著者
神津 武男 黒石 陽子 井上 勝志 久堀 裕朗 鈴木 博子
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

江戸時代・近世期の「人形浄瑠璃文楽」(義太夫節成立以後の人形芝居)の上演記録は、『義太夫年表 近世篇』(八木書店。1979~1990年)の成果を最新とする。しかしその完結から20年余を経て、少なくとも四次の補正更新情報が別々に報告されている点が、利用上の障壁となりつつあった。本研究課題としては最も基本的な資料である「番付 ばんづけ」についてデータベース化を進め、一元的な情報検索を可能とすることに努めた。
著者
松岡 心平 天野 文雄 磯田 道史 小川 剛生 落合 博志 小林 健二 高桑 いづみ 高橋 悠介 橋本 朝生 宮本 圭造 山中 玲子 横山 太郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

観世文庫の能楽関係資料は、質・量ともに能楽に関する最重要の資料群である。本研究では、これらの資料の調査・研究に基づき、インターネット上で画像と解題を公開するデジタル・アーカイブ「観世アーカイブ」を拡充させると共に、これを活用して、近世能楽史の研究を大きく進めた。特に、15世観世大夫元章(1722~74)の能楽改革に関する研究に重点を置き、観世元章に関する用語集と関係書目、年譜をまとめ、刊行した他、元章による注釈の書入れが顕著な謡本『爐雪集』の翻刻と検討を行った。さらに、観世文庫に世阿弥自筆能本が残る「阿古屋松」の復曲を行い、観世文庫資料の展覧会でも研究成果を公開した。
著者
PATRICK Rebollar 松村 剛 丸岡 高弘 真野 倫平 クーロン ダヴィッド ペロンセル モルヴァン 一丸 禎子
出版者
南山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究は東京大学総合図書館所蔵コレクション『マザリナード集成』約2700点を完全デジタル化し、世界に先駆けマザリナード文書のオンライン・デジタルコーパスとしてインターネット上に公開した。これにより世界的にも貴重な原資料の保護と継承のみならず、新たな学術研究の可能性を開くことに貢献した。本研究により実現したコーパスの特徴は従来型データ・ベースと異なり、研究者によって絶えず更新され、最新の知識が一般にも共有されることである。日本が発信したこの新しい知の共有・集積方法(マザリナード・プロジェクト)は最も先端的かつ学際的な「マザリナード文書の研究用プラットフォーム」として国際的に機能し始めている。
著者
林 晋 相原 健郎
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

人文学、特に史料ベースの人文学のための、ネット上分散協働作業用プラットフォーム HCP サーバを構築し、歴史研究用ツール SMART-GS を、そのクライアントに改造した。また、同クライアントによるオンサイト・リアルタイム協働の概念を導入し、そのための種々の機能を開発した。
著者
塩田 邦郎 高橋 英司 遠矢 幸伸 明石 博臣 高橋 英司 前田 健 宮沢 孝幸 塩田 邦郎 堀本 泰介
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

ネコ免疫不全ウイルス(FIV)は、後天性免疫不全症候群(エイズ)様症状のネコから分離され、ヒト免疫不全ウイルスと同じくレトロウイルス科レンチウイルス属に分類される。本研究はFIV感染防御上大きな役割を担っていると考えられるCD8陽性細胞およびNK細胞を中心に、そのphenotypeと抗FIV活性を解析することを目的としている。当該研究期間において以下の項目について研究を行い、新たな知見を得た。1.NK細胞マーカーの解析:ネコFcγRIII-Aの膜貫通型分子のクローニングとネコCD56抗原のバキュロウイルス組換え発現に成功した。CD56についてはモノクローナル抗体(MAb)も作製した。2.CD8α+β-or low細胞群の解析:ネコCD3εを組換え発現させた蛋白を抗原としてMAbを作製し、FIV増殖抑制活性を有するCD8α+β-or low細胞群のフローサイト解析に用いた。その結果、当該細胞群はT細胞系であると考えられた。3.ネコCD2の性状解析:免疫応答において重要なT細胞表面抗原CD2のネコホモローグをクローン化してその塩基配列を決定した。解析したcDNAには1008塩基対の翻訳可能領域が含まれており、336アミノ酸をコードし、その配列は他の動物と46〜57%の相同性を有していた。さらに、抗ネコCD2MAbを作製したところ、得られた抗体はネコCD2のEロゼット形成を阻止し、フローサイトメトリーによるネコ末梢血中のCD2陽性細胞の検出に有用であることが示された。4.ネコCD11aの抗体作製:CD2と同様、免疫応答に重要な接着分子CD11aのネコホモローグのcDNAをバキュロウイルスにより組換え発現させ、抗ネコCD11aMAbを作製した。T細胞の活性化に伴うCD11aの発現量増加が認められ、ネコ末梢血中の活性化T細胞の解析に有用であった。
著者
鈴木 康夫
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

1.香港(1999年)におけるウズラおよびニワトリからのインフルエンザウイルス分離株の一部は、ヘマグルチニン(HA)分子内アミノ酸226がトリ型からヒト型へ変異していることを見出した。この結果は、自然宿主カモのウイルスが家禽宿主に伝播し、流行している間に、宿主動物の受容体糖鎖による進化上の選択を受け、HA分子内のアミノ酸置換起こり、その置換がヒト型受容体認識特異性を持った場合、ブクを介さず直接ヒトへ伝播する可能性を見出した。2.発育鶏卵しょう尿膜中に、トリまたはヒトインフルエンザHAと特異的に結合するシアロ糖脂質を発見した。また、ヒト、トリ、ブタ、ウマウイルスのいずれにも強く結合できるシアロ糖脂質も見出した。後者は、ヒト、その他の動物インフルエンザウイルス共通の受容体であることが示された。その部分化学構造も明らかにした。3.ホンコン風邪(A/1968,H3N2)の原因ウイルスイラミニダーゼスパイク(NA)は、酸性pHに安定であり、トリウイルスNAの性質を持つことを発見した。また、1968年に発生したパンデミック株(H3N2)のN2は、1971年以降に出現した流行株H3N2のN2ではないことを見出した。4.インフルエンザウイルス感染を阻害する数種の新HA阻害剤を見出した(シアリルラクトサミン含有ポリグルタミン酸、HA3量体の受容体認識ポケットにはまる新規インフルエンザウイルス感染阻害物質、水棲バクテリアから見出した中性グリセロ糖脂質他)。また、グルコサミン6-硫酸および硫酸化スフィンゴ糖脂質(スルファチド)によるNAの阻害活性を見出した。
著者
渡部 重十 小野 高幸 阿部 琢美 齋藤 昭則 大塚 雄一 山本 真行
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

スペースシャトル,宇宙ステーション,人工衛星が飛翔する高度100km以上の熱圏には,中性大気中に0.01%ほどのプラズマが混在している.プラズマは磁力線に束縛された運動をするため,中性大気とプラズマ間には無視できない運動量輸送が存在する.最近の衛星観測やモデリングは,中性大気の運動がプラズマの運動に強く依存していること,電磁場を介したプラズマの運動が中性大気の運動をコントロールしていること,熱圏中性大気の東向きスーパーローテーションがプラズマとの相互作用に起因している可能性があること,を明らかにした.しかし,中性大気とプラズマの運動を熱圏上部で同時に測定した例はない.平成19年9月2日19:25に宇宙航空研究開発機構/内之浦宇宙空間観測所からS520ロケットを打ち上げた.このロケットにリチウムガス放出装置とプラズマ・電磁場観測装置が搭載された.〜1000Kのリチウムガスを230km,190km,140km高度でロケットから放出した.リチウムガスによる太陽光の共鳴散乱を地上の多地点から観測し,上部熱圏風の高度分布を測定することに世界で初めて成功した.リチウムガスの拡散から大気温度と密度の高度分布を得ることにも成功した.中性大気の物理パラメータとロケットに搭載したプラズマ測定と比較することにより,中性大気とプラズマ間の相互作用過程を解明することが可能となる.本研究により,ロケットからのガス放出技術,高感度CCDカメラを用いた地上観測技術,画像解析による大気パラメータの導出技術,を確立することもできた.
著者
植野 真臣 森本 康彦 藤原 康宏 永森 正仁 橋本 貴充 安間 文彦 安藤 雅洋
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本eポートフォリオ・システムの特徴は、(1)個人のeポートフォリオを構造化し、ハイパーリンクでつなぐことにより、多様なパスで有用な他者情報の発見を支援する、(2)高度な検索機能により、キーワード検索、過去の優秀なレポートやテスト成績の良い学習者、相互評価の高い学習者などが容易に検索できる、(3)すべての階層で多様なアセスメント機能が用意されており、自己のリフレクションを誘発するだけでなく、優秀な他の学習者の発見に利用できる、などが挙げられる。実データより、本システムの有効性を示す。
著者
青木 周司 菅原 敏 佐伯 田鶴 中澤 高清
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

人間活動によって大気に放出された二酸化炭素が陸上生物圏と海洋にどのくらい吸収されているかを定量的に評価するために、二酸化炭素濃度と炭素同位体を組み合わせて解析する方法と、酸素濃度と二酸化炭素濃度を組み合わせて解析する方法を実施した。まず二酸化炭素濃度と炭素同位体を組み合わせて解析することによって得られた人為起源二酸化炭素の陸上生物圏と海洋による吸収量を1984-2000年の期間について評価した。その結果二酸化炭素吸収は、陸上生物圏について1.21GtC/yr、海洋について1.59GtC/yrとなり、観測期間全体を平均すると陸上生物圏も海洋も二酸化炭素の吸収源となっていたことが明らかになった。これらの吸収源の強度は年々変動しており、特に陸上生物圏による吸収がエルニーニョ現象や火山噴火による異常気象の影響を強く受けて変化することが明らかになった。一方、酸素濃度と二酸化炭素濃度を組み合わせることによって評価した1999-2003年の二酸化炭素吸収は、陸上生物圏について1.1±1.0GtC/yr、海洋について2.0±0.6GtC/yrと見積ることができた。2つの独立した研究から得られた成果を観測期間がほぼ重なっている時期について比較した。陸上生物圏による二酸化炭素吸収量は、二酸化炭素濃度と炭素同位体から得られた1994-2000年の値が0.90GtC/yrであり、酸素濃度と二酸化炭素濃度から得られた値が1.1±1.0GtC/yrと評価された。また、海洋による二酸化炭素吸収量は、二酸化炭素濃度と炭素同位体から得られた1994-2000年の値が1.73GtC/yrであり、酸素濃度と二酸化炭素濃度から得られた値が2.0±0.6GtC/yrと評価された。2種類の全く異なった研究方法によって得られた結果が良く一致しているため、本研究によって信頼性の高い結果が得られたと考えられる。
著者
北川 進 水谷 義 遠藤 一央 藤戸 輝明 張 浩徹 近藤 満
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

電場印加下観測用にワイドボア個体NMRプローブを新規設計、作製をした。観測用高出力アンプは米国AMT社製のM3200を使用した。サンプルセルは、0.5mm〜2.0mm厚のダイフロン製板の両側から二枚の厚さ1.0mmのITOガラス板を挟むことによって作製した。検出器部のゴニオヘッド内にあるサンプルセル挿入部(ダイフロン製)は回転可能とし、NMRマグネットの磁場に対して-90°〜+90°配向した電場を印加することが可能であるように作製した。^1Hデカップルの際発生する熱を下げるため、NMR本体からチューブで冷却風を強く送り、サンプルセル周りの熱上昇を防ぐ処置を取った。高電圧発生装置として、高電圧高速電力増幅器を用い、直流電圧を0V〜500Vに渡って印加することができるようにした。電場応答性を示すサンプルとして室温でネマチック相である液晶分子4-Cyano-4'-n-pentylbiphenyl(5CB)を用い、25℃下で段階的に電場を磁場に対して垂直に印加しながら^13C CPNMRを測定した。その結果、電場を段階的に印加した状態で測定することにより、電場に依存する分子の局所的運動や電子状態などの様々な情報が得られることが分かった。別途、双極子を有する配位子を組み込んだ多数の配位高分子結晶の合成に成功した。
著者
山田 知充 西村 浩一 伏見 硯二 小林 俊一 檜垣 大助 原田 鉱一郎 知北 和久 白岩 孝行
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

近年の地球温暖化の影響であろうか、半世紀ほど前からヒマラヤ山脈の南北両斜面に発達する表面が岩屑に覆われた谷氷河消耗域の末端付近に、氷河湖が多数形成され始めた。ところが、同じ気候条件下にあり、同じような形態の谷氷河であっても、ある氷河には氷河湖が形成されているのに、他の氷河には氷河湖が形成されていない。何故ある氷河には氷河湖が形成され他の氷河には無いのであろうか?今回の研究によって、氷河内水系、岩屑に覆われた氷河の融解速度と氷河の上昇流速から計算される氷河表面の低下速度(氷厚の減少)を考慮した氷河湖形成モデルを導き出すことによって、この問題に対する回答を得ることができた。氷河湖が一旦形成されると、その拡大速度は非常に大きく、わずか30〜40年の間に、深さ100m、貯水量3000万〜8000万m^3もの巨大な湖に拡大成長する。何故これほどの高速で拡大するのであろう?氷河湖の拡大機構を以下のように説明出来ることが分かった。太陽放射で暖められた氷河湖表面の水が、日中卓越する谷風によって、湖に接する氷河末端部に形成されている氷崖へと吹送され、氷崖喫水線下部の氷体を効率よく融解する。そのため、下部を抉られた氷崖が湖へと崩れ落ちる(カービング)ことによって、湖は急速に上流側へと拡大する(氷河は逆に効率よく縮退する)。一方、湖底の氷は約2〜3℃の水温を持つ湖水で融解され、水深を増す。この両者によって湖は拡大している。湖の熱収支を計算すると、湖に崩れ落ち小氷山となって漂う氷の融解と湖底氷を融解させるに要する熱量は、アルベドの小さな湖表面が吸収した太陽放射エネルギーで主に賄われていることを確認した。研究成果の一部は3冊の英文報告書及び、3冊の邦文研究報告書として出版されている。
著者
氏家 達夫 二宮 克美 五十嵐 敦 井上 裕光
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、愛知県と福島県の中学生を3年間追跡し、問題行動の消長パターンと親や本人の心理的要因との関連を縦断的に明らかにしようとするもめである。調査は、子どもに対しては、平成14年9月から平成16年9月まで、およそ4ヵ月間隔で、合計7回実施した。親については、平成14年9月、平成15年9月、平成16年9月の3回実施した。調査内容は、子どもの非行や抑うつの問題行動、自己価値感、子どもの気質特徴、対処方略、友人の行動、友人との関係、親行動や親の夫婦関係、学校適応、などであった。各回約1000組を超える親子が参加した。縦断データとして分析可能だったのは、212名であった。明らかになったことは、非行については、非行行動の深まりに特定のパターンが認められること、抑うつと非行の問に関連があること、子ども自身の気質特徴が関係していること、親は必ずしも子どもの非行を把握できていないこと、友人の影響が親の影響より大きいことなどである。抑うつについては、抑うつ症状を呈すると判断される子どもはサンプルの20%程度に上ること、しかも継続的に抑うつ症状を報告する子どもが縦断サンプルの10%程度に上ること、抑うつに対する親の影響は限定的で間接的であること、自己概念や友人との関係が強い影響力を持っていること、などである。これらの分析結果は、ベルギー・ゲントで開催された世界行動発達学会(ISSBD)において3件、アトランタで開催された児童発達学会(SRCD)において2件、サンフランシスコで開催された青年発達学会(SRA)で4件の口頭発表でそれぞれ報告された。国内学会で41件の口頭発表で報告された。また、4本の論文を公刊した。
著者
寺本 研一 高瀬 浩造 寺岡 弘文 有井 滋樹 斉藤 佳子 田中 雄二郎
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

1)ES細胞より肝細胞の分化誘導に関する研究前年度までの研究で、我々はマウスES細胞より胚様体細胞を経由してアルブミン産生細胞を分化させることに成功した。この細胞は尿素合成能、アンモニア分解能を持ち、肝細胞にきわめて近い細胞と考えられた。この細胞をC57BL/6マウスに肝障害の条件下細胞移植したところ生着し、アルブミンを産生した。しかしながら、同時に20-30%の頻度で奇形腫の発生をみた。今回、奇形腫発生を抑制するために、細胞のセレクションを行った。まず、胚様体細胞より単層細胞培養を行い15日目に分離し、パーコール法により比重で細胞をセレクションした。この細胞群はoct3/4の発現はネガティブであった。この細胞を上述の肝障害モデルマウスに移植したところ奇形腫の発生は認めなくなった。以上より、ES細胞より奇形腫の発生しない細胞群の回収が可能になった。また、さらにこの細胞群をFACS, MACSを使用し他の血球成分を除去することによりアルブミン陽性細胞を多く得ることが可能になった。また、これらの細胞は四塩化炭素による強い肝障害マウスにおいて凝固因子を有意に増加させることが判明した。2)カニクイザルES細胞ES細胞の臨床応用を目指して霊長類カニクイザルES細胞から肝細胞の分化誘導を試みた。霊長類ES細胞の分化誘導はマウスES細胞の分化誘導と異なる方法が必要であるが、我々の方法でアルブミン産生細胞を誘導することができた。3)血からの肝細胞の分化誘導我々は膀帯血からの肝細胞分化誘導に成功したが、アルブミンとCK-18、アルブミンとCK-19を発現する2種類の細胞を確認した。現在、胆管上皮細胞に分化誘導が可能かどうか研究中である。
著者
矢持 進 江口 充 重松 孝昌 小田 一紀 角野 昇八
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

・本人工干潟は,造成3ヶ月後は窒素生成の場(5.4kg/day)となっていたが,造成から1〜2年経過した時点では窒素固定の場(1年目:-4.7kg/day,2年目:-3.6kg/day)に変化した.さらに,造成3年後には再び窒素生成の場(1.2kg/day)に転じた.人工干潟が栄養物質のSourceかSinkかについては,優占動植物の動態に依存しており,生物相が安定しない若い人工干潟では不安定であると推察された.なお,造成から1〜2年経過した本人工干潟の総窒素固定量(2001年:735mg/m^2/day,2002年:554mg/m^2/day)は,同じ大阪湾に位置する甲子園浜のそれの(356mg/m^2/day)の1.6〜2.1倍であった・小型底生動物の個体数,種類数,湿重量はL.W.L.0〜-2.0mの水深帯で高い値を示した.L.W.L.0mより上部については干出時間が長くなることや砕波による底質攪乱の影響で生物相が貧困になると考えられた.また,L.W.L.-2.0m以深の生物相が貧困になることについては,地盤高が低くなるにつれて底質悪化していることや貧酸素化の影響が考えられた.したがって,浚渫土砂を活用して大阪湾東部沿岸域に人工干潟を造成する場合,底生動物の生息から見た地盤高としてはL.W.L.0〜-2.0m帯の面積を多くすることが望ましいと考えられた.
著者
野原 精一 広木 幹也
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

水循環機能と微生物の分解機能からモニタリングを行い、自然の干潟・湿地である盤洲干潟・小櫃川河口湿地の比較し、事業規模でより現実的な自然再生の事業評価手法を開発することを目的とした。本研究では、小櫃川河口干潟における現存の相勘植生図を過去の資料及び航空写真から判読した地形変化と比較しながら、植生変化及びその要因について検討した.1974年、1984年、2001年の相勘植生図を比較した結果、後背湿地全体の面積は1974年で24.89ha、1984年で29.18ha、2001年で29.29haと拡大した.1974年、1984年、2001年の各植生タイプの面積を比較した結果、塩湿地植物群落ではシオクグ群落、ハママツナ群落、ヨシ群落などの満潮時冠水型は縮小し、アイアシ群落の満潮時非冠水型は拡大した.コウボウシバ群落、ハマヒルガオ群落などの砂丘地植物群落、チガヤ群落、オギ群落などの草原性植物群落、テリハノイバラ群落、アズマネザサ群落などの木本類群落は縮小した.(景観生態学9(2):27-32,2005)沿岸帯の2つの典型的な沿岸帯である砂質浜および塩生湿地において二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素の放出速度を2003年夏に測定した。地球温暖化ガスの純放出量の定量的把握と2地点でのガス放出量の変動に関与する重要因子を明らかにする目的で実施した。二酸化炭素とメタンの放出量の大きさや変動は2地点でことなっており、塩生湿地より砂質浜で低かった。亜酸化窒素の放出の大きさと変動は2地点で類似していた。砂質浜での温暖化ガス放出の時空間的な変動は潮の干満による水位変動により強く支配されていた。塩生湿地では3種類のガスの空間的変動は地上部現存量と関係しており、二酸化炭素とメタン放出量の時間的な変動は土壌温度に相関が高かった。観測した温暖化ガス放出量から推定した塩性湿地における地球温暖化ポテンシャルの合計は砂質浜に比べて約174倍高かった。(Chemosphere68:597-603,2007)
著者
鈴木 広光 矢田 勉
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、印刷術の導入と出版メディアの発達によって、平仮名の字体・書体がどのように変容したのかを明らかにすることである。古活字版と江戸時代の整版本の印刷書体の特徴を明らかにするため、文献資料を高精度のデジタル画像におさめ、印字の画像にアノテーションを付けるという新しい分析方法を採用した。研究の成果は以下の通りである。(1)嵯峨本『伊勢物語』慶長13年再刊本における全ての印字の調査を行い、活字の種類とその使用状況を明らかにした。また同書の印字標本集を編纂した。この調査によって、再刊本に使用された活字のうち、この刊本で使用するために新彫された活字はわずかに三割であり、残りの七割は初刊本の活字を再利用したものであることが判明した。従来、再刊本は主として新彫された活字で印刷されたといわれてきたが、この調査結果はその説を訂正するものである。(2)嵯峨本とその他の平仮名交り文の古活字版における活字の書体を比較し、その特徴を分析した。その結果、ほとんどの古活字版において、規格化された活字サイズによる仮名文字の均一化が確認された。その一方で、嵯峨本では仮名文字の伸びやかさを再現するために、さまざまな工夫がなされていることが明らかになった。(3)江戸時代の整版本については、平仮名書体の通時的な推移の様相を明らかにするために、前期の資料と後期の資料の比較を試みた。調査の結果、前期の版本と比較して、後期の版本には、連綿の減少、文字の大きさの均一化、書体の定型化といった特徴が見られることがあきらかになった。
著者
横田 俊平 森 雅亮 相原 雄幸
出版者
横浜市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

乳幼児に発生するインフルエンザ脳症は症状の経過が急速で予後は不良であるが、病態メカニズムは不明な点が多い。しかし最近の報告から脳内の炎症性サイトカインの異常増多が原因と推察されている。今回ラットの髄液中にリポポリサッカライド(LPS)を投与し、中枢神経内に高サイトカイン状態を誘導し、それが中枢神経および全身に及ぼす影響を検討した。LPS髄注により髄液中のTNFαをはじめとする炎症性サイトカインは上昇し、LPS大量投与群のみ血清中の炎症性サイトカインも上昇した。脳組織内にサイトカインmRNAが認められ、免疫染色にてNFkB陽性細胞が認められることよりサイトカイン産生細胞はmicrogliaと推察された。組織学的検討では神経細胞、glia細胞のapoptosisが証明され、またLPS髄注により血液中のFITC-DEXTRANの脳組織内への漏出が認められ脳血管関門の破綻が組織学的に証明された。さらに脳組織内でcytochrome cの細胞質内への流出が認められ細胞障害がTNFαによるapoptosisであることが示唆された。以上のことよりLPSによるmicrogliaの活性化により中枢神経内の高サイトカイン状態が誘導され、過剰な炎症性サイトカインは神経細胞のapoptosisにより中枢神経機能不全をきたし、同時にastrocyteの障害により脳血管関門は破綻し、全身性に高サイトカイン血症をきたすことが実験的に証明された。
著者
大橋 和彦 高木 道浩 杉本 千尋 小沼 操
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

ウイルス、細菌などの病原体には標的細胞への吸着の際、細胞表面糖鎖をレセプターとして利用しているものが多く、このようなレセプターをワクチンなどに利用すれば、株間で抗原性が異なる病原体に対しても広く有効な防除法を開発することが可能になる。そこで感染症防除のためにこれらの糖鎖を擬態できるようなペプチドを探索・同定し分子擬態利用法を開発するため、ウイルス(NDV)をモデルとしてNDVレセプター構造を分子構造的に模倣するレセプター擬態ペプチド分子を探索し、そのNDV感染に対する防御能を検討した。NDVヘマグルチニン-ノイラミニダーゼ(HN)抗原を標的として特異的に結合するペプチド分子をランダムペプチドライブラリー(6mer〜8merのペプチドを含む)よりファージディスプレイ法とバイオパンニング法により探索した。その結果、NDV HN抗原に対して特異的結合性を示す3種類のファージクローンが得られた。得られたクローンの塩基配列・アミノ酸残基を解析した結果、EVSHPKVG、WVTTSNQW、SGGSNRSPの3種類のアミノ酸配列が擬態分子として同定された。さらに各ファージクローンのNDV特異的結合能は、抗NDVニワトリ抗血清を利用したELISA競合阻止試験によっても確認された。次にこれらの各ファージクローンより予想されたアミノ酸配列をもとに合成ペプチドを作製し、NDV粒子に対する結合能や感染防御能を解析した。3種類の合成ペプチドはNDVによる赤血球凝集活性を阻止できなかった。しかしながら、ウイルス中和試験の結果、これらのペプチドが部分的にNDVの感染を中和できることが示された。今後、これらのペプチドが結合するNDV粒子状の分子を明らかにするとともに、そのアミノ酸配列をもとに、よりNDV感染阻止能力の高いアミノ酸配列を模索し、in vivoにおける効果を検討することが、臨床応用に向けて必要となる。
著者
杉本 晃宏 松山 隆司
出版者
国立情報学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究では、ユーザが手にし、それを持ち変えて観測している物体を装着型視覚センサでとらえ、その物体の3次元形状、及び、表面情報を復元する手法の確立を目指している。本研究によって得られた成果は、以下のようにまとめられる。1.装着型能動視覚センサを用いた視線検出:視線測定装置とコンピュータ制御可能な2台の首振りカメラで構成される装着型能動視覚センサを構築した。そして、視線測定装置と2台の首振りカメラを強調させることによって、周囲の奥行きが場所毎に大きく変わる環境でも、正確にその視線情報を検出する手法を考案した。2.3次元把持物体の形状復元:把持物体の全形状を復元するためには、物体を手で持ち変える前後で復元された部分形状を張り合わせる必要がある。本研究では、復元された部分形状を距離画像として捉え、物体表面の局所構造を保持する距離画像の張り合わせ手法を考案した。3.3次元把持物体の表面情報の復元:対象物を手で持ち変える前後で得られた画像群の明度情報を解析して、環境中での証明の強度と物体表面の反射特性との両方を推定する手法を開発した。本手法は、複雑な分布をもつ一般照明下において反射率を正確に推定することが可能であるという点において従来手法にはない特長を備えている。4.装着型能動視覚センサを用いた運動推定:2台の能動カメラそれぞれを注視点制御することにより、3次元空間中を自由に移動する人物の運動を逐次的に推定する手法を考案した。本手法は、装着した2台のカメラの基線長に依存せずに、長い運動に対しても、高精度な推定を安定に実現する手法となっている。
著者
大滝 純司 水嶋 春朔 北村 聖 加我 君孝 前沢 政次
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

昨年度までの研究活動に引き続き、以下の研究活動を行った。1.一次調査の結果を発表昨年度に実施したFGI調査の分析結果をまとめて、日本医学教育学会で発表した。2.二次調査の計画立案昨年度までの調査結果をもとに、二次調査として、全国規模のアンケート調査(多施設調査)を計画した。(1)調査対象の種類と数の検討研究班内で議論し、最終的に国内の研修病院(10カ所程度)の通院患者を調査対象に定めた。(2)調査対象者選定方法の検討調査対象病院の選定方法(層別など)について、資料を収集し研究班内で検討した。(3)質問紙原案の作成昨年度までの調査結果を参考にしながら、二次調査で用いる質問項目を検討し、質問紙の原案を試作した。(4)倫理審査二次調査に関する倫理面の審査を筑波大学の審査委員会に申請し承認を得た。3.質問紙原案による予備調査の実施試作した質問紙原案を用いて、某病院の内科外来患者を対象に予備調査を実施した。実施した結果を分析して質問紙を改良した。また、調査の運営方法などに関しても、この予備調査の経験をもとに再検討した。4.二次調査の実施調査対象病院の候補を選定し、調査への協力を依頼した。了承が得られた病院の内科外来患者を対象に、改良した質問紙を用い、対象者の同意を得て、二次調査を実施した。全体で10病院の521名から回答が得られた。5.二次調査の集計と分析、報告書の作成二次調査の結果を集計・分析し考察を加え、報告書を作成した。