著者
堀江 正知
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.481-505, 2004-12-01 (Released:2017-04-11)
被引用文献数
5 5

日本の産業保健制度では, 事業者に法定健康診断結果の保存義務を課し, 労働者の健康状態を把握した上で職場や作業を改善するよう求めていることから, 実際には人事担当者が労働者の健康情報を直接取り扱っている. 一方, プライバシーは19世紀後半からその概念が発展し, 近年は個人情報の自己コントロールが重要とされ, 中でも健康情報は特に機微な情報として本人の承諾なしに取扱うべきではないとされている. したがって, 日本の産業保健活動においてはプライバシーが侵害されるリスクは高い. 健康増進法と個人情報保護法も相次いで公布され, 訴訟に発展した事例もある. しかし, 職場の実態調査によれば, 現行制度への問題意識は高くなく, 健康情報の種類によってプライバシー保護の要求度に相違もある. 産業保健専門職は, 学会の倫理指針などを参考に労働者の健康情報の活用と保護の両立に努めることが求められている.
著者
井田 正道
出版者
明治大学大学院
雑誌
明治大学大学院紀要 政治経済学篇 (ISSN:03896064)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.159-172, 1988-02-10

Ⅰ 1987年練馬区長選挙の立候補者と選挙戦 1.田畑区長の引退と2人の立候補者 1987年の練馬区長選挙は、1974年に区長公選制が復活して以来、4回目の選挙である。過去3回の区長選では、いずれも田畑健介氏(無所属)が当選を果たし、3期にわたって安定した田畑区政を築いてきた。田畑氏は、1回目(1975年)の選挙では、社会党、共産党、民社党、公明党の4党の推薦、支持を受け、自民党推薦の無所属、正木英世氏を激戦の末破って初当選した。そして、2回目、3回目の選挙では、田畑氏は自民党の推薦も得て、全党相乗りのかたちで、楽々と勝利を収めてきた。 しかし、その田畑区長は、1986年12月9日、練馬区議会第4定例会において、健康上の理由から翌年4月の区長選には出馬しない旨を表明し、練馬区は久しぶりに新しい区長を迎えることが確定した。
著者
錦織 宏 福島 統 仁田 善雄 神津 忠彦 鈴木 利哉 奈良 信雄
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.370-372, 2008-12-25 (Released:2011-05-24)
参考文献数
11
被引用文献数
3

1) 英国における近年の学士入学制度 (Graduate Entry Programme) 導入の動向について, 現地で行った面接調査に文献による考察を加えてその内容を報告した.2) GEPは短期的にはよい医師を育てることができる可能性があるが, 長期的なエビデンスはまだなく, その是非に関する更なる議論が必要である.3) GEPを導入せずとも現在のカリキュラムを改革することによって改善できる内容がある.一方でGEPは多様性のある医師を養成できるという点で優れている.
著者
宇根 ユミ 野村 靖夫
出版者
麻布大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

1)「ヒョウモントカゲモドキ由来のクリプトスポリジウムのヘビへの感染性と病原性」第137回日本獣医学会(日本大学・神奈川)申請者はヒョウモントカゲモドキ(LG)由来のクリプトスポリジウム(Cr)の宿主域とその病原性を確認するためヘビへの感染実験を行った。先の報告と同様にLG由来C.saurophilumを接種したLGの腸内容および糞便をナミヘビ科レッドコーンスネーク(Elaphe guttata guttata.CS)幼体3匹、アオダイショウ成体2匹、ボア科ボールパイソン(Python regius.BP)幼体3匹、キューバボア(Epicrates angulifer)若齢1匹計9匹に経口接種し、一部を除き各4,6,9週後(PIW)に剖検、病理学的に検索した。なお、CSとBP各1匹を無処置対照群として実験開始前に剖検した。結果、CSのみで感染が成立した。臨床症状は見られなかったが、原虫は小腸に感染し、経過とともにその数は増加した。PIW4では原虫は食道にもみられた。組織学的に粘膜上皮の過形成、絨毛の萎縮、リンパ・プラズマ細胞性炎症や腸上皮の弧在性壊死が観察され、経過とともに緩慢に進行していた。これらの病変はLGと同質であったが、Crの増殖はLGより高度で、炎症反応は軽度であった。牛のC.parvumを除けば、一般的にCrは宿主特異性が強く、種を超えて感染しないとされているが、今回、国内で分離されたLG由来Crは、トカゲ類に留まらず一部のヘビにも感染性と病原性を示した。今回感染が成立したCSはナミヘビ科のヘビで、在来種のほとんどがこの科に属していることから、広宿主域を持つCrによる飼育下爬虫類の損失と在来種への影響が懸念される病原体と考える。2)「爬虫類におけるCryptosporidiumの保有状況」第37回日本原生動物学会(山口大学・山口)3)「誌上剖検・外科病理シリーズ トカゲのデルマトフィルス症」小動物臨床(23(6):396-398,2004)4)第3回爬虫類と両生類の臨床と病理のための研究会ワークショップ「トカゲ」を2004年10月30日に麻布大学で開催し、本研究室から口頭1題(トカゲのウイルス)、ポスター6題(ヒガシウォータードラゴン(Physignathus lesueuri)の心筋症の2例 グリーンイグアナの全身性細菌性肉芽腫性炎の1例 マラカイトハリトカゲの真菌症Nannizziopsis vriesii(anamorph : Chrysosporium sp.)トカゲ類にみられたDermatophilosisツリーモニターのヘルペスウイルス感染症、フトアゴヒゲトカゲPogona vitticepsの胃原発カルチノイドの2例)を発表した。また、ワークショップで使用するテキストの作成も行った。
著者
眞野 友裕 宮木 杏菜 伊川 正人 中村 肇伸
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.111, pp.AW1-6-AW1-6, 2018

<p>【目的】精子と卵子は,受精後にリプログラミングを経て胚体外組織を含む全ての細胞に分化できる「全能性」と呼ばれる能力を再獲得する。本研究では,全能性獲得の分子基盤を明らかにするために,全能性細胞で特異的に発現する遺伝子の探索を行い,Zbed3(Zinc-finger BED Domain-containing 3)を同定した。本報告では,Zbed3の生体内での機能を明らかにすることを目的として研究を行った。【方法】着床前胚におけるZbed3のmRNAおよびタンパク質の発現はそれぞれqRT-PCRと蛍光免疫染色を用いて検討した。また,Zbed3ノックアウトマウスは,CRISPR/Cas9システムを用いて作製した。【結果】Zbed3の着床前胚における発現を検討した結果,Zbed3は受精卵から4細胞期胚の間で特異的に発現し,卵細胞膜皮質下に限局していた。Zbed3は,培養細胞を用いた研究から,Wnt/β-cateninシグナルを正に制御することが報告されているが,少なくとも初期胚では,Wnt/β-cateninシグナルの制御には関与しないことが示された。一方,Zbed3の特徴的な細胞内局在は,SCMC(subcortical maternal complex)と呼ばれる複合体の構成成分の局在と酷似していた。また,免疫沈降によりZbed3はSCMCの構成成分であるMater相互作用することが示唆された。これらのことから,Zbed3はSCMCの構成成分である可能性が考えられた。次に,生体内での機能を調べるために,Zbed3のノックアウトマウスを作製した。その結果,メスのZbed3ノックアウトマウスから得られた受精卵では胚盤胞期への発生率が著しく低下すること,また多くの受精卵から不均等な割球を持つ2細胞期が得られることが明らかとなった。以上から,Zbed3は初期発生に必須の母性効果遺伝子であり,均等な割球を持つ2細胞期胚への分裂に重要な役割を果たすことが示唆された。</p>

1 0 0 0 OA 日本戯曲全集

著者
渥美清太郎 編, 校訂
出版者
春陽堂
巻号頁・発行日
vol.第三十九卷, 1933
著者
山崎 貴史
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.85-100, 2013

1990年代以降、わが国における日雇労働市場の縮小は、多くの失業者を生み出し、都市の公共空間で居住する野宿者が急増した。駅舎・公園・道路などに起居した野宿者は、90年代から絶えずクリアランスの対象となってきた。そして、そのいくつかにはスポーツが大きく関連している。たとえば、2010年の宮下公園、2012年の竪川河川敷公園では、スポーツ施設の設置によって、野宿者の強制撤去が行われた。では、なぜ野宿者の排除にスポーツが用いられるのだろうか。そして、公園におけるスポーツ施設の設置はそこで暮らす野宿者にとって、どのような問題を孕んでいるのだろうか。<br> 事例としたのは、1997年と2004年に〈ホームレス〉対策としてスポーツ施設が設置された若宮大通公園である。この公園では、〈ホームレス〉対策として、スポーツ施設が設置されていった一方で、公園内で野宿者は居住を続け、ゲートボール場では炊き出しが行われている。本稿の事例からあきらかになったのは、第一に、スポーツ施設は公園内のオープンスペースを「スポーツする場所」に利用を限定することで、野宿者にとって、居住地を制限するものとして立ち現れる点である。 第二に、野宿者と支援者はスポーツ施設による居住や活動の制限を受けながらも、スポーツ施設を利用して居住し、スポーツ施設を居住地や「野宿者支援の場所」として意味づけしなおしていた点である。<br> このことから、最後に公園といった公共空間にスポーツ施設が設置されることの是非は、そこをどのように管理するかではなく、どのように利用されているかという視点から捉える必要性を指摘した。
著者
深川 美帆 ブシマキナ アナスタシア 田中 由紀子 河内 由紀子 Fukagawa Miho Anastasia Bushimakina Tanaka Yukiko Kawachi Yukiko
出版者
金沢大学留学生センター
雑誌
金沢大学留学生センター紀要 (ISSN:13496255)
巻号頁・発行日
no.20, pp.21-38, 2017-03

漢字・語彙クラスの学習内容に準拠した漢字eラーニング教材を開発した。この教材は本学のLMS (moodle)上で利用でき,初級から中級までに学ぶ漠字(総漢字数1041字)について,漢字の読み方,意味・用法を解説したリストと,漢字語彙の練習 ができるクイズから成る。漢字 ・語彙クラスを履修している学生が利用するコースの他,自習用コ ースにも同じ教材が配置されている。利用した学生への調査結果から,どのクラスにおいても学生が教材をよく利用しており,ほとんどの学習者から「役に立つ」という回答があったことから,この教材の有用性が確認できた。 一方,教材ヘのアクセスの簡略化や,より漠字学習への興味 ・ 意欲を喚起する教材を求める声も学生から寄せられた。 今後はこれらの結果をもとに,さらに教材開発を続けていくつもりである。
著者
本間 義治
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.223-228, 1955

In this report the author has further more enumerated sixteen unrecorded species of fish with their brief description, which are to be included into ichthyofauna of Province Echigo and Sado Island of the Japan Sea.<BR>Amoung these fish, there are twelve shore fish and tide-pool fish, which were caught by hand net, set net prepared for yellow-tail, gill net for flying fish, and by rod line in the vicinity of Sado Marine Biological Station. For the following asterisk marked six fish, it is considered that the locality is the northern limit for their existence.<BR>1. <I>Cypselurus opisthopus hiraii</I> ABE<BR>2. <I>Cypselurus heterurus d&ouml;derleini</I> (STEINDACHNER)<BR>*3. <I>Iso flos-maris</I> JORDAN et STARKS<BR>*4. <I>Eviota abax abax</I> (JORDAN et SNYDER)<BR>*5. <I>Pterogobius elapoides zonoleucus</I> JORDAN et SNYDER<BR>*6. <I>Aspasma ciconiae</I> JORDAN et FOWLER<BR>7. <I>Echeneis brachypiera</I> LOWE<BR>*8. Tripterygion bapturus (JORDAN et SNYDER)<BR>*9. <I>Dasson trossulus</I> (JORDAN et SNYDER)<BR>10. <I>Azuna emmnion</I> JORDAN et SNYDER<BR>11. <I>Ernogrammus hexagrammus</I> (TEMMINK et SCHLEGEL)<BR>12. <I>Pterophryne ranina</I> (TILESIUS)<BR>The following four species of deep sea bottom fish were caught by motor trawler of the coast of Suizu of Sado Island in middle Japan. They are also the species unrecorded hitherto in this locality.<BR>13. <I>Breviraja smirnovi</I> (SOLDATOV et PAVLENKO)<BR>14. <I>Lumpenus macrops</I> MATSUBARA et OCHIAI<BR>15. <I>Lumpenella nigricans</I> MATSUBARA et OCHIAI<BR>16. <I>Gengea japonica</I> KATAYAMA
著者
大内 克哉 橋本 英治 榮元 正博 尹 智博 小山 明 Katsuya OUCHI Eiji HASHIMOTO Masahiro EIGEN Jibak YOON Akira KOYAMA
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
芸術工学2020
巻号頁・発行日
2020-11-25

ビデオゲームには「遊び」の要素と並行して、人間にとって有用な「学習」の要素が含まれていると考えられる。本研究は、このリテラシーを他分野の「学習」に置き換えることが可能かどうかを実験を通して検証した上で、ゲーム制作技術を教育領域の学習支援システムの再構築に応用することを目的とする。ビデオゲームの領域においてはプレイヤーの習熟曲線に合わせた学習方法が確立している。本研究では、学習が必要な他分野の例の一つとして音楽領域に注目し、ビデオゲームの学習方法を応用することで、楽器演奏の「難しさ」の前に「楽しさ」を体験出来る補助装置の作成を目指す。研究はゲームクリエイター、ヨコオタロウ氏と協力して進めた。
著者
小笠原 沙映 浦辺 幸夫 前田 慶明 沼野 崇平 藤下 裕文 福井 一輝
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>足関節内反捻挫は発生頻度の高いスポーツ外傷であり,予防のためにテーピングが行われている。テーピングは,テープの走行や本数を変化させることで,関節の制動効果を高めている。テープの走行の違いにより,関節運動への影響が変化するが,1本のテープが関節運動にどのように制限を与えているかは明らかではない。本研究の目的は,後足部の内反制限のため,走行が異なる3種類のテープを施行し,サイドステップ動作時に,テープがどのように関節運動を制限しているのかを明らかにすることとした。</p><p></p><p>仮説は,距骨下関節軸に直交するテープの走行が後足部の内反制限に最も効果的であるとした。</p><p></p><p></p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>対象は,足関節捻挫の既往のない健常な女性8名(年齢21.4±0.5歳,身長157.3±5.6 cm,体重49.4±5.5 kg)とした。テープは日東メディカル社のEB-50を使用した。テープは対象の利き脚(ボールを蹴る脚)に,内果から足底を横切り,下腿遠位1/3まで貼付した。テープの張力を一定にするため,テープを徒手筋力計(アニマ社)のプローブに当てた状態で張力を加え,40 Nになった時点で貼付した。課題動作は,利き脚側の側方1 mへのサイドステップとした。課題動作の分析には,赤外線カメラ16台からなる三次元動作解析装置(Vicon Motion Systems社)を使用し,サンプリング周波数100Hzで記録した。赤外線反射マーカーをOxford foot modelに基づき下肢30箇所に貼付した。測定条件は,①テープなし,②足底面に垂直で,テープの後縁が外果の最突出部を通る走行のテープ,③足底面に垂直で,テープの前縁が外果の最突出部を通る走行のテープ,④足底面に対して後方に傾き,テープの後縁が外果の最突出部を通る(距骨下関節軸に直交する)走行のテープの4条件で行った。動作解析ソフトVicon Nexus1.8.5(Vicon Motion Systems社)を用いて,着地時の後足部内反角度とその後の最大内反角度を算出した。4条件間の比較には,Wilcoxon符号付順位和検定を用い,危険率5%未満を有意とした。</p><p></p><p></p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>足部接地時の後足部内反角度(平均±SD)は,①16.0±5.2°,②14.0±7.7°,③14.4±7.8°,④13.1±10.0°となり,④は①と比較して有意に低値となった(p<0.05)。最大後足部内反角度は,①19.5±5.7°,②18.8±8.9°,③17.1±8.2°,④16.0±9.2°となり,各条件間で有意差はなかったが,④が最も低値となった。</p><p></p><p></p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>サイドステップ時の後足部内反角度は,④が最も低値を示したことから,距骨下関節軸に直交した走行が後足部の内反制限に与える影響が大きく,仮説を支持する結果となった。さらに,②のように外果の前方を通るテープ,③のように外果の後方を通るテープでも,足底面に対して垂直に走行するため,一定の効果を示すことが分かった。今後は,1本ずつのテープの役割を考えて,さらに検討をすすめたい。</p>