著者
鍋谷 圭宏 青木 泰斗 谷澤 豊 落合 武徳
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.67, no.8, pp.1725-1732, 2006-08-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
15
被引用文献数
2

胃切除術後の経口摂取熱量を増やす目的で,主・副食をともに半量にした「ハーフ食」を自由摂食とし,栄養調整食インパクト™を間食とした新しい栄養管理法を47例の開腹胃切除術周術期に行った(H群).その有用性を,従来の全量粥食で摂取量を規定して管理した23症例(C群)と比較して評価した. H群では,退院直前の経口摂取熱量(1171±147kcal/日)がC群(896±163kcal/日)に比べて有意に増加し,ハーフ食からの摂取熱量に個人差が少ない傾向を認めた.しかし, H群でも熱量充足率には個人差が大きく,胃全摘術後症例では幽門側胃切除術後症例に比べて経口摂取熱量が有意に少なかった.われわれの新しい栄養管理法は,胃切除術クリニカルパスへの導入に適した統一化された方法として期待されるが,経口摂取アウトカム・目標熱量の設定や経口摂取状況の評価は術式や個人差を考慮して個別化すべきであると思われる.
著者
岩島 聰 倉町 三樹 青木 淳治
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1976, no.6, pp.858-864, 1976-06-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
31
被引用文献数
1

高温タールピッチから抽出したカルバゾールには,結晶格子定数などが類似している微量の不純物が混入している。この不純物を除去するには,109の市販カルパゾールと209の無水マレィン酸および19のクロロァニルを1,2,4-トリクロロベンゼン30ml中で加熱処理後,イソペンチルアルコールと金属ナトリウムによる処理を行ない,さらに昇華,カラムクロマトグラフィー,帯域融解をくり返すことがもっとも効果的であることがわかった。不純物の検出には,蒸着薄膜のケイ光スペクトルおよびケイ光寿命の波長依存性を用いた。高純度カルバゾールのケイ光極大位置は,室温で345,358,370nm,液体窒素温度で345,351,370,392nm付近に観灘される。また,不純物が微量混入している蒸着薄膜試料では,高純度試料で観測された位置のほかに,330nm以下,および400nm以上にもケイ光極大が現われる。一方,ケイ光寿命は,'高純度蒸着薄膜試料では345~417nmで18.1~21.0n・sec(室温)を示し,波長依存性も小さい。また,低純度試料では7.3~22.0n・secを示し,その波長依存性も大きい。
著者
佐々木 銀河 青木 真純 五味 洋一 竹田 一則
出版者
障害科学学会
雑誌
障害科学研究 (ISSN:18815812)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.247-256, 2018

<p>大学の障害学生支援部署で修学支援を受ける発達障害のある学生9名を対象に、学生による修学支援の効果評価を予備的に実施した。研究の目的は、修学支援の効果を肯定的に評価した学生および修学支援の効果が見られなかった学生の特徴を明らかにすることであった。各学生に対して支援開始前(4~6月)および支援を行った後(翌年1~3月)において修学支援の効果に関するアンケートへの回答を依頼した。その結果、修学支援の後にアンケート得点の有意な増加が見られた。修学支援の効果を肯定的に評価した学生の特徴として「音声の聞き取り」や「時間管理」に関する課題を有していたことが明らかとなった。一方で、支援の効果が見られなかった学生では「講義の出席」に関する課題を有していた。今後は、講義に出席すること自体に困難を有する学生への修学支援のあり方について検討すること、修学支援の効果評価における信頼性や妥当性を向上させることが課題として挙げられた。</p>
著者
佐々木 高信 照屋 孝夫 平野 惣大 喜瀬 真雄 花城 和彦 青木 一雄
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.174-179, 2019

2009年4月より2016年12月までの期間に,琉球大学医学部附属病院にて頭頸部癌(口腔,咽頭,喉頭,その他)からの肺転移巣を切除した21症例27切除術を後方視的に検討した。全症例の肺転移巣切除後5年全生存率(overall survival: OS)は56.7%,生存期間中央値(median survival time: MST)は21か月と報告された文献における肺転移切除群と比較し良好な成績を得た。肺転移巣の腫瘍径≥2.0cmが有意な予後不良因子であった(<i>p</i>=0.0157)。多変量解析では独立した予後不良因子は得られなかった。以上より2.0cmより小さい径の肺転移巣に対し,積極的な切除が予後改善に貢献する可能性が示唆された。今回の結果は悪性疾患の肺転移治療に関し,意義のある知見と考え,報告する。
著者
青木 美紗
出版者
地域農林経済学会
雑誌
農林業問題研究 (ISSN:03888525)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.49-59, 2017-06-25 (Released:2017-06-30)
参考文献数
24

In order to develop rural areas sustainably, the senary sector companies related to food and agriculture play important roles. Therefore, the number of such companies have increased recently in Japan. However, one of the challenges for senary sector companies in mountainous areas is to develop value-added products and market as well as to establish the enterprise. This study aims to reveal the process of products and market development utilizing local network of food industries, focusing on the “Kozagawa Yuzu Hirai no Sato” enterprise in Wakayama prefecture, in terms of relationship marketing and value co-creation. An interview survey of the company and people of the local network was conducted to achieve the purpose. As a result, the company develops its own product using other companies’ products as ingredients to enhance the product value and also develops market through the industries’ network thus reducing transaction cost. This shows that networking with members sharing the same values and goals is significant for product and market development of a small senary sector company in mountainous areas.
著者
日髙 恵喜 青木 光広 村木 孝行 泉水 朝貴 藤井 岬 鈴木 大輔 辰巳 治之 宮本 重範
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.7, pp.325-330, 2008-12-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
20

【目的】本研究の目的は,未固定遺体8股を用いて腸骨大腿靭帯の上部線維束と下部線維束を選択的に伸張することができる股関節肢位を明らかにすることである。【方法】変位計測センサーを各線維束の中央部に設置し,伸び率を測定した。また3次元動作解析装置を用いて股関節角度の測定を行った。靭帯を伸張させた際に緩みがなくなったときの変位の値を開始距離(L0)として計測を行った。上部線維束は6肢位,下部線維束は7肢位で伸び率を測定した。【結果】上部線維束の伸び率は内転20°+最大外旋,最大外旋,内転10°+最大外旋の順に大きく,最大伸展の伸び率より有意に大きな値を示した。下部線維束の伸び率は最大伸展,外旋20°+最大伸展の順に大きく,最大外転の伸び率より有意に大きな値を示した。【考察】上部線維束では最大外旋,内転位の最大外旋,下部線維束では最大伸展,外旋位の最大伸展が腸骨大腿靭帯のストレッチング肢位として有用であると考えられた。本研究結果は腸骨大腿靭帯の解剖学的走行に基づいた伸張肢位と一致した。
著者
青木 歳幸 大島 明秀 ミヒェル ヴォルフガング 相川 忠臣 今城 正広 海原 亮 小川 亜弥子 金子 信二 田村 省三 保利 亞夏里 山内 勇輝 吉田 洋一 鷲﨑 有紀
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

3年間の種痘伝来科研において、1849年8月11日(嘉永2年6月23日)に到来した牛痘接種が九州各地へ伝播した様子が明らかになった。たとえば、佐賀藩では全額藩費による組織的な種痘を実施した。大村藩では、牛痘種子継料を全村から徴収し種痘を維持していた。中津藩では長崎から痘苗を得た民間医辛島正庵らが文久元年(1861)医学館を創設した。福岡藩領では、武谷祐之が、嘉永2年の末から種痘を始めた。小倉藩では、安政5年(1858)に再帰牛痘法を試みていた。九州諸藩における種痘普及により、洋式医学校の設立など地域医療の近代化をめぐる在村蘭方医の人的ネットワークが主要な役割を果たしていた実態が判明した。
著者
河尻 寛之 青木 功介 松田 俊寛 中野 愼夫
雑誌
研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC)
巻号頁・発行日
vol.2011-EC-20, no.19, pp.1-6, 2011-05-06

動物園や植物園では入園者数の減少が問題となっており、動植物への興味が増すようなITサービスの導入が進められている.近年 GPS 機能のついたスマートフォンなどの小型端末が普及してきており、位置情報を利用した情報サービスが増加している.本報告では動物園のような園内において活用するための、局所的なナビゲーションシステムの機能と実証実験結果を述べる.
著者
青木 博通
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.471-479, 2019-10-01 (Released:2019-10-01)

世界の商標制度の基本構造,欧州連合商標制度,中国商標制度,米国商標制度,商標の国際登録制度(マドリッド協定議定書),各国の特異な制度に分けて,世界の商標制度の現状について解説する。
著者
植村 順一 井上 剛 青木 淳哉 佐治 直樹 芝崎 謙作 木村 和美
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.403-407, 2014-05-01 (Released:2014-06-17)
参考文献数
15

当科に入院した発症2週間以内の急性期延髄梗塞90例(右側48例,左側33例,両側9例)で,難治性吃逆は5例(5.5%)だった.急性期延髄梗塞例を難治性吃逆群と吃逆なし群の2群に分けて,頭部MRI像での病変部位を比較すると,難治性吃逆群の頻度が右側で有意に高く(p = 0.048),とくに延髄右側中部内側が多かった(p < 0.001).PubMedで検索しえた論文中に難治性吃逆があり,頭部MRI像で責任病巣が確認しえた症例は16例あり,その責任病巣は延髄中部内側が11例だった.難治性吃逆の責任病巣は中部延髄の疑核,大縫線核と推定されているが,延髄中部右側内側が発症機序に関係している可能性がある.
著者
青木 健
出版者
社会経済史学会
雑誌
社会経済史学 (ISSN:00380113)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.227-248, 2011-08-25 (Released:2017-05-24)

本稿では,長野県下伊那郡伊賀良村上殿岡・下殿岡区を事例に,敗戦後の外地引揚者の収容や戦後開拓農民の送出の実態を,戦後農村社会の再出発との関わりで明らかにする。当該区では,多数の外地引揚者が転入する中で,敗戦後の再出発をむかえた。その過程において,既存農村社会の農家の大部分は,所属更生組合内で互いに緊密な耕作地の融通を行いながら,耕作反別と世帯規模のバランス調整を行いつつ,農地改革期を経過した。一方で外地引揚者は,そうした耕作権の融通関係の外におかれ,引揚者の大部分が転入後に再転出するという不十分な収容状況にあった。こうした中で,伊賀良村の公民館報では,満州からの引揚者による在満体験を踏まえた農政・農業経済論が掲載されたのに加え,戦後開拓に関する啓蒙・推奨記事が掲載された。それらを受けて,当該区からは村外へ戦後開拓農民が送り出された。まず既存農家からは,零細農家の挙家離村や農家の傍系世帯員の転出のかたちで開拓農家が送り出された。さらに引揚者からは既存農家の場合を上回る開拓農家が送り出されたのである。
著者
鈴木 潤 菅野 直人 西山 修平 金子 仁彦 三須 建郎 竪山 真規 遠藤 俊毅 青木 正志
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.571-575, 2012 (Released:2012-08-27)
参考文献数
22
被引用文献数
2 2

症例は30歳男性である.受診半年前より頭部MRIで異常信号を指摘されていた.1カ月前より歩きにくさ,尿の出にくさが出現し当科受診.神経学的には両下肢の中等度の筋力低下,胸部以下の温痛覚低下,排尿困難,便秘,陰萎をみとめた.腰髄MRIでは円錐部に辺縁の造影効果をともなう浮腫性病変があり,頭部MRIでは無症候性の散在性白質病変をみとめた.末梢血ではみられなかったが脳脊髄液中には好酸球の増加が明らかであり,これはステロイドパルス後に変性像が観察された.寄生虫感染や骨髄増殖性疾患が否定的であり,特発性に好酸球が病態に関与する再発性脳脊髄炎と考えられた.急性期および寛解維持にステロイドが著効する点が特徴的であった.