著者
岩田 健太郎
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.447-450, 2011 (Released:2012-02-09)
参考文献数
11
被引用文献数
1 2

高齢者における感染症診断の原則は,通常の感染症診断の原則となんら変わることはない.それは,感染臓器の特定,原因微生物の同定,そして患者の重症度の見積もりの3点である.とはいえ,高齢者特有の診断にまつわる問題は存在する.尿路感染症や肺炎などコモンな感染症の症状は若年者に比べるとはっきりしない.発熱を伴わない感染症も少なくない.不要な検査で感染症の「レッテル」を貼ってしまうことは厳に慎みたい.患者のアウトカムに関係しない微生物探しは,患者やその周辺の利益にはつながらない.
著者
寺下 貴美
出版者
公益社団法人 日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術学会雑誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.413-417, 2011

研究方法論においてデータの性質から、数値で表されるデータを量的データ性質や特徴など数値で表せないデータを質的データという2つに分類される。 本稿では、質的データを扱う研究手法である質的研究手法に焦点を絞り、質的研究手法において理解すべき基本的項目を網羅的に紹介する。
著者
松並 知子
出版者
日本健康相談活動学会
雑誌
日本健康相談活動学会誌 (ISSN:18823807)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.52-57, 2020-03-25 (Released:2021-02-09)
参考文献数
22
被引用文献数
1

「恋人とは一心同体であり、恋人は自分のものだから自分の好きなように支配しても良いし、束縛は愛の証である」と感じるような依存的恋愛観は、現代の若者に多く見られ、デートDVの要因とされている。また自分らしくあるという感覚である「本来感」や「仲間集団への依存傾向」は依存的恋愛観の心理的要因であると考えれる。そこで、依存的恋愛観と暴力観の関連、および、本来感と仲間集団への依存傾向と依存的恋愛観の関連を検討することが本研究の目的である。高校生839名を対象に質問紙調査を実施した結果、男女ともに、依存的恋愛観が強まると、恋人への暴力行為を「暴力」と認知しない傾向が示された。また女性の場合、低い本来感が仲間集団への依存に影響を与え、それが恋人への依存性にも関連している傾向が示された。一方、男性の場合は、本来感と依存的恋愛観に関連は見られず、仲間集団への依存のみが恋人への依存性に関連していた。 ジェンダー差については、依存的恋愛観は男性が有意に高く、仲間集団への依存は女性が有意に高かった。また暴力観では男性が女性よりも「暴力にあたる」と回答する傾向が強かった。 本研究では相手に依存しすぎない健全な恋愛観がデートDVの予防に関連することが示唆されたので、今回の結果をもとに、予防教育プログラムを開発することが今後の課題である。
著者
小門 穂
出版者
科学技術社会論学会
雑誌
科学技術社会論研究 (ISSN:13475843)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.93-103, 2019-04-20 (Released:2020-04-20)
参考文献数
56

本報告は,代理出産を女性の身体の資源化ととらえ,母体の資源化に抗うにはどうすればよいのかという観点から,日本とフランスで公表されてきたルールなどにおける代理出産の禁止のあり方に着目し,どのように禁止してきたのか,禁止のやり方は変わってきたのか,禁止の効果はどのようなものかを明らかにすることを試みる.両国とも代理出産が容認されていないが,その禁止の方法や,外国での代理出産で生まれた子の国内での親子関係確立に対する扱いは異なる.日本ではガイドラインにより実施が認められていないという状況が続いているが,代理出産に関する紛争を抑えるという面では一定の効果を挙げているように思われる.フランスでは法律で禁止してきたが,近年のヨーロッパ人権裁判所の判決を受け,外国での代理出産で生まれた子の国内の父子関係は容認されるようになった.フランスの現状は,禁止する法律を作ることだけで抗うのは難しいことを示している.
著者
笠島 善憲
出版者
The Institute of Electrical Engineers of Japan
雑誌
電気学会論文誌D(産業応用部門誌) (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.111, no.9, pp.725-733, 1991-09-20 (Released:2008-12-19)
参考文献数
9

We have already announced the design method of the passive attenuator to prevent a high voltage which induced at a crane hook of a large crane used near a medium wave radio broadcasting antenna. But it is very difficult fundamentally to microminiaturize this passive attenuator.In this time, we developed an active attenuator that possible to miniaturize where a negative resistor or a fourterminal amplifier is included. From the result analyzing this crane equipped with an active attenuator theoretically, we show the design method of the active attenuator. In this paper, first the equivalent circuit of the crane equipped with the active attenuator as a receiving antenna is induced. And we show that the attenuated characteristics of the active attenuator by the model experiment accords with the theoretical attenuated characteristics which employ an equivalent circuit under the same condition.
著者
林 里奈 加藤 昇平
出版者
日本感性工学会
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18845258)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.23-29, 2019 (Released:2019-02-28)
参考文献数
24
被引用文献数
2

Robot-assisted therapy has gained attention as one of mental health measures. In this paper, we investigated the influences of soft tactility on psychological and physiological stress relief effects to verify whether soft robots or hard robots are effective as therapy robots. Resultantly, we confirmed that psychological stress relief effects obtained by interaction with soft robots are significantly higher than that with hard robots, particularly reducing tension and depression, improving vigor. And we also verified that physiological stress relief effects, especially increasing alpha waves, obtained by interaction with soft robots are significantly higher, too. In addition, we found that soft tactility may have effects of inhibiting reduction users' motivation for interaction. These results suggest that soft robots are more effective as therapy robots.
著者
Shuichi Tanoue Masaru Hirohata Yasuharu Takeuchi Kimihiko Orito Sosho Kajiwara Toshi Abe
出版者
The Japanese Society for Neuroendovascular Therapy
雑誌
Journal of Neuroendovascular Therapy (ISSN:18824072)
巻号頁・発行日
vol.14, no.12, pp.547-557, 2020 (Released:2020-12-20)
参考文献数
30
被引用文献数
2

The cavernous sinus (CS) is a dural sinus located on each side of the pituitary fossa. Neoplastic and vascular lesions, such as arteriovenous fistulas, frequently involve the CS. This sinus plays a role as a crossroad receiving venous blood flow from the facial, orbital, meningeal, and neural venous tributaries. The relationship between these surrounding relevant veins and the CS, as well as the CS itself, varies anatomically. For safe and effective surgical and endovascular treatment of lesions involving the CS, knowledge of the anatomy and variations of the CS and the relevant surrounding veins is highly important. In this section, the anatomy and variations of the CS and the relevant surrounding veins are outlined.
著者
角田 聡美
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.73-85,129, 2000-03-20 (Released:2011-05-30)
参考文献数
52
被引用文献数
3 1

女子体育史研究では, 体育が女性を解放したという視点からの研究が多い。ところが, 現在の体育における男女別習が男女の身体差を前提にしているという事実は, 身体という視点からみた場合, 体育が男女の性差を肯定してきた側面を示唆する。しかし, 女子体育史研究の中で女性の身体を視野に入れた先行研究はあまりに少ない。そこで, 本研究は, 明治期における女子体育の展開について, 身体をめぐる政治という観点から歴史社会学的に分析し, 女子体育研究の再検討をする。体育に直接関わる資料からは, 女性の身体への政治に関する知見があまり得られないため, 衛生観念が女性に性別役割を固定化し, 女性の身体を男性から差異化して性的な意味を付与したという先行研究をてがかりに, 女性が中心となって発刊した, 女性のための衛生知識啓蒙雑誌である『婦人衛生会雑誌』を資料として用いた。その結果, 衛生知識の普及に伴って, 女性の身体は健康な子どもを産むための健康な母体とされた。こうした強健な女性の身体は旧来の美人像と対立していたのだが, 富国強兵政策の下, 日本人種の改良が強調されたこともあり, 体育によって女性の身体を健康にする方向へと進んだ。その過程では, 運動に適さない女性の服装, 月経, 運動する女性を揶揄する御転婆などいくつかの阻害要因が存在したが, 健康な母体を作るための女子体育は, 国家がかりで強力に押し進められた。つまり, 国家政策として女性の身体は, 衛生知識を基に体育という方法を通して, 健康な母体であることを運命づけられたのである。以上のことから, 女子体育は女性の身体に性別役割を刻印したという新たな視角を提示できたものと思われる。また, こうした女性の身体観と体育の役割を女性たち自身も支持していたことが明らかになった。
著者
本多 正純
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.77, no.10, pp.685-689, 2022-10-05 (Released:2022-10-05)
参考文献数
7

近年量子計算機を取り巻く技術が急速に発展している.ここでは“ユーザー”として,このような発展が場の量子論の数値シミュレーションにどのように役立つかを考える.場の量子論は様々な物理学における共通言語であるが,一部の特殊な例を除いて解析的に解くことは難しい.それゆえしばしば数値計算に頼りたくなるが,現時点では既存の手法では効率的な数値シミュレーションが難しい場面も少なくない.通常場の量子論の数値シミュレーションでは,ラグランジュ(経路積分)形式の場の量子論に対して格子正則化を行い,物理量を表す多重積分にモンテカルロ法が適用される.これはボルツマン重みで与えられる確率で場の配位を生成し,積分を生成サンプルに関する平均によって近似する方法である.しかしながら,ボルツマン重みが正の実数でない場合は,確率解釈を直接適用することができないため,何らかの工夫が必要となる.特に,被積分関数が激しく振動するような場合は様々な工夫を凝らしても解析が難しいことが知られている(符号問題と呼ばれる).これは物理的には例えばトポロジカルな相互作用や化学ポテンシャルがある場合,実時間系などにしばしば現れる.一方ハミルトン(演算子)形式に基づいた数値シミュレーションの場合,技術的に行う問題は積分ではないため,符号問題ははじめから存在しない.しかし場の量子論の状態空間は典型的に無限次元であり,正則化を行った後でも状態空間の次元は“自由度”の増加に対して指数関数的に増大する.そのため非常に大きな次元をもつベクトル空間上で線形代数を行わなくてはならず,典型的には莫大な計算コストがかかる.しかし量子計算機を用いれば,少なくとも一部の問題に関しては計算量が劇的に少なくなることが期待されている.場の量子論を量子計算機に乗せるには,状態空間が有限次元になるような正則化を行った後に,スピン系に書き換えれば良い.多くの場合,はじめに時空の内の空間部分に格子正則化が適用される.フェルミオン場の場合はこれだけで状態空間が有限になり,適当な変換の下でスピン系に書き換えることができる.ボソン場では,特殊な場合を除いて格子に切ってもなお状態空間は無限次元となっているため,数値シミュレーションを行うためにはさらなる正則化が必要となる.本研究において,我々はチャージqシュウィンガー模型の基底状態を構成し,様々な物理量の計算を行った.シュウィンガー模型は作用にシータ項と呼ばれるトポロジカル項をもつが,その係数が小さくないときは符号問題により通常のモンテカルロ法による解析が困難なことが知られている.この模型は境界条件をオープンに取りガウス則を用いると,純粋にフェルミオン場のみをもつ系になり,比較的容易にスピン系に書き換えることができる.基底状態の構成には,断熱近似を量子回路により実装するアルゴリズムを用いた.現在のところ,量子計算機の実機では必要な量子ビット数に対して誤りが少ない結果を得るのは難しいので,ここではシミュレータを用いて数値シミュレーションを行った.最もよく研究されてきたq=1の場合は,カイラル凝縮と呼ばれる量をシータ項の係数が大きい領域も含めて解析を行い,その連続極限を量子シミュレーションの文脈で初めて取ることに成功した.より一般のqの場合は,重い荷電粒子の間のポテンシャルを計算した.フェルミオンの質量が小さいときに信用できる解析的な計算から,このポテンシャルの定性的な性質は,粒子の電荷やシータ項の係数の値に強く依存することが期待されている.シミュレーションにより,このような振る舞いが有限質量でも起きることが分かった.
著者
栗田 宣義
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.516-533, 2015 (Released:2017-03-31)
参考文献数
33
被引用文献数
1

現代日本の若年層女性, 具体的には高校生を含むハイティーン女子に焦点を当て, 他者からの承認を意味するリア充, および, 容貌身体の美醜評価による序列に基づいたルックス至上主義ならびに美醜イデオロギーの視角から, 彼女たちの生きづらさを, 探索的因子分析と共分散構造分析を用いて, 計量社会学的に明らかにした. 高校生全学年を含む15歳から19歳の就学層を被調査者とした, ウェブ上の質問紙経由での回収数458名のインターネット調査を用いた分析の結果, 非リア充であるほど生きづらさを抱える傾向があり, また, リア充であるほど容姿外見の変身願望が強い傾向があることが判った.
著者
水田 拓 尾崎 清明 澤 祐介 千田 万里子 富田 直樹 仲村 昇 森本 元 油田 照秋
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.71-102, 2022-07-02 (Released:2022-07-12)
参考文献数
154

Bird banding is a survey method of attaching uniquely marked rings on a bird’s leg. Recaptured or resighted data of marked individuals enable researchers to study the ecology of birds, such as the migration and life history. The first bird banding survey took place in Denmark in 1899, and now many researchers and organizations around the world carry out such surveys. In Japan, Ministry of Agriculture and Commerce (the Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries and the Ministry of Economy, Trade and Industry at present) started the bird banding scheme in 1924. The scheme was interrupted during and after World War II, but was resumed in 1961. During 59 years from 1961 to 2019, a total of 6,108,529 individuals (499 species) were marked and released, of which 40,607 individuals (262 species) were recovered. The numbers of marked and recovered individuals in the latest year (2019) were 126,907 individuals (282 species) and 1,254 individuals (88 species), respectively. Based on this comprehensive database, numerous findings and knowledge were obtained, including migration routes and life spans of many species, population trends of endangered species, avifaunal data of a certain region, birds’ response to climate change, contribution to the measure for avian influenza, and so on. The bird banding survey has contributed to the conservation of biodiversity, one of the most critical global issues today. We believe it is important to conduct and continue the survey with a sense of purpose and mission for greater good in mind.
著者
守山 正樹 柏崎 浩 鈴木 継美
出版者
The Japanese Society of Health and Human Ecology
雑誌
民族衛生 (ISSN:03689395)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.22-32, 1980 (Released:2011-10-21)
参考文献数
110
被引用文献数
1 4 3

In Japan, the decline in the age at menarche after the Second World War has been repeatedly reported, but the observed period in the reports has not been long enough to evaluate the secular trend of it. More than a hundred reports of age at menarche of Japanese have been published from the year of 1886. More than half of these populations in the reports consisted of students or young workers, some of whom had not attained menarche at the survey, and the menarcheal ages were represented by the arithmetric mean for the menarche attained girls. Thus, ages at menarche of these reports have biases toward younger menarcheal ages which depend on the proportion of non-menstruating girls. The authors aimed to correct these biased menarcheal ages on the assumption that (1) menarcheal ages of a population distributes normally when all of the girls are menstruating; (2) when some girls are not menstruating, the distribution is censored sample of normal distribution. After eliminating these biases of historical sources, the trend of the menarcheal age in Japan (from the late 19th century to the present) was analysed.