著者
三浦 麻子 小林 哲郎 清水 裕士
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究の目的は,様々な社会的行動・態度の個人差を説明する新たな価値観概念として「常民性」―民主主義やキリスト教といった現代欧米社会に深く根ざす思想の呪縛を受けない,システム正当化,生活保守主義,個人幸福志向などが複合した概念―を探究し,妥当性と信頼性の高い測定尺度を開発することである.(a)質的面接調査,(b)Web調査,(c)尺度開発の3プロジェクトが遂行される.一般的な質問紙調査ではリーチできない層を対象とする丹念な質的データ収集にもとづいて概念の精緻化を試みる点,尺度開発に統計モデリングを活用する点に学術的独自性と創造性がある.
著者
河村 和徳 三船 毅 篠澤 和久 堤 英敬 小川 芳樹 窪 俊一 善教 将大 湯淺 墾道 菊地 朗 和田 裕一 坂田 邦子 長野 明子 岡田 陽介 小林 哲郎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

東日本大震災では多くの被災者が生じ、彼らの多くは政治弱者となった。本研究は、彼らの視点から電子民主主義の可能性について検討を行った。とりわけ、彼らの投票参加を容易にする電子投票・インターネット投票について注目した。福島県民意識調査の結果から、回答者の多くは電子投票・インターネット投票に肯定的であることが明らかとなった。しかし、選管事務局職員は、こうしたICTを活用した取り組みに難色を示す傾向が見られた。ICTを利用した投票参加システムを整備するにあたっては、彼らが持つ懸念を払拭する必要があることが肝要であり、財源の担保に加えシステムの信頼を高める努力が必要であることが明らかになった。
著者
好井 健太朗 小林 進太郎 五十嵐 学 今内 覚
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

ダニ媒介性脳炎、狂犬病など神経向性の人獣共通感染症ウイルスは、脳に侵入・増殖することで重篤な神経症状を引き起こし、致死率も高い。しかし血液脳関門:BBBの存在のため、抗ウイルス分子をウイルスの増殖する脳に到達させる手法が無く、治療法が未開発であった。近年の研究により、これらのウイルスの外殻蛋白は、BBBを透過する機能を持つ事が明らかになっている。そこで本研究では、このBBB透過機構に着目し、抗ウイルス分子技術と融合させることで、BBBを透過して脳内に対象分子を輸送可能な新規薬物輸送システム (DDS) の開発、及びその応用を図る。
著者
待鳥 聡史 砂原 庸介 竹中 治堅 浅羽 祐樹 MCELWAIN KENNETH
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

政府の運営の基本原則、すなわち統治の制度やルールがいかに定められ、変更されるかについては、今日国際的な関心が高まっている研究課題である。本研究は、このような研究動向に棹さしつつ、統治の制度やルールの変更が憲法典の改正に拠らない場合を含む多様なものであることに注目し、その帰結として変更に際する多数派形成の過程にも著しい多様性があることを、理論モデルの構築、国際比較可能なデータセットの作成、さらに計量分析と事例分析による検証から解明し、それらの作業を通じて国際的な研究発展に貢献することを目指している。
著者
宇田津 徹朗 中村 敏夫 田崎 博之 外山 秀一
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

生産遺構土壌から安定的に検出されるイネを中心とした1年生イネ科植物に由来するプラント・オパールに含まれる炭素を利用して、生産遺構の年代決定を行う手法の構築に取り組んだ。その結果、年代の測定精度には検討の余地があるが、国内の生産遺構土壌については、土壌採取からプラント・オパール抽出、夾雑炭素除去、プラント・オパール中の炭素抽出、年代測定(AMS)までの各工程について、実用性や普及性を備えた条件や方法を決定でき、生産遺構の年代を測定する一連の手法を構築することができた。
著者
中島 利博 川原 幸一 西 順一郎 三浦 直樹
出版者
東京医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016

キルギスではRheumatic fever : (以下、RF)が未だに猛威を奮っている。さらに、顕在化しないRFの後遺症も含めたRheumatic heart diseases(以下、RHD)が食生活(肉食、ウオッカ)、環境因子(低酸素)と併せて当該地域での死因の過半数を占める60歳までの心不全の潜在的リスクファクターであることを報告していた。10年を超える継続的な医療支援によりキルギスのほぼ全土を網羅する詳細なフィールド調査を行い、RF/RHDの有無、心エコーなど理学的所見、溶連菌など細菌感染症の頻度、家族歴など2000人を超える住民から100を超える項目に関する調査を完遂していた。その結果より、溶連菌以外の細菌感染の陽性率も高く、その一因に未だに主流であるバイオマス燃料による粘膜免疫の低下が考えられることを見出した。呼吸器分野の専門家を加え、感染の遷延化・慢性化に対する宿主因子の探索を行った。さらに細菌感染に対する啓蒙活動を行いその効果を検討した。キルギスの食生活について循環器疾患や免疫に対する影響を検討するため生理活性を測定した。その結果キルギスの特産として知られるある食物が本国のものと比較して血管内皮細胞に対して高い抗酸化作用を有していることが示唆された。上記の成分を分析しRF/RHDの予防として活用できるのではないかと期待できる。啓蒙活動についてはロシア語に加えてもう一つの公用語であるキルギス語の母子手帳を作成し、現地JICAを通して国民に配布を開始した。また名誉領事会議において本活動の重要性をキルギス政府に対しても働きかけを行った。既に配布済みであるロシア語が広く使われている都市部においてはRF/RHDの減少が認められることからその効果が期待される。
著者
縫田 光司 山下 剛
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

現代の暗号分野では、数値を秘匿しつつ任意の演算を可能とする「完全準同型暗号」の研究が進み、プライバシー保護やビッグデータ解析など応用面での期待も高まっている。本研究代表者は、同技術の効率的な構成を可能とする新原理を既に提案しているものの、その実現に必要な諸条件を満たす代数構造の具体的構成にまだ成功していない。本研究ではこの問題に対して、群論、代数学、組合せ論など数学の観点および暗号理論的な安全性解析という両面から解決に取り組む。
著者
倉沢 愛子 内藤 耕
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

3年間に亘りジャカルタ市南郊の低所得者の集住地区であるレンテンアグン町において、露天商・行商人たち、ならびに同地区内にある伝統的市場で商いをする商人たち(商店主並びに行商人)からその個人史(パーソナルヒストリー)の聞き取りを行なった。また、北部の中国系住民が多く住む商業地区コタにおいて、中国系の商人たちからも同様なききとりを行なった。それを通じて、開発政策の中で烈しく変容する庶民の生活を描き出し、それが大きな歴史をどのように投影しているのかを考察した。
著者
倉沢 愛子 内藤 耕
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

都市化のプロセスと住民のあいだの組織原理の変遷と過去における機能を探求することを目的とした。基本的には、南部ジャカルタ市レンテンアグン町内を主たる対象地域としてフィールド調査を行ってきた。主に、上からの住民動員システムの代表例である、PKKの活動の観察を通して、住民組織がどのように編成されているのか解明することを試みた。他方、行商や露天商を営んでいる住民に対して個人史を中心とした聞き取り調査を行ってきた。その結果、同郷の親族や知人を頼って農村から出てきて、当初はその知人と同一の業種の仕事をすることが多いことが確認され、都市=農村間のネットワークについて素描することができた。彼らの多くは定住性が高くなく、町内居住者が定住性の高い集団とそうでない集団とに分離していく傾向があることが確認された。また、都市生成を商品流通と人の移動の点から解明するために、レンテンアグン町内にある伝統的市場に焦点をあてて、その歴史、規模、運営方法、出店している商人や買い物客の属性等の調査を行った。商人の多様性、階層性を明らかにする一方で、市場が地域社会の核となっていることを明らかにした。買い物客の分析を通しては、再販売のための仕入れ目的の者が約三分の一ほどいることがわかり、市場が地域のインフォーマルセクターを支える役割をしていることが明らかとなった。調査ではほかに、都市の日常を住民自身の感覚に近いところで表象する大衆紙を中心とした新聞資料の収集、整理に相当時間を費やした。全体として、ジャカルタ南部の都市化においてはフォーマルで強固な組織化の力とインフォーマルでルースなネットワークというふたつの組織原理がせめぎあっており、開発の時代を通して地域社会の二重化が進行してきたと考えられる。
著者
藤代 節 庄垣内 正弘 角道 正佳 岸田 文隆 菅原 睦 澤田 英夫 橋本 勝 岸田 泰浩
出版者
神戸市看護大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究課題は、ユーラシアのアジア地域を中心に、広域にわたって生じた言語接触の研究を目指したものである。各メンバーが各々携わってきた地域にみられる言語の接触状況を把握し、当該地域における社会言語学的情報を考慮しつつ、言語地域のダイナミズムを提出することをまず第1段階とし、次に個別に研究してきた言語の関与する言語接触の様相がユーラシア各地に分布する他の地域のそれと比べてどのような類似点あるいは特異点をみせているかを考察した(第2段階)。さらに、言語接触研究において従来、提出されている諸現象及び接触前段階まででみられる諸現象がアジア地域の言語接触についても頻繁に見られるか、それら諸現象の出現を条件付ける要素は何であり、何処に起因するか、等に考察を及ぼした。その上で、言語接触のあり方を整理し、ユーラシア各地の言語地域について、各領域の言語から多角的に検討してきた。本研究課題に参加したメンバーが、研究目的にそって、研究に従事した三年間の実施期間にまとめた成果の一端をApproaches to Eurasian Linguistic Areasと題した論集にまとめ、Contribution to the Studies of Eurasian Languages seriesの第7巻として刊行した。それぞれにユーラシア言語地域に分布する言語接触の諸相を扱った論考をあつめ提出できた。なお、本研究課題の参加メンバーは、その成果をふまえ、「言語接触のその後」を探る研究と位置づけた研究課題『ユーラシアの言語接触と新言語の形成-新言語形成のメカニズム解明に向けて-』に新たに取り組む予定である。
著者
松宮 護郎 松田 暉 澤 芳樹 福嶌 教偉 西村 元延 市川 肇 舩津 俊宏
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

重症心不全でLVAD装着術後に自己心機能が改善し左室補助循環装置(LVAS)離脱が可能となる症例、いわゆる"Bridge to Recovery"が報告されているが、その心機能を改善させるための手段として細胞移植が応用できないかを検討することを目的として本研究を開始した。1.拡張型心筋症ハムスターに対する筋芽細胞シート移植拡張型心筋症ハムスターの27週齢時に、筋芽細胞シートを2層化して移植し、経時的に心機能を測定し、心筋構造蛋白の免疫染色を行った。筋芽細胞シートを移植した群は、従来の針による細胞移植法と比較して、有意な心機能向上効果を認め、左室壁の肥厚化を認めた。また、dystrroglycan, a, d-sarcoglycanの濃染性を認めた。また、筋芽細胞シート移植群は他群と比較して、生命予後は延長した。2.拡張型心筋症モデル犬に対する筋芽細胞シート移植ビーグル成犬に心室ペーシングを続け、拡張型心筋症モデルを作成した。ペーシング開始後4週後に自己筋芽細胞シートを心表面に移植し心機能の経時的変化を測定し、非移植群と比較した。シート移植群は有意に駆出率の増加、および内腔の縮小、壁厚の増大を認めた。また、組織学的検討では移植群において有意な心筋線維化抑制、apoptosis抑制効果を認めた。3.虚血性心筋症モデルブタに対する筋芽細胞シート移植ミニブタの冠状動脈左前下行枝をアメロイドリングを用いて結紮し、虚血性心筋症モデルを作成した。骨格筋筋芽細胞シートを移植し、心機能を評価した。シート移植群において他群に比して有意に良好な左室収縮能、壁厚の増大、内腔の縮小を認めた。またFDG-PETにて心筋の糖代謝能改善が認められた。これらのメカニズムを検証するにあたり、電子顕微鏡、免疫染色、RT-PCR法、FDG-PET法、MEDシステム等を駆使し、構造、因子、遺伝子、代謝、電位活性等の多方面からの検討を行った。
著者
早川 和生 大村 佳代子
出版者
三重県立看護大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

高年齢に達した一卵性双生児は、遺伝要因が全く同一でありながらペアの1方が認知症や糖尿病などを発症しても他方は健常なペアが多く見られることから、このペア内の差異の原因となる環境因子を解明することは予防医学の面で学術的にも社会的にも極めて重要である。本研究では、既に把握して研究協力を得ている60歳以上の高齢双生児を対象に各種臨床検査を含む総合的な健康調査を実施している。特に、生活環境因子の影響については、ライフヒストリーを中心に食品摂取、身体的運動、職業内容、家族環境等を詳細に調査している。また同時に、性格検査、人生満足度テスト、知能検査等の検査データを収集してきた。これらデータは、国際的にも稀有なデータベースとなることから予防医学の面で極めてユニークで貴重な研究となることが期待されている。平成28年度の研究計画では、エピジェネチックな遺伝子発現に関与する環境因子について前年度と同様にライフスタイル因子や性格環境因子についてはブレスローのライフスタイル指標を含めた詳細なデータを収集し遺伝疫学的分析を実施している。また、これらの分析研究については従来より共同研究を実施している大阪大学大学院異学系研究科附属ツインリサーチセンター(センター長:岩谷良則教授)との共同研究として実施している。また尾形宗士朗(日本学術振興会特別研究員)には、ライフスタイルや生活環境因子の遺伝疫学的解析に参画いただいた。これらの研究成果については、多面的な複数の学術的な国際雑誌への論文および学会発表として公表することができた。
著者
岸本 直文
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

急速に進歩する測量技術により、従来の測量図よりもはるかに精度高く墳丘の形状を把握できるようになっている。倭国王墓の変遷については、測量図による従来の比較作業から推移が見通され、また研究代表者は2系列があることや、さらに第3の系列の存在を指摘している。しかし倭国王墓の築造には、本来、個々に具体の割り付け設計があり、また数字による寸法が与えられたはずであり、精度の高い墳丘データがえられるようになったことで、設計仕様レベルでの比較検討が可能となっている。本研究は、最新データにもとづき前方後円墳の設計の実際を解明すること、また複数系列の存在を証明することで当時の王権構造に迫ることをめざすものである。
著者
松尾 知明 蘇 リナ 田中 喜代次 甲斐 裕子
出版者
独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

“年齢に関わらずできるだけ長く元気に働ける社会”の実現に向け、体力科学は貢献できる。しかし、現在の体力科学研究には“心肺持久力(CRF)”と“座位行動(SB)”に関して混沌とした状況がある。疾病予防策としてはCRF向上が必要とされてきたが、その改善は見られないまま、最近の主流はSB減少である。本研究では、労働者を対象とした疫学研究により、1)“低CRF”と“過大SB”それぞれの、あるいは相互的な健康への影響はどの程度か、2)SB減少を目指すアプローチはCRF改善を目指すアプローチの代替策になり得るか、の2つの課題に取り組み、体力科学研究から、労働衛生分野での具体的な疾病予防策提案を目指す。
著者
高雄 啓三 吉田 知之
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は脳発達期における RNA 編集異常がシナプス結合選択の異常をもたらし、それが高次脳機能異常を伴う発達障害の原因であるという仮説に基づき、どのような因子がRNA 編集異常とシナプス結合選択の異常をもたらすのか同定し、その制御機構を明らかにする。シナプスをオーガナイズする因子の遺伝子はこれまで20種類程度知られているがその多くが脳で発現、RNA に転写される際に編集され、多様なタンパク質が作り出されることでシナプスは多様となる。本研究では、精神疾患モデルマウスの RNA 編集を調べ、その制御機構と精神疾患との関係を明らかにする。