著者
広瀬 統一 鳥居 俊 小野 高志 笹木 正悟
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は成長期男女サッカー選手の形態と運動能力が発達する時期を、身長発育急増(PHVA)で区分けした成長段階を用いて明らかにすることを主目的とした。PHVA評価指標の検討と、各年齢の運動能力リファレンスデータ確立も目的とした。本研究の結果、跳躍能力はPHVA年齢の1年後(女子)や2年後(男子)に変化し、除脂肪体重の変化以外の要因も影響すること、方向転換能力はPHVA前に変化し、減速能力向上が主に影響すること、間欠的運動能力の変化はPHVA区分で差がないことが明らかとなった。また、PHVA推定式のMaturity Offset法はPHVAを高く見積もり、補正が必要であることが明らかとなった。
著者
桜井 武
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

ストレスや不安にかかわる大脳辺縁系と覚醒系の相互関係を神経科学的に解明するために研究を行なった。ノンレム睡眠のマウスに分界条床核のGABA作動性ニューロンを光遺伝学的に刺激すると直ちに覚醒に移行した。この作用はオレキシン拮抗薬によって阻害されなかった。一方、化学遺伝学的にこれらのニューロンを興奮させると覚醒時間が延びたが、この作用はオレキシン受容体拮抗薬によって阻害された。一方、オレキシンの下流における青斑核のノルアドレナリンニューロンが扁桃体外側部を介して恐怖行動を増強し、汎化に関与することを見出した
著者
大田 えりか 本田 由佳 森崎 菜穂
出版者
聖路加国際大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は、研究代表者が一貫して実施してきた我が国の低出生体重児に関する包括的研究(平成24-25若手B 平成26-28若手B)の知見を基に、妊娠中の女性を対象とした適切な体重増加と食事摂取に関するパッケージを作成し、モバイルアプリケーションを用いた介入を実施することを目的としている。2020年度は、アプリケーションの開発に向けたプログラムをアプリケーション開発業者と議論を重ねながら開発した。エコチル調査を用いた妊娠中の体重増加量に関するデータ解析、アプリケーションのデータベース基盤構築・アプリのコンテンツ開発を実施し、アプリケーションに盛り込むプログラム作成を行った。また、倫理審査と実証調査用のプロトコールを作成した。今回開発しているのは、エコチル調査のコホートデータに基づいた健康な妊婦(基礎疾患のない)を対象とした体型別の週数別適切な体重増加量範囲である。週数別の胎児の出生体重がSGA(small for gestational age)やLGA(large for gestational age)のリスクが高い場合には、もう少し体重を増やした方が良い、または控えたほうが良いなど、体重を入力すると、週数別に個別にアドバイスがでる。
著者
澤 亮治 和田 健太郎 藤嶋 翔太 図斎 大 府内 直樹
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

限定合理的な人々が相互依存しあう社会における制度設計の分析手法の確立を目指す。制度設計の一手法であるEvolutionary Implementation(進化的制度設計)は、人々が相互作用しあう状況を進化ゲームによりモデル化し、人々の行動遷移を考慮した動的な制度の設計が可能である。大規模な社会システムの設計に適していると考えられるが、一様なプレイヤーの仮定など、手法の適用を困難とする制約がある。数理解析・シミュレーション技法により適用上の課題を解決し、この手法の汎用化を目指す。
著者
吉浦 康寿 吉川 廣幸 木下 政人
出版者
国立研究開発法人水産研究・教育機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

現在、ゲノム編集技術による養殖魚の品種改良が注目されているが、実用化した場合、環境保護の観点において、ゲノム編集魚の逃亡による野性魚との遺伝子交雑問題は避けられない。そこで、養殖魚の不妊化に着目した。魚類では、三倍体化等の不妊化技術はあるものの、いずれの方法も実用化にあたり確実性が乏しい。本研究は、ゲノム編集技術を用いて100%の不妊化が可能な遺伝的不妊魚の作出を目指す。また、この不妊魚は次世代を作出できないため、大量生産が難しい。この課題を克服するため、代理親魚法を利用して、これらの遺伝的不妊魚を簡便かつ大量生産する技術を開発する。
著者
古東 哲明 高橋 憲雄 原 正幸 中村 裕英 青木 孝夫 桑島 秀樹
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

1.研究実習・研修会の開催と実践的コラボレーション:臨床哲学研究会(計100回)および人間文化研究会(計20回)を開催した。新皇ゼミナール(計30回)を通じ広島県の政・財・官のトップリーダーへの思想啓蒙活動を行った。また研修講演会(計10)を開催すると同時に、実技指導、ワークショップを行なった。2.海外調査・研修:原、町田、菅村が中国(武漢/昆明/西安)へ、中村がイタリア、島谷がポーランド、大池がアフリカ、辻が韓国、村瀬がフランス、堀江がドイツ、桑島がアイルランドへ渡航し、現地調査・資料収集にあたるとともに、海外研究者との研究交流を行った。3.電子装置整による研究環境づくり:購入したパソコンを駆使し、データベース構築を充実させ、内外の研究者や関心ある医療現場・学校教育・宗教的治癒現場のスタッフ、一般市民との交流環境を整備した。4.資料室・機械室設営と図書収集・工房環境整備:思想資料室、芸術工房を整備し、芸術学、応用倫理学、現代思想、日本思想に関する諸文献を収蔵し、研究者が常時閲覧できるようにするとともに、カメラやTVなど各種電子機器による実習環境を整えた。5.理論構築と実践的技法の探求:上記資料の精密な解読により、研修や調査と関連づけながら、諸論文を執筆しあたらしい哲学や実践理論や倫理論や美学を構築し論文を作成し、各学会で公開すると同時に、綿密な報告書を作成した。6.機関誌及びニューズレターの編集と発刊:執筆者を内外ひろく募り、新規購入の印刷機器を駆使し、『臨床哲学研究』第5〜8号を発刊した。ニューズレター『制作科研通信』等を定期的に発刊した。
著者
青木 孝夫 原 正幸 樋口 聡 桑島 秀樹
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

申請書の研究の目的に示したように、藝道に代表される日本の伝統的藝術観は、西欧の近代的藝術観から疎外される形で成立したが、現代文化に於いて重要な意義を担っており、作品に結実する独創性の美学とは別の藝術的実践の美学を支えている。その藝道思想の現代的活用の探求を進め、美的文化の日常的実践やその身心観を考察した。天才や独創性の神話を離れて展開した藝術は、複製技術の普及と絡み広範な美的実践として姿を現し、従来の藝術の境界を突き崩し拡大している。この点の探究を、研究の実施計画に従い、各分担者が進めた。その具体的内容を記す。青木は、上記の事態を習い事や美的教養の伝統に即して解明し、また文化の日常的な実践や礼儀・作法など藝道の名では呼ばれていない、実践するアートの享受と自己涵養の思想的解明に尽力した。樋口は現代の文化的実践が前提する東洋的身心観の特性を西欧との比較の上に探究を進め、知的藝術観とは異なる身心の涵養に関わる東洋的身心観及び藝術観を考察した。原は、現代の文化実践を支える東洋の礼楽思想や音楽的実践などを、東西の古典に即し比較学的に推進した。桑島は、現代文明が生み出した美的理念でもある崇高が、所謂藝術現象に限定されない広汎な文化現象と関わることに着目し、その淵源を理論的歴史的に探究し、なお現代文明に於ける文化実践の意義を検討した。以上を受けて青木が総括した。本研究の意義について簡単に述べる。習い事や美的教養また東洋的身心観の解明を進め、人間性の身心両面に亘る涵養と表現の問題を、何よりもまず〈藝術〉として了解してきた日本の伝統を解明した。以上を基礎に、その発展的形態である藝道・武道・礼法・躾け・嗜み・スポーツなど、広義のアートと呼ばれるべき文化的実践の意義を現代的文脈に於いて解明し、それが現代文明が必要とする身心の全面的「教養」即ち涵養と関わることを解明した点が格別重要である。
著者
佐藤 臣彦 樋口 聡 小林 日出至郎 新保 淳 杉山 英人 木庭 康樹 林 英彰 GUNTER Gebauer 周 愛光
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究プロジェクトでは、スポーツは単なる身体的事象ではなく, 他の芸術分野と同様、それ自体の独自性を持つ文化であることを理論的に明らかにするとともに、すでにギリシア時代に、自らの身体能力自体を競い合う心性が存在していたことを明らかにした。また、身体についても, 単なる自然的存在ではなく、大きな可塑性を有する文化的存在で、その育成には体育(身体教育)が決定的に重要な役割を果たしていることを明らかにした。
著者
利島 保 樋口 聡 鳥光 美緒子 坂越 正樹 藤川 信夫 小笠原 道雄
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

ポスト・モダン的状況下における教育科学の課題に関して日独協力研究を実施した結果、下記の諸点について新たな知見が得られた。美学、身体性の観点から:「ミーメーシス」は美学の特殊な術語として理解されてきたが、「模倣」「倣う」「写す」という日本語の意味の広がりにおいて捉えるとき、ゲバウア、ヴルフ等のドイツにおける研究と連関させられる。模倣の身体性、芸術制作の創造性とともに日本の伝統的な学びのスタイルが模倣と習熟にあったことが学びの復権として改めて注目されるべきである。環境問題の視点から:環境は今や教育の一対象領域にとどまらず、今日の教育を再構築する根底的視点となっている。ドイツにおいても「持続可能な発展」のキーワードのもと、多様な文化的能力、課題発見・解決能力の形成がめざされており、日本での「生きる力」「新学力」との共通教育課題が確認された。研究の全体を通して以下のことが指摘される。教育学のポストモダン体験以降、理論レベルでは人間形成に関する理解の流動化が認められた。実践レベルでも「教育の実定性」への懐疑から、近代学校教育の周縁部で新たな人間形成理解が胚胎しつつあった。近代の理性に基づいた知から感性、身体性に基づいた教育の知への転換は、閉塞状態にある今日の教育と教育学の枠組みを組み換え、新たに展開する可能性を示唆している。その契機となるものが、芸術や環境との身体を伴った相互体験、プログラム化されない他者との一回的出会い等であることも明らかにされた。
著者
榊原 哲也 西村 ユミ 守田 美奈子 山本 則子 村上 靖彦 野間 俊一 孫 大輔 和田 渡 福田 俊子 西村 高宏 近田 真美子 小林 道太郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は、これまで主として看護研究や看護実践の領域において注目されてきた、看護の営みについての現象学的研究(「ケアの現象学」)の、その考察対象を、医師による治療も含めた「医療」活動にまで拡げることによって、「ケアの現象学」を「医療現象学」として新たに構築することを目的とするものであった。医療に関わる看護師、ソーシャルワーカー、患者、家族の経験とともに、とりわけ地域医療に従事する医師の経験の成り立ちのいくつかの側面を現象学的に明らかにすることができ、地域医療に関わる各々の当事者の視点を、できる限り患者と家族の生活世界的視点に向けて繋ぎ合せ総合する素地が形成された。
著者
塩川 雅広 桑田 威
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2021-04-01

申請者らは、IgG4関連疾患の膵病変である自己免疫性膵炎AIPにおいて、その病因自己抗原がラミニン511であることを世界に先駆けて発見した(Sci Transl Med. 2018;10:453)。しかし、ラミニン511自己抗体は自己免疫性膵炎患者の約半数でしか陽性にならず、残りの自己抗体の同定が課題である。本研究の目的は、ラミニン511以外のAIPの自己抗原を同定することである。
著者
太田 茂 杉原 数美
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

熱帯地域で摂取され、パーキンソン病関連疾患の環境因子としての可能性が考えられるトゲバンレイシ植物より、テトラハイドロイソキノリン(TIQ)誘導体を含む10数種類の物質の構造を決定した。これらの1種は、神経細胞においてプロテアソーム阻害に伴う不要タンパク質の蓄積、小胞体ストレス応答の亢進を惹起した。
著者
門田 修平 Jeong Hyeonjeong 梶浦 眞由美 中野 陽子 川崎 眞理子 中西 弘 風井 浩志 長谷 尚弥 氏木 道人
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

シャドーイング学習には、第二言語習得に不可欠なメタ認知的モニタリングを促進する効果が仮定できる。この効果を、音声を聞いて意味を理解するリスニングと比較・対照することを通して、①学習者のシャドーイング時のメタ認知的活動(モニタリングおよびコントロール)が、リスニング時と比べて高まるのかどうかについて、特に、大脳前頭前野の活動(血中Hb濃度)を近赤外分光法(NIRS)によって検証し、②シャドーイング及びリスニング後に刺激再生法インタビュー(stimulated recall interview)を実施して、学習者の意識的な内省を指標としたメタ認知的活動の質的分析を行おうとするものである。
著者
磯 直樹 香川 めい 北村 紗衣 笹島 秀晃 藤本 一男 藤原 翔 平石 貴士 森 薫 渡部 宏樹 知念 渉
出版者
東京藝術大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究では、現代日本における文化と不平等の関係を、「文化がもたらす不平等」と「文化へのアクセスの不平等」という観点から、理論的かつ経験的に社会学の観点から分析する。すなわち、①文化が原因となる不平等とは何か、②文化資源の不平等な配分とは何か、という2種類の問題を扱う。これらの問題を研究するために、理論的には社会分化論として文化資本概念を展開させる。社会調査としては、関東地方で郵送調査とインタビュー調査を実施し、調査で収集されるデータを、多重対応分析の特性を活かした混合研究法によって分析する。
著者
田中 彰吾 宮原 克典 浅井 智久 今泉 修 村田 憲郎
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は「自己」について解明することを目的としている。脳神経科学の発展を受けて、2000年ごろから「自己」は科学的研究の対象になり、各種の知見が蓄積されてきた。ただし、従来の主要な研究は、行動実験と脳計測の組み合わせで、自己が成立する最小の条件を探求する「ミニマル・セルフ(最小の自己)」に焦点を当てたものだった。本研究では、実験科学的研究の地平をさらに拡大し、記憶・時間性・物語の次元を含む「ナラティヴ・セルフ(物語的自己)」を対象とする。実験心理学、哲学、精神病理学のアプローチを多角的に組み合わせ、物語的自己の理論モデルを構想する。
著者
品川 高廣 深井 貴明
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究では、申請者らが研究を続けてきた準パススルー型仮想化技術を発展させて、パススルーの内容や度合いなど仮想化の「重み」を実行時に変更できるようにして、目的に応じた機能と性能のバランスをとることを目指す。また、アーキテクチャの異なるCPU間でも、共通の概念をまとめて抽象化しつつも、各CPU固有の特徴を生かしたオプション機能を追加可能にすることで、汎用的な目的特化型の仮想化ソフトウェアを実現する。
著者
宮下 直 滝 久智 横井 智之
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

1.ミヤマシジミの調査① 畦畔管理によるミヤマシジミの寄生率への影響: 継続調査している畦畔管理実験区内で各世代のミヤマシジミ幼虫密度と、寄生の有無、アリ随伴を記録した。主な寄生者はサンセイハリバエで、共生アリの随伴個体数は負に、幼虫密度と高刈り操作は正に効いていた。土壌由来のシヘンチュウによる寄生率は、高刈り操作と降水量による正の有意な影響があった。草丈を抑える畦畔管理は2種類の寄生者からのトップダウンを軽減する効果が期待できると示唆された。 ② 畦畔管理によるミヤマシジミの局所個体群サイズへの影響:2018年~2021年までの各世代の幼虫個体数を全生息地パッチで記録した。その結果、実験を行っている生息地パッチは実験していない生息地パッチに比べて、個体数増加しているパッチの割合が有意に高く、適した時期と強度の撹乱は局所個体群サイズを増加させることがわかった。2.ソバの送粉サービス① 各昆虫種の送粉効率の推定:早朝から夕方にかけて、ソバに訪花する昆虫をビデオで撮影した。撮影した花序は結実率を推定した。送粉効率を推定するモデルとして、資源制限を考慮した階層モデルを構築した。解析の結果、一回訪花あたりの結実率はミツバチ類やハエ類、コウチュウ類が高く推定され、送粉サービス量はセイヨウミツバチとコウチュウ類で高い結果となった。 ② 畦畔管理による送粉サービスへの影響:ソバの播種から収穫直前まで畦畔での草刈りを控えた維持区と、通常の草刈り区において、訪花昆虫と結実率を調査した。その結果、草刈り区よりも維持区で訪花昆虫個体数と結実率が高く、コウチュウ類やハナアブ類の個体数が増加していた。また、畦畔の開花植物の訪花昆虫と夜間に植物体上で休息している昆虫を調査した結果、どちらの機能も重要で、送粉サービス維持には生息地としての機能の多様性が必要であることが示唆された。
著者
中山 雅晴 吉田 真明 藤井 健太 隅本 倫徳
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

塩素発生反応(CER)は酸素発生反応(OER)よりも速度論的にはるかに有利なため、塩化物イオン存在下での水電解ではCERが優先する。電析法により作製した無垢の積層二酸化マンガンはOERにもCERにも活性を示さないが、熱処理により酸素欠陥を導入すると、OERのみを活性化できることを発見した。これは水素製造のための海水電解において、その対極での塩素生成を抑え、酸素のみを生成するクリーンプロセスの構築が可能であることを意味する。本研究では、積層二酸化マンガンの酸素欠陥構造を操作することにより、海水電解において塩素フリーあるいはその割合を自在に制御しながら酸素を発生する触媒と電解槽を開発する。
著者
向井 讓 篠原 健司 角張 嘉孝
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

ロドキサンチンの光防御機能を解明することを目的として光合成特性、電子伝達効率(Fv/Fm)、光合成関連タンパク質、色素組成の季節変化などを調べ、以下の結果を得た。(1)ロドキサンチンを蓄積できないミドリスギは野生型のスギ以上に光阻害を受けていたため、ロドキサンチンは光阻害の進行を防止する。(2)被陰処理により光量子量を調節して生育させたスギ苗木を解析し、キサントフィルサイクルの稼働効率が低下し夜間にもゼアキサンチンが残存する条件下でロドキサンチンが蓄積し、蓄積量は過剰な光エネルギーの量と高い相関がある。このため、ロドキサンチンは、夜間にも残存するゼアキサンチンを前駆体として光阻害が引き金となって合成される。(3)標高が異なる4カ所の南向き斜面にあるスギ造林地(標高150m,630m,900m及び1,120m)の陽樹冠の針葉を解析した結果、標高が高いほど光阻害の程度(Fv/Fmの低下率)が大きかった。また、標高間でロドキサンチンの最大蓄積量には差がないが、蓄積及び消失の開始時期には差があるため、ロドキサンチンの蓄積や消失時期が光阻害の指標となる可能性がある。(4)ロドキサンチンが蓄積した厳冬期の屋外の枝を採集し、室内に移して回復過程を解析した結果、夜間のゼアキサンチンが消失した後、ロドキサンチンの消失が始まった。また、消失速度は光阻害の程度が少ないほど早く、ロドキサンチンの消失に伴って減少していた光合成関連タンパク質の量が増加した。(5)九州から北陸に至る地域で選抜されたスギ精英樹クローンを用いて、クロロフィル蛍光及び色素組成の季節変動を解析し、光強度や標高などの環境による変動と、比較するとクローン間の遺伝的変動は小さいが、ロドキサンチンの最大蓄積量や冬期のFv/Fmの最小値にはクローン間で有意な差があり、光阻害耐性品種を選抜できる可能性がある。
著者
郭 南燕 中尾 徳仁 李 梁 白石 恵理
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2021-04-01

土山湾は中国上海市徐家匯地区の村落である。1864年にイエズス会がそこに孤児院を設立し、職業訓練の工房を開設し、1950年代まで運営した。そこで制作された美術工芸品と印刷物は、幕末から昭和初期まで日本に輸入されて、博物館、記念館、修道院等に収蔵され、幅広く利用されている。本研究では、①日本に散在する土山湾の美術工芸品と刊行物に関する網羅的調査とデータベース化、②国内諸機関の書誌に対する補足情報の提供、③土山湾作品を手本とした幕末~明治初期の「プティジャン版」と布教用木版画の分析を通して、土山湾の作品が日本文化に与えた影響を検討し、日本現存の作品の保存と研究の推進に寄与したいと考える。