著者
高田 倫子
出版者
社会経済史学会
雑誌
社会経済史学 (ISSN:00380113)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.401-417, 2007-11-25 (Released:2017-06-09)

本稿では,日本の出土状況に個別発見貨論を適用するための具体化を行った上で,中世から近世初期における中国地方におけるデータを収集・分析し,すでに検討を加えている九州地方における個別発見貨データと合わせて考察する。結論として,個別発見貨概念適用の主たる成果は,備蓄銭慣習開始以前の中国地方における銭貨流通の実質性を検出したことにある。これは,すでに九州地方における個別発見貨データから示された結果や,小畑による廃棄・遺棄銭の研究成果とも共通している。さらに,九州地方における銭貨流通の展開が,中国地方におけるそれと比較して,より早期から見られることが分かった。また,銭種構成に関して,個別発見貨,備蓄銭,廃棄・遺棄銭のデータの間に,同様の傾向が見られる中で,無文銭や洪武通宝といった特定の銭種について,小倉や石見銀山など一部の地域に突出して出土する現象が見られた。今後も,残された諸課題を追究しながら,現在日本貨幣史の主要な諸問題の解明に,個別発見貨資料の分析を通じて寄与していきたい。
著者
耒代 誠仁 高田 祐一 井上 幸 方 国花 馬場 基 渡辺 晃宏 井上 聡
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.351-359, 2018-02-15

古文書の研究者にとって,古文書デジタルアーカイブの活用を促すことは重要な課題である.本論文では,字形画像をキーとした横断検索技術による古文書Webデジタルアーカイブ活用への効果について述べる.字種は文書に対する現実的な検索キーの1つである.しかし,古文書において字形との対応は必ずしも確定しない.この課題を解決するために,私たちは字形画像をキーとした古文書Webデジタルアーカイブの横断検索を実装した.5カ月間の実験で入力されたキー数は合計で200,000件を超えた.これは字種による横断検索の件数と比較しても十分に大きい.また,私たちは古文書解読の専門家による評価実験を実施した.専門家は,使いなれた画像処理ソフトウェアを搭載したPCもしくは筆者らが作成した画像処理ソフトウェアを搭載したiPod Touch,またはその両方を使用した.「検索結果にキーと類似した画像が含まれるか」という旨の質問に対しては,すべての専門家が肯定的な回答を示した.検索精度と使い勝手の向上,および字形テンプレートの整備を通した活用のさらなる促進は今後の課題である.
著者
宮本 健弘 笠原 禎也 高田 良宏 松平 拓也 林 正治 松木 篤 上田 望
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.337-342, 2017-12-02 (Released:2018-02-09)
参考文献数
8
被引用文献数
1

近年, 世界では「オープンサイエンス」の動きが盛んになっている. これに伴い, データ公開システムの重要性は年々増加しており, 機械可読性を持ち, 人間と機械双方にとって便利なリポジトリシステムの需要が高まっている. しかし, 研究機関独自に開発されたデータ公開システムの多くは, 汎用性や利便性, システム間連携の面で問題を抱えているのが現状である. これらの背景から本研究では, 「JAIRO Cloud」などで実績がある国立情報学研究所開発のWEKO を用いて, 金沢大学内の環日本海域環境研究センター及び国際文化資源学研究センターのデータリポジトリの構築を行っている. 構築に当たっては, 研究データを広く社会に公開する目的に加え, 研究データを保有する研究者らがリポジトリの管理に精通していなくとも, 自ら登録, 修正などを行える環境の整備を進めている.
著者
高田 豊司 佐伯 文昭 八木 修司
出版者
関西福祉大学社会福祉学部研究会
雑誌
関西福祉大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:1883566X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.1-10, 2015-03

一部の先駆的な自治体を除き,スクールソーシャルワーカー活用事業(以下,SSWer 活用事業と略)は2008年(平成20 年)に文部科学省において予算化され,全国的に実施されるようになった.SSWer 活用事業の背景として,学校現場において,いじめや不登校,児童虐待等,児童生徒の問題の背景に,家庭等の環境の問題があり,そのさまざまな環境に働きかけ,学校内や関係機関等と連携しながら,課題解決を図れるコーディネーター的な存在が求められているところから制度化された(文部科学省,2013).現在は導入初期にあたり,事業の拡充がはかられるとともに,今後の実践や理論モデルの構築が期待されているところである.
著者
佐藤 都子 長谷川 陽一 稲永 路子 瀧 誠志郎 逢沢 峰昭 高田 克彦
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第127回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.274, 2016-07-08 (Released:2016-07-19)

広義ヒノキ科に属するアスナロ属は日本固有の常緑針葉樹であり、北方変種のヒノキアスナロ(Thujopsis dolabrata var. hondae)(以下、ヒバとする)と南方変種のアスナロ(Thujopsis dolabrata)が知られている。これまでの研究から、アスナロ属21集団を対象に系統地理的な遺伝構造解析を行った結果、(1)ヒバとアスナロがそれぞれ単系統に分かれること、(2)群馬県水上集団では2変種の遺伝組成を共有しており、交雑が発生している可能性が示された。アスナロ属2変種の分布は群馬県や栃木県等の関東北部地域で重複しており、この地域に存在するアスナロ属集団の遺伝構造は不明な点が多い。 本研究では2変種の分布域が重複する地域に着目し、新たに栃木県日光の天然集団を集団遺伝解析に加えた。その結果、栃木県日光集団は、群馬県水上集団と共にアスナロのクレードに含まれることが示された。さらに、2変種の分布重複域の遺伝構造に関する知見を得るため、栃木県日光集団を対象に集団内の空間遺伝構造解析を行っている。
著者
高田 京比子 三成 美保 小浜 正子 田端 泰子 栗原 麻子 山辺 規子 長志 珠絵 河村 貞枝 福長 進 森 紀子 山本 秀行 京楽 真帆子 持田 ひろみ
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

アメリカ文学におけるますキュリニティー研究の成果を摂取しながら、日本史・東洋史、西洋史における母 - 息子関係の比較研究を行った。2006年度に3回、2007年度に5回、2008年度に1回の研究会と合宿発表会を持ち、それぞれの研究成果を発表して討論を行った。2008年には「家長権をめぐる<母>機能の比較史」というタイトルで比較家族史学会に於いてミニシンポジウムを行った。
著者
中村 信弘 斎藤 孝 藤井 慶博 高田屋 陽子 NAKAMURA Nobuhiro SAITO Takashi FUJII Yoshihiro TAKADAYA Yoko
出版者
秋田大学教育文化学部附属教育実践研究支援センター
雑誌
秋田大学教育文化学部教育実践研究紀要 = BULLETIN OF THE CENTER FOR EDUCATIONAL RESEARCH AND PRACTICE FACULTY OF EDUCATION AND HUMAN STUDIES AKITA UNIVERSITY (ISSN:24328871)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.149-158, 2017-03-31

特別支援学校に勤務する看護師を対象に医療的ケアに関するアンケート調査を行い,看護実践の問題や校内組織等の課題について回答を得た.その結果,病院で勤務する場合と学校で勤務する場合の看護実践の違いや,看護師が学校で医療的ケアを実践することの安心や不安に感じている事柄,校内組織で配慮すべき点等が明らかとなった.これらの結果をもとに,今後求められる看護実践力について考察するとともに,緊急時対応の必要性,看護師と教員によるチームアプローチの重要性を提起した.
著者
藤井 慶博 高田屋 陽子 FUJII Yoshihiro TAKADAYA Yoko
出版者
秋田大学教育文化学部
雑誌
秋田大学教育文化学部研究紀要 教育科学 = MEMOIRS OF FACULTY OF EDUCATION AND HUMAN STUDIES AKITA UNIVERSITY EDUCATIONAL SCIENCES (ISSN:13485288)
巻号頁・発行日
vol.72, pp.93-101, 2017-03-01

A questionnaire survey was conducted on teachers at schools for special needs education to identify the current state of development and use of individualized education support plans and to examine into policies aimed at effective application of such plans. The findings show that the teachers found development of such plans burdensome and that such plans were not being utilized effectively. For individualized education support plans to function effectively, support meetings by relevant parties, study in application systems and participation of special needs students and their guardians in plan development are regarded necessary. The findings reveals that in developing such plans it is necessary to study into formats that are suited to the real conditions at the school and to promote further coordination among relevant organizations. Additionally, it is suggested that the cooperation between the school and the students and their guardians will possibly contribute to career development of the student.

2 0 0 0 OA 愛児と共に

著者
高田義一郎 著
出版者
教育学習社
巻号頁・発行日
1942
著者
高瀬 英希 冨山 宏之 高田 広章
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. DC, ディペンダブルコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.559, pp.109-114, 2008-03-20

本研究では,マルチタスク環境にスクラッチパッドメモリを活用することにより,組込みシステムの命令メモリにおける消費エネルギーの削減を目指す.固定優先度付きの周期タスクが複数存在するシステムに対応した,スクラッチパッドメモリ領域分割方針を提案する.提案するスクラッチパッドメモリ領域分割方針は,領域分割法,時間分割法,および混合分割法の3種類である.各方針について,タスクごとの領域分割およびコード割当てを同時に決定可能な整数計画問題として定式化する.評価実験を行い,提案手法の有効性を確認した.
著者
佐藤 達雄 塩原 由紀江 大森 明文 芳野 未央子 久芳 慶子 高田 圭太 池田 由紀 元木 悟 小倉 秀一 工藤 光夫
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.303-307, 2009 (Released:2009-07-25)
参考文献数
13

黒色の液状マルチ資材が地温ならびにコマツナの生育,収量に及ぼす影響を明らかにするため,処理量を1,0.5,0.25 L・m−2区および無処理区の4水準3反復,播種日を2007年9月21日,10月5日,10月20日および2008年1月22日の4水準として組み合わせ,栽培試験を行った.その結果,液状マルチ資材は,散布量に関わらず無処理に比較して増収することが明らかになった.地下5 cmの温度を解析したところ,液状マルチ散布により最高地温は上昇するが,9月21日播種を除き最低地温は低下した.この現象はコマツナの生育初期に顕著であったが,生育に伴って,その差は小さくなった.播種後10日間の毎正時積算地温に有意な差は認められなかった.地温の日較差の増大はコマツナの増収に寄与した可能性が考えられた.
著者
一柳 昌義 山口 照寛 高田 真秀 東 龍介 黒井 和典 山田 卓司 高橋 浩晃 前田 宜浩
出版者
北海道大学大学院理学研究院
雑誌
北海道大学地球物理学研究報告 (ISSN:04393503)
巻号頁・発行日
vol.76, pp.1-13, 2013-03-19

On December 2, 2010, MJMA4.6 shallow felt earthquake occurred beneath southeastern part of Sapporo city. Three temporal seismic stations were installed near epicentral area. Reliable hypocenter data estimated by double difference procedure with local seismic velocity structure indicated clear southeastern-dipping distribution. Fault plane from focal mechanism estimated from P-wave polarization well agreed with this hypocenter distribution. Geometry of hypocenter distribution was also well consistent with an anticline structure and possible buried active fault estimated for earthquake disaster damage assumption by local government. Recalculation of hypocenters of the 1985, 1990, and 2010 felt earthquakes under equal condition implied that epicentral locations of these three events were approximately same. These facts implied possible stress concentration in epicentral region.
著者
高田 朝子
出版者
経営行動科学学会
雑誌
経営行動科学 (ISSN:09145206)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.233-248, 2013 (Released:2014-08-01)
参考文献数
41

When many women no longer wish or try to seek any advancement or promotion, we thought we had to find out what exactly had changed the respective attitudes and had motivated those women who presently hold mid-managerial positions. In this study we conducted qualitative research at four regional banks. As a result, we were able to develop a prescriptive implication with regard to fostering a better working environment, in which women's feeling of self-efficacy can be readily generated, fostered and developed so that women can step forward to seek promotion. To achieve the goals mentioned, we learned that we need to keep the door open for women to create broad internal networks and, irrespective of gender, we also learned and pointed out the importance of on-the-job experience of people mingling with and working with persons of excellent caliber.
著者
高田 利武 橋本 仁司
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.77-85, 1973-12-30 (Released:2010-11-26)
参考文献数
26
被引用文献数
1

本研究は不充分な正当化により惹起される不協和の効果とそれの発生する付加的条件を分析的に解明することを目的とする. Freedman (1963) は魅力を欠く作業を行なうことに対する正当化が少ない場合作業への好みが増大する “不協和効果” は, その正当化が作業に先だって与えられた場合に限って現われることを見出したが, 作業自体が著るしく魅力に乏しいものであれば作業後に正当化が与えられた場合でも “不協和効果” が生ずることが仮説され, 二つの実験が行なわれた.実験Iでは連続10分間休憩なしに加算作業を被験者に行なわしめることにより不快な興味に乏しい作業が創出され, 実験IIでは先行実験と同じく乱数を記入する作業が用いられた. 正当化の程度とそれを与える時期はFreedman (1963) に大略準拠して操作された.実験Iでは正当化を与える時期に拘らず正当化の程度が小である時にはそれが大である場合よりも有意に (p<. 01) 作業は魅力あるものと評価された. 一方実験IIでの作業は実験Iの作業よりも元来魅力のあることが判明し, ここでは正当化の程度とそれを与える時期との交互作用は有意 (p<. 01) で, 作業前に正当化が与えられる時にのみ “不協和効果” が得られ, 先行諸実験の結果と一致した. これらは上記の仮説を支持するものである.以上の結果に関連して, 発生した不協和の低減手段および正当化の時期と不協和発生の有無について若干の論議がなされた.
著者
大鳥 徹 井上 知美 細見 光一 中川 博之 高島 敬子 近藤 尚美 高田 亜美 伊藤 栄次 中山 隆志 和田 哲幸 石渡 俊二 前川 智弘 船上 仁範 中村 真也 窪田 愛恵 平出 敦 松山 賢治 西田 升三
出版者
日本社会薬学会
雑誌
社会薬学 (ISSN:09110585)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.94-101, 2016-12-10 (Released:2017-02-09)
参考文献数
12

In the areas of home medical care and self-medication, the role of the pharmacist is growing, partly as a result of Japan’s aging society and the need to reduce medical costs. In response, the Kinki University Faculty of Pharmacy implemented a physical assessment practical training seminar in order to improve the physical assessment skills of practicing pharmacists. A series of questionnaires were conducted among pharmacists to investigate their perceptions of physical assessment practical training seminars. The results of the questionnaires were analyzed using Customer Satisfaction (CS) analysis and text mining. Based on a 5-point scale (1-low∼5-high), questionnaires revealed satisfaction for physical assessment practical training seminars was 4.6±0.6 (Ave.±S.D.). CS analysis revealed that the items “lectures” and “case seminars” had the highest level of satisfaction. However, items showing low levels of satisfaction were “auscultation of respiratory sounds” and “SBAR (Situation, Background, Assessment, Recommendation).” Results of text mining suggested a relationship between “physical assessment” and “difficult”. Analysis of the questionnaires showed a high level satisfaction with physical assessment practical training seminars, notably physical assessment practice methods. However, CS analysis and text mining indicate the finer techniques of physical assessment were difficult to acquire.