依頼した)。なお、本調査を実施するにあたり、依頼文書において「得られた回答は決められた手順に従って得点化すること」、「児童や回答した教員に関するプライバシーは守られること」の2点を明記した。回答のあった51校園に在籍する幼児児童数は、14939名(男児7592名、女児7357名)であった。そのうち、場面緘黙児が「有」と回答したのは13校園(小学校9校、幼稚園2園、こども園2園)で、在籍数は20名(0.13%)であった。男女の内訳は、男児8名(0.11%)、女児12名(0.16%)であった。これらの結果は先行研究を支持するものであった。本調査は、質問紙の内容を決定するまでかなりの時間を要した(年度末に実施した)。そのため、2)以降の調査データ(場面緘黙と自閉症スペクトラム障害との関連)の解析は次年度に行う予定である。
著者
望月 俊男 佐々木 博史 脇本 健弘 平山 涼也 久保田 善彦 鈴木 栄幸
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.319-331, 2013-11-20 (Released:2016-08-10)

ロールプレイはさまざまな分野の学習において,学習者の視点の拡大や転換を促進する強力な学習方法として知られている.本稿では,とくに複雑で非構造的な(ill-structured)問題状況下におけるコミュニケーションや意思決定についてロールプレイする上で,対面協調学習の中で人形劇を使うことで,これまでにない多様な視点からの洞察を促す可能性について議論する.複数の人形を操作して人形劇をすることで,演者である参加者と,直接演じている人形との間の心理的距離を作り出すとともに,多様な役割で演技をしやすくすることができる.本稿ではこれを理論的に示した後,人形劇のロールプレイによって演者がより現実的な状況を再現するように様々な役割を演じることを事例研究から示した.そして,そうした人形劇をロールプレイの媒介として利用する上で,学習支援テクノロジの可能性について議論した.
著者
岡田 美智男 鈴木 紀子 石井 和夫 EdwardAltman
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音声言語情報処理(SLP) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1997, no.66, pp.39-44, 1997-07-18
被引用文献数
1

日頃,何気なく繰り広げられる「雑談」とはそもそも何なのだろう.従来の対話研究では,まだ十分に議論が尽くされてはいない.目的もなく延々と繰り広げられる「雑談」は,これまでの対話研究の中では「その他」として分類され、周辺的に扱われてきた.「雑談」とは,得体の知れない,雑多なものなのだろうか.我々はこの「雑談」に対して,次の二つの側面に焦点を当てた研究を進めている.() 間身体的な場の構築とそれに基づく他者理解の方略としての雑談,() 発話の多声性とそれに伴う意味生成過程の場としての雑談.これら具体的な考察を進めるために,本研究ではそれぞれ「ピングーの世界」と「共同想起対話」を取り上げ,現象に対する構成的な理解を進めるための二つのテストベッドを構築した.「雑談とは何か」についてまとめながら,コンピュータとの「雑談」的な関わりの意義について考えたい.What is the primary motivation that we have a chatting with social others? Conventional dialogue model is based on a formalization of goal-oriented activities as a joint action. What are the prepared goals and plans in our everyday spontaneous conversation? We can just enjoy it through the maintaining of conversational field with others, and the sharing a particular common experience. In this paper, we try to explain motivations to have a joint remembering and a strategy to communicate each other mediated by an emergent computation on the dialogue processes. We show a constructive model for the joint remembering and primary inter-subjectivity that emerged from the joint remembering
著者
鈴木 俊洋
出版者
北海道大学哲学会
雑誌
哲学 (ISSN:02872560)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.105-110, 2019-01-04
著者
江崎 雄治 西岡 八郎 鈴木 透 小池 司朗 山内 昌和 菅 桂太 貴志 匡博
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.255-267, 2013 (Released:2014-03-13)
参考文献数
8
被引用文献数
2

本稿は,国立社会保障・人口問題研究所の『日本の地域別将来推計人口(平成25年3月推計)』の手法と結果について解説するものである.まずコーホート要因法による将来人口推計は,コーホートの安定的な経年変化を将来に延長することをその手法の基礎に置いていることから,少なくとも近い将来に関する限り,かなり高い精度を有することを説明する.2025年までの推計結果については,特に非大都市圏の人口減少の加速とともに,大都市圏郊外地域における急激な高齢化について指摘している.さらに大都市圏では,その後の死亡数の増加により,2040年までの期間に非大都市圏の後を追う形で人口減少局面に入る.
著者
林 大一郎 大島 卓 鈴木 雅和 五十嵐 浩也
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.182, 2013 (Released:2013-06-20)

福島県鏡石町と須賀川市にまたがる、「岩瀬牧場」は、明治13年に設立された日本最初期の西欧式官営牧場であり、その後様々な変遷を経て規模は縮小されたものの、民営化され現在も経営が存続している。当牧場は文化財的価値を有する建築群や明治の牧場の原風景を残しているが、知名度は低く一般にその価値が認識されていない。著者らは建築・環境・プロダクト・情報デザインの観点から岩瀬牧場の価値を再評価し、地域振興に寄与する目的で研究を継続している。本論文では、岩瀬牧場に残されている農業機械群のうち、フォードソン社製造のF型トラクターに注目し、その現状調査と保全意義の考察を行った。
著者
鈴木 和恵 丸山 茂徳 山本 伸次 大森 聡一
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.119, no.6, pp.1173-1196, 2010-12-25 (Released:2011-03-17)
参考文献数
48
被引用文献数
20 35

The Japanese Islands have long been considered to be the most evolved of all the island arcs in the oceans. A simple scenario has been implicitly accepted for the growth of the Japanese Islands: since subduction started sometime around 520 Ma, the TTG crust has increased over time in association with the steady-state growth of the accretionary prism in front. Here, we show very different dynamic growths of TTG crusts over time than previously thought, i.e., four times more TTG crusts than at present must have gone into the deep mantle due to tectonic erosion, which occurred six times since subduction was initiated at 520 Ma. Tectonic erosion is a major process that has controlled the development history of the Japanese islands. It can be traced as a serpentinite mélange belt, which indicates the upper boundary of past extensive tectonic erosion.
著者
鈴木 康弘 渡辺 満久
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.30-41, 2006 (Released:2010-06-02)
参考文献数
34
被引用文献数
1 1 3

2004年新潟県中越地震は,1990年代以降に存在が明らかになった小平尾断層と六日町盆地西縁断層の北部が震源となり,断層線上に地表地震断層が出現した.しかし,活断層分布の情報が十分周知されていなかったことと,地表地震断層の変位量が大きくなかったことから,このような認識が徹底されていない.本稿では,地表地震断層の認定根拠を変動地形学の立場から明確にし,地表地震断層の出現が確実であることを最新の研究成果に基づいて解説する.防災上,「地震はどこでも起きる」ことを念頭に置く必要がある反面,地域ハザードを適切に評価する必要があり,変動地形学はこのことに大きく貢献している.