著者
中川 英元 岡崎 慎司 関本 慎二郎 朝倉 祝治 福田 健三 重盛 徹志 高橋 祥夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CPM, 電子部品・材料
巻号頁・発行日
vol.98, no.154, pp.65-70, 1998-06-26
参考文献数
8

エバネッセント波吸収を応用してライン型水素センサを試作した。酸化タングステン(WO_3)が水素存在下でタングステンブロンズとなって青く発色する現象を感応膜として利用した。センサはWO_3粉末をシリコン樹脂中に分散させてクラッドとしたものと、ゾルゲル法でコア表面にWO_3薄膜を形成させたものを作成した。シリコン樹脂中に分散させたセンサは水素存在下で青く変色するにもかかわらず、光損失が減少した。ゾルゲル法で薄膜を形成したセンサは水素存在下で光損失が予想通り増大し、応答時間も常温で10分程度と比較的速く、ライン型センサとして有望であった。
著者
山口 信一 矢島 崇 渋谷 正人 高橋 邦秀
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.94-100, 1997
参考文献数
20
被引用文献数
4

高密度に生息するエゾシカの菜食と踏圧によりほぼ無植被となった林床の潜在的な植生の回復力を検討するために,北海道洞爺湖の中島において,当年生実生の消失過程とその要因,および散布種子と埋土種子の量と種構成を調査した。当年生実生は,調査開始から20日経過時点でおよそ70〜90%が消失し,50日経過時点ではすべての調査区でほぼ90%の実生が消失した。消失要因は80%以上がシカの採食によるものであった。散布種子数は調査区によってばらつき,1995年には238〜5,820粒/m^2,1996年は21〜394粒/m^2であり,種数は1995年で11〜22種,'96年で7〜19種であった。また,活性埋土種子数も調査区によって幅があり,50〜2,700粒/m^2が抽出されて,種数は8〜20種であった。散布種子,埋土種子ともに,木本種が多くを占めていた。埋土種子数と種数および活性種子率は調査地により異なっていたが,シカの影響を排除した囲い区と放置区の比較では明らかな差は認められず,シカによる踏圧や林地の撹乱などは埋土種子の生残には大きく影響していないと考えられた。実生の消失過程および散布・埋土種子量からみて,高い採食圧のもとで植生の回復は困難ではあるが,潜在的な回復の可能性は維持されているものと考えられた。
著者
高橋 佐智子
出版者
実践女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

わが国の核家族化が進んで久しい。その結果、家族間での被服製作に関わる知識や技術の伝承は少なくなっている。また、中高等学校の家庭科教育における被服製作時間数の減少等により、大学の被服製作の授業では受講者スキルに合わせた実演指導が求められている。しかし、授業時間数に制限があるため難しいのが現状である。本研究は実演指導が必要な被服製作教育において、初心者にも理解できる電子教材を作成し、自宅等で被服製作技術を習得できるe-ラーニングシステム全般の開発と効果の検討を目的とする。本年度は被服製作に関する基本調査と電子教材の作成を行った。被服製作に関する基本調査:10代後半から20代前半の男女(男性154名、女性287名、計441名)を対象に学内のWEBサーバーに構築したアンケートシステムを利用し調査を実施した。調査の結果、被服製作の道具を持っている人は58%、被服製作ができない人は84%であり被服製作があまり一般的でないことが明らかとなったが、浴衣を製作してみたい人は60%であり被服製作への関心の高さも伺えた。また、被服製作の電子教材を使用したことがある人は21%、使用したい人は42%であることから被服製作の動画教材の使用経験は少ないものの、それらに対する期待は比較的高いと考えた。電子教材の作成:本研究では、関心が高かった上、伝統的な技術を要する浴衣製作を題材として選定し、動画教材を作成することとした。15回分の各テーマを設定し、見出し別に再生する事を可能にして反復学習が出来る内容にした。デジタルビデオカメラで撮影し、MacBookProのimovieにより編集した動画に解説の音声ガイドを入れた。作成した動画を学内サーバーから配信するWBTの初歩的なシステムを構築した。配信形式は、MWVとQuickTimeの2種類を用意した。今後は実際にシステムを運用して学習効果や使用しやすさを調査、検討したい。
著者
高橋 和文 黒川 隆志 磨井 祥夫
出版者
社団法人日本体育学会
雑誌
体育學研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.189-200, 2005-03-10

本研究では, 100m疾走中の速度変化を表す2つの指標を提案し, その有用性を明らかにすることを目的とした.1つの指標は, Furusawa et al.の理論式からの偏倚の程度を距離で示す累積速度偏差である.もう1つの指標である累積速度偏差率は, 最高速度発現後からゴールまでの速度低下の総量を同区間の理論値に対する割合として定義した.1)累積速度偏差の有用性を判断するために, 5m区間ごとの値を算出し, 速度変化の時系列に沿った分析を行った.その結果, スタートから5m地点までの累積速度偏差は, 反応時間を含めたスタート技術に関与すると考えられる高値を示した.次の5-10m区間では, 累積速度偏差は全区間中で最も低値を示し, 30m地点に至るまで増加傾向を示した.しかし, その後の30-35m区間では, 累積速度偏差は前区間と同値を示し, 次の35-40m区間では, 前区間より低値を示した.また, 最高速度発現後(40m以降)の累積速度偏差は, 80m地点に至るまでの上に凸な曲線的増加と80-100m区間の直線的増加を示した.これらのことから, 累積速度偏差は, 100m走中の速度変化の過程を客観的に区分することのできる指標であることが示された.2)累積速度偏差率の有用性を判断するために, 目的変数として100m走タイム, 説明変数として最高速度, 最高速度の到達時間, 速度逓減率, 累積速度偏差率を用いた重回帰分析を行った.その結果, 多重共線性が無く, 有意な予測値を示した説明変数は, 「最高速度と累積速度偏差率」の組み合わせだけであった.この結果から, 累積速度偏差率は速度逓減率に比べて, 速度低下を説明できるより有効な指標であることが示唆された.
著者
浜岡 政好 岡崎 祐司 鈴木 勉 関谷 龍子 高橋 憲二 佐藤 嘉夫
出版者
佛教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

超高齢化が進むなかで地域コミュニティの維持と高齢者等への生活支援がいっそう困難化してきている。そのために地域コミュニティの再編成と行政による地域コミュニティへの支援が強化されている。2つの自治体ではともに小地域単位にコミュニティセンターを設け、住民の自治活動をきめ細かく支援する仕組みを作りつつあった。またNPOなどの非地縁型の組織は高齢化した地域コミュニティの生活課題の一部をカバーしつつあるが、まだ十分に補完機能を果たしているとはいえない。
著者
中逵 弘能 金山 博臣 高橋 正幸 福森 知治
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

浸潤性膀胱がん細胞株、組織において、mRNAレベル、タンパクレベルでactinin-4の高発現が認められた。siRNA actinin-4を用いたノックダウンにより、浸潤能が抑制されたが、増殖能は抑制されなかったことより、actinin-4は浸潤能への関与が示唆された。Actinin-4が細胞膜ヘリクルートされず、細胞質に集積することが、腫瘍の浸潤、転移に関与していることが示唆される。
著者
高橋 亜須未
出版者
一般社団法人照明学会
雑誌
照明学会誌 (ISSN:00192341)
巻号頁・発行日
vol.92, no.7, pp.381-385, 2008-06-25
参考文献数
11
被引用文献数
1

I compile the history and the scene illumination of the bridge of Sumida River flowing through the Tokyo downtown area by an on-the-spot survey, documents investigation. The bridge to investigate is the bridge where a person can come and go on foot. I assume 16 bridges an investigation object. I gather up the light up of the bridge, structure, the history, design scenery. In addition, I report it about the cultural role of the bridge.
著者
栗原 由紀夫 大熊 貴子 平田 優子 杉山 清子 高橋 弥生 野中 美保子 宮本 光也 山本 規貴 杉山 総子 米山 武義
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.49-54, 2013-07-20 (Released:2013-07-27)
参考文献数
9

地域の要介護高齢者を支えるために,多職種間の連携・協働は不可欠である。しかしながら,必ずしも歯科医療従事者とその他の職種との連携は十分といえない。そこで「地域における顔の見える連携の構築」を目指して,「口腔ケアネットワーク(三島)」を立ち上げた。現在まで 2 回のシンポジウムを含む研修会を定期的に開催している。平成 24 年 10 月 20 日に開催した地域連携シンポジウムを通じて,患者や家族の思いをとらえ,情報と目的意識を共有して見守っていくことが関わる専門職の責務であり,地域の力になることを提言した。
著者
上田 洋 高橋 徹 加藤 文彦 松村 冬子 小林 巌生
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.27, 2013

筆者らはイラスト地図や古地図といった精度が厳密でない地図画像上に現在地を表示させたり、その地図画像を同地点同方向同縮尺で標準地図と切り替えたりすることができるスマートフォンアプリケーション「ちずぶらり」シリーズを制作している。そこでは地図ごとにPOI情報を付与していたが、今回、LODによる緯度経度情報付きの公開情報を動的に読み込む機能の実装を行った。その効果について議論する。
著者
日田 安寿美 高橋 英一 古庄 律 多田 由紀 川野 因
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.198-203, 2009-12-15
被引用文献数
1

近年,若年層の朝食欠食をはじめ食生活の乱れや運動不足が問題視されている。T大学では食の専門家を育成しており,将来的に食育活動に携わる者も少なくない。そこで本研究ではT大学1年次生を対象に食育トライアル授業を計画し,参加学生の食物摂取状況や運動習慣を把握することにより,今後の授業計画のための基礎資料を得ることを目的とした。対象者は,食育トライアル授業に参加した学生のうち,調査に協力の得られた女性13名であった。調査の結果,1日あたりの食品群別摂取量は,穀類が366g,いも類は37g,緑黄色野菜は75g,その他の野菜は112g,魚介類は44g,肉類は80g,卵類は22g,菓子類が66gであった。一人一日あたりのエネルギー摂取量は,推定エネルギー必要量とほぼ一致していた。脂質エネルギー比率は29.4%,炭水化物エネルギー比率は56.8%であった。カルシウム,鉄分,水溶性ビタミン類,食物繊維の摂取量は不足するリスクが認められた。特に鉄分と食物繊維は対象者全員で不足のリスクが高かった。食品の適切な選択方法についての知識や技術を身につけること,さらに食環境整備が必要であると考えられた。ライフコーダーにより歩行数を測定した結果,1日の平均歩行数は10,434±2,606歩であり,健康日本21の目標値を上回る人は13名中9名であった。一方,速歩や強い強度の運動時間が短かったことから,今後は健康増進のためにも運動強度を高める教育が必要と考えられた。
著者
高橋 知史 四方 順司 松本 勉
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SST, スペクトル拡散 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.746, pp.87-92, 2003-03-20

物理的攻撃に対して耐性のある署名方式として, Forward-Secure署名方式やKey-Insulated署名方式などが提案されている.Forward-Secure署名方式は,署名対象期間を複数の期間に分割し,署名生成鍵を期間毎に使い分けることにより,署名生成鍵を盗まれた期間以前の鍵で作られた署名の安全性を守る署名方式である.またKey-Insulated署名方式は,安全なICカード等のデバイスの中に"マスターキー"と呼ばれる鍵更新のための鍵を格納し,署名生成鍵を更新していく署名方式であり,署名生成鍵が盗まれた期間だけで被害が収まるといった利点がある.本稿において提案する署名方式は,Forward-Secure署名方式を基にして構成されており,必ずしも安全なデバイスを仮定することがなくとも"過去の期間に作成した署名"を用いて鍵更新を行うことでKey-Insulated署名方式と同等の性質を実現している.また,過去に作成した署名は偽造署名発見時の証拠としても利用できるといった利点も挙げられる.
著者
木村 丈司 甲斐 崇文 高橋 尚子 佐々木 秀美
出版者
Japanese Society for Infection Prevention and Control
雑誌
日本環境感染学会誌 = Japanese journal of environmental infections (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.310-316, 2010-09-24
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

抗菌薬のPK/PD理論に基づく投与方法を実践するため,ICT,薬剤部にて抗菌薬のPK/PD理論に関する資料を作成し,2008年4月から院内への配布を開始した.同時に勉強会やICTニュースの配信,院内の抗菌薬使用指針の改訂といった活動も行い,PK/PD理論の普及を試みた.<br>   活動を開始した2008年度以降の投与方法をみると,CZOPでは1000 mg×3回/dayが,MEPMでは500 mg×3回/dayが,DRPMでは250 mg×3回/day及び500 mg×3回/dayがそれぞれ増加した.また第4世代セフェム系,カルバペネム系,ニューキノロン系抗菌薬及び抗MRSA薬の平均投与期間は,2008-2009年度で2006-2007年度に比べ短縮していた.緑膿菌のCZOPに対する耐性率は,2005年度に比べ2006-2007年度で増加したが,2008-2009年度では2005年度と同程度にまで減少し,またMEPMに対する耐性率は年々減少が見られた.<br>   このように今回我々が行った活動は抗菌薬のPK/PD理論の実践に有用であり,またPK/PD理論の実践は感染症治療期間の短縮及び抗菌薬耐性菌の増加防止に繋がる可能性が示唆された.<br>
著者
柿田 章 伊藤 徹 阿曾 和哲 佐藤 光史 高橋 毅 柿田 章 伊藤 義也
出版者
北里大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1997

本研究では移植用肝臓の保存時間の延長を目指して、保存液を加圧することによって凝固点以下の温度でも保存液の過冷却(非凍結)状態を維持、それによって肝臓の凍結・解凍に纏わる傷害を克服する保存法の方法論を確立するために基礎的研究を継続してきた。最終年度の平成11年度は、「加圧」が保存液の「過冷却状態の安定維持」に実際に寄与するか否かに関する実験を行った。その結果、実際に使用したUW液の、常圧、5、10、15MPaにおける凝固点はそれぞれ、-1.2+/-0.0、-1.5+/-0.1、-2.1+/-0.1、-2.5+/-0.1℃(n=6)、過冷却温度は、-4.0、-4.5+/-0.4、-4.8+/-0.8、-5.5+/-0.4℃であった。すなわち、加圧によるUW液の凝固点の降下に伴って過冷却温度も低下することが実証された。また、前年度までの実験では、肝臓が0℃・1時間の保存条件では最大35MPaまでの加圧に耐えて移植後も個体の生命を維持できること、また、加圧による傷害が加圧速度および加圧保存時間依存性であることが、移植後の生存成績や電顕による形態学的変化の観察などから明らかとなっている。加えて、肝臓は5Mpa・-2℃の条件では6時間の長時間保存に安全に耐えられる(移植後生存率100%)という成績が得られている。以上の実験結果は、凍害防止剤や浸透圧調節剤などを使用せず加圧のみによって、移植用肝臓を5MPa・-4.5℃付近まで過冷却(非凍結)状態に保存することが可能であることを示すものである。これらの結果を踏まえ、今後、肝臓の-4.5℃付近での過冷却長時間保存に向けて、氷点以下の低温の細胞・組織に対する傷害機構や至適保存液の物理化学的組成などの課題を解決すべく研究を進める予定である。
著者
村井 芳夫 東 龍介 篠原 雅尚 町田 祐弥 山田 知朗 中東 和夫 真保 敬 望月 公廣 日野 亮太 伊藤 喜宏 佐藤 利典 塩原 肇 植平 賢司 八木原 寛 尾鼻 浩一郎 高橋 成実 小平 秀一 平田 賢治 対馬 弘晃 岩崎 貴哉
出版者
北海道大学大学院理学研究院
雑誌
北海道大学地球物理学研究報告 (ISSN:04393503)
巻号頁・発行日
no.76, pp.147-158, 2013-03

2011年3月11日に,太平洋プレートと日本列島を乗せた陸側のプレートとの境界で2011年東北地方太平洋沖地震が発生した.この地震は,日本周辺では観測史上最大のマグニチュード9という巨大地震だった.本震発生後には多数の余震が発生するが,大地震発生のメカニズムを解明するためには,正確な余震分布を調べることが重要である.全国の6つの大学と海洋研究開発機構,気象庁気象研究所は,本震発生直後から共同で100台以上の海底地震計を用いて余震観測を行った.2011年6月中旬までのデータから,震源域全体で約3か月間の精度の良い震源分布が得られた.余震の震源の深さは,全体的に陸に近づくにつれて深くなっていた.震源分布からは,本震時に大きくすべったプレート境界では余震活動が低いことがわかった.上盤の陸側プレート内では余震活動が活発で,正断層型と横ずれ型が卓越していた.太平洋プレート内の余震も多くが正断層型か横ずれ型だった.このことから,日本海溝付近の太平洋プレート内の深部と上盤の陸側プレート内では,本震の発生によって応力場が圧縮場から伸張場に変化したことが示唆される.
著者
高野 伊知郎 瀬戸 隆子 安田 一郎 浜野 朋子 高橋 奈穂子 渡辺 四男也
出版者
日本生薬学会
雑誌
生薬学雑誌 (ISSN:00374377)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.70-73, 1993-03-20
被引用文献数
1

牛黄清心九は,鎮痛鎮静,抗けいれんの目的で用いられる中国製漢方製剤(中成薬)である.本剤は宋の「大平恵民和剤局方」を出典とし,29種の生薬末からなり,鉱物性生薬である「朱砂」及び「雄黄」を配合しているといわれる.「朱砂」及び「雄黄」は,いずれも水銀(Hg)及び砒素(As)の硫化物であるが,Hg及びAsの毒性は化学形によって大きく異なることが知られている.我が国では「朱砂」配合製剤は,水銀製剤とされ,現在製造されていない.また,Asについても薬剤としての使用は大半が中止されている.しかし,中国では「朱砂」及び「雄黄」配合製剤は各地で製造され,その使用量も少なくない.また,製剤によってはこれらの配合記載が無いものもあり,その配合量も一定ではない.そこで,中国各地で市販される本剤中のHg及びAsの含有量を明らかにし,その化学形について解析を行った.