著者
青山 高
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.60, no.12, pp.679-686, 2017 (Released:2017-11-29)
参考文献数
31
被引用文献数
1

病院食における異物混入インシデント・アクシデント報告を縦断調査し業務改善の実際を明らかにする。静岡がんセンターの2011年4月から2016年3月までの異物混入インシデント・アクシデント報告とした。年ごとに病院食1食当たりの異物混入発生率と混入物、混入元を調査した。全てインシデント報告であった。発生率は2011年より0.006%、0.003%、0.003%、0.006%、0.004%であった。混入物は、毛の混入が最多であり報告件数は厨房内(外);7(1)、5(0)、5(2)、3(6)、7(3)であった。厨房内(外)の混入元の別は21(2)、12(0)、8(2)、9(13)、8(8)であった(p=0.0001253、Fisher's exact test; R)。経年の異物混入状況より業務改善が認められた。異物混入の縦断調査は潜在因子と再発を探索するために有用である。
著者
青山 将己 山口 泰雄 長ヶ原 誠
出版者
日本生涯スポーツ学会
雑誌
生涯スポーツ学研究 (ISSN:13488619)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.1-12, 2022 (Released:2022-05-25)

The purpose of this study was to examine the background and influence of the integration between the Netherlands Olympic Committee and the Netherlands Paralympic Committee. We adopted the framework of a neo-institutional theory. Semi-structured interviews were conducted with two staff of the Netherlands Olympic Committee and the Netherlands Paralympic Committee. In addition, we collected data from the archival materials to complement and check the information obtained from the interview. The analysis was based on thematic analysis. An important milestone in this integration was marked by the signing of a declaration on the initiative of the former State Secretary of the ministry of Health, Welfare and Sports. This declaration was the initiative to integrate disability sport in mainstream sport. The Netherlands Olympic Committee was under formal and positive pressure to sign a country-led declaration, and this integration was " coercive isomorphism." The integration had the advantages of "sharing resources" and "getting fund", led to the strengthening of institutional legitimacy. Also, it had influences on "integration of the national federations and the national disability sport organizations," "grassroots expansion in region sport clubs," and "inclusion of society." Notably, these influences by integration were considered to "mimetic isomorphism" and "normative isomorphism." This study has contributed to the theoretical accumulation of a neo-institutional theory in the context peculiar to sport.
著者
青山 幸二 齋藤 晴文
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.15-22, 2022-01-31 (Released:2022-03-25)
参考文献数
31

室間共同試験で妥当性を確認した公定分析法を用いて,2014~2019年度に日本で流通した飼料中のゼアラレノンおよびその代謝物(ゼアララノン,ゼアラレノールおよびゼアララノール)の汚染実態を調査した.とうもろこし121検体,大豆油かす62検体および配合飼料205検体を調査した結果,90 %以上の試料からゼアラレノンが検出された.ゼアララノールはいずれの試料からも検出されなかった.β-ゼアラレノールはゼアラレノン代謝物の中で最も検出率が高かった.また,原料によりゼアラレノン濃度に対するゼアラレノン代謝物濃度の割合が異なることが示唆された.
著者
吉田 悠 青山 久枝 狩川 大輔 井上 諭 菅野 太郎 古田 一雄
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.180-193, 2021-08-15 (Released:2022-02-16)
参考文献数
21

本研究では,航空管制に代表される複雑かつ認知的負荷の高い業務を対象に,人の視覚的特性を考慮した画面を設計することにより,ユーザーのタスクパフォーマンス向上や作業負荷低減の実現を目指している.今回筆者らは,視覚的注意に影響の大きい情報の誘目性に着目し,業務支援のための機能表示に色の誘目性を活用したときの,タスクパフォーマンス,状況把握,および作業負荷への影響を明らかにする実験を実施した.実験参加者は熟練航空管制官6名であった.実験タスクは現場の管制業務を模したマルチタスクとし,管制指示タスクをメインタスクに,航空機受け渡しタスクをサブタスクに設定した.そして,管制指示タスクにおける航空機の重要度に応じて色の誘目度を高中低の3段階に割当て,高と低の誘目度の差が(a)ない,(b)小さい,(c)大きい,の3パターンの実験条件を設定した.結果,情報間の色の誘目度の差が小さい画面条件では,メインタスクのパフォーマンスが相対的に高く,認知的負荷についても良好な傾向が見られた.
著者
朝倉 佑実 河野 洋平 佐藤 将嗣 青山 隆夫
雑誌
日本薬学会第140年会(京都)
巻号頁・発行日
2020-02-01

【目的】慢性裂肛には、ニトログリセリン等を含むクリームを患部に塗布し、肛門静止圧を低下させる治療が行われている。しかし、副作用や高い再発率が問題であり、有用な新規薬剤が求められている。芍薬甘草湯は内服で筋弛緩作用を示すことが知られており、外用薬としての有用性が期待できると考えられる。本研究ではラットを用いた肛門内圧測定法を構築するとともに、芍薬甘草湯クリームによる内肛門括約筋の弛緩効果を評価した。【方法】芍薬甘草湯クリームは、精製水に懸濁した市販エキス細粒2.5 gに、添加剤の流動パラフィンとグリセリン、および基剤の親水軟膏を加え、全量を7.0 gとした。肛門内圧測定用のプローブは、カテーテル(6 Fr)の先端にポリエチレン製のバルーンを装着して作成した。プローブにかかる圧力は、血圧トランスデューサと圧力用増幅器を用いて測定し、解析にはPowerLabを用いた。肛門内圧測定精度の検証では、クリープメータを用いてプローブにかけた一定の荷重と圧力測定値間の相関性を評価した。SD系雄性ラットを無作為に芍薬甘草湯群または対照群に振り分けた2剤2期のクロスオーバー試験では、吸入麻酔下でクリーム塗布前と塗布(0.1 g/kg)後3 hに肛門内圧を測定し、算出した肛門内圧変化率で効果を評価した。【結果・考察】プローブに一定の荷重(0.01–0.1 N)をかけて圧力を測定した結果、荷重と圧力の間に良好な相関が認められ(R2=0.996)、本測定法の定量性が確認された。肛門内圧変化率は、芍薬甘草湯群の塗布後3 hで78.8±13.5%(n=10, mean±S.D.)となり、対照群に比して有意に低下した(p<0.05)。以上のことから、芍薬甘草湯クリームは慢性裂肛の治療薬として有用である可能性が示された。
著者
大木 真人 夏秋 嶺 青山 定敬 田殿 武雄
出版者
一般社団法人 日本リモートセンシング学会
雑誌
日本リモートセンシング学会誌 (ISSN:02897911)
巻号頁・発行日
pp.2021.075, (Released:2022-04-16)
参考文献数
27

Increasing human and economic losses due to urban floods demand rapid flood monitoring using synthetic aperture radar (SAR). In a global first, this study conducted simultaneous experiments using a flood experimental field that can reproduce the conditions of submerged buildings and satellite monitoring using the L-band SAR aboard the Advanced Land Observing Satellite-2 (ALOS-2). Through these experiments, we investigated the relationships among the threshold of interferometric coherence, the accuracy of urban flood detection, the multi-look number in interferometric processing, and floodwater depth. To achieve a better understanding of our experimental results, we also performed theoretical coherence simulations. Our results revealed that the coherence and flood detection accuracy statistically depends on the multi-look number and that 3×3 looks are needed to obtain reasonable accuracy. We also found that coherence-based change detection can detect urban floods with a depth of as little as 6 cm. There was no clear correlation between coherence and water depth. We also performed urban flood detection using ALOS-2 data from observed flood events; the results proved the validity of our theory and its applicability to actual disaster activities. Our findings enable robust urban flood monitoring and contribute to disaster prevention and mitigation.SAR, PALSAR-2, disaster monitoring, flooding, interferometry
著者
大屋 周期 山崎 嘉孝 中村 剛之 森重 聡 山口 真紀 青山 一利 関 律子 毛利 文彦 大崎 浩一 内藤 嘉紀 大島 孝一 長藤 宏司
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.1605-1610, 2020 (Released:2020-12-08)
参考文献数
15

多中心性キャッスルマン病は,リンパ節病理像によって特徴づけられるリンパ増殖性疾患でIL-6高値を特徴としている。症例は17歳の日本人男性,発熱,頭痛,倦怠感,体重減少を伴っていたが,血圧は正常であった。臍下部に可動性良好な腫瘤を触知し,血液検査所見は小球性貧血,低アルブミン血症,IL-6高値,sIL-2R高値,VEGF高値を示した。造影CT検査で55 mm大の骨盤内腫瘤と腸間膜周囲のリンパ節腫大を認め,多中心性キャッスルマン病を疑い骨盤内腫瘍を摘出した。術後,血圧が緩徐に上昇し可逆性後頭葉白質脳症による痙攣を発症した。高血圧の精査で,術前の血中ノルアドレナリン,ノルメタネフリン高値が判明し,摘出標本でIL-6およびクロモグラニンAが陽性であることから,IL-6産生パラガングリオーマと診断した。多中心性キャッスルマン病に類似した発熱,貧血などを来す病態の鑑別診断として,血圧上昇を伴わない症例でもIL-6産生褐色細胞腫・パラガングリオーマを考慮する必要がある。
著者
新井 俊希 安江 俊夫 北村 和也 島本 洋 小杉 智彦 ジュン スンウク 青山 聡 HSU Ming-Chieh 山下 雄一郎 角 博文 川人 祥二
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.40, no.12, pp.21-24, 2016-03-04

サイクリック系3段ADCを用いた画素サイズ1.1μmの3,300万画素240枚/秒3次元積層構造CMOSイメージセンサを開発した.裏面照射型で3次元積層構造を,ハイブリッドスタッキング技術を用いることで,画素部とアレイ状に配置したAD変換器を画素エリア内部で接続した.3段パイプラインのサイクリック-サイクリック-逐次比較AD変換器により,変換時間周期を0.92μsに高速化した.3段AD変換器の構成とハイブリッドスタッキング技術により,3,300万画素において240枚/秒の高フレームレートを初めて実現した.画素速度7.96ギガ画素/秒の高速読み出しを実現しつつ,ランダムノイズ3.6電子とセンサ消費電力3.0ワットを達成した.
著者
宮腰 靖之 永田 光博 安藤 大成 藤原 真 青山 智哉
出版者
北海道立総合研究機構水産研究本部
雑誌
北海道水産試験場研究報告 = Scientific reports of Hokkaido Fisheries Research Institutes (ISSN:21853290)
巻号頁・発行日
no.83, pp.41-44, 2013-03

2003~2005年の5~6月,北海道オホーツク海側東部の網走沿岸で刺網,釣り,表層曳網により魚類を採捕し,サケOncorhynchus ketaあるいはカラフトマスO.gorbuscha幼稚魚の捕食の有無を調べた。サクラマスO.masou,ソウハチHippoglossoides pinetorum,クロソイSebastes schlegelii,コマイEleginus gracilisの4種がサケあるいはカラフトマスの幼稚魚を捕食していた。Nagasawa(1998)は日本沿岸におけるサケ幼稚魚の魚類捕食者を9種記載しているが,ソウハチ,クロソイ,コマイの3種は含まれておらず,これら3種については本報告がサケあるいはカラフトマスの魚類捕食者として新たな記載となる。
著者
青山 絢子 中島 求
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 B編 (ISSN:03875016)
巻号頁・発行日
vol.73, no.734, pp.2018-2026, 2007

The objective of this study was to investigate the stability during freefall in skydiving, in which the diver has to take various body position in order to control precisely their distance, velocity, and direction relative to the other divers for the group performance. For this objective, the state equation for a simple elliptic cylinder model was firstly derived, considering its equations of motion and the fluid force characteristics. Next, using the form of state equation derived for the elliptic cylinder and the input/output data obtained from the developed simulation method for the body behavior of the skydiver, the state equations of skydiver were identified for various body positions. Finally, roots of the state equations were obtained to investigate the stability. As the results, the causes of instability such as spin and spiral phenomena were clarified as an unstable natural modes, and the stable limit of body position was obtained as a value of parameter which is related to the arch magnitude of the diver's body.
著者
青山 幹雄 村瀬 珠美 鈴木 香予 中道 上
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.3018-3029, 2009-12-15

形式概念分析に基づき,複数ステークホルダが提起するゴールを階層的に構造化するためのゴールラティスモデルと,それを用いたゴール整合方法を提案する.ステークホルダのゴール,サブゴールに対し属性に基づき半順序構造をゴールラティスとして生成し,ゴールを階層的に構造化する.提案方法に基づき,あるステークホルダ群の共通ゴールやあるゴール群を満たすサブゴール群の抽出などを視覚的に分析する方法を提案する.抽出したゴール群の妥当性評価尺度としてゴール拡散率とゴール縮約率を定義した.提案方法を大型スーパーマーケットのセルフレジシステムへ適用し,提案方法の妥当性と効果を示す.This article proposes a method of structuring and reconciling goals among multiple stakeholders based on the FCA (Formal Concept Analysis), and demonstrates the effectiveness of the proposed method by applying the method to the requirements acquisition of self-checkout systems in supermarkets. We propose the goal lattice model which is a semantic extension of FCA, a formalism based on the lattice theory, to model goals. With the goal lattice, the method enables to identify the relations among goals, sub-goals and stakeholders, and structure the goals independently required by multiple stakeholders, and reduce the complexity of the goals and their dependencies by reconciliation.
著者
青山 安宏
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.8, pp.1041-1049, 1991-08-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
31
被引用文献数
3

非極性有機溶媒中での多点水素結合に基づくホストーゲスト相互作用について検討した。用いたホストは2-ヒドロキシ-1-ナフチル基をもつポルフィリン誘導体および四つのアルキリデン基で橋かけした環状テトラキス(レゾルシノール)誘導体であるが,これらはいずれもフェノール性ヒドロキシル基(対)を単位水素結合部位としてもっている。ゲストはアミノ酸,キノン,ジカルボン酸,ジオール,糖,ヌクレオチドなどの生体関連物質である。多点相互作用に組み込まれた「分子内」水素結合は最適ゲストの捕捉に大きな選択性を与えるのみならず,いちじるしい鎖長選択性・立体選択性をもたらす。また,「分子内」水素結合の分子間水素結合に対する優i位性は約1 .5kcal/molである。このような相互作用を利用して糖類を有機溶媒に可溶化することができる。この場合,アノマー位に関して大きな立体選択性が認められる。一方,どのような糖が有効に抽出されるかについての選択性は糖分子全体の疎水性(脂溶性)に支配されている。多点相互作用の応用についてもいくつかの例で検討を加えた。最も重要なのは,非共有結合に基づくホスト-ゲスト相互作用が,機能性分子錯体の自発的な構築や光学活性ゲストの立体化学の決定に利用できる点である。その他,糖の合成化学にユニークな方法論をもたらし,多官能性有機触媒の開発にも新たなみちを拓いた。
著者
青山 佐喜子 高田 修代 藤原 耕三
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.8-14, 1992-02-20
被引用文献数
1

エリストールとしょ糖の混合溶液及びエリストールを各種調理に用いた場合のし好について官能検査を行い次の結果を得た。1.しょ糖溶液7%を基準にその甘味の25%、50%、75%、100%をエストリールで置き換えた場合に25%置き換えた試料とエリストールだけの試料の収れん味と総合評価の項目には、5%の危険率で有意差があったが、その他の項目にはなかった。2.レモンスカッシュのような酸味のある飲料にエリストールを用いた場合は、しょ糖とし好の差はなく、しょ糖濃度約12%と低いため低温でも溶解しやすく、飲料はエリストールの利用に適していると考えられた。3.ゼリーは甘味だけの場合、酸味を加えた場合とも、各項目についてしょ糖との間にし好の差はなかった。4.アイスクリームやシャーベットのようなエリストールを冷凍する場合には硬くなる傾向がみられたが、甘味を50%置換した場合にはその傾向は少なく、冷菓において、甘味の一部にエリストールを用いることは可能であると思われた。5.水ようかんはしょ糖濃度が高く、冷やして食するためにエリストールだけでは利用できなかった。甘味の50%をエリストールで置換した試料(SE)の総合評価は5%の危険率で好まれなかった。6.しるこの甘味の20%、40%をエリストールに置き換えた場合、エリストール40%の試料(SE40%)は、口ざわりが好まれず、しょ糖より後味が乏しく感じられた。しかし、エリストール20%の試料(SE20%)としょ糖には差はなかった。7.一般のそう菜に利用した場合、エリストールの甘味質があっさりしているため、他の調味料の味が後味として残る傾向があると思われた。日常の低甘味度での煮物や酢の物にしょ糖の一部または全部を置き換えてエリストールを用いることが可能であった。
著者
青山 友子 Tomoko AOYAMA クイーンズランド大学 アジア言語・研究学科 Department of Asian Languages and Studies The University of Queensland
出版者
国際交流基金日本語国際センタ-
雑誌
世界の日本語教育 (ISSN:09172920)
巻号頁・発行日
no.7, pp.1-15, 1997
被引用文献数
1

パロディには、1)原典、2)模倣(敬愛)、3)作り変え(批評性)が不可欠である。また、多くの場合、4)滑稽味を伴う。その語源「パラ」には、対立と親密性の両義が含まれている。本稿はこうしたパロディの特徴、とりわけその二重性と批評性、カーニヴァル的な再生予祝機能に注目し、それを利用した日本語教授法を考察する。 四技能習得の手段としてパロディを用いる場合、とくに読み・書きでは、能動的・開放的な作業を促すことができる。それとともに、文学離れの現状や日本に対する固定観念に対処するためにも、パロディ使用は有効である。その場合、従来文学テキストを扱うときにありがちだった大作家や名作、日本らしさ志向、小説偏重に捕われずに、翻訳や読解以外の方法を積極的に取り入れたい。 例として、筒井康隆による『サラダ記念日』のヤクザ版パロディ、「カラダ記念日」と、井上ひさしの『吉里吉里人』の一節を使う授業を取り上げる。前者では、短歌や文語文法についての予備知識もない学生に、比較的短時間で本歌とパロディを比べさせ、自作のパロディ短歌を作らせるところまで持っていく。後者では、『坊っちゃん』他名作の冒頭の吉里吉里語訳と日本語の原文、すなわちパロディの原典とを比べ読むことによって、学習者は、日本人なら誰でも知っている(はずの)名文に触れるとともに、パロディ特有のカーニヴァル的転倒を体験することができる。 限られた授業時間では、長大な文を扱うことはできない。しかし、その場限りの断片ではなく、過去や未来とつながるものをめざしたい。それには、パロディが大いに役立つと考える。The aim of this article is to explore various possibilities of using parody for Japanese-language teaching. Parody requires: 1) a prior text, 2) imitation, and 3) transformation. While 2) is often associated with respect for 1), 3) is closely connected with the subversive and carnivalesque nature of parody. Parody pre-serves its object at the same time as it revolts against it. This structural and attitudinal ambivalence can also be explained etymologically: "para" means both "counter/against" and "beside/near." Given this double-sidedness, parody can be used as an effective tool in second-language teaching, reducing fear and encouraging active participation of the learner. Use of parody in language classes can also contribute to alleviating the general tendency away from literature and the stereotype preconceptions regarding Japan. Yet this is by no means an attempt to revive the traditional reading/translation of literary texts in language class. Texts should be selected not on the basis of their canonicity or "Japaneseness," but for their regenerative and critical merit. Genres other than fiction should also be taken into consideration. Two examples of using parodic texts for a late intermediate (or early advanced) Japanese course are presented. First, Tsutsui Yasutaka's "Karada Kinenbi," which parodies Tawara Machi's Salad Anniversary. In a relatively short period of time, students with no prior knowledge acquire a basic understanding of tanka, literary/poetic style, and parody to the extent that they can appreciate Tsutsui's text and create their own parodies of Salad Anniversary. The second example involves a short excerpt from Inoue Hisashi's Kirikirijin. Celebrated texts by Soseki, Kawabata, and others are "translated" into the Kirikiri language. These "translations" accompanied by the protagonist's comments provide the students with an entertaining and dialogic introduction to the modern Japanese literary canon.