著者
鈴木 良
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.33-46, 2019

<p>本研究は,知的障害者入所施設によるグループホームへの移行を前提とした施設解体を受け入れた家族がこれをどのように捉えたのかを自立規範に焦点を当てた質的調査によって明らかにした.第一に,移行前は,家族は施設からの移行は生活・就労面の自立を意味するものと認識し,ここには障害者自立支援法に関わる施設側の説明も影響していた.この結果,家族は子の自立困難性に伴う不安感や自宅復帰への懸念を抱えた.しかし,家族は職員への信頼や遠慮ゆえに施設側の決定に委ねるという受動的態度が見られ,これは家族が自立規範に基づき養育すべきだという家族規範が影響していた.第二に,移行後はまず,グループホームは生活・就労面の自立を前提とする場と認識されていた.次に,自立困難になる将来の予測不可能性に伴う不安ゆえに施設入所を容認/肯定する状況が見られた.本研究は自立規範の相対化と家族支援による脱施設化政策の必要性を示唆する.</p>
著者
三谷 祐介 鈴木 朱羅 南 裕樹 石川 将人
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.89, no.918, pp.22-00250, 2023 (Released:2023-02-25)
参考文献数
14

Automated driving is attracting attention as a technology that can improve the convenience and comfort of mobility. Research on automated driving continues to develop not only in the approach of vehicle automation but also in the approach of driver assistance. As an example of driver assistance technologies, a system has been proposed in which multiple light sources are placed at equal intervals in a tunnel and blink to encourage drivers to adjust their speed. This system is called a Pace Maker Light (PML). In this paper, we focus on the PML and consider applying it to automatic driving. Therefore, this paper aims to realize the velocity control of an autonomous mobile robot using the PML. First, we modeled the PML and the mobile robot and formulated the design problem of the velocity controller of the robot. Then, we proposed a control law that can achieve velocity control based on the light intensity information obtained from the PML. Finally, we conducted velocity control simulations and experiments with a miniature-scale experimental setup. As a result, it was confirmed that the proposed method could be used to achieve the target speed on a level road and a slope.
著者
小川 七世 鈴木 匡子
出版者
日本神経心理学会
雑誌
神経心理学 (ISSN:09111085)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.238-250, 2021-12-25 (Released:2022-01-12)
参考文献数
83

Gorno-Tempiniらによる原発性進行性失語(PPA)の臨床診断基準が発表されてから,今年で10年になる.診断基準という共通語ができたことで,PPAの論文数は急激に増加した.一方,この診断基準は発表当初から,PPAの診断をめぐって,またその先の3タイプの分類に関して問題点が指摘されてきた.特に3タイプのいずれにも属さない分類不能型や2タイプ以上にあてはまる混合型について様々な提案がなされている.その中でPPAからの独立性を確立しつつある原発性進行性発語失行やPPAの新タイプを中心に概説する.また,PPAの経過と背景疾患/病理所見についても述べる.
著者
安井 もゆる 小川 春美 吉原 秋 鈴木 道也 小川 知幸 畑 奈保美 津田 拓郎 田村 理恵
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

世界史学習の意欲が喚起されるのはどのようなときか。本研究は学生および高校教員への聞き取り調査等により、世界史学習の契機、実践そしてその際の内面を質的に調査することによって、基礎教養的であるとともに問題解決志向型であるような新しい世界史授業の開発・提案を行い、学問と教育の架橋を目指すものである。方法としては、大学生・短大生を対象に聞き取り調査を行い、高校までの世界史学習への評価・世界史学習への動機づけ等を明らかにする。また、高大連携に積極的な学界全体の動向を踏まえ、全国の高校の世界史教員にも聞き取りすることにより、授業での学習意欲を高めるための取り組みを調査する。
著者
星山 栄成 鈴木 圭輔 平田 幸一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.8, pp.1358-1365, 2016-08-10 (Released:2017-08-10)
参考文献数
10

内科診療では,突然の意識消失で救急外来を訪れる患者において神経調節性失神と心因性非てんかん発作が40%と多く,てんかんは29%,次いで心原性失神が7%とされる.他に非てんかん性不随意運動や異常行動もてんかんとして診断され,治療される場合がある.てんかんの鑑別診断として,十分な病歴を聴取することが重要である.本稿では,内科医がてんかんを鑑別するうえで重要な鑑別疾患を提示しながらそのポイントについて解説する.
著者
中村 葵 村田 伸 飯田 康平 井内 敏揮 鈴木 景太 中島 彩 中嶋 大喜 白岩 加代子 安彦 鉄平 阿波 邦彦 窓場 勝之 堀江 淳
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.35-39, 2016-04-30 (Released:2016-07-29)
参考文献数
20
被引用文献数
1 3

本研究の目的は,歩行中のスマートフォンの操作が歩行に及ぼす影響を明らかにすることである。対象は,健常成人28名(男性16名,女性12名)とした。方法は,通常歩行と歩きスマホの2条件下にて,屋内で約20m の歩行路を歩いてもらい,そのうちの2.4mを測定区間とした。なお,測定機器には,歩行分析装置ウォークWay を用い,歩行パラメータ(歩行速度,歩幅,重複歩長,立脚時間,両脚支持時間,歩隔,足角)を比較した。その結果,歩きスマホは通常歩行に比べて,歩行速度,歩幅,重複歩長が有意に減少,立脚時間と両脚支持時間は有意に増加,歩隔は増加傾向を示した。以上のことから,歩きスマホでは,歩幅や重複歩長が短縮し,立脚時間や両脚支持時間は延長することで,歩行速度が低下することが明らかとなった。
著者
鈴木 美子 Yoshiko SUZUKI
出版者
日本赤十字秋田看護大学・日本赤十字秋田短期大学教育研究開発委員会
雑誌
日本赤十字秋田看護大学・日本赤十字秋田短期大学紀要 = Journal of Japanese Red Cross Akita College of Nursing and Japanese Red Cross Junior College of Akita (ISSN:24360384)
巻号頁・発行日
no.25, pp.1-11, 2021-03-31

要旨目的:男性間性交渉者(以下MSM)のHIV抗体検査の受検行動に影響する要因と関連性を明らかにする。方法:多様なセクシャリティのスタッフが営むスナックと性と人権に関するNPO法人へ20歳以上のMSMの紹介を依頼した。5名にHIV感染症/エイズのとらえ方、HIV抗体検査を受ける動機と受けなかった理由について半構造化面接を実施し、質的記述的に分析した。結果:対象者の平均年齢は33.8歳で3名はHIV陽性であった。「HIV感染症/エイズに対する認識」では【感染の恐怖を凌ぐ性欲】【生涯逃れたいHIV感染症/エイズ】【感染する覚悟があるHIV感染症/エイズ】が抽出された。「受検行動に影響する促進要因」では【感染に対する危機意識】【HIV陰性証明の獲得】【ゲイ仲間からの勧奨】、一方「受検行動に影響する阻害要因」では【感染しないという謎の安心感】【HIV陽性判明への恐怖心】【HIV陽性判明による自由にSEXができない不利益】【早期のHIV陽性判明による経済的不利益】【治らないものはあえて受けない】【HIV抗体検査への無関心】【ゲイ告知の困難さ】【検査時のプライバシーへの無配慮】が抽出された。カテゴリの関連性から「リスク自覚時受検行動」「受検離脱行動」「受検回避行動」「受検拒否行動」の4つの受検行動が導き出された。考察:MSMにとってHIV陽性判明は自由な性交渉権利を失う【HIV陽性判明による自由にSEXができない不利益】、身体障害者非該当となった早期HIV陽性者は高額な治療費を強いられてまでは治療を望まない【早期HIV陽性判明は経済的不利益】ととらえていた。Objective: The study was conducted to reveal the factors and related matters affecting the behavior of men who have sex with men (MSM) for HIV antibody tests.Methods: Five people over 20 years of age were introduced by LGBT staff workers of a local bar and a person in charge of an NPO related to sex and human rights. Semi-structured interviews were conducted with those five subjects in regard to their understanding about HIV infection/AIDS, their motivation for taking the HIV antibody test, and/or their reasons for not taking the tests. Then the results were qualitatively and descriptively analyzed.Results: The average age of the subjects was 33.8 years old and three of them were HIV positive. In terms of "awareness of HIV infection/AIDS," the categories of "Libido that surpasses the fear of infection," "desire to avoid HIV infection/AIDS for life time," and "readiness for HIV infection/AIDS" were extracted. Regarding "the facilitating factors affecting their behavior for the tests," the categories of "awareness that may become infected," "hope HIV results are negative," and "recommendation by gay friends" were extracted. When it comes to "the inhibiting factors for the tests," the categories of "false belief that I don't get infected," "fear of HIV results being positive," "disadvantages of being unable to have sex freely if test positive for HIV," "economic disadvantage in early stages of HIV positive diagnosis," "negative feeling towards the tests for an uncurable disease," "indifference for HIV testing." "difficulties in coming out as gay," "lack of considerations for privacy during test" were extracted. In addition, the following four related matters in behaviors toward the test were derived: "the behavior with self-awareness for the risk of in taking test," "withdrawal behavior after taking the test," "avoiding the test," and "rejecting the test."Discussion: The results shows that MSM are aware that their right to have sexual intercourse freely is lost after receiving an HIV positive result as shown by the category of "disadvantages of being unable to have sex freely if test positive for HIV." Also, MSM reluctant to receive medical treatment for HIV infection if fees for required treatment are expensive as shown by the category of "economic disadvantage in early stages of HIV positive diagnosis."
著者
鈴木 貞美
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 : 国際日本文化研究センター紀要 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
no.2, pp.139-170, 1990-03-10

文芸作品を研究の対象とし、また他の分野の研究の素材として用いるに際して、不可欠なのは、作品を作品として対象化する態度の確立である。かかる態度の端緒は、時枝誠記『国語学原論』によって開かれているが、その基本は、言語を人間の活動性において把握しようとする立場にある。この活動論的契機を芸術一般論に導入し、作品を作家の主観へ還元する近代人格主義的芸術観を批判しつつ、芸術活動の本質をなすものは、虚構を美的鑑賞の対象として扱う鑑賞的態度であると仮定する。次に、時枝言語論を芸術論へと拡張し、表現を認識の逆過程とする三浦つとむ「表現過程論」を批判的媒介とすることで、芸術活動の目的が鑑賞者の美的規範に働きかけるものであること、作品制作過程に「作者と鑑賞者の相互転換」の運動が成立していること、及びその運動の成立する"表現の場所"における転換構造の分析を行う。さらには時枝言語論、吉本隆明『言語において美とは何か』の根本概念について活動論的な検討を加えて、文芸表現活動の特質が、芸術活動と言語活動の二重性をもつ以上、作品を作品として対象化する態度の基本は、その虚構性と文体性を結合する表現主体の「方法」の把握にあると主張する。
著者
冨岡 佳奈絵 大友 佳織 阿部 真弓 鈴木 惇
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成24年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.143, 2012 (Released:2012-09-24)

サツマイモは、加熱処理中にデンプンの糖化が進み、加熱方法の違いが味覚に影響を強く与える。サツマイモの糊化デンプンの性状が甘味と関連するかをみるために、異なる加熱方法で調理したサツマイモを組織化学的方法により調べた。 サツマイモを茹で、蒸し、オーブン(140℃と200℃)および電子レンジで加熱した。加熱した試料を急速に凍結して、コールドミクロトームで薄切した。切片を過ヨウ素酸・シッフ液およびヨウ素液で染めた。標本を常光と偏光装置により観察した。 加熱により膨潤した糊化デンプンは、デンプン貯蔵細胞全体を満たした。茹で、蒸しおよびオーブンにおける貯蔵細胞内の糊化デンプンは、ヨウ素染色により黒褐色から赤色に染まり、電子レンジでは、糊化デンプンは青く染まった。赤色に染まった糊化デンプンに青く染まったデンプンが顆粒状に点在していた。青く染まったデンプンが貯蔵細胞間の一部に存在した。赤色に染まったデンプン貯蔵細胞は、200℃のオーブンで多く、140℃のオーブン、茹での順に少なく、蒸しでは茹でと同程度であった。糖度と甘味の程度は、200℃のオーブンで強く、140℃のオーブン、茹での順に弱く、蒸しでは茹でと同程度であった。電子レンジでは甘さがなかった。糖度と甘味の程度は、赤色に染まったデンプン貯蔵細胞と貯蔵細胞間の青く染まったデンプンの多寡と関連した。複屈折性を示す結晶が点在したが、結晶の多さと甘味の程度には関連性はなかった。加熱処理の違いによるサツマイモの甘さの程度は、糊化したデンプンのヨウ素染色における染色性の違いと関連した。
著者
鈴木 直人 山岸 俊男
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.17-25, 2004-07-22 (Released:2017-01-14)
被引用文献数
2

This study investigated the cognitive basis of self-effacing behavior among the Japanese. Based on the premises that self-effacement among the Japanese is a form of "default self-presentation," we predicted that Japanese self-effacement will dissipate when actual self-evaluation is required. The experiment (n = 110) consisted of two phases. In Phase 1, participants took a "cognitive ability test" that consisted of 20 questions. In Phase 2, they were asked to judge if their performance on the test was above or below the average performance level in their school. In the bonus condition, participants were rewarded for making a correct judgment in their performance. In the fixed-reward condition, no reward was provided for making a correct judgment. The results from experiments 1 and 2, taken together, indicate that self-effacement observed in the fixed-reward condition was not confirmed in the bonus condition. These results suggest that self-effacement among the Japanese is a strategy for self-presentation, which they switch on and off depending on the situation.
著者
鈴木 篤
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.88, no.1, pp.1-13, 2021 (Released:2021-10-19)
参考文献数
16

近年、非対面型授業の可能性に注目が集まっているが、どの程度まで従来の対面型学校教育に代替可能なのかについて研究の蓄積は十分でない。実際には、非対面型授業は従来の学級が有していた機能を何らかの形で確保しない限り、対面型学校教育には代替しえないだろう。生徒の社会化には学級制度が大きな役割を果たしており、たとえ短期的には非対面型授業が「うまくいっている」ように見えても、実際には参加者自身の過去の(対面型の)学級を通した被教育経験によって支えられている可能性も存在するためである。