著者
青木 克仁 Katsuhito Aoki
出版者
安田女子大学大学院
雑誌
安田女子大学大学院紀要 : 合冊 = The journal of the Graduate School, Yasuda Women's University : compiled editon (ISSN:24323772)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.153-169, 2017

本論文では,動物を正義論の文脈の中で捉え,少なくとも残酷な扱いから動物を守るというプラグマティックな目的のために,動物に権利を付与することは可能かどうかという問いに答えを見出そうと思う。特にこの論考において,「虐待されない権利」と「機会の自由」を人間以外の動物に付与する道を検討する。もし「正義の原理」を選択するための手続きに参加する能力がないような存在者だとしても「誰のための正義なのか」という正義の受益者としての地位が与えられる可能性は十分にあるとしたら,動物をそうした受益者の集合に組み入れることは可能だろうか,という問いの下,その可能性を論じていく。
著者
青木 利晃 川上 大介 千田 伸男 冨田 尭
雑誌
ソフトウェアエンジニアリングシンポジウム2018論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, pp.236-243, 2018-08-29

近年,深層学習を代表とする機械学習が脚光を浴びており,様々なシステムへの応用が検討されている.応用対象は,エンターテイメントシステムや事務処理システムなどにとどまらず,自動車の自動運転などの高安全システムなども検討されている.高安全システムでは,安全性に関する十分なテストを実施することが必要である.一方,機械学習システムの安全性をテストする手法は,まだ確立していない.そこで,本論文では,機械学習を用いて実現された分類器に焦点を当て,その安全性を系統的に評価する手法を提案する.提案手法は,データセットに基づいた安全分析とテスト結果の統計的評価方法から構成される.安全分析では,よく知られている FTA (Fault Tree Analysis) をデータセットを取り扱えるように拡張した.そして,安全分析の結果,期待される認識率の水準を求め,テストを実施する.テストでは,この水準を満たしているか統計的に評価を実施する.提案手法は,CNN (Convolutional Neural Network) による手書き文字の分類器に適用し,評価を行った.
著者
両角 淳平 青木 啓成 村上 成道
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【はじめに,目的】Jones骨折は難治性の骨折であり,TorgやKavanaughは保存療法において22-67%が遷延治癒もしくは偽関節になると報告していた。現在の治療方針は,競技への早期復帰のために髄内固定による手術が中心となっており,手術治療の実績に関する報告が多い。その一方で,術後の再発例における報告も散見され,三河らは遷延治癒や術後の再骨折を来した症例に対して,スクリューの適合性を高めるために再手術を優先すると報告している。当センターでは,遷延治癒の傾向にあるJones骨折に対し,セーフス(SAFHS4000J,TEIJIN)による超音波治療と継続的な理学療法の介入を行っている。本研究は,Jones骨折を発症した選手の身体特性を詳細に検討する事,また改善させる事を目的とした理学療法が,競技復帰と再発予防へ与える影響について検証した。【方法】当院を受診した高校サッカー選手4例を対象とした。3例は,保存療法を行っていたが4週経過し仮骨が出現しない症例であり,1例は,他院での内固定術後に2回の再骨折を繰り返し,約1年間の遷延治癒を来していた。セーフスによる治療と理学療法を,競技復帰1ヶ月後まで継続した。理学療法では,第5中足骨近位骨幹部へストレスを与える要因として,足部・足関節及び股関節機能における身体機能因子と,姿勢や動作パターンの運動因子を挙げ,特有の障害パターンを検討し,その改善に努めた。介入頻度は,仮骨が出現するまでは週に1回,骨癒合が得られた以降は2週に1回とした。介入時は医師と協議し,運動負荷量を確認した。セーフス開始にあたり,骨折部へ的確に照射するよう透視下のマーキングを行った。4例の治療経過として,再発の有無と免荷期間,ランニング開始,競技全復帰,仮骨形成,骨癒合までの日数を集計した。【結果】4例全てにおいて,再骨折や遷延治癒を認めず競技復帰が可能であった。免荷期間は発症から平均24.3日(3-4週),ランニング開始は82.5日(10-14週),競技全復帰は126日(13-23週)であった。また仮骨形成を認めたのは64日(7-11週),完全骨癒合は113.8日(11-21週)であった。特有の障害パターンにおいて,身体機能因子のうち足部・足関節では,内反足(内側縦アーチの増強と前足部内転,後足部回外位)と,第5趾の可動性低下(足根中足関節や第4,5趾の中足間関節の拘縮)を認め,股関節では屈曲及び内旋制限が生じていた。運動因子は,片脚立位とスクワット,ランジ動作で評価し,いずれも股関節の外旋位をとり,小趾側が支点となり,重心は外側かつ後方への崩れが生じていた。筋力は,腸腰筋と内転筋,腓骨筋で低下を認めた。足部への具体的なアプローチは,第5中足骨へ付着し,かつ距骨下関節の可動性低下にも影響する長・短腓骨筋の短縮や,内反接地の反応により過活動が生じる前脛骨筋腱鞘や長母趾屈筋の軟部組織の柔軟性低下を徒手的に改善させた。足関節,股関節の可動域の改善後,姿勢・動作で重心の補正を行った。低下していた筋力に対して,単独での筋力強化は行わず,姿勢・動作練習を通して意識的に筋力の発揮を促した。【考察】治療過程において,運動強度の拡大については,X線による骨の状態を確認しながら検討し,仮骨形成後にランニングを開始し,骨癒合後に競技全復帰を許可した。しかし,X線上の問題がなく,圧痛や荷重時痛が一時的に減少しても,骨折部周囲の違和感や痛みの訴えは変動するため,継続的に運動強度の調整を行った。運動負荷の段階的な拡大に伴い,特有の障害パターンが再燃するため,骨癒合が得られるまでの期間は,早期に発見し修正するための頻回な介入が必要であると考えられた。術後の復帰過程において,横江らは,術後1週で部分荷重,3週で全荷重,2ヵ月でジョギング,3ヵ月で専門種目復帰としている。今回の4例の平均値と比較すると,ジョギング開始と競技全復帰までの期間は,約1ヶ月程度の遅れに留まった。理学療法により骨折部へのストレスを軽減させ,症状の変動に応じて運動負荷の調整を継続的に行う事は,骨癒合を阻害せず,保存療法であっても競技復帰に繋げられると考えられる。【理学療法学研究としての意義】手術及び保存のどちらを選択しても,骨折部の治療だけでは再発予防としては不十分である。身体特性から発生要因を検討し,その改善に向けたアプローチを充実させる事は,スポーツ障害における理学療法の捉え方として重要であると考えられる。
著者
青木 香苗 山口 恭子 柗尾 綾花 榎本 麻里 堀田 多恵子 平安山 知子 亀崎 健次郎 康 東天
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.602-607, 2018

<p>今回,出生後に児由来赤血球(以下児赤血球)の出現が遅延した抗Dによる胎児・新生児溶血性疾患(HDFN)症例を経験した.</p><p>母体は1経妊1経産,A型RhD陰性,抗D陽性(抗体価128倍)であり,第1子がHDFN既往のため本症例である第2子の妊娠14週に当院紹介となった.妊娠28週に抗D抗体価256倍となり,31週及び33週に胎児貧血が疑われ,O型RhD陰性のRBCで計2回(31週時約100m<i>l</i>,33週時約130m<i>l</i>)の胎児輸血を実施し,妊娠36週に誘発分娩となった.児は出生時,溶血及び黄疸は軽度であったが,日齢0に大量免疫グロブリン投与(1.5g/kg)をされた.血液型検査で胎児輸血前はAB型RhD陽性であったが,出生直後はO型RhD陰性,抗D抗体価1,024倍であり,児赤血球が消失し輸血製剤由来の赤血球に置き換わっていることが示唆された.その後,抗D抗体価が4倍まで低下した日齢83に輸血検査にて初めて児赤血球が検出できたことより,出生後の児赤血球の出現遅延には抗Dが関与していると考えられた.この期間,溶血所見は乏しいものの緩徐に貧血が進行し,輸血を要した.</p><p>本症例のような胎児輸血を必要とするHDFN症例では輸血前の血液型検査実施と,経時的に抗体価をモニタリングすることは重要である.</p>
著者
青木 信平 五十嵐 久佳 坂井 文彦 神田 直 田崎 義昭
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.175-179, 1988-04-25 (Released:2009-09-03)
参考文献数
11
被引用文献数
1

脳卒中急性期の患者を対象に血清K値の変動を観察した.対象は発症後24時間以内に来院した脳卒中患者161例 (脳出血96例, 脳梗塞65例) である.脳出血患者の平均血清K値3.63±0.05mEq/l (SE) は脳梗塞の平均値4.02±0.05mEq/lよりも有意に低値を示した (p<0.01).脳出血患者を意識レベルによりunresponsive群とresponsive群とに分け検討すると, 血清K値はそれぞれ3.43±0.76mEq/lと3.79mEq/lであり, unresponsive群が有意に低かった (p<0.01).また, 死亡群の平均血清K値3.51±0.06mEq/lは生存群の平均値3.72±0.06mEq/lよりも低く (p<0.05), 重症例では血清K値が低下することが示された.血漿エピネフリン濃度および血糖値と血清K値の間には有意な負の相関がみられ, 低K血症の発現は, ストレスに起因したKの細胞内への流入の可能性が考えられた.
著者
柴田 昌典 太田 匡宣 青木 隆成 多和田 英夫 谷口 信吉
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.40, no.7, pp.589-594, 2007-07-28 (Released:2008-11-07)
参考文献数
18

維持透析患者100名 (慢性腎炎55名, 糖尿病性腎症45名) と対照患者137名の皮膚の色調をコニカミノルタ社製の分光測色計CR-400®で定量的に測定した. 透析患者では有意に皮膚の明度が低く (p<0.01), この低下と年齢とは相関がなかったが, 維持透析の継続期間の長さとは有意の相関がみられた (p<0.01). 糖尿病性腎症による患者にくらべ, 慢性腎炎の患者の皮膚の明度は有意に低かった (p=0.0005). 維持透析患者にみられる皮膚の色素沈着が糖尿病性腎症患者では軽度である理由は不明であるが, インスリンがMSH代謝へ及ぼす影響の可能性につき述べた.
著者
近藤 夏樹 辻内 智郁 村重 敦 西村 宏貴 青木 誠 土橋 明彦 山川 榮一 青山 剛史 齊藤 茂
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会論文集 (ISSN:13446460)
巻号頁・発行日
vol.51, no.592, pp.198-206, 2003 (Released:2003-09-26)
参考文献数
16

A low-noise helicopter blade, AT1, was designed with the concept of reducing noise without the drop of rotor performance. In the concept, High-Speed Impulsive (HSI) noise is reduced by applying a thin airfoil in the tip region and a dog-tooth like extension in the leading-edge of the tip region. Blade-Vortex Interaction (BVI) noise is reduced by applying the extension and a strong taper near the tip end. The stall angle of the blade is increased by the effect of the vortex generated from the leading-edge extension. As a result, the drop of rotor performance caused by the thin airfoil and the reduction of rotor rotational speed is recovered. The low-noise characteristics and the performance of AT1 were evaluated by a model rotor test conducted at Deutsch Niederländischer Windkanal (DNW). It is shown that AT1 reduces HSI noise and BVI noise and has good performance in forward flight conditions. However, the improvement of performance in high-lift conditions still remains as a future problem.
著者
三浦 篤史 青木 芙美 桃井 宏樹 柳沢 国道 大井 敬子 大橋 正明 竹内 玲子 小林 由美子 佐々木 由美 大倉 輝明 跡部 治
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.719-725, 2009-01-30 (Released:2009-04-08)
参考文献数
6

佐久総合病院では,筋弛緩薬,カリウム製剤などはハイリスク薬として扱われているが,インスリンは事故防止のために標準化された対策がなされていない。今回我々は,多職種に渡ったチームを構成し医療改善運動を行なった。チームでは薬剤師が中心となり,Quality Control (QC) 手法を利用してインスリン投与の過誤を防止するための対策に取り組んだ。その結果,インスリン取り扱いに関するヒヤリ・ハットは減少した。薬剤に関したヒヤリ・ハット事例は多く,薬剤師のリスクマネジメントに果たす役割は大きいと考えられる。今後,薬剤師は積極的にリスクマネジメントに関わり,医薬品が関与する医療事故を未然に防止することが望まれる。そのことからも,QC手法を活用し,医療改善運動に取り組むことは効果的な活動と考えられた。
著者
山崎 裕毅 高木 哲 小儀 直子 須永 隆文 青木 由徳 細谷 謙次 奥村 正裕
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.65, no.7, pp.530-533, 2012-07-20
参考文献数
8

尿道腫瘍による排尿困難を呈した犬4例に対し,排尿路を確保するための低侵襲かつ,姑息的な対処法としてバルーンカテーテルによる尿道拡張を実施した.すべての症例で,処置直後から自律的な排尿が可能となり,1回の拡張により最大2カ月間,排尿状態が維持された.また,本処置に関連した重篤な合併症は臨床上,認められなかった.本研究における4例では比較的良好な結果が得られたことから,本法は臨床的寛解が期待できない排尿困難を呈した犬の尿道腫瘍に対する姑息的かつ,緩和効果の高い尿道閉塞解除法になり得ると考えられた.しかし,本法における最適な尿道拡張圧や合併症の発症などに関してさらなる検討が必要である.
著者
髙橋 覚 青木 茂樹
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.72, no.10, pp.734-742, 2017

<p>原子核乾板は,荷電粒子の軌跡を三次元的に1 μm以下の空間分解能で記録する強力な飛跡検出器である.その特徴をもとに,宇宙ガンマ線精密観測実験GRAINEを推し進めている.一方で原子核乾板は本来時間情報を持たず,製造してから現像するまでの間に蓄積する飛跡は,数ヶ月から数年スケール(およそ10<sup>7</sup>秒)の時間的な不定性を持つ.GRAINE実験を実現するためには,原子核乾板に秒以下の時間分解能を持たせる必要がある.</p><p>原子核乾板に秒以下の時間分解能を持たせるために,多段シフターと呼ぶ手法を考案した.多段シフターは複数の原子核乾板から構成され,それぞれを固有の周期で動かすことで時刻に応じた独立な位置関係を創り出し,解析時に飛跡の位置関係を再現することにより入射時刻を秒以下で再構成できる.原子核乾板から構成される多段シフターは,高い効率かつ高い信頼性での時間情報付与,低いエネルギー閾値(運動エネルギーにして,陽子で~10 MeV,電子で<~10 MeV),大面積化が実現可能である.また,シンプルな構成,コンパクト,軽量,トリガー系不要,高電圧不要,低消費電力,不感時間無しが実現可能である.このように多段シフターは,原子核乾板が本来持つ特徴を最大限活かした時間情報付与機構を実現する.これらに基づき,三鷹光器社と実機を共同開発し,気球実験に実戦投入した.</p><p>GRAINE実験の実現を目指して,2011年に,原子核乾板ガンマ線望遠鏡の初めての気球実験をJAXAと共同でおこなった.その中で,ガンマ線電子対生成事象を捉え,0.2秒の時間分解能を付与し,天球上の到来方向を決定する一連の流れを確立し,気球搭載原子核乾板ガンマ線望遠鏡の実現可能性を実証した.2015年には,望遠鏡の総合的な性能実証を目指した気球実験をJAXAと共同でおこなった.その中でミリ秒オーダーに迫る時間分解能を実現し,将来的なパルサー位相ごとの偏光測定の展望を拓いた.今後は口径面積やフライト時間の拡大を図り,科学観測の開始を目指す.</p><p>2014年には,原子核乾板の特徴を活かして,ニュートリノ反応精密測定やニュートリノ振動の精密検証を目指し,多段シフターを導入したJ-PARC T60実験を開始した.2014–2015年にかけて2ヶ月近くにわたるニュートリノビーム照射実験をおこない,46.9日に対して時間分解能7.9秒を実現するとともに,ニュートリノ振動実験T2Kのニュートリノビーム測定器であるINGRIDとのハイブリッド解析を確立した.2016年にはスケールアップした照射実験をおこない,126.7日にわたり秒レベルの時間分解能を実現しつつある.今後スケールアップなどを図り,物理実験を計画している.</p><p>多段シフターによって,時間分解能は従来手法に対して5桁の改善を果たすなど飛躍的な向上を成し遂げた.将来的なスケールアップを図った実験では,さらにこれらの一桁から二桁程度の向上を目指すが,それを実現するための新型多段シフターの開発も進んでおり,その実現見通しが得られつつある.多段シフターによって原子核乾板は有意な時間軸を持つ新しい検出器へと発展し,新しい宇宙線観測や加速器ニュートリノ実験を切り拓く.</p>
著者
井梅 由美子 平井 洋子 青木 紀久代 馬場 禮子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.181-193, 2006 (Released:2006-03-31)
参考文献数
40
被引用文献数
4 2

本研究では,青年期における対象関係を評価する尺度を作成した.分析1では,単純構造の尺度を目指して,各尺度の内容が重複しないよう測定内容の整理を行い,5つの測定内容を設定した.因子分析の結果 (N=566),「(1) 親和不全」「(2) 希薄な対人関係」「(3) 自己中心的な他者操作」「(4) 一体性の過剰希求」「(5) 見捨てられ不安」の5因子で単純構造を示す尺度構成が確認された.分析2-1では,異なるサンプル (N=1041) を用いて交差妥当性を確認した.その結果,分析1とほぼ同様の因子構成が見られ,5つの測定領域を設定することの交差妥当性が示された.分析2-2では,性差・年齢差の検討を行い,予想された箇所で予想された方向に性差と年齢差が得られた.分析2-3では,NEO-FFI (NEO Five Factor Inventory) を用いてパーソナリティ特性との関連を検討し,概ね仮説を支持する内容の相関が見られた.これらの結果から,作成された尺度の構成概念妥当性が確認された.
著者
青木 義次
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.40.3, pp.181-186, 2005-10-25 (Released:2017-07-01)
参考文献数
1

青木により提案された確率論的都市モデルは熱力学分子モデルによく類似している。この類似性に注目し、熱力学におけるエントロピー、自由エネルギーに相当する概念を都市モデルに導入した。とくに、都市の安定均衡状態は、自由エネルギーに相当する F関数の値が最小化されるところで達成されることを示した。これらの概念と統計力学の平均場理論を用いることで、都市の均衡状態に関し、パラメータの値によって安定均衡状態がひとつの場合と二つの場合がありうることが分かった。後者の場合では、規制誘導・補助等の都市コントロールにより都市のパラメータが徐々に変化させたとしても均衡状態は不連続的に変化する場合もあることが判明した。この事実は、都市全体の活性化・沈静化が都市制御上重要であることを示している。
著者
奥田 稔 高坂 知節 三宅 浩郷 原田 康夫 石川 哮 犬山 征夫 間口 四郎 新川 秀一 池野 敬一 松原 篤 稲村 直樹 中林 成一郎 後藤 了 小野寺 亮 遠藤 里見 亀井 民雄 室井 昌彦 馬場 廣太郎 島田 均 舩坂 宗太郎 大橋 伸也 鄭 正舟 小澤 実佳 八木 聰明 大久保 公裕 後藤 穣 服部 康夫 上野 則之 柏戸 泉 大塚 博邦 山口 潤 佃 守 池間 陽子 坂井 真 新川 敦 小林 良弘 佐藤 むつみ 山崎 充代 藤井 一省 福里 博 寺田 多恵 小川 裕 加賀 達美 渡辺 行雄 中川 肇 島 岳彦 齋藤 等 森 繁人 村上 嘉彦 久松 建一 岩田 重信 井畑 克朗 坂倉 康夫 鵜飼 幸太郎 竹内 万彦 増田 佐和子 村上 泰 竹中 洋 松永 喬 上田 隆志 天津 睦郎 石田 春彦 生駒 尚秋 鈴木 健男 涌谷 忠雄 宮國 泰明 夜陣 紘治 森 直樹 田頭 宣治 宮脇 浩紀 青木 正則 小林 優子 高橋 正紘 沖中 芳彦 遠藤 史郎 池田 卓生 関谷 透 奥園 達也 進 武幹 前山 忠嗣 恒冨 今日子 増山 敬祐 浅井 栄敏 土生 健二郎 中崎 孝志 吹上 忠祐 角田 憲昭 渡辺 隆 野口 聡 隈上 秀伯 吉見 龍一郎 茂木 五郎 鈴木 正志 大橋 和史
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.633-658, 1996-09-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
21

通年性アレルギー性鼻炎患者211例を対象に, KW-467910mg/日 (KW群) の有効性, 安全性および有用性をoxatomide 60mg/日 (OX群) を対照薬として多施設二重盲検群間比較試験により検討した.最終全般改善度の「改善」以上は, KW群61-6%, OX群57.6%で, 両群間に有意差は認められなかつたが, 同等性の検証を行った結果, KW群はOX群と比較して同等ないしそれ以上と考えられた. 概括安全度の「安全性に問題なし」と評価された症例は, KW群68.0%, OX群61.4%で, 両群間に有意差は認められなかった. 主な副作用症状は両群とも眠気であった. 有用度の「有用」以上は, KW群54.9%, OX群50.5%であり両群間に有意差はなかったが, KW群の方がやや有用率が高かった.以上の成績より, KW-4679は通年性アレルギー性鼻炎に対して, 臨床的に有用性の高い薬剤であると考えられた.
著者
鈴木 俊一 青木 広臣 川上 博人 畑 明仁 本島 貴之
出版者
一般社団法人 日本原子力学会 バックエンド部会
雑誌
原子力バックエンド研究 (ISSN:18847579)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.87-98, 2009
被引用文献数
3

本稿では, 多重バリアシステムを有する放射性廃棄物処分施設の安全性能評価手法について提案する. 本稿で提案する手法は, 我が国において既存の放射性廃棄物処分施設に対しておこなわれた安全評価で用いられている移行率モデルの概念に基づいている. 提案する安全評価手法の有利な点は, 複雑な数値シミュレーションを多用することなく, 廃棄体からの溶出率を考慮した人工バリアシステム (EBS) からの放出フラックスを算定でき, さらに, 人工バリアが有する遅延性能, 低透水性能, 及び低拡散性能の3つの性能指標からなる移行率を提案・採用している点である. また, 本稿で提案する安全性能評価手法を用いて, 人工バリアからの放射性核種の放出フラックスに対して感度解析を行い, 廃棄体からの溶出率, 移行率, 及び人工バリアからの放射性核種の最大放出率による相図を作成し各パラメータの影響度を整理した.
著者
荻生 俊昭 セケルバイエフ アレキサンドル 青木 芳朗 小林 定喜 久住 静代 稲葉 次郎 ベレジーナ マリーナ ケンジーナ グルマーラ ルカシェンコ セルゲィ ベレジン セルゲィ ジョタバエフ ジェニス
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.266, 2008

セミパラチンスク旧核実験場では、1949年~1989年に約450回の核実験が行われ、周辺住民は1962年までの約120回の大気圏内核実験により複数回の低線量放射線の外部と内部からの複合被ばくをした。協会では2001年以来、カザフスタンの放射線影響調査防護センター、国立原子力センター等の協力を得てこれらの住民の疫学調査を行ってきた。調査では放射能雲の通過した地域の住民(被ばく調査集団)と対照地域の住民(対照調査集団)について、公文書保管所や住民登録所等での書類調査、住民の聴取り調査等でデータを収集している。2008年7月末時点での調査対象者は約117,300人で、被ばく調査集団46,400人が含まれる。この集団で居住歴判明により線量計算が可能な者は約18,200人、うち生死判明者は約14,800人(生存者:7,000人、死亡者:7,800人)であった。対照調査集団は設定後の日が浅いので今回の解析には用いなかった。死因としては循環器系疾患が全死因の42%で、虚血性心疾患、脳血管疾患が多かった。新生物は全死因の21%で、食道、胃の悪性新生物が多かった。ロシア連邦保健省の計算式により被ばく線量を計算し、被ばく線量と死因(ICD-10分類)に基づいて被ばく集団の内部比較でリスク比を計算した。男性では新生物も循環器系疾患も線量に応じた有意な増加はなかった。女性では高線量群で新生物による死亡リスクは有意に増加した。性別、年齢、被ばく線量、民族に関するロジスティック解析では、循環器系疾患のリスクはいずれでも有意の差が見られたが、新生物では性別、年齢、民族でのみ差が見られた。本調査はまだ調査開始後の期間が短いことから、今後、対象者を増やすとともに、各種指標の信頼性・妥当性、交絡因子やバイアスの検証が必要である。(この調査は平成19年度エネルギー対策特別会計委託事業「原子力発電施設等放射線業務従事者等に係る疫学的調査」の一部である)。
著者
青木 広臣 鈴木 俊一 川上 博人
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会 年会・大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.500, 2007

放射性廃棄物処分施設の安全性能評価において,地下水移行シナリオ,隆起・浸食シナリオ等の被ばく線量に支配的な影響を及ぼすパラメータである廃棄体の溶出率と,処分施設の核種閉じ込め性能を示す指標である人工バリア部の移行率の関係について整理し,最大放出率に及ぼすそれらパラメータの相対的な位置づけを理論式に基づき分析した.