著者
阿部 郁男
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.I_301-I_306, 2017 (Released:2017-10-17)
参考文献数
10

現在,南海トラフ地震による巨大津波の波源モデルが公表され,このモデルに基づく被害想定により,防災対策が進められている.しかし,駿河湾内には1498年の明応東海地震によって,現在の被害想定を超える津波痕跡が指摘されており,今後の津波対策の見直しのためには,それらの津波の発生および伝播状況を明らかにすることが重要である.そこで,本研究では,これまでに提案されている波源モデルの検証を行い,既存のモデルが駿河湾内の津波痕跡記録を再現できないことを示した.さらに,駿河湾内に局所的な津波の発生条件を検討し,駿河湾内で局所的に20~43mの津波を発生させることにより,これらの津波痕跡を概ね再現できることを示した.
著者
阿部 浩己
出版者
The Japanese Association of Sociology of Law
雑誌
法社会学 (ISSN:04376161)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.56, pp.66-83,275, 2002-03-30 (Released:2009-01-15)
参考文献数
51

Breaking five decades of silence, Asian women courageously emerged in the public arena as survivors of Japanese military sexual slavery. The immediate response of the Japanese ruling elite was a blatant disregard of their voices and yet another imposition of silence. Under the circumstances, one fundamental challenge facing international legal scholarship is to make an inquiry into the legal implication of silence consistently forced on victimized survivors. It necessarily ignites a process of re-examining the value premises which dictate the purposes and beneficiaries of the international law.Behind the forced silence is classical liberalism, the dominant theory of international legal studies. Justifying legal regulation based on the ideas of consent, liberty and equality of states, classical liberalism continuously reproduces the preeminent concept of elitism in international society. The fulcrum of this theory may be broken down into four "isms": euro-centrism, andro-centrism, statism and presentism. Under the pretense of objectivism and stability of legal order, classical liberalism strenuously backs up the ruling elites' inhumane response of suppressing survivors' desperate calls.Vibrant streams increasingly visible in international legal scene in the 1990', represented inter alia by the Australian-led feminist school, effectively debunks the value premises of mainstream international legal studies, thus leading a world-wide movement to "open up" otherwise closed international law. Deliberately un-silencing voices of the "Others", i.e. non-Europeans, women, citizens and the past (and the future) generations, the new movement has brought forth a welcoming progress in international law in such areas as human rights and humanitarian law. Commonly observed in a number of litigations filed by survivors of Japanese military sexual slavery against the culpable government is a call for the deconstruction of international law so that the voices of the Others are secured therein. Clearly, their call synchronizes the world-wide legal movement to reshape international law.This essay is intended to portray the value premises and legal implications behind international law arguments presented in connection with the issue of Japanese military sexual slavery. Reference is made as well to a Peoples' Tribunal, the Women's International War Crimes Tribunal 2000 in Tokyo, which in the view of the author, is a manifestation of the dynamic process to open up international law to citizens and women, whose agonies have been unheeded in the state-centered, patriarchal international legal scene.
著者
田邉 信男 阿部 宏史 氏原 岳人
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.553-559, 2016-10-25 (Released:2016-10-25)
参考文献数
16
被引用文献数
2 1

「新しい公共」による取り組みが継続・発展するには、その担い手となるNPOなどが「継続的に活動できる団体の運営力」が重要である。また、協働によるまちづくりの現場でも、継続性を担保する仕組みやマネジメントの方法論が問題としてあげられてきている。このような問題意識のもと、本報告では、「新しい公共」の担い手として期待されている任意団体やNPOの団体で継続的に活動している活動主体に着目した。複数の文献から課題を整理し、アンケート調査を通じて、継続的な組織運営の課題の類型化や組織形態別の課題を定量的に分析した。また、分析結果の考察を通して、組織が継続・発展していくためのマネジメントの方策について検討した。
著者
阿部 智和 宇田 忠司
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.97-135, 2015-06-11

本論文の目的は,質問票調査にもとづいて,国内のコワーキングスペースの実態を明らかにすることである。まず,コワーキングに関する世界規模の年次調査であるGlobal Coworking Surveyを中心に,関連する先行研究を整理・検討した。次いで,国内で稼動しているスペースのほぼ全数に対して質問票調査を実施した。さらに,場の開放性とメンバーの多様性が期待されるドロップイン利用が可能なスペースに着目し,①施設,②運営組織,③戦略,④活動,⑤利用者,⑥成果という6つの視点から相関分析の結果を示した。そのうえで,本調査にもとづくコワーキングスペースの実態に関する概観的な知見を提示した。
著者
山田 文雄 石井 信夫 池田 透 常田 邦彦 深澤 圭太 橋本 琢磨 諸澤 崇裕 阿部 愼太郎 石川 拓哉 阿部 豪 村上 興正
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.265-287, 2012 (Released:2013-02-06)
被引用文献数
2

政府の府省が進める各種事業の透明化と無駄遣いの防止をねらいとする「行政事業レビュー」において,2012年度に環境省の「特定外来生物防除等推進事業」が「抜本的改善」という厳しい評価を受けた.この事業レビューでは,おもにフイリマングースHerpestes auropunctatus(特定外来生物法ではジャワマングースH. javanicusの和名と学名を使用)やアライグマProcyon lotorの防除事業が取り上げられた.日本哺乳類学会はこの評価結果について,外来生物対策の基本的考え方や事業の成果についての誤解も含まれているとし,この判定の再考と外来生物対策の一層の推進を求める要望書を提出した.本稿では,環境省行政事業レビューの仕組みと今回の結果について報告し,根絶を目標とするマングース防除事業の考え方と実施状況,また,広域分布外来生物の代表としてアライグマを例に対策のあるべき姿を紹介した.さらに,学会が提出した要望書の作成経過と要点について説明し,最後に,行政事業レビューでの指摘事項に対して,効果的かつ効率的な外来哺乳類対策に関する7つの論点整理を行った.これらの要望書や日本哺乳類学会2012年度大会の自由集会における議論及び本報告によって,われわれの意見を表明し,今後の動向を注視するとともに,今後の外来種対策事業や研究のより一層の充実を期待したい.
著者
高山 正伸 二木 亮 阿部 千穂子 松岡 健 江口 淳子 陳 維嘉 長嶺 隆二
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48100438, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】 股関節疾患のみならず膝関節疾患においても股外転筋力の重要性が指摘されており,なかでも中殿筋は特に重要視されている。中殿筋の筋力増強運動として坐位での股外転運動(坐位外転運動)を紹介している運動療法機器カタログや病院ホームページを散見する。しかし坐位における中殿筋の走行は坐位外転の運動方向と一致しない。坐位においては外転ではなく内旋運動において中殿筋は活動すると考えられる。本研究は①坐位外転運動における中殿筋の活動性は低い,②坐位内旋運動における中殿筋の活動性は高いという2つの仮説のもと,坐位外転運動と坐位内旋運動における中殿筋の活動量を明らかにすることを目的とした。【方法】 対象は下肢に既往がなく傷害も有していない20~43歳(平均29.6歳)の健常者14名(男性9名,女性5名)とした。股関節の運動は①一般的な股屈伸および内外転中間位での等尺性外転運動(通常外転)②坐位での等尺性外転運動(坐位外転),③坐位での等尺性内旋運動(坐位内旋)の3運動とし,計測順序はランダムとした。筋電図の導出にはTELEMYO G2(ノラクソン)を使用しサンプリング周波数1000Hzで記録した。表面電極は立位にて大転子の上方で中殿筋近位部に電極間距離4cmで貼付した。5秒間の等尺性最大随意収縮を各運動3回ずつ記録した。筋の周波数帯である10~500Hz以外の帯域をノイズとみなしフィルター処理を行った。5秒間の筋活動波形のうち3秒間を積分し平均した値を変数として用いた。統計解析は有意水準を5%としFriedman検定を行った。多重比較についてはWilcoxon符号付順位検定を行い,Bonferroniの不等式に基づき有意水準を1.6%とした。【倫理的配慮、説明と同意】 被験者にはヘルシンキ宣言に基づき結果に影響を及ぼさない範囲で研究内容を説明し同意を得た。【結果】 通常外転積分値の中央値(25パーセンタイル,75パーセンタイル)は149.5(116.0,275.0)μV・秒で坐位外転のそれは127.5(41.8,204),坐位内旋のそれは219.5(85.1,308)であった。Friedman検定の結果3運動には有意差が認められ,多重比較の結果坐位外転は坐位内旋に対して有意に活動量が劣っていた(P=0.0054)。通常外転と坐位外転にも中央値に違いがみられたが統計学的な差は認められなかった(P=0.0219)。通常外転と坐位内旋にも有意差を認めなかった(P=0.124)。最も大きな筋活動量が得られた被験者の数は通常外転4名,坐位外転1名,坐位内旋9名,逆に最も筋活動量が小さかった被験者の数は通常外転3名,坐位外転10名,坐位内旋1名であった。MMTの方法に類似している通常外転によってその他の2運動を正規化すると坐位外転の中央値は76.9(31.2,102.3)%,坐位内旋のそれは119.2(86.9,183.7)%であった。坐位外転では筋力増強運動に必要な筋活動量40%を下回る被験者が4名(14.9~31.2%)みられ,100%を超える者は3名だけであった。一方坐位内旋においては40%未満の被験者はみられず,9名の被験者が100%以上であった。最小値は69.7%であった。【考察】 股関節は球関節のため肢位によって筋作用は変化する。股関節が屈伸中間位のとき矢状面でみた中殿筋の走行は大腿骨長軸と概ね一致しており同筋は外転作用を有する。しかし股関節が屈曲位となる坐位では走行が大腿骨長軸と一致せずむしろ直角に近くなり,中殿筋の作用は外転ではなく内旋になる。本研究結果では通常外転と坐位外転に有意差を認めなかったが,効果量を0.5,有意水準を0.016,検出力を0.8に設定すると48名のサンプル数が必要で我々のサンプル数は不足している。差がないと結論付けることには慎重であるべきである。この状況下においても坐位外転と坐位内旋には有意差が認められた。本研究結果は坐位外転運動が中殿筋の筋力増強運動として非効率であることを明らかにした。加えて坐位内旋運動では通常の外転運動と同等以上の筋活動が得られることも明らかとなった。この傾向は前部線維で強くなり,後部線維では異なる結果をもたらすと予想される。どの運動によって最も大きな筋活動が得られるかは被験者によって異なっていた。その原因として坐位における骨盤の肢位が影響していると考えられる。骨盤が後傾すればするほど中殿筋の走行はより大腿骨長軸と一致する。多くの被験者に関しては坐位内旋運動で高い中殿筋の筋活動が得られたが,一部にそうでない被験者もみられた。骨盤が後傾することによって内旋運動における筋活動は低下し,逆に外転運動における活動が増加すると考えられる。【理学療法学研究としての意義】 本研究によって中殿筋に対する誤った運動指導は是正されるであろう。
著者
千々松 武司 山田 亜希子 宮木 寛子 吉永 智子 村田 夏紀 秦 政博 阿部 和明 小田 裕昭 望月 聡
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.63-68, 2008-02-15 (Released:2008-03-31)
参考文献数
20
被引用文献数
3 8

タイワンシジミは肝臓に良いとされ台湾で食されているが,その科学的根拠は乏しい.そこで本研究では,ラットにおいてD-ガラクトサミン誘発肝障害およびエタノール急性投与誘発脂肪肝に対するタイワンシジミ抽出物の効果を検討した.D-ガラクトサミン誘発肝障害に対し,タイワンシジミ抽出物は血清AST値およびALT値の上昇を有意に抑制した.また,エタノール急性投与誘発脂肪肝に対し,タイワンシジミ抽出物は肝臓脂質の上昇を抑制する傾向を示した.また肝臓のコレステロールは有意に低下した.更に,エタノールを急性経口投与したラットの血中エタノールの消失速度を有意に速めた.これらの結果から,タイワンシジミ抽出物は肝炎および脂肪肝に対し予防効果を示し,アルコール代謝を促進する可能性が示唆された.
著者
松本 美鈴 阿部 芳子 坂口 奈央 柘植 光代 時友 裕紀子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的】山梨県の郷土料理ほうとうは、塩を加えずに麺を作り、野菜などの副材料と一緒に汁の中で煮込んでつくる麺料理である。文献調査、聞き書調査およびアンケート調査により、ほうとうが時代とともにどのように変遷してきたかを明らかにするとともに、アンケート調査によりほうとうが現代の食生活に受け継がれてきた要因を考察する。<br>【方法】文献調査は、社団法人農山漁村文化協会刊行『日本の食生活全集』聞き書山梨の食事を主要資料とし、大正末期から昭和初期にほうとうがどのように食べられていたかを捉えた。聞き書調査は、日本調理科学会特別研究「次世代に伝え継ぐ家庭料理」のガイドラインに沿い、山梨県の生活環境と家庭料理について平成25~27年に実施した。アンケート調査は、山梨県在住の家事担当者および中学校・高等学校の生徒を対象とし、ほうとうに関する質問用紙を地域の協力者に郵送した。930部が回収された。<br>【結果】文献調査の結果、大正末期から昭和初期、地粉で打った自家製麺と手近にある野菜、いも、きのこ等の複数の食材を一緒に汁の中で煮込んでほうとうを作っていた。ほうとうは山梨県の日常の夕食として一年を通して食べられていた。聞き書調査から、昭和30年代もほうとうは日常の夕食として食べられていたが、副材料には、油揚げ・豚肉・鶏肉を用いる地域が出現したことが分かった。アンケート調査から、現在のほうとうは、秋から春の寒い時季の日常の夕食として食べられていること、ほうとうに入れる副材料は野菜・いも・きのこに加えて豚肉や鶏肉などの動物性食品が多用されていることが分かった。山梨県の郷土料理ほうとうが受け継がれてきた要因として、市販麺の利用など調理の簡便性が示唆された。
著者
早川 宗八郎 岩崎 好陽 菅 直人 阿部 勝彦
出版者
The Society of Powder Technology, Japan
雑誌
粉体工学研究会誌 (ISSN:18838766)
巻号頁・発行日
vol.11, no.6, pp.327-332, 1974-08-01 (Released:2010-08-10)
参考文献数
10

It is well known that some inorganic powders show remarkable activities to extinguish fire. The authors proposed a kind of procedures to appreciate the activity and also to approach to the extinguishing mechanism. Propagating speed of flame was measured in the cylindrical combustion tube by the oscilloscopic patterns from the phototransistors attached on the wall (Fig. 1). The powder was poured from the funnel to be attached on the wall. Mixtures of methane and air of various pressures and components were used inflamable gases. The powder was (NH4)2HPO4 with average surface of 2.72m2/g. The examples of results were shown in Fig. 5 and 6, and Table 2. The extinguishing activity was estimated quantitatively, and its mechanism was concluded to be due to catalytic activity of surface and also partly to thermal decomposition of powder material.
著者
宮部 芳照 阿部 正俊 小島 新
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.245-248, 1979-03-19

さとうきび脱葉機開発のための基礎資料として, 蔗茎の節位別衝撃抵抗について測定を行った.その結果は次のとおりである.1.蔗茎の節位別衝撃エネルギは梢頭部から根部の方へいくに従って増大し, 第12節位は2.14(kg-m)(標準偏差σ=0.05kg-m), 第18節では3.76(kg-m)(σ=0.09kg-m)であり, 約1.8倍の増加を示している.節位と衝撃エネルギの間には極めて強い相関関係がある(相関比η_<r1>=0.98).2.蔗茎の節位別衝撃抵抗値は梢頭部から根部の方へいくに従って増大し, 第12節位では0.54(kg-m/cm^2)(σ=0.04kg-m/cm^2), 第18節位では0.71(kg-m/cm^2)(σ=0.04kg-m/cm^2)であり, 約1.3倍の増加を示している.節位と衝撃抵抗値との間には極めて強い相関関係がある(相関比η^<r2>=0.87)
著者
阿部 悦子 田嶌 誠一
出版者
九州大学
雑誌
九州大学心理学研究 (ISSN:13453904)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.229-237, 2004-03-31

The purposes of this study were to draw the state of "the manner of suffering" in adolescence how people experience and cope with suffering, and to investigate the process of the manner of suffering. Further, as the view of the manner of suffering, the concept of experiencing distance and mental set were used. First, as a result of the classification made through interviews word-for-word records, five manner of suffering state, "avoidance", "observation", "depression ・perplexity", "conflict ・groping", "confusion" were drawn as the manner of suffering in adolescence. Second, as a result of studying the process of the manner of suffering as case study, the possibility that the manner of suffering changed and were brought to solution after some manner of suffering were experienced was suggested. Finally, for getting knowledge to psychological support from suffering process, the significance of attention for the manner of experiencing was discussed.
著者
エルナンド ジョゼップ 阿部 俊大
出版者
九州大学大学院言語文化研究院
雑誌
言語文化論究 (ISSN:13410032)
巻号頁・発行日
no.33, pp.149-159, 2014

ペトルス・ヴェネラビリスは、1142年から43年にかけてのイベリア半島への旅に際し、ムハンマドの生涯と教説についての既知のテクストをラテン語に翻訳する着想を得た。イスラームをより巧妙に論駁するための情報を得ることがその目的である。13世紀後半には、フランシスコ会とドミニコ会が主導する伝道・改宗の運動が生じ、「言語研究所Studia Linguarum」と呼ばれる研究施設が設けられた。同じ頃、ラモン・マルティ(1230-1284/85)は、反イスラーム論について述べた第一部(『ムハンマドの宗派の形成・拡大とその四つの劫罰についてDe origine et progressu etfine Machometi et quadruplici reprobatione eius』、別名『ムハンマドの宗派についてDe Secta Machometi』)と、キリスト教信仰を説明した第二部『使徒信経要綱Explanatio Simboli Apostolorum』から成る著作を著した。このラモン・マルティの著作は反イスラーム文学のジャンルに決定的な影響を及ぼし、他の著作に着想を与え、また単純に剽窃(もしくは作者への言及がまったくない引用)の対象となっている。第一部、第二部は、それぞれ独立した形態で現在まで伝来している。