著者
松本 征仁 位高 啓史 岡崎 康司
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

近年ヒトiPS細胞やES細胞から膵ベータ細胞への作出方法が報告され、糖尿病の再生医療の実現に向け見通しが立ってきた。しかし、幹細胞を用いる細胞補充療法は、造腫瘍性の可能性が完全に排除されていない事に加えて、莫大なコストの削減や免疫制御等の問題が残されている。本研究は従来の実績に基づいたRNA送達による直接変換を誘導する新たな治療法の開発を目指す。また分化転換の分子機序の解明について様々な側面から細胞の表現型の変遷移行に関する網羅的な情報の収集を行い、細胞の分化的可塑性について議論の一石を投じたいと考える。
著者
下平 英寿 清水 昌平
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

画像,タグ,文書等の様々な種類(ドメインと呼ぶ)の情報源から得られるデータベクトルと,データベクトル間の関連性の強さに関する情報が得られているデータを,多ドメイン関連性データと呼ぶ.従来の多変量解析ではベクトルが1対1対応するものを扱っていたため,柔軟なデータ構造を表すことができなかった.本研究ではベクトルの関連性をグラフ(ネットワーク)で表現して,そのグラフ構造をなるべく保存するように次元削減を行う情報統合の方法を提案・発展させた.
著者
一家 綱邦 山口 斉昭 高山 智子 勝俣 範之 秋元 奈穂子 八田 太一 下井 辰徳 渡辺 千原 藤田 みさお 高嶌 英弘 佐藤 雄一郎 手嶋 豊
出版者
国立研究開発法人国立がん研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

科学的エビデンスの不明な医療(がん治療に関するものが主たる対象)がもたらす社会的問題への対応策の検討を目的に4分野に跨る学際的研究を行う。(ⅰ)科学的エビデンスの不明な医療の内容を理解するための医学的観点からの研究(ⅱ)科学的エビデンスの不明な医療への法規制を検討する医事法学研究:医療行為そのものと医療行為に基づくビジネス活動を対象とする。(ⅲ)生命倫理・医療倫理のあり方を対象とする生命倫理学研究(ⅳ)法・倫理の規制の前提となる科学的エビデンスの不明な医療の実態把握のための調査研究。さらに、社会的課題としての重要性を鑑みて、研究成果を社会に発信することも研究活動の中で重要な位置を占める。
著者
北本 仁孝
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

磁気計測による新規の化学・生化学センサの開発のために、磁性ナノ粒子を刺激応答性ハイドロゲルに内包した磁気ハイドロゲルをバイオセンシングのラベルとして創製した。磁性ナノ粒子の分散・凝集状態を制御するために、磁性ナノ粒子がpH等の化学的刺激に応答するハイドロゲル中に適切な配置で分散し、かつゲル中で物理的な回転・振動をすることができる、構造制御された磁気ハイドロゲルラベルである。pH応答性ゲルの膨潤特性の変化に伴い、磁性ナノ粒子の流体力学的振舞(物理的な運動)の変化を交流磁化計測により検出した。さらに、この磁気ハイドロゲルを用いて、交流磁化特性の計測によってアンモニアガスを検出することに成功した。
著者
本郷 裕一 山田 明徳 伊藤 武彦 猪飼 桂 守川 貴裕 髙橋 雄大
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

シロアリの餌である木片の消化の大部分は、シロアリと1.5億年以上前に共生を開始した腸内原生生物群集が担っているが、それら原生生物の起源や共生に至った過程は未知である。本研究の主目的は、木質分解性原生生物を進化過程で喪失した「高等シロアリ」の一系統群が比較的最近、新規な木質分解性原生生物を再獲得した可能性の検証である。結果、新規原生生物は多様な高等シロアリに共生しているものの、多数の原生生物細胞が見られるのはやはり一系統群のみであること、同原生生細胞質が木片で充満していること、同原生生物を含む腸画分はセルロース分解活性を有することなど、今後の研究の基盤となる重要な情報を得ることができた。
著者
寺杣 友秀 花村 昌樹 松本 圭司 志甫 淳 木村 健一郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

混合TateモチーフのHodge実現関手の構成のために、semi-algebraic setを使ってある鎖複体を構成し一般化されたコーシー公式を証明した。また混合楕円モチーフについて、深さフィルトレーションをあたえるモチーフのフィルトレーションを定義した。高次チャウ群からコホモロジーへのサイクル写像の像の次元が大きい曲面の構成をした。2変数超幾何方程式系が可約になる特別なパラメーターに関する Schwarz 写像を研究した。このタイプの周期逆写像をテータ関数を用いて記述した。種数2の代数曲線族についてのAbel-Jacobi 写像の像特徴づけた。
著者
天野 哲也 貞方 昇 渡辺 順 石井 邦宜
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1994

北海道島における冶金史の問題は、1)鍛冶と2)製錬に大きく分けられ、鍛冶についてはさらに、1)-a技術的系統と素材の種類およびその入手方法、1)-bその主要な製品はなにであり、市場はどこであったか、製錬については、2)-a製錬はいつ頃始まったか、中世にまでさかのぼるのかどうか、2-b)それは東北地方の製錬業とどのような関係にあったか、の4点にさしあたりしぼられる。まず1)の問題については、千歳市ユカンボシC2遺跡のアイヌ期の鍛冶資料を重点的に分析した。また奥尻町青苗遺跡の擦文期鍛冶資料の分析も手がけ、さらに上ノ国町勝山館遺跡および青森県浪岡町浪岡遺跡の鉄ていなど中世の資料の分析にも着手した。その結果、中世には不定形な未精錬高炭素素材と規格的な軟鋼素材が流通しており、前者を酸化精錬して鋼をつくり、軟鋼と鍛え合わせる鍛冶が広く行われていたことを明らかにした。2)については、文献に記された製錬の場所、製鉄伝承のあるところ、スラグの見られるところなどを踏査・観察して、考古学資料ならびに砂鉄など製錬原料の資料を採集し分析した。また、隣接する青森県下北・津軽地方の製錬址を踏査・観察して、比較資料を得た。その結果、道南部の製錬業の始まりは、従来考えられていた近世末よりずっと古く、近世初期もしくは中世にまでさかのぼる公算が強まった。また、原料砂鉄のTi/V比が大きいことから、その供給地の候補は道内に限られないことを明らかにした。また道南部の製錬業は本州北部の森林資源枯渇などとの関係でとらえ直す必要を指摘できた。
著者
坂出 祥伸 鄭 正浩 大形 徹 山里 純一 松本 丁俊 内田 慶市 頼富 本宏
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本課題について平成12年度から平成14年度までの期間中、7回の海外調査、1回の沖縄調査、2回の調査報告会を行った。海外調査では、台湾、福建南部、香港、タイ、マレーシア、マニラ、シンガポールの道教的密教的辟邪呪物の調査を行った。ここには、特徴的な事象について説明する。(1)台湾南部では住宅整備と道路改修などの近代化・都市化に伴い、辟邪物が漸次減少化傾向にある。(2)金門島では台湾本島でも対岸の大陸でも見られない種々に珍しい鎮宅符が残っていて、ここは辟邪物の宝庫といえる。(3)厦門、泉州などの市街区では都市・道路整備のために辟邪物・呪符はほとんど消滅していたが、少し奥地の〓州では古い建築物が残っていて正一派道教の出す色々な呪符が見られた。(4)香港は市街区には呪符・辟邪物はほとんど見られないが、北部九龍地区の全真教系道観がいくらか呪符を出していた。(5)タイ、マレーシアにはともに福建南部出身の移住民が多いので、出身地の正一派や民間信仰の道観が出す呪符があったが、タイでは現地仏教との融合した辟邪呪物・呪符が見られ、本頭公という土地神がり、またマレーシアでは、マレーシア原住民の土地信仰・拿督公と融合した大伯公信仰が盛んであった。(6)マニラでは福建南部・晋江の道教との結びつきが強く、道観が種々の呪符を出していたのと、カソリック信仰との融合したサントニーニョが辟邪物として信仰されていた。(7)シンガポールの華人は近代には都市整備が進んでいるために辟邪呪物・呪符もほとんど見ることができなかったが、ここでも現地マレーシア人の拿督公と融合した大伯公信仰が見られた。全体としては、本課題の調査は非常に大きな有益な成果があったという感想である。
著者
塚田 武志 末永 幸平 海野 広志 関山 太朗
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究では,近年著しい発展を遂げている機械学習技術を数理論理学的な問題に応用して,高効率な演繹的推論エンジンを構成することを目指す.機械学習技術は画像認識やゲームAIを含む様々な分野で著しい成功を遂げているが,証明などの演繹的推論が関わる分野には未だに古典的な演繹的推論技術が機械学習技術に優位である問題が多い.これまでの研究では解きたい問題を直接解く機械学習モデルを作る End-to-End の方法が主流であったが,本研究では解きたい問題ではなく機械学習に適した問題を学習させて,学習結果を演繹的推論エンジンで活用する.
著者
奥山 誠義 水野 敏典 河崎 衣美 北井 利幸 岡林 孝作 加藤 和歳
出版者
奈良県立橿原考古学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究では古墳時代における繊維製品の材料学的・構造的研究方法の基礎的研究を行い、ヤマトにおける古墳時代繊維製品の具体的な変遷の把握を試みた。考古学および文化財科学における新たな価値を生み出す研究を大きな目標として研究を進めた。本研究では、ラミノグラフィおよびX線CTと呼ばれる非破壊調査法により非破壊的に織物の構造調査が可能であること、光音響赤外分光分析が非破壊的に素材を知る手段として有効であることが確認できた。考古学的には新沢千塚古墳群から出土した染織文化財を例として、統計分析をおこない織密度や織物の種類や古墳の墳形、規模との相関について研究した。
著者
山形 孝志 敦賀 貴之 植松 良公 生藤 昌子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究課題では、炭素排出権取引市場や炭素税など炭素価格付加政策の排出削減効果と経済活動への影響を、統計・理論、両面からの分析を行う。具体的には、新たな高次元動学パネルデータ統計分析手法を開発し(研究課題1)、世界炭素排出量と経済の国際動学的関係を実証分析する。そして炭素価格付加政策の効果とマクロ経済に与える影響を、上記統計手法(研究課題2)ならびにマクロ経済理論(研究課題3)から分析する。さらに2020年以降の排出削減の国際的枠組みである「パリ協定」に科学的根拠を与えたIPCCの気温上昇予測値が多数の外部研究結果に基づきどのように導かれたかを、新たな統計的手法よって明らかにする(研究課題4)。
著者
千葉 聡 平野 尚浩 森井 悠太 Prozorova Larisa 鈴木 崇規
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

小笠原諸島の陸貝化石の年代測定から、最終氷期以降、カタマイマイなどが形態的、生態的に区別のできるタイプに分化したことが示された。琉球列島の喜界島などでも同時代の化石を解析した結果、同じような変化のパターンは見られず、小笠原での急速な分化は、その放散と関係していると考えられる。一方、本土と琉球列島の近縁現生種について、系統推定とニッチ利用を調べた結果、いずれにも形態とニッチ利用の関係が示すパターンに共通性が認められたが、急速な放散はカタマイマイに限られた。島では競争によるニッチ分化が放散の要因と考えられるのに対し、本土の種分化では地理的隔離の他は、捕食-被食の効果が認められた。
著者
高橋 雅英 榎本 篤 浅井 直也
出版者
藤田医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

がん組織の線維化はがんの悪性度および治療効果に大きな影響を与える。本研究では膵がん、肺がんを主に、我々の研究グループが最近発見したメフリン陽性がん線維芽細胞の機能解析を通じて、がんの線維化のメカニズムを解明し、新たながん治療法の開発に資する。具体的には1.がん関連線維芽細胞(CAF)におけるメフリン発現レベルと患者予後との関連を明らかにし、メフリン陽性がん関連線維芽細胞のがん間質における機能の解析を行う。2.メフリン結合タンパクを同定し、機能解析により、がん細胞の増殖、浸潤能などの生物的特性への関与を明らかにする。3.がん治療を目指したメフリンの発現を増強する低分子化合物の探索を行う。
著者
井田 徹哉 綿崎 将大 山口 康太
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2021-04-01

我が国における潮流発電と波力発電による海洋エネルギー発電の実用化を目標に、海洋エネルギー発電に適合した小形リニア発電モジュールの研究開発を行う。タービンを用いず直接的に海洋からエネルギーを低損失に取り出し得るダイレクトドライブ型波力発電機とアンジュレータ型潮流発電機は共に幅広い沿岸海域で小規模な発電を実現できる。回転機による発電とは異なり、リニア発電機では長い直線状の機構を要し、低流速かつ短ストロークであることから高い発電効率を達成し難い。加えて、海洋発電に向けて高い制動性が要求される。本研究は海洋エネルギー発電に向けたリニア発電モジュールの研究開発を行い、海洋エネルギー開発の推進を目指す。
著者
高木 健 巻 俊宏
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

水中浮遊式海流発電装置は、流速変動により生じる動揺運動を回避して安全性を確保する制御が実施されているが、将来はこの安全性確保と変動流中での出力増加・品質向上による経済性向上を両立させなければならない。本研究では制御システムが安全性を担保しつつ経済性向上が可能かを明らかにすることと、どのような評価関数による最適制御が単位発電出力当たりのコスト削減に適しているのかを明らかにすることを目的として実施する。この目的を達成するため、制御シミュレーションコードを確立するとともに、このシミュレーション結果と海流の長期予測結果を利用してライフタイムの経済性を考慮したLCOEを算出する方法論を構築する。
著者
蓑島 伸生 清水 厚志 佐々木 貴史
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

ヒトゲノムには低頻度反復配列(Low Copy Repeat;LCR)と呼ばれる塩基配列が存在する。LCRは通常の反復配列ではなく、遺伝子や偽遺伝子等の様々なユニットからなっており、進化の過程でそれらのユニットが周囲の非LCR領域も巻き込みながら、重複や逆位、欠失等の大規模変化を繰り返して形成されてきたと考えられる。LCRは、遺伝子数やDNA断片コピー数の多型(CNV;Copy Number Variation)の生成原因の一つである。CNVのうち、規模の大きなものは、DiGeorge症候群、Smith-Magenis症候群のような欠失・重複による疾患の原因ともなる。それらの疾患の原因領域にはLCRが存在している。CNVは他の遺伝性疾患や、ある種の精神疾患にも深い関連があると考えられ、昨今俄に研究が進展している。 LCRは、その複雑さ、長さのためにゲノム塩基配列のギャップの原因ともなっている。このようにCNVとそれを生じさせているLCRの研究は今後のゲノム研究の中で重要な位置を占める。本研究では、7q11.23Williams症候群領域(WBSCR)と8p23.1duplication症候群領域のLCRの構造解析を行った。これらの領域のNCBI build36のデータを用いて、詳細なコンティグマップを作成し直し、 LCRユニットの位置、長さを確定し、さらにそれぞれのLCRに含まれる遺伝子、偽遺伝子の詳細な解析を行った。ヒトと類人猿ゲノムの詳細な解析により、上記どちらの疾患ゲノム領域でもコアとなるユニットが最初に存在し、進化に伴って転移を繰り返す際に転移先周辺の配列を巻き込みLCR化させる現象が明瞭になった。また、build36でWBSCR内にあるとされたギャップは見かけ上のもので、実際にはCNV多型を持つ二つのアリルの混在によるミスアセンブルであり、同ギャップは存在しないことも強く示した。なお、本研究の成果について、研究期間終了後以下の発表を行った。[論文]Nature431:931,2004; BMC Genomics5:92,2004; Nature439:331,2006,[学会発表]国内5件
著者
Cabral Horacio 垣見 和宏 内田 智士
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

We will first develop a series of T-cell targeted mRNA-loaded nanocarriers. These nanocarriers will be optimized for stability, targeting and protein production in vitro.Promising formulations will then be tested in vivo. to determine the targeting efficacy to the CD8 T cells, the production of CAR T cell in situ and the antitumor activity against models of leukemia and solid tumors. Finally, we will check the toxicity of the treatments.
著者
大橋 唯太 亀卦川 幸浩 井原 智彦 高根 雄也
出版者
岡山理科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

人口が集中する都市の屋内外環境における急性循環器系疾患の死亡リスクを、気象と都市の数値流体モデルによって高解像でマップ化することが、本研究の主課題である。建物室内での生活、屋外空間での歩行や労働など、個々の活動条件を想定した疾患リスクの定量評価を試みる。この物理モデルで得られた結果をもとに、AI(機械学習)による疾患リスク予測の簡易手法を確立する。また、将来の気候変動によって予想される極端な高温化が、急性循環器系疾患の死亡リスクをどの程度上昇させるかについても、予測評価を試みる。
著者
野地 澄晴 大内 淑代 三戸 太郎
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

コオロギの脚の再生に着目して、そのメカニズムを解明した。特に、基礎データとして、コオロギのゲノム解析を行った。研究方法の新規開発を行い、人工核酸分解酵素を用いたノックアウトコオロギを作製することに成功した。また、コオロギの再生芽の形成に Jak/Stat 系が関与していることを証明した。これらの結果から、新規ゲノムデータとノックアウト法を組み合わせて、さらに再生メカニズムを解明できることがわかった
著者
稲葉 睦 松木 直章 土居 邦雄 高橋 迪雄 高桑 雄一 長谷川 篤彦
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

赤血球の主要膜内在性蛋白質であるバンド3は、従来、生命推持に必須とされてきた。本研究は、黒毛和種牛の遺伝性バンド3欠損症における知見をもとに、この定説の妥当性を検討し、代償機構を解明することを目的とする。得られた成果の概要は以下のとおりである。1)遺伝子型と赤血球表現型との解析により原因遺伝子異常がR664X変異であること、本疾患が優性遺伝形式をとることを実証した。2)赤血球膜病態の解析に基づき、ホモ接合型とヘテロ接合型の赤血球球状化機序が異なること、即ち、前者ではバンド3-アンキリンースペクトリン間結合の消失が、後者では変異バンド3のドミナント・ネガティプ作用によるバンド3減少がそれぞれ球状化の原因となることを示した。これらの知見から膜骨格の形成とバンド3の生合成とが独立した現象であり、バンド3は膜骨格形成には不要であるが、その後の膜安定化に必須であることを提唱した。3)バンド3完全欠損赤血球には本来は前駆細胞のみにみられるバンド3の構造類似体AE2によるアニオン輸送能が存在することを解明した。さらに、迅速なアニオン輪送は全く代償さえておらず、バンド3によるアニオン輪送は平常時のガス交換に必須の要索ではないことを実証した。